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札幌で講演をすることに。 [2010年公文書管理問題]

なんと札幌で講演をすることに。
以前より札幌市文化資料室の方から、公文書館設立についてのパブコメなどを求められていて、色々と考えるところを話していました。
そうしたら、「じゃあせっかくだから札幌に来て話してよ」ということになり、この企画になった次第。

なお、部屋が狭いらしく、すでに来場予定者だけで相当の席が埋まっているとのこと。
来場を希望される方は、先に文化資料室まで電話をしてほしいとのことです。
お近くにお住まいの方がいれば是非どうぞ。

私は、公文書管理法の話を元にして、公文書管理条例を作る場合の留意点などを話す予定です。
後日、札幌市文化資料室の紀要に講演内容は収録されることになっています。

平成22年度 文化資料室 企画講演会

札幌市公文書館に期待すること―利用者としての視点から―

講師 小川千代子氏(国際資料研究所代表)
    瀬畑 源氏(一橋大学大学院博士課程)

日時:平成22年10月15日(金) 午後2時から5時

場所:札幌市文化資料室 2階 市史会議室(中央区南8条西2丁目)

主催:札幌市文化資料室(TEL 011-521-0205)

現在、札幌市では、昨年の秋に策定した「札幌市公文書館基本構想」を基に今後の公文書館開設準備計画を具体化する作業を進めています。
そして、公文書館の母体となる当文化資料室でも開設準備事業の一環として、毎年、公文書館関連の企画講演会を開催しています。
本年度は、来年の春に予定されている公文書管理法の施行、あるいは行政機関情報公開法改正の動きなどにも注目しながら、こうした問題に日頃から活発にご意見を述べられているお二人を講師としてお招きいたします。
本講演会では、新しく誕生する札幌市公文書館に対し、講師のお二人が今何を一番期待しているかなどについて縦横に語っていただきます。

ビラ↓
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/koubunsyo/sapporo.pdf
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「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(下) 第5~9 [2010年公文書管理問題]

「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(上) 第1、2
「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(中) 第3、4
「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(下) 第5~9←ココ

前回の続き。

8月24日に行政透明化検討チームの会合の最終回がありました。
そこで出された大臣案「行政透明化検討チームとりまとめ(案)」についての解説をしてみたいと思います。

赤字の部分が、「とりまとめ」からの引用部分です。
一応、一番最初の枝野大臣案が出たときの解説はこちら。間違っている箇所もあるけど、おおよその解説は合っていると思う。

今回は、第5~9の部分。

第5 情報公開訴訟に関する改正
 訴訟による事後救済を確実に行うため、いわゆる「ヴォーン・インデックス」の作成・提出に関する手続(下記2)を創設するとともに、いわゆる「インカメラ審理」(下記3)を導入する。制度の詳細については、法案立案過程において調整することとする。また、原告の訴訟にかかる負担に配慮し、各地の地方裁判所でも訴訟ができるようにする。具体的には以下のとおり。

1 訴訟の管轄(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)
 開示決定等又はこれに係る不服申立てに対する裁決・決定に係る抗告訴訟(以下「情報公開訴訟」という。)は、行政事件訴訟法第12条に定める裁判所のほか、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所にも提起することができる。訴訟の移送の特例規定(行政機関情報公開法第21条、独立行政法人等情報公開法第21条)は、この場合にも適用される。


いままで情報公開訴訟は、高裁がある地方裁判所でしか行うことができなかった。
これを、各県の地方裁判所で起こせることに変更するというものである。

行政事件訴訟法の第12条第4号によれば、そもそも国相手の行政訴訟は高裁所在地の地裁でしかできないことになっている。
これは行政訴訟自体が専門的な知識が必要となるため、まとめて処理するためと思われる。

ただ今までは、例えば鹿児島の人とか、訴訟を起こすだけで福岡まで行かなくてはならないなど、訴訟を起こす側の経済的な負担が半端ではなかった。
今回これを各地裁でできるようにしたのは、情報公開法は「民主主義の基本インフラ」であるという原則を取ったということになる。
つまり、行政や司法側の都合で高裁所在地でやっていたものを、国民の側に合わせることにしたということになる。

確かにこれによって行政・司法側のコストは上がるだろうが、利便性を考えたときには各地の地裁で行えた方が良いに決まっているだろう。


2 不開示決定に係る行政文書の標目等を記載した書面の提出(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)
 情報公開訴訟においては、裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため必要があると認めるときは、行政機関の長・独立行政法人等に対し、当該開示決定等に係る行政文書・法人文書の標目、その開示しない部分についてこれを特定するに足りる事項、その内容の要旨及びこれを開示しない理由その他必要な事項を、その裁判所の定める方式により分類又は整理して記載した書面の作成・提出を求めることができる。


これはいわゆる「ヴォーンインデックス提出命令」のことを言っている。
簡単に説明すると、裁判所が行政機関側に、不開示にしている理由を全て分類整理して、それぞれの不開示理由がわかるように解説した文書を提出させることができるというものである。
つまり、争点を明確化するための情報を、行政機関側に提出させるということである。
この提出されたものは、もちろん原告側にも提供され、それに基づいて裁判を進めることになる。


3 審理の特例(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)
(1)情報公開訴訟においては、申立てがあった場合には、裁判所は、裁判官の全員一致により、審理の状況及び当事者の訴訟遂行の状況その他の事情を考慮して、不開示事由の有無等につき、当該行政文書・法人文書の提出を受けなければ公正な判断をすることができないと認めるときは、当事者(当該行政文書・法人文書を保有する行政機関の長・独立行政法人等を除く。)の同意を得た上で、決定により、当該行政文書・法人文書を保有する行政機関の長・独立行政法人等に対し、当該行政文書・法人文書の提出を命ずることができる。この場合においては、何人も、裁判所に対し、提出された行政文書・法人文書の開示を求めることができない。
(2)裁判所は、(1)の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者の意見を聴かなければならない。
(3)裁判所は、(1)の決定をしたときは、行政機関の長・独立行政法人等に対し、2の書面の作成・提出を求めなければならない。ただし、当該書面が既に提出されている場合は、この限りではない。
(4)(1)の決定に対しては、即時抗告をすることができる。


これはいわゆる「インカメラ審理手続」のことを言っている。
これまで、情報公開訴訟では、裁判官がその「不開示になっている部分」を見ることができなかった。
なぜならば、裁判が「双方審尋主義」(証拠は原告被告双方が見ることが可能でなければならない)で行われるという憲法第82条第1項に書かれている大原則があったからである。
つまり、裁判官が不開示部分を自分の目で見て判断したくても、それを判決に利用する場合は、見た内容について原告に解説する必要が出てきてしまうのだ。

「インカメラ審理」とは、この点をクリアするために編み出された方法である。
これは、裁判官だけが訴訟の対象となる文書を見て「検証」することができる制度である。
原告は、このインカメラ手続を認める以上、その文書を裁判で見る権利を放棄するということになる。
このあたりは、憲法解釈や民事訴訟法などもクリアできるようである。

「ヴォーンインデックス」と「インカメラ審理」はセットで考えた方がよい。
そもそも「インカメラ」を行うためには、「ヴォーンインデックス」で論点を整理する必要がある。

この2つは、情報公開訴訟が盛んであるアメリカで「発明」された制度である。
これまでの情報公開訴訟は、この2つが無かったが故に、裁判官が対象となる文書を見れなかったため、被告側の行政機関の説明を鵜呑みにする傾向が強かった(というか鵜呑みにするしか仕方がなかった)。
原告側が「なぜその文書が不開示か」を立証できるわけがないからだ。

この制度の導入によって、やっと「まともな」情報公開訴訟が行われることになる。
何が問題になっているのかを裁判官がしっかりと把握した上で、不開示が合理的な判断なのかが判断されることになる。

