民主党政権と公文書管理制度 [2012年公文書管理問題]
12月16日の総選挙で自民党が大勝し、民主党は下野しました。
2009年に政権に就いてから3年強。この間、公文書管理制度に関する重要な改革がいくつか行われました。
いったい民主党は公文書管理問題で何を達成したのか。まとめてみたいと思います。
1.外交文書の大量公開
鳩山内閣発足時に、岡田克也外相が沖縄返還時の有事の核持ち込み密約などを徹底に調査すると宣言し、有識者委員会を立ち上げた。
その有識者委員会は、報告書で外交文書の積極的な公開についての提言を行った。
これを受けて岡田外相は、作成から30年できちんと公開するという体制を作らなければならないとし、大量の外交文書の外交史料館への移管・公開が現在まで続いている。
これは間違いなく「民主党だったからできた」と言える。
というより「岡田克也氏だからこそできた」と言っても良いかもしれない。
この流れが政権交代でどうなるかは注目したい。
2.公文書管理法の施行への手続き
公文書管理法が2011年4月に施行されるまでの準備は、民主党政権によって担われた。
担当は行政刷新相だったので、仙石由人→枝野幸男→蓮舫→枝野→蓮舫→岡田克也、と変化した。
公文書管理委員会の立ち上げ、施行令制定、各種ガイドラインの策定、各機関の文書管理規則の制定、などなど色々な手続きが行われたが、これらが法律の骨抜きにはならず、法律に沿ったものになっていったのは、やはり情報公開に積極的な大臣の影響があったのかなとも思われる。
要の公文書管理委員に中央官僚出身者が選ばれなかったというのも、やはり民主党政権であって良かったのではないかと思う。
委員の改選も2012年7月に行われたばかりなので、自民党政権下でも委員会に大きな変化はないのではないか。
3.情報公開法改正案
枝野行政刷新相(第1次)の時に、行政刷新会議に「行政透明化検討チーム」が設置され、情報公開法改正へ向けて動き始めた。
チームのメンバーも、情報公開法改正に積極的なメンバーが多く、報告書も前向きな内容であった。
しかし、改正案作成中に東日本大震災が起き、2011年4月22日に閣議決定までは行ったが、その後は完全に放置。
結局衆院解散により廃案に追い込まれた。
内容的にも情報公開の推進のためには必要な改正案だった。
(毎日新聞の12月8日の記事にそのあたりが載ってます。)
http://mainichi.jp/select/news/20121208ddm012070017000c.html
これが廃案になったのは非常に残念。
安倍政権は早速行政刷新会議を廃止したので、改正は遠のいたのは間違いないだろう。
(補足)
上記の毎日の記事の取材を受けた時に、私が記者の方に送ったメールを下に貼っておきます。(読みやすいように若干直した。)
○なぜ情報公開法改正案は廃案になったのか
A:大震災の影響
大震災直前に改正案が出るとの報道があったが、震災で4月下旬にずれこみ、そのまま忘れられた。
B:民主党の情報公開への姿勢の後退
政権奪取当初は、情報公開に対して積極的であったため、枝野氏や蓮舫氏が行政刷新相として、情報公開法改正を目指した。
しかし、震災以後は、秘密保全法案なども提出してくるように、民主党内に情報公開に消極的な勢力が強くなっているように思われる。そのため、情報公開法改正の優先順位が低くなった。
岡田克也副総理など個人的に推進してくれた人もいた(閣議の文書を残すなど)が、総体として積極的とは言い難いところがあった。
C:ねじれ国会の影響
自民党はもとより情報公開に消極的(公文書管理法はたまたま福田氏が首相になったから通った)。よって、民主自民の全面対決になってしまった状況ではいかんともしがたかった。
公文書管理法の際には、自民に上川陽子氏がいて、枝野氏や西村智奈美氏などと繁雑に連絡が取れていた。だが上川氏が落選して、自民側にこの問題に関心のある実働部隊が居なくなったのも大きい。
逢坂議員などが今年になって動いていたが、実を結ばなかったのもこのあたりの影響もあるのではないか?
