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史料保存利用問題シンポジウム [2010年公文書管理問題]

史料保存利用問題シンポジウム「公文書管理法の施行と史料保存利用問題のこれから」(2010年6月26日 学習院大学)に行ってきました。
講演者は以下の通り。

山崎日出男 氏 (国立公文書館理事)
「公文書管理法で何がどのように変わるのか」
佐賀 朝  氏 (大阪歴史科学協議会)
「自治体立公文書館の現状 ― 大阪府・市公文書館の場合―」


山崎氏は公文書管理法が作られたときの官僚側(内閣府)の代表者だった。その後、その経験を買われて国立公文書館の理事(ナンバー2)になった方。
レジュメを見たときに、いまさら公文書管理法の基本的な解説をするのかとがっかりしたが、話を始めると管理法制定の際の裏話とか自分なりの公文書管理への考え方みたいなものをざっくばらんに語ってくれたので、私には楽しかった。

山崎氏の話でメモっておいたのは以下の点。
・昨年の管理法制定の際の初めに出した法案が「官僚による骨抜きだ」と批判されたが、自分としては決して有識者会議の最終報告の内容から後退させたつもりはなく、内閣法制局と相談の上、法律に書けるものを書いただけである。他のものは政令や規則でやるつもりだった。
・公文書管理法の趣旨を地方に徹底させる方法がなかなか難しい。昔なら内閣府から地方自治体に通達が出せたが、地方分権の関係でそれができなくなっている。またモデル条例のようなものも国が主導してやることは難しい。
・政令に関してはそれほど心配をしなくても。すでに管理法の精神は法律と国会審議で入っている。あとは実務的な問題だと思う。
民主党も公文書管理法に積極的だったので、予算請求で常勤30人、非常勤30人増員を要求したら、非常勤10人だけしか認められなかった。予算の増額請求の場合、財源を見つけてこいという話になっていて困っている。そもそも増やすことが前提になっているので。
・今後のスケジュールは、おそらく7月半ばに公文書管理委員会の1回目の会合が行われ、秋ぐらいには施行令ができ(パブコメ募集もある)、そこから各省の規則ができて内閣総理大臣の承認を得るという流れになるはず。年度替わりの来年4月施行には間に合わせるように行くだろう。公文書管理委員会が公開になるのかはまだわからない。蓮舫行政刷新相の意向次第かもしれない。

一番最初の話は、「官僚の世界」にいる以上、仕方がないのだろうなあと。
こういう話を聞くと、小沢一郎が「内閣法制局を廃止せよ」と言うのは、暴論だけども一理はあるのかもしれんとは思う。

予算の話は本当に残念。要求したという話は聞いていたが、そういうオチだったことは初見。
こうなると、枝野氏を初めとした民主党の公文書管理問題を理解していた議員達は何をしていたのだということになる。
この法律はあくまでも「型」でしかない。魂を入れるためには、それだけの人員も予算も必要なはず。こういったところにお金をかけなければいけないのに。
情報公開の徹底もそうだけど、そういったことをするには人と金は絶対に必要。口だけで情報公開と言っても、何も変わらんのだ。そういうことを民主党内でもわかっている人は少ないということか。
蓮舫行政刷新相はそのあたりきちんとわかっているのかが気になるところだ。

佐賀氏の報告は大阪府公文書館、大阪市公文書館の両方共が、事業仕分けなどの影響で予算・人員を削減されて苦況にあるという話だった。

簡単に要約すると
・大阪府公文書館は、公文書館の老朽化による移転が問題となっていたが迷走中である(つぶされた国際児童文学館跡地に行くという話もあり)。情報公開課に公文書館の担当を組み入れ、情報公開と文書管理を一体化して運用するという方針だが、歴史公文書の公開が後退するおそれがある。
・大阪市公文書館は、事業仕分けで自らの館の存在意義を主張できずに予算削減に追い込まれ、今年から勤務職員が全て非常勤のみで運営されている。公文書館自体の位置づけが、ただの保存施設としか見ていない。

詳しく書くといくらでも書けるのだが、それも繁雑なので、詳しくはこちらを参照。

大阪の公文書館問題を考える
http://wiki.livedoor.jp/archives_osk/d/%a5%c8%a5%c3%a5%d7%a5%da%a1%bc%a5%b8

佐賀氏の話をうかがっている限りだと、公文書管理法は地方公文書館への追い風になかなかなりきれていないということのようだ。
大阪でも、公文書管理法をタテにして各団体が交渉しているようだが、公文書管理の重要性は認識してくれても、公文書館の重要性を認識することとの間には大きな壁があるようである。

佐賀氏が最後におっしゃられていたが、やはり歴史団体以外の所に運動の輪を広げて行かなくてはならないと思う。
公文書館は決して歴史研究者・歴史好きのためだけにあるのではない。そこに生きる人々のために存在するのだということを、もっと多くの人にわかってもらえなければならない。

たまたまこのブログに来られた方で、大阪にお住まいの方がおられたら、是非ともこの問題には関心を持っていただきたいと思う。
また、情報公開運動などに関係している方がいたら、是非とも大阪歴史科学協議会大阪歴史学会などに連絡を取っていただけるとありがたいと思う。

終わった後、山崎氏にご挨拶にうかがったら「ブログ見てるよ」とニコニコしながらおっしゃっていた。昨年けっこう厳しいことを書いたなあと思っていたので、若干恐縮した。
飲み会で学習院の高埜利彦氏ともやっとお話しができたので私にとっては色々と有意義だった。

博論がもうすぐ終わるので、そろそろブログの方もペースを上げていく予定。

追記
地方公文書館問題については、以前書いた記事も参考になるかと思います。
「地方公文書館の現状と課題」
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2009-05-25
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コメント 2

行官士

 山崎理事のお話は興味深いですね。今後のスケジュールも
伺えてよかったです。

 公文書管理委員会令は、官報よりもこちらのブログを先に
拝見しました。

 
by 行官士 (2010-06-30 23:40) 

瀬畑 源(せばた はじめ)

> 行官士さま

どうもありがとうございます。
早め早めに進んでくれるとよいのですが。
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2010-07-01 21:53) 

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