なお、この2つについては、やはり警察防衛外務からは、「裁判官の守秘義務」や「自分たちの専門的な説明を裁判官が理解できるのか」といったような強い懸念が示されていた。つまり「自分たちの決定を裁判所が覆すことに対するおそれ」である。
だが、この点についても、各委員が「司法でひっくり返ることを否定するわけではないよね?」みたいな尋問がきちんとなされていたので、大臣案から後退することはなかった。
もちろん、公務員が「裁判所(最高裁)」の判断に逆らうことを明言することなど不可能なわけだから。

この2つについては、導入の方向性はチームで議論されたものの、具体的な制度設計については法改正に持ち越された。
おそらく「施行令」にまで持ち越される可能性もありうるので、この制度設計については、国会できちんと議論される必要があるだろう。


第6 情報の提供に関する改正(行政機関情報公開法第25条、独立行政法人等情報公開法第22条関係)
 開示請求者の利便性の向上及び行政コスト削減の観点から、以下のとおり行政機関の長・独立行政法人等による情報提供制度を改正する。
(1)行政機関情報公開法において、行政組織・制度等に関する基礎的情報、行政活動の現状等に関する情報等を、情報提供の対象とする。
(2)複数回開示請求がなされ、これに対する開示決定がなされたものは、情報提供の対象とする。
(3)開示請求に対する「開示の実施」の方法の一つとして、ホームページ上の該当情報の教示などの簡易な方法を、請求者が選択できることとする。


この項目、実はあまりチームで議論をされていない。
委員側の最終報告の「論点整理」でも、この項目すら存在しない。
実は最終回の蓮舫大臣の趣旨説明でも、この項目はさっくり飛ばして説明していた。

ただ、だからといって問題のある箇所ではない。むしろ歓迎すべきことが書かれている。

(1)は組織制度に関するものは、わざわざ情報公開手続きを使わせず、自発的に情報を提供しなさいということである。

(2)は複数回同じ文書を請求してくる場合、いちいち手続きを取らずにその場で見せればよいということである。
なお、最終回の会合で、この手続きを取るのは「全面開示」の文書のみということが確認された。
おそらく、不開示部分が含まれる場合は、時間の経過など状況によって不開示部分が変わることがあるからだと思われる。

(3)は請求されたものがホームページに載っている情報だったら、それを提示するのでも良いよ(ただし請求者がOKならば)というものである。

いずれも、利用する方にとってはありがたい制度であると思う。


第7 適用対象の範囲等に関する改正
 現行の情報公開制度の対象を、国民の知る権利を保障する観点から、以下のとおり拡充する。
1 国会関係
 衆参両院の事務局・法制局、国会図書館等の保有する立法行政事務に係る文書の公開の在り方について、行政機関情報公開法と同等の開示制度導入の検討を促す。
2 裁判所関係
 最高裁判所事務総局等の保有する司法行政事務に係る文書の公開の在り方について、行政機関情報公開法と同等の開示制度導入の検討を促す。
3 政府周辺法人関係(独立行政法人等情報公開法第2条第1項・第22条関係)
 国からの出資、国から交付される補助金等が年間収入に占める割合、業務内容の公共性等の視点から、「独立行政法人等」に含まれる対象法人の拡大を検討する。
 また、情報の提供に関する施策(行政機関情報公開法第25条、独立行政法人等情報公開法第22条)をより充実させ、法人の保有する情報等を記録した文書、図画又は電磁的記録を取得し、適時に、かつ、国民が利用しやすい方法により提供する。


1、2は、立法、司法で情報公開法を作ることを「促す」ということである。三権分立なので「作れ」とは言えないので。

3は独法などが自発的に情報提供をもっと行うべきだという規程である。
文章を読んでいてもわかりにくいのだが、要するに「事業仕分け」で、特殊法人などの幹部が高額報酬を受け取っていたりしたことが次々に明るみに出たことことから、自発的な情報公開をもっと積極的に行わせる手段を講じるということのようである。
これは、おそらく蓮舫大臣の興味関心と重なる部分でもあるだろう。


第8 行政機関情報公開法等の所管に関する改正(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法、内閣府設置法、総務省設置法関係)
 行政機関情報公開法及び独立行政法人等情報公開法の所管を総務省から内閣府に移管する。


今までは、情報公開法が総務省(行政管理局)、公文書管理法が内閣府(公文書管理検討室)と分かれていた。
だが、一体的な運用をするためにも、この二つを合併することは不可欠であった。
特に、情報公開や公文書管理は全行政機関に関わるので、内閣府に集中させるのがふさわしいだろう。
実際に人事面では、すでに総務省行政管理局の方が、兼任で公文書管理検討室に配属されているようだ。

もしできるのであれば、この移管の際に、合併+αの人員の配置を期待したいと思う。
これから司令塔になる部署なのだから、100人ぐらいいたって本来よいはずなのだ。
せっかく分担管理をいじるのだから、人員のこともうまく配置してほしいと思う。


第9 情報公開条例の扱い(行政機関情報公開法《新設》)
 第5の2及び3は、情報公開条例(地方公共団体又は地方独立行政法人の保有する情報の公開を請求する住民等の権利について定める当該地方公共団体の条例をいう。)の規定による、開示決定等に相当する処分又はこれに係る不服申立てにおける裁決・決定に対する抗告訴訟においても利用できるよう検討する。


これは、地方公共団体等での情報公開訴訟でも、同様にヴォーンインデックスやインカメラを使えるようにするということである。
重要なことなので、まとめて検討してほしいと思う。


以上で解説は終わりです。

全体的には向かっている改革の方向性は問題ないと思っています。
ただ、法律の文章にしたときに、検討チームの意思がどこまで反映されたものになるかはきちんと監視する必要があると思います。

ただ、この検討チームの議論は、前へ進んだとはいえ、委員の三木さんがおっしゃっていたように、初めから大臣案という「枠」が決められており、その枠内でしか議論を行えなかったという側面があります。
私自身もパブコメで、「時の経過」の話など色々と書きましたが、当然の如くスルーされました。

会合の回数も時間も少なかったので、やむを得ない部分はあったと思いますが、この案がまだまだ検討の余地のあるものだということは頭の片隅に置いておく必要があると思います。
そして、場合によっては、ねじれ状態になった国会での再修正という、公文書管理法の時のような再現を狙うということもありうるでしょう。

この「とりまとめ」が出されたから、これでおしまいということにしてはいけないでしょう。
まだまだ民間の側からも、色々な意見を出しながら議論に参加していくことが必要だと思います。
それこそ、蓮舫大臣の言う「参加型行政」の姿だと思いますので。

今後もこの問題については注視していきたいと思います。
相変わらず「印刷しないと読めねえよ」とか言われそうな長さと文体ですが、そこはどうかご勘弁を。
長々とお読みいただきありがとうございました。
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「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(中) 第3、4 [2010年公文書管理問題]

「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(上) 第1、2
「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(中) 第3、4←ココ
「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(下) 第5~9

前回の続き。

8月24日に行政透明化検討チームの会合の最終回がありました。
そこで出された大臣案「行政透明化検討チームとりまとめ(案)」についての解説をしてみたいと思います。

赤字の部分が、「とりまとめ」からの引用部分です。
一応、一番最初の枝野大臣案が出たときの解説はこちら。間違っている箇所もあるけど、おおよその解説は合っていると思う。

今回は、第3、4の部分。

第3 開示請求から実施までの手続に関する改正
 迅速かつ安価な開示手続が実現できるようにするため、手続面での改正を行う。また、不開示や部分開示となった場合にも、その理由がより明確になるような改正等を行う。具体的には以下のとおり。

1 不開示決定の通知内容(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)
 行政機関の長・独立行政法人等は、不開示決定をするときは、当該決定の根拠となる条項及び当該条項に該当すると判断した具体的理由を書面により示さなければならない。


これは、これまで不開示決定の理由の説明が不足していて意味がわからないということから入れられたものである。

私もよく不開示決定を受けるのでこの点についてはよくわかる。
例えば、宮内庁では、個人情報で不開示の場合、「特定個人を識別することができる情報が記録されている部分があり、情報公開法第5条第1号に該当するので、当該部分を不開示にした」という文面が付いてくる。
これは、「1号が適用されたよ」ということを説明しているだけで、「なぜ1号が適用されたのか」という説明には全くなっていないことがわかる。

ただ、これは具体的にどのようなところまで書くのかは「運用」次第ということになろう。
できれば国会審議などで、「どのような情報まで書くつもりなのか」は詰めておいた方が良いと思う。


2 内閣総理大臣による措置要求(行政機関情報公開法関係《新設》)
(1)行政機関の長は、開示決定等に対する不服申立てがあった場合において、情報公開・個人情報保護審査会に諮問した事案について、情報公開・個人情報保護審査会の答申後、開示請求に係る行政文書の全部又は一部を開示しない旨の裁決又は決定をしようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣に協議して、その同意を得なければならない。
(2)内閣総理大臣は、特に必要があると認めるときは、当該行政機関の長に対し、行政機関情報公開法第7条に定める裁量的開示その他の必要な措置をとるように求めることができる。


これは、チームの議論でも意見が割れたところ。
主旨としては、現在の情報公開法第7条の「公益裁量開示」を実効性のあるものにするということ。いわゆる「政治主導」の一つの表れということになるかと思う。
現在は、「行政機関の長」に情報公開法上は「不開示」になる情報を公益性の観点から「開示」にする決定権があるので、当然、自分たちが「不開示」にしたものを大臣がひっくり返すというような事態はあまり起きなかった。
珍しいケースとしては、先日外務省で公開されたいわゆる「密約」関係の文書の開示が、大臣による「公益裁量開示」にあたるだろう。

この決定権を「内閣総理大臣」に置くことによって、高位の政治的な判断から「それは開示にしてOK」と決定できるということになる。これが(2)の部分。
これは情報公開請求の有無に拘わらず、開示命令を出せるという話。

(1)は、実際に情報公開請求をして「不開示」と決定が出た場合に、「公益裁量開示」の適用をどのような手続きでするのかという話。
最終案としては、「全面不開示」「部分開示」の決定があり、情報公開・個人情報保護審査会に「不服申立」が行われ、審査会の「答申」が出た後に、最終的に公開しないことを行政機関側が決めた場合、その決定に「内閣総理大臣の同意」が必要となった。
つまり、審査会で戦ってもまだ「不開示」だった場合、内閣総理大臣にある意味「泣きつく」ことが可能だということになるのだろう。

ただ、このあたりも、三木委員が述べているように、どうも手続き的にわかりにくいところがある。
例えば、審査会の答申後に、どのような手続きで内閣総理大臣に「泣きつく」ことが可能であるのかが全く見えない。
各行政機関がただ単に内閣総理大臣に「同意」を求めるだけであったら、基本的には審査会の答申に逆らっていない限り、自動的に「同意」という話になるだろう。
つまり、審査会の答申に行政機関が逆らった場合(これはほとんど起きない)ぐらいにしか、適用の可能性がないように思う。

具体的な部分は「施行令で」という話になりかねない部分なので、この点は国会の議論できちんと詰めてほしいと思う。


3 開示決定等の期限(行政機関情報公開法第10条第1項、独立行政法人等情報公開法第10条第1項関係)
 開示決定等は、開示請求があった日から、行政機関の休日(行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)第1条第1項各号に定める日をいう。以下同じ。)を除き14日以内にしなければならない。


今まで開示までの期日が30日だったのを、休日を除いた14日以内にするもの。
速度が上がるのは歓迎。
そのための予算・人員措置を取らないと、行政機関側が大変になるので、そのあたりは政治の側でフォローを入れてほしいところ。

ただ、第10条第2号の「延長」の部分は+30日以内のままに据え置かれた。この点は、特例延長(次項で記載)も含めて、大臣案から後退した数少ない部分。
各行政機関がこぞって反対した部分であり、実際に大量請求があった場合にはやむを得ないという流れにチームの中でもなっていたのでやむを得ない。
それでも、14日+30日なので、前の30+30よりは短くなっている。


4 みなし規定(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)及び開示決定等の期限の特例(行政機関情報公開法第11条、独立行政法人等情報公開法第11条関係)
(1)開示請求者は、行政機関の長・独立行政法人等が法定の期間内に開示決定等をしないときは、行政機関の長・独立行政法人等が当該行政文書・法人文書について不開示決定をしたものとみなすことができる。
(2)開示決定等の期限の特例が適用された場合において、行政機関の長・独立行政法人等が、開示請求に係る行政文書・法人文書のうち相当の部分につき開示決定等をした日から一定の期限を経過したときも、(1)と同様とする。


これは、行政機関側が「この日までに出しますよ」と通知した期限を破った場合、「全て不開示にされた」とみなして訴訟などの対応が取れるということである。
また、(2)の部分は、情報公開法第11条第2項の規程を使った場合(「相当の部分」を60日以内に開示すれば、それ以外の部分は60日を超える期日を設定できるという規程)、「相当の部分」を決定した日から一定の期限が経過した後に、同様の「全て不開示」とみなすことができるという規程。

この規程は、私がこのブログを作るきっかけになった宮内庁との裁判をやったときに問題になったところである。
私の事例は、特例期限を宮内庁が破ってから3年以上経過した文書がいつまでも開示されないので、行政事件訴訟法の「不作為」(仕事をさぼっているんじゃないか?)の規程を使って裁判を起こした。
ただ、このような訴訟の方法だと、判決が出る前に相手が頑張って開示してしまえば、裁判自体の意味が消滅して続けられなくなる。
また、この場合、無理矢理相手が「不開示部分」を多くした状態で開示されてきた場合でも、裁判は終わってしまう。
つまり、裁判を起こしても、結局相手を「急がせる」だけの効果しかない。

これが、「みなし不開示規程」を入れると、「不作為」で裁判をするのではなく、「不開示」に対する「開示要求」として裁判を起こせることになる。
そうすると、その後、文書開示が進んだとしても、裁判を起こした当時に行政機関が「不開示」を決定したのだと「みなす」ことができるので、そのまま「不開示」の可否について裁判を続けることが可能となるのだ。
もしこの規程があったならば、私の裁判もかなり様相が変わったことだろうと思う。

ただ、この規程はあくまでも「みなしても良いよ」という規程なので、行政機関側が期日に間に合わなかったからといっても「違法」になるわけではない。
理由に納得して「待ちましょう」となればそのまま待っても良い。
ただ、裁判や審査会で「戦いたい人はどうぞ」という話である。

この項目についても、各行政機関から相当の反発が来ていた。
しかし、延長期限の部分だけは後退したが、本質的な部分では大臣案は後退しなかった。


5 手数料(行政機関情報公開法第16条、独立行政法人等情報公開法第17条関係)
(1)開示請求に係る手数料を原則として廃止するとともに、開示の実施に係る手数料を引き下げる。
(2)(1)の開示請求手数料及び開示実施手数料の廃止・引下げを実施することに伴い、適正な開示請求及び開示情報の適正利用の観点を明記する。


手数料はこれまで請求に1件300円(ウェブでの請求だと200円)がかかっていた。
また、開示に関する手数料も、閲覧の場合100枚ごとに100円、複写は1枚10円かかっていた。
この請求を無料にし、開示に関する手数料も値下げをするというのが(1)の部分。

また(2)の「適正な」という部分は、細かい説明を見ると次のようになる。

・商業的開示請求に対しては探索・審査等にかかる手数料を徴収。
・開示手数料の減免規程は、これまで経済的困難の方のみの適用であったが、これを学術的利用、報道機関の代表による利用、非商業目的の調査研究などへ拡大する。
・開示決定をしたのに、それを全く利用しなかった人(開示方法を申し出る書類を返送しなかった人)には、開示に係る手数料を取る。(不真面目な請求に対しては経費を取る。)
・大量請求として特例延長を適用する場合、一定の実施手数料を予納する。


結構、重要なことが書かれている。

まず気になるのは、「目的」をどのように判断するかということだ。
これまで、情報公開請求には「理由」は問われなかった。
これは、目的がはっきりした場合、それに合わせて開示情報を操作する可能性があったからだ(例えば不正を追及しようとする請求であった場合など)。
だが、商業利用にはお金を請求し、学術利用などには減免するということになると、実質的にはある程度「目的」を聞かざるをえなくなるように思う。
特に、「商業利用」の場合、馬鹿正直に企業名を名乗ってこればわかるが、社員個人が請求してきた場合などに、それをどのように見破るのか。
このあたりをどうするかを明確にしておかないと、実際に各行政機関の窓口で混乱を生じる可能性が高い。

請求の際に「目的を聞く」ことは上記の通り、絶対にやるべきではないと思うので、その点はどのようにするのかを国会の議論できちんと詰めてほしい。

また、開示手数料の無料化については、各行政機関から反対の声が大きかった。
つまり、この手数料が「不真面目な大量請求」を食い止める効果があったというのである。
ただ、本当に300円という金額が食い止める効果があったのかは、正直疑問であり、この点についてはあまり説得力がないなあという感じがした。

少なくとも、情報公開にかかる予算は「民主主義にとって不可欠なコスト」だと思う。
これは、濫用請求のようなものも含めての「コスト」だと思うのだ(リスクも含めたという意味)。
もちろん、いきなり1万件の請求をしてきたというような気合いの入った嫌がらせをするような人が出てくる可能性はあるが、そういう例外的な人には「例外的な対応」をすればよいのであって、その可能性をもとに、一般の誠意ある請求者を妨げるべきではないと思う。

今回の規程はどのように運用するのかが不安な点はある。
それに、最終会合で三木委員が釘を刺していたが、この手数料の部分は「施行令」で決まるところになる。そのため、国会に「法律改正案」としては出てこない。
なので、国会できちんと政府から説明をさせることが必要不可欠。いったいいくらになるのかはきちんと詰めてほしい。これは野党側にも期待したいところ。

私としては、「学術目的利用」が減免されるのが結構大きい。
昔、まだコピーが1枚20円だった時は、宮内庁に通い詰めて手で写していたりしたので・・・。
院生はお金がないのだ・・・


第4 審査会への諮問等に関する改正(行政機関情報公開法第18条、独立行政法人等情報公開法第18条関係)
 開示決定等について不服申立てがあった日から、情報公開・個人情報保護審査会に対する諮問がなされるまでの一定の期限を設け、当該期限を超過した事案については、諮問までに要した期間、その理由等について公表する等の措置を定める。
 なお、政府は、情報公開・個人情報保護審査会を裁決機関とすることの可否につき、行政不服審査制度・行政事件訴訟制度を含む行政救済システムの全体像の見直しと同時に、引き続き検討する。


前半部分は、不服申立手続にまつわる話。先に制度の説明を。
現在の不開示に対する不服申立制度は、まず該当する行政機関に対して「不服申立」を行うことから始まる。
そして、それを受け取った行政機関は、その申立への反論を作成した上で、審査会に「諮問」することになっている。

だが、この「諮問」までの期日に関する規程が情報公開法には存在しない。そのため、せっかく不服申立を行ったのに、「諮問」されるまでに長期間かかる事例がかなりの数存在していた。
私も最長で11ヶ月という事例を経験したことがある。
これでは、例えば、差し迫った情報を請求している人にとって、これだけ諮問を長引かせられたら、そもそも申立を行った意味すら無くなる可能性がある。

そのため、この「諮問」までの日数に「期限」を付けることが組み込まれることになった。
その「期限」は、「情報公開に関する公務員の氏名・不服申立て事案の事務処理に関する取扱方針」(平成17年8月3日)の規程に沿ったものになるだろう。
これによれば、通常は30日、長くても90日程度と記載されているので、おそらくこのあたりの期限が書かれることになると思われる。

ただ、この「取扱方針」には、審査会の答申後に各行政機関側が最終決定をするまでの期日(原則30、最長60日)も書いてあるのだが、こちらは今回の「とりまとめ」に組み込まれなかったのは残念。
第3の2(1)あたりと混ぜて国会で議論してくれるとうれしいのだが。

後半部分は、審査会を「裁決機関」にするかどうかの話。
今のところはあくまでも審査会は「答申」を出すだけで、最終的にその答申に従うかは各行政機関に任されている。
それを、審査会の「裁決」を最終決定のものとするということである。
これはどうやら、他の法律との兼ね合いもあり(裁判所での行政訴訟との関係など)、持ち越しになった。

以下、下編に続く。
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「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(上) 第1、2 [2010年公文書管理問題]

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「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(中) 第3、4
「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(下) 第5~9

8月24日に行政透明化検討チームの会合の最終回がありました。
そこで出された大臣案「行政透明化検討チームとりまとめ(案)」についての解説をしてみたいと思います。

ただし、この「とりまとめ」は、そもそも枝野幸男前行政刷新相が第1回会合で提示した案とそれほど大きな違いがあるわけではありません。
また、委員でまとめた「論点整理」もありますので、両方をきちんと読めば、おおよその所は理解可能だと思います。
ですので、正直、別に解説しなくてもいいんじゃないかと思いました。

それでも一応書いておこうと思ったのは、私自身の備忘録のためと、今後の国会で議論して詰めなければいけない部分があると思うからです。
秋の国会でおそらく情報公開法改正案が出てくるでしょうし、その時の参考にするためにとりあえず書き残しておこうと思います。

なお、赤字の部分が、「とりまとめ」からの引用部分です。
あと、一応、一番最初の枝野大臣案が出たときの解説はこちら。間違っている箇所もあるけど、おおよその解説は合っていると思う。

今回は、第1、2の部分。

第1 目的の改正(行政機関情報公開法第1条、独立行政法人等情報公開法第1条)
 法律の目的において、「説明責務」の視点を維持しつつ、「国民の知る権利」の保障の観点を明示する。
 加えて、行政機関情報公開法及び独立行政法人等情報公開法が、行政の透明性を向上させ、行政に対する国民の監視と参加に資するものである趣旨を盛り込む。


前半部分は、公文書管理法の第1条を意識したものだと思われる。
そこには「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」と記載されている。

これは、そもそも原案では入っていなかったのだが、当時の野党である民主党などが「知る権利」を入れるべきだと主張した結果入った部分である。
おそらく「知る権利」を規定した始めての法律だと思われる。
この公文書管理法に合わせて、情報公開法にも「知る権利」が組み込まれることになる。

後半部分で特に重要なのは国民の「参加」という部分であろう。
現在の情報公開法の目的(第1条)には「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資すること」と記載されている。
これは、行政側が国民への説明責任を果たすという主旨で書かれており、国民の側はあくまでもその説明に「理解と批判」を加えるにすぎない。

そこに「参加」という国民の側を主体にした文章が組み込まれることになる。
これは、情報公開とはそもそも何のためにあるのかという理念と関わる。

情報公開はただ単に行政を「監視」をするためのものではない。
公務員側が持っている情報を積極的に公開することで、国民の側がそれに基づいて意見を積極的に打ち出していくことこそが情報公開の本来の意味であり、それこそが「民主主義」の原理である。
アメリカで情報公開が盛んなのは、その情報を入手し、政策提案を行うシンクタンクやNPOが多数存在するからである。
また、蓮舫行政刷新相が最後の会議の冒頭で述べていたように、市民の「参加型行政」を作るためには、情報公開は必須の条件なのである。


第2 開示・不開示の範囲等に関する改正
 開示請求が行われた際に、不開示又は部分開示になる場合について、現行の情報公開制度を以下のとおり改正し、より充実した開示内容になるようにする。

1 個人に関する情報(行政機関情報公開法第5条第1号、独立行政法人等情報公開法第5条第1号関係)
 公務員等の職務の遂行に係る情報について、当該公務員等の職及び職務遂行の内容に加えて、当該公務員等の氏名を、また、行政運営上の懇談会等における発言者等の氏名等についても、各会議の性質等に応じ、公務員等の氏名に準じて、それぞれ原則として開示する。
 なお、政府は、同規定をいわゆるプライバシー型に変更することの可否について、引き続き検討することとする。


前半部分は、2つから成り立っている。
1つめは、公務員の氏名原則公開
現在の情報公開法第5条第1号ハでは、「当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」が公開の対象であった。
つまり「職名」と「内容」だけである。
これを「氏名」まで原則公開するということである。

おそらく警察などは、第5条第4号を使って警部補以下を非公開をし続けるだろうが、公開することで公務員本人が何らかの個人攻撃を受けるといった部署でない限りは、ヒラの公務員でも名前を公開されることになるだろう。
これによって、これまで公務員の地位などによって黒塗りしたりしなかったりするような面倒なことがなくなるので、実質的には情報公開の迅速化に役立つと思う。

2つめは、審議会等に有識者として出席する非公務員(学者など)は、事実上の公務員と見なして原則開示するということである。
これは、今現在でも、公開された審議会では非公務員であっても委員の氏名は公開されているが、非公開の審議会などで氏名を隠したりすることがおこっているということに対する歯止めであると思われる。

ただ、「各会議の性質等に応じ」という言葉が入ったので、この部分がどのように法文に書かれるのかは注意した方がよいと思う。
国会でもこの点については議論をしてもらいたい。

後半部分は、そもそも個人情報を「個人識別型」にするか「プライバシー型」にするかという話である。
これは制度の根本に関わる問題である。

現在の情報公開法は「個人識別型」が採用されている。
つまり、個人情報はそもそも「不開示」である。だが、第5条第1号で「例外的に○○は公開しますよ」として情報が公開されている。
そのため、「例外」を狭くすることで、過剰な情報隠しに使われることが多かった。

これに対し「プライバシー型」というのは、「原則公開」で、「通常他人に知られたくない情報のみを隠す」という方法である。
つまり、個人情報は「隠すことに理由が必要」になるということになる。

こういう説明をすると「自分の個人情報が漏れるのではないか」と危惧する人もいるだろうが、基本的に「他人に知られたくない情報」にそういった情報は網羅される。
ここでいう「プライバシー型」は、公務員の職務における個人の情報が、それを他人に知られることで問題となるものに不開示を限るという意味である。

もちろん、プライバシー型になった方が、基本的には情報公開が進むことは間違いない。
これについては、委員の中でも意見が割れて、結局は「継続審議」扱いとなった。
できれば、現在野党のみなさんが、このあたりを国会で持ち出してくれると良いなあと個人的には思う。

なお、この「プライバシー型」の採用を強く主張されていた三木由希子委員が、御自身のブログでそのあたりのことは詳細に書かれているので、それも参照してください。
http://johokokai.exblog.jp/14864090/


2 法人等に関する情報(行政機関情報公開法第5条第2号、独立行政法人等情報公開法第5条第2号関係)
法人等が行政機関・独立行政法人等の要請を受けて公にしないとの条件で任意に提供した情報を不開示情報とする旨の規定を削除する。


これまで情報公開法第5条第2号ロでは、行政機関が法人から「公開しないから情報下さい」と約束して貰ってきた情報は公開してはならないという規程があった。
今回はこの部分を削除するということである。
ただ、もちろん、全部が公開されるということではなく、本当に情報を隠さないと提供者に被害をもたらす可能性のある文書については、第2号イや第6号といった別の条文で非公開にすることになる。

この改正は、「情報は時間が経つと劣化する」という概念を組み込んだものと言える。

つまり、これまでは「公開しませんよ」と約束してもらった情報は、例えどのくらい経過しても「公開しませんよ」と約束した以上、公開できなかった。
でも、本来、公開するか否かは「その情報の内容」によって決まるべきものであるはず。
今回の改正は、もらった当時は「非公開であるべき」ものであった情報が、その後「別にもう公開しても構わないんじゃないか」ということになったら公開しましょうねということである。

行政の政策決定には、さまざまな民間からの情報提供があって作成されている。
この根拠となるデータが非公開のままだと、政策決定過程の検証が行えないのである。
つまり、この改正の目的は、政策決定過程の公開というところにあるのだ。


3 国の安全、公共の安全等に関する情報(行政機関情報公開法第5条第3号・第4号関係)
 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ等がある情報の不開示要件について、適切な司法審査を可能とするため、例えば、それらの「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」とあるのを、それらの「おそれがある情報」と改める、あるいは「相当の理由」とあるのを、「十分な理由」に厳格化する、などの改正を行う。


この部分は、大臣案が後退した部分。
当初は、現在の情報公開法第5条第3号・第4号(公安・外交情報)の不開示規程の中から「行政機関の長が認めることにつき」を削除するという部分しかなかった。
しかし、最後の最後で、「「相当の理由」とあるのを、「十分な理由」に厳格化する」という別の選択肢が用意されることになった。
これは、委員の「論点整理」と明確に「ズレ」が生じた部分である。

現在の情報公開法は、「行政機関の長」、つまり警察庁長官や外務大臣が不開示にすると「決定した」ことは、ほぼ絶対であった。
そのため、この部分を削ろうとする改正には、警察庁、外務省、防衛省の強い抵抗があった。
7月9日の検討チームのワーキンググループ会合の議事録を見てもらえばわかるが、彼らは「公安や外交は専門的な見地が必要であり、自分たちの判断が尊重されるべきだ」と主張した。
これに対して、各委員が「裁判所だってあなたたちの説明の筋が通っていれば、あなたたちの判断を尊重しますよ」といった反論を繰り返していた。

しかし、結局、押し返されて上記の選択肢が加わってしまった。
実際の改正案でも、おそらく後者の方が文章として出てくる可能性が高いだろう。

ただ、この部分はおそらく国会で大きな議論となるはず。
もう一度押し返して、「行政機関の長」の部分を削除する方向に持って行けるかは重要なカギになるだろう。
(ただ、さらに押し返されて、結局何も変えられなかったという可能性も内包しているので、いずれにしろ注意が必要。)


4 審議・検討等に関する情報(行政機関情報公開法第5条第5号、独立行政法人等情報公開法第5条第3号関係)
 国等における審議・検討等に関する情報で、公にすることにより、「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある情報」を不開示情報とする旨の文言を削除する。


この条文についてはあまり説明することもない。
「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」って、それを判断するのが公務員というのはおかしいでしょうということ。本当に不開示にするなら別の項目で処理できるということもあり、さっくり削除する方向に。
チームの中でもほとんど議論せずに通過した部分。

5 部分開示(行政機関情報公開法第6条第1項、独立行政法人等情報公開法第6条第1項関係)
 開示請求に係る文書に不開示情報が記録されているときは、不開示情報が記録されている部分とそれ以外の情報が記録されている部分とを区分することが困難である場合を除き、当該不開示情報が記録されている部分を除いた部分につき開示しなければならないものとする。


これは「情報単位論」(独立一体説)というのを否定するために書かれた部分。
法律学のマニアックな話になるのだが、情報公開訴訟の判例で、「開示されるべき情報」が、他の情報と一括して考えると不開示情報が含まれていると解釈することが可能となるので、その「開示されるべき情報」すらも不開示にできるという判決が出てしまっているらしい。
どうやらこの概念は、情報公開法を作るときにすら否定されていたにも拘わらず、裁判官の不勉強だったのか判決で認められてしまったらしい。

今回の改正で、この「情報単位論」の判決が二度と出ないように、誤解を生まない条文に変えようということがこの部分の主旨である。

以下、中編に続く。
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行政透明化検討チーム会合最終回に行く [2010年公文書管理問題]

昨日行われた第6回行政透明化検討チームの会合(最終回)に傍聴人として参加してきた。

目的はただ一つ「蓮舫大臣の本気度を見る」ということ。

今回は最終回だったので、検討チームからの「論点整理」と、大臣側から提示された「最終報告」(とりまとめ)の提示があった。
議論自体はもう事前に調整済みということなのか、ほとんどなし。
ただ、松村氏、三木氏、中島氏から、検討チームの「論点整理」がどれだけ改正法案に反映されるのか、施行令の改正案なども踏まえて国会で議論してほしいという、いわゆるこの検討チームでの議論から外れることはするなよという「釘を刺す」質問があった。

これらに対し、蓮舫大臣から、まとめたものは責任をもって行うこと、運用面の問題(施行令も含め)は国会でおそらく闊達な議論が行われるだろう(ねじれ国会なので)という回答があった。

蓮舫大臣は冒頭の発言で、「オープンガバメント」「市民参加型行政」のために情報公開法改正が重要なのだということを主張されていた。
話している雰囲気などを見ると、少なくともやる気もあるし、問題を理解しているという印象を受けた。
なので、とりあえず彼女が大臣を務めている間は、情報公開法改正についてはそこまで心配しなくても良いのかなという印象は持った。
心配なのは9月の民主党代表選の結果次第で大臣が替わる可能性があるということですが・・・

今回の検討チームの一連の流れを見ていると、政権交代による効果が徐々に現れてきていることを感じる。
初めに枝野前大臣が原案を提示して、それに基づいて議論が進められたこともあり、警察を初めとした様々な抵抗があったにもかかわらず、その案をあまり後退させずに最後まで持って来れた。
ただ、その案から外れる議論はあまりできないという制限もありましたが。

この会合の結果がどのように法案に反映されるかはまだ若干不安があるので、きちんと国会に法案が出たときには追っていきたいと思う。
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宮内庁書陵部における「皇室文書」への移管問題 [2010年公文書管理問題]

昨日と今日と宮内庁書陵部で歴史公文書を閲覧してきた。
そこで、ある事実が発覚した。

私が以前、書陵部で見た「歴史公文書」が、「皇室文書」(皇室の私文書)扱いになって目録から姿を消していた。

書陵部の方からは「事実関係をもっと調べるまではできれば内密に」みたいなことを言われたけど、これは公文書管理法の根幹を揺るがす話なので、現在わかっているところまでをここに書き残しておきたい。
新たな情報が入ればその都度ブログを更新していきたい。

そもそも話は約1年前に遡る。
昨年8月末、2006年に請求していた公文書が公開された。
侍従職の「業務日誌」昭和33年である。

この文書を請求していたことは、このブログを始めてすぐに「請求を行った」と書いた記録がある。
それが3年経ってやっと公開された(一部)。

この文書が公開までに時間がかかったのには理由がある。それは「呉竹寮」の日誌だったからだ。
呉竹寮とは内親王(皇女)を育てていた場所である。子供時代の内親王の記録のため、内容がほぼ個人情報で不開示という状況があった。

実際に見れた部分はほとんど有意性のある情報がなかった。
そのままちょっとメモを取っただけで興味を失っていた。

ところが、先週ある研究会で、私のブログを見たと思われる方から、「瀬畑が見た「業務日誌」が目録に載っていないんだが・・・」という情報をいただいた。
そして書陵部の資料検索を使ってみたところ、確かに出てこない。

そこで、昨日書陵部に行ったときに、担当者の方に「どういうことなのか」聞いてみた。
その場は回答が保留されたまま、翌日も担当者の方は現れなかった。

そして夕方になって担当者の方から電話があった。

説明によれば、「その文書は、皇室の個人に関する文書であり、公文書に「紛れて」いたことがわかったので、「皇室文書」に移管して歴史公文書の目録から削除した。」という。

この説明、かなり色々なところが引っかかる。

1.「公務員」である担当官が内親王の活動を記録していたもの(しかも「業務日誌」として)が、なぜ「公文書でない」のか。
2.「公文書」に「紛れていた」ということは、その記録が作られた1958年から52年もの間「公文書」扱いされていたことは「間違いだった」とでも言うのか。
3.「皇室文書」とは皇室が持っている個人的な文書であるが、それに「公文書ではない」と認定された公務員が作った文書が含まれているのか。
4.歴史公文書の目録から削除した行為自体は、どこにも公表されていない。
5.私が資料を閲覧した昨年8月末から1年以内に、この「移管」は行われている。


1、2については言うまでもないが、これはどこからどう見ても「公文書」であることは疑いない。
複数の担当官が代わる代わる書いているものなので、私的なメモという理由も適用できない。
ちなみにこの理由で「私文書」(皇室文書)が認められるのであれば、私が情報公開請求で見てきた「東宮職日誌」「侍従職日誌」も同様に「私文書」扱いして「公文書から抹消」できることになる。

3については、今までずっと疑われていたことがついに証明されたかという感じだ。
これまで「皇室文書」の存在は知られていた。ただこれは、あくまでも天皇などが自分で作成したようないわゆる「個人的」な記録であり、公文書は含まれていないということが建前であった。もちろん目録すら公開されていない。
だが、以前から、戦前の内大臣府の公文書などが、「天皇の私的な文書」として隠されているのではないかという「噂」はずっと存在していた。

今回、「公文書」であったものが、「皇室文書」に組み込まれていたという事実が発覚したことで、宮内庁が「皇室文書」を隠れ蓑にして歴史公文書を隠している可能性が高くなった。

4については、今回のこの目録からの「削除」についてはどこにも公表されていない。
情報公開では、廃棄した場合、かならず「廃棄した」という情報が記載される。目録からデータ自体が消されることはない。
国立公文書館などの歴史公文書を保管する機関での目録に「廃棄」欄がないのは、そもそも「重要だから移管された」のだから、「廃棄」されることは想定されていないためである。

今回の行為は「廃棄」されたわけではない。だが、公文書の目録から削除するということは、公文書としては「廃棄」したと同様である。
たまたまこの「業務日誌」は見つかったが、他に同じことをしていないかどうかは確証が持てない。それに目録からデータ自体が消えているので、何が消えたかはわからない。

5は最も問題だと思っているところ。
昨年の9月以降ということは、すでに公文書管理法は公布された後である。

そもそも公文書管理法は、公文書を適切に管理し、恣意的な廃棄などを行わせないために作られた法律である。
そして、今回の書陵部の行為は、「恣意的」に「公文書」を皇室の「私文書」に切り替えたということだ。
これは、公文書管理法の精神に完全に反した行動であることは間違いない。

よく誤解されるのできちんと説明するが、私は「皇族の個人情報を出せ」みたいな話をしているのではない。
個人情報で出せないものがあるのであれば、情報公開法でも公文書管理法でも、きちんと「不開示」にできる規程がある。それを使えばよいのだ。

そして、「悪質」だなと思うところは、こういった「公文書」を皇室の「私文書」に切り替えることがどのような意味を持つのかを理解していなさそうなところだ。
今回の行為を見ていると、「この文書、皇族の私的なこと書いてあるし、「皇室文書」でいいんじゃない?」ぐらいのノリで皇室文書に切り替えたように見えるのだ。
私がかなり怒って話をしているのに、最初の方は「なんでそこまで怒る?」みたいな反応だった。言葉を尽くして話しているうちに段々と私の怒っている理由は理解してくれたみたいだが。

つまり、別に「隠そう」とかしているのではなく、ただ単に「こっちに入れておいた方が管理上いいんじゃないか?」といった内部の論理だけで、「公文書」が「公文書でない」ものにされているように見えるのだ。

だが、この差は天と地ほどの差がある。
「皇室文書」として目録から消えた文書は、一般の人からは一切アクセス不可能になる。永久にだ。
目録に残っていれば、100年後とかになれば、もう内容的には見せても大丈夫になって見れるかもしれない。
また、その資料に価値を見いだす人が現れるかもしれない。

さらに、このような「移管」を行っている以上、他の文書でも同じようなことを行う「習慣」が書陵部にはあるという疑いをもたざるをえない。

「皇室文書」はあくまでも皇族本人の個人的な資料に限るべきである。
公文書だったものを入れるのは、宮内庁が国民に対する説明責任を放棄していると言わざるを得ない。

ただ、かなりこの問題は根が深いような気がしている。
他の省庁でも、自分の省庁の図書館に、移管されたくない文書を「図書」として流しているという「噂」もあるし。

こういった問題が起きるのは、公文書が「国民のもの」であるという意識がないためである。「自省庁のもの」だと思っているためではないか。
公文書管理法の精神を根付かせる道の険しさをあらためて感じさせる。

さて、上記したことは、私が現時点で「考えた」ことを書いているだけである。
書陵部には書陵部の言い分があるだろう。それについては、後日書陵部から説明があることになっている。
説明があった場合には、きちんとブログに記載したいと思う。


追記 9/19

他の人から情報提供があって、この記事を書いたときにまだあった「業務日誌」の昭和20年と21年が、その後目録から抹消されたことがわかった。
彼らはどうやらまだ事態の深刻さがわかっていないらしい。隠蔽を図っているとしか思えない行動は、事態を悪化させることにしかつながらないと思う。

関係者はこのブログを見ていないのだろうか?まあ確かにこのブログはインターネット上の場末の記事に過ぎないが。
もし読んでいた場合、私がこの事態を公文書管理法施行後に必ず問題にするということは明白だということがわかっていないのだろうか。
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行政透明化検討チームの議事録を読む―メンバー構成 [2010年公文書管理問題]

行政刷新相の元にできた「行政透明化検討チーム」が発足して2ヶ月が過ぎた。
このチームは、情報公開法の改正を目的として作られたものである。
当時行政刷新相であった枝野幸男氏の肝煎りでつくられたものであるが、鳩山首相の辞任によって蓮舫新大臣に引き継がれている。
当初は6月末までに終わらせる予定であったが、選挙等の関係もあり7月末まで延ばされている。

そこで、今回はこの議事録を読みながら、現在の情報公開法の何が問題となっており、どのような制度改変が行われようとしているのかについて色々と書いてみたい。

ただ、この議事録を読んで思うのは、法を「作る」のではなく「改正する」という話なので、非常に細かい法文解釈の議論が多く、簡単には説明しにくいということだ。
また、網羅的に説明するのは私の技量では不可能である。それに、基本的には前向きな議論なので、あまり批判的に取り上げるようなことも少ないような気もする。
さらに、歴史研究者である私が無理に専門外のことを解説しようとするのはどうかと思わなくもない。

たぶん、今後はチームのまとめの資料を提示した上で、自分なりに思ったことを述べるという感じになるのではないかと思う。
それか、答申が出てから、それについて思うところを述べるということになるかもしれない。

なので、一応「連載」と銘打っているが、そういうことにならないかもしれません。見切り発車です。

まず第1回目はこのチームのメンバー構成について。

第1回 メンバー構成

この件については、すでに一度自分のブログで書いている。

「「行政透明化検討チーム」の設置」
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2010-04-14

その後、議事録を読んでいて考えたことがあったので、新たに書き直してみる。

まずはメンバー紹介。

 座長 枝野幸男→蓮舫(行政刷新担当大臣)
 座長代理 三宅弘(弁護士)
 事務局長 泉健太(内閣府大臣政務官)
 構成員 逢坂誠二(内閣総理大臣補佐官)
      階猛(総務大臣政務官)
      渋谷秀樹(立教大学教授)
      中島昭夫(桜美林大学講師)
      橋本博之(慶應義塾大学教授)
      藤原静雄(筑波大学大学院教授)
      松村雅生(日本大学教授)
      三木由希子(情報公開クリアリングハウス理事)

さて、まず政府の方から。
枝野前大臣、泉政務官、逢坂補佐官の3名は、昨年成立した公文書管理法の制定に関わった方。
情報公開にも基本的に前向きであり、公文書管理問題にも関心が深い。
蓮舫新大臣は、事業仕分けを見ている限り、情報公開には前向きだということはわかるが、果たしてその前提として公文書管理が重要だということを理解しているかが心配。
階政務官は、情報公開法の管轄である総務省の代表者。元は銀行員のようだが、議事録を見ている感じでは情報公開法をきちんと勉強はされているように見える。

次に民間について。
簡単に分類すると

憲法学・・・渋谷氏
行政法・・・橋本氏、藤原氏、松村氏
ユーザー・・・中島氏、三木氏
(三宅座長代理は、行政法とユーザーの間ぐらい)

ということになるかと思う。

座長代理の三宅氏は、日弁連で長年情報公開問題に取り組んできた弁護士。情報公開訴訟などにも多く関わってこられた方で、この問題のスペシャリストである。

渋谷氏は、公文書管理法の第1条に事実上入った「知る権利」を、情報公開法に組み込むことについての議論を期待されて入ったようである。

行政法の3名は、全員、情報公開における「不服申し立て」(開示された文書に不開示部分(ないし文書が存在しない)があったときに異議申し立てを行うこと)を審査する「情報公開・個人情報保護審査会」の関係者
藤原氏橋本氏は非常勤の審査会委員。松村氏は審査会の初代事務局長。
つまり、実際に情報公開法の運用を担当してきた人たちである。その意味では、行政法学者の中でも「現場」を体験している人を選んできたということがわかる。

中島氏は朝日新聞の記者として、情報公開制度に関係する取材活動を長年行ってきた方。情報公開法施行の際には、朝日新聞による各省庁への大量請求を取りまとめて対応した中心メンバーであった。その意味ではユーザーというよりは、ユーザーを取材し続けてきた方と言えるかもしれない。
三木氏はこのブログに何度も出てきている情報公開運動の中心人物。情報公開訴訟の支援を多く手がけるだけでなく、自治体の情報公開審査会の委員なども務めており、ユーザーの立場だけでなく、情報公開法を運営する立場としても経験を積まれている非常に稀有な存在である。

さて、この人選を見てまず気づくことは、「情報公開の実態に基づいた議論を行って改革を進める」という意思が強く表れているということである。
つまり、現場を知らない学者を集めて、官僚の思い通りに話を進めるという感じではなく、現場を知り尽くした人たちを集めて、本格的に議論を行おうという意思を感じるのだ。

特に、前述したが、行政法学者が全員情報公開・個人情報保護審査会に関わっていた人であるとか、情報公開法を実際に利用してきた三木氏がメンバーに選ばれているというところからも、ユーザーの意見をできるかぎり反映させようとする意思を感じる。
また、座長代理の三宅氏自体が、情報公開を推進する立場の方であるので、少なくともこのチームが、情報公開に逆行するような答申を出すとは思えない。

その意味では非常に期待のできる人選であったと言えると思う。

次回は、議論の内容についての説明をと言いたいところですが、第4回の議事録が出てから書こうと思います。そこで一区切りついているようなので。
とりあえず今回はここまで。

追記(8/27)

連載は諦めました。
いまさらあまり意味がないと思いましたので。

その代わり、検討チームの最終回で提示された大臣案「とりまとめ」の解説を書きましたので、そちらを参照してください。

「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(上) 第1、2
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2010-08-27
→(中)(下)も上記のリンクから行けます。
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史料保存利用問題シンポジウム [2010年公文書管理問題]

史料保存利用問題シンポジウム「公文書管理法の施行と史料保存利用問題のこれから」(2010年6月26日 学習院大学)に行ってきました。
講演者は以下の通り。

山崎日出男 氏 (国立公文書館理事)
「公文書管理法で何がどのように変わるのか」
佐賀 朝  氏 (大阪歴史科学協議会)
「自治体立公文書館の現状 ― 大阪府・市公文書館の場合―」


山崎氏は公文書管理法が作られたときの官僚側(内閣府)の代表者だった。その後、その経験を買われて国立公文書館の理事(ナンバー2)になった方。
レジュメを見たときに、いまさら公文書管理法の基本的な解説をするのかとがっかりしたが、話を始めると管理法制定の際の裏話とか自分なりの公文書管理への考え方みたいなものをざっくばらんに語ってくれたので、私には楽しかった。

山崎氏の話でメモっておいたのは以下の点。
・昨年の管理法制定の際の初めに出した法案が「官僚による骨抜きだ」と批判されたが、自分としては決して有識者会議の最終報告の内容から後退させたつもりはなく、内閣法制局と相談の上、法律に書けるものを書いただけである。他のものは政令や規則でやるつもりだった。
・公文書管理法の趣旨を地方に徹底させる方法がなかなか難しい。昔なら内閣府から地方自治体に通達が出せたが、地方分権の関係でそれができなくなっている。またモデル条例のようなものも国が主導してやることは難しい。
・政令に関してはそれほど心配をしなくても。すでに管理法の精神は法律と国会審議で入っている。あとは実務的な問題だと思う。
民主党も公文書管理法に積極的だったので、予算請求で常勤30人、非常勤30人増員を要求したら、非常勤10人だけしか認められなかった。予算の増額請求の場合、財源を見つけてこいという話になっていて困っている。そもそも増やすことが前提になっているので。
・今後のスケジュールは、おそらく7月半ばに公文書管理委員会の1回目の会合が行われ、秋ぐらいには施行令ができ(パブコメ募集もある)、そこから各省の規則ができて内閣総理大臣の承認を得るという流れになるはず。年度替わりの来年4月施行には間に合わせるように行くだろう。公文書管理委員会が公開になるのかはまだわからない。蓮舫行政刷新相の意向次第かもしれない。

一番最初の話は、「官僚の世界」にいる以上、仕方がないのだろうなあと。
こういう話を聞くと、小沢一郎が「内閣法制局を廃止せよ」と言うのは、暴論だけども一理はあるのかもしれんとは思う。

予算の話は本当に残念。要求したという話は聞いていたが、そういうオチだったことは初見。
こうなると、枝野氏を初めとした民主党の公文書管理問題を理解していた議員達は何をしていたのだということになる。
この法律はあくまでも「型」でしかない。魂を入れるためには、それだけの人員も予算も必要なはず。こういったところにお金をかけなければいけないのに。
情報公開の徹底もそうだけど、そういったことをするには人と金は絶対に必要。口だけで情報公開と言っても、何も変わらんのだ。そういうことを民主党内でもわかっている人は少ないということか。
蓮舫行政刷新相はそのあたりきちんとわかっているのかが気になるところだ。

佐賀氏の報告は大阪府公文書館、大阪市公文書館の両方共が、事業仕分けなどの影響で予算・人員を削減されて苦況にあるという話だった。

簡単に要約すると
・大阪府公文書館は、公文書館の老朽化による移転が問題となっていたが迷走中である(つぶされた国際児童文学館跡地に行くという話もあり)。情報公開課に公文書館の担当を組み入れ、情報公開と文書管理を一体化して運用するという方針だが、歴史公文書の公開が後退するおそれがある。
・大阪市公文書館は、事業仕分けで自らの館の存在意義を主張できずに予算削減に追い込まれ、今年から勤務職員が全て非常勤のみで運営されている。公文書館自体の位置づけが、ただの保存施設としか見ていない。

詳しく書くといくらでも書けるのだが、それも繁雑なので、詳しくはこちらを参照。

大阪の公文書館問題を考える
http://wiki.livedoor.jp/archives_osk/d/%a5%c8%a5%c3%a5%d7%a5%da%a1%bc%a5%b8

佐賀氏の話をうかがっている限りだと、公文書管理法は地方公文書館への追い風になかなかなりきれていないということのようだ。
大阪でも、公文書管理法をタテにして各団体が交渉しているようだが、公文書管理の重要性は認識してくれても、公文書館の重要性を認識することとの間には大きな壁があるようである。

佐賀氏が最後におっしゃられていたが、やはり歴史団体以外の所に運動の輪を広げて行かなくてはならないと思う。
公文書館は決して歴史研究者・歴史好きのためだけにあるのではない。そこに生きる人々のために存在するのだということを、もっと多くの人にわかってもらえなければならない。

たまたまこのブログに来られた方で、大阪にお住まいの方がおられたら、是非ともこの問題には関心を持っていただきたいと思う。
また、情報公開運動などに関係している方がいたら、是非とも大阪歴史科学協議会大阪歴史学会などに連絡を取っていただけるとありがたいと思う。

終わった後、山崎氏にご挨拶にうかがったら「ブログ見てるよ」とニコニコしながらおっしゃっていた。昨年けっこう厳しいことを書いたなあと思っていたので、若干恐縮した。
飲み会で学習院の高埜利彦氏ともやっとお話しができたので私にとっては色々と有意義だった。

博論がもうすぐ終わるので、そろそろブログの方もペースを上げていく予定。

追記
地方公文書館問題については、以前書いた記事も参考になるかと思います。
「地方公文書館の現状と課題」
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2009-05-25
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蓮舫行政刷新相 [2010年公文書管理問題]

枝野幸男氏が幹事長にまわったため、蓮舫氏が行政刷新相に就任しました。
枝野氏の離任は残念。公文書管理問題に詳しい数少ない政治家の一人でしたので。
ただ、情報公開法改正を目指す検討チームができている中で、枝野氏に近い議員が就任したのはまだ救いなのかもしれません。

しかし、蓮舫氏は事業仕分けの方にのめり込んで、公文書管理の問題はおろそかにしそうな気がしていてやや不安です(枝野氏の前任の行政刷新相の仙谷氏がそんな感じだった)。
情報公開の重要性は事業仕分けの際にも発言をされていたことは記憶していますが、情報公開「制度」をどのように改良していくかといった制度面にどこまで興味があるかが気にかかります。

閣僚記者会見で何を話したかがまだわからないので何とも言えませんが、参院選が終わるまでは様子見というところでしょうか(ご本人が選挙を戦わなければなりませんし)。
ただ、発信力のある方ですし、情報公開自体には非常に前向きな方なので期待しています。

公文書管理法が施行されるまでもう1年を切っています。政令もまだできていないし、体制も整っているとは言えません。
正直、この問題については自民党に政権が戻ったら進まなくなるのは明白なので、なんとか民主党にはふんばってほしいところです。
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鳩山首相辞任 [2010年公文書管理問題]

鳩山首相が今日辞任した。
公文書問題などに関心のある私からすると、枝野幸男氏が行政刷新相に残留できるかの方が重要。
情報公開法の改正もやっと進みそうだし、いまここで閣僚が替われば白紙に戻りかねない。

民主党政権にはいろいろと問題があるけど、情報公開や公文書管理問題に関しては、自民党時代よりはるかにまともになってきている(まだ道半ばという感じだが)。
ただ、公文書管理法の施行まで1年切っているのに、いまだに政令案は出てこないし、公文書管理委員会のメンバーも選ばれていない。
もし、こういったことに関心のない人が行政刷新相になってしまったらと思うと気が気でないので、なんとかこのまま留任してほしいなあと思う。

あとは鳩山首相の辞任について雑感。
外交問題で国民世論を煽るのは危険だということは、戦前の日本外交史を知っていれば常識の範囲なんだがなあ・・・
引くに引けなくなるし、引いたら引いたで大ブーイングになるし。

政策決定過程の可視化というのは確かに重要なんだけど、案件的にセンシティブな問題は、必ずしもその過程の情報を逐一公開する必要など無い。
特に外交は相手もいるのだから、国内事情だけで全てが決まるわけではない。

ただ、決まった際には次の2点についてきちんとすべき。
1.決まったことは国民の前できちんと説明する。
2.政策決定過程がわかる文書をきちんと残し、30年後に公開して歴史の審判を仰ぐ。


これが外交問題における情報公開の基本的なあり方だと思うんだがなあ。

とりあえず、新たな首相がもうちょっと外交センスのある人であることを望みます。
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