D:国民的な関心が薄い
議事録未作成問題だけでなく、SPEEDIの問題など、情報公開に関わる問題は色々とあったはず。だが、それが情報公開法という「基礎」の改正に目が行かなかった。
これは市民運動の方々に言えることのように思うが、個別の政策に目が行きすぎていて、その基礎となる情報開示などを問題にしきれていないのではないか(もちろん気づいているかたもおられるが)。
民主主義のインフラとなる制度であるがゆえに、関心から抜け落ちやすいように思う。
(以上)
4.原子力災害対策本部の議事録未作成問題
2012年1月に発覚した問題。
正確にはそれ以前から問題になっていたのだが、岡田副総理が調査を命じたことで実態の酷さが浮き彫りになり、大きく報じられることになった。
この問題の解決策を公文書管理委員会が提言することになり、「歴史的緊急事態」の際の記録作成についての規程を組み込むために、「行政文書の管理に関するガイドライン」が改正された。
そしてこの問題から波及して、閣議や閣僚懇談会、閣僚会議の議事録のあり方を考える検討チームが作られ、閣議・閣僚懇談会の議事録を作るべきという報告書が出たところで時間切れ。
議事録を作るためには、それを30年間非公開にするための情報公開法及び公文書管理法改正が必要だったので、法律の改正が行われないと議事録は作られない可能性が高い。
この改正を果たして自民党は行うかというのが大きな問題。
閣議や閣僚懇談会の議事録作成は、未来の国民に対する説明責任であり、それは政権の中身を問わずに行われるべきである。
ただ、自民党は基本的に情報公開問題については極めて消極的な政党。
担当相はおそらく稲田朋美行政改革相だと思われるが、果たしてこの問題を引き継いでくれるか注目したい。
まとめると、民主党というよりも、岡田克也、枝野幸男という、この問題に関心のある政治家が大臣にいる時に、良い方向に進んだという印象。
もちろん、この2名の足を引っ張る人もほとんどいなかったという意味で、民主党政権であったことは重要であったと思う。
公文書管理法施行時に民主党が政権にいたことは良かったのではないか、というのが私の結論。
一方、議事録未作成問題に見られるように、現場ではまだ公文書管理法が浸透していないということも浮き彫りになっており、定着までの努力がまだまだ求められる。
これからの自民党政権下で果たして公文書管理問題は進むのか、停滞するのか、あるいは逆行するのか。
きちんと情報を集めながらブログでも紹介していければと思う。
本年の更新はここまで。
お読みいただきありがとうございました。また来年もよろしく御願いします。
2009年に政権に就いてから3年強。この間、公文書管理制度に関する重要な改革がいくつか行われました。
いったい民主党は公文書管理問題で何を達成したのか。まとめてみたいと思います。
1.外交文書の大量公開
鳩山内閣発足時に、岡田克也外相が沖縄返還時の有事の核持ち込み密約などを徹底に調査すると宣言し、有識者委員会を立ち上げた。
その有識者委員会は、報告書で外交文書の積極的な公開についての提言を行った。
これを受けて岡田外相は、作成から30年できちんと公開するという体制を作らなければならないとし、大量の外交文書の外交史料館への移管・公開が現在まで続いている。
これは間違いなく「民主党だったからできた」と言える。
というより「岡田克也氏だからこそできた」と言っても良いかもしれない。
この流れが政権交代でどうなるかは注目したい。
2.公文書管理法の施行への手続き
公文書管理法が2011年4月に施行されるまでの準備は、民主党政権によって担われた。
担当は行政刷新相だったので、仙石由人→枝野幸男→蓮舫→枝野→蓮舫→岡田克也、と変化した。
公文書管理委員会の立ち上げ、施行令制定、各種ガイドラインの策定、各機関の文書管理規則の制定、などなど色々な手続きが行われたが、これらが法律の骨抜きにはならず、法律に沿ったものになっていったのは、やはり情報公開に積極的な大臣の影響があったのかなとも思われる。
要の公文書管理委員に中央官僚出身者が選ばれなかったというのも、やはり民主党政権であって良かったのではないかと思う。
委員の改選も2012年7月に行われたばかりなので、自民党政権下でも委員会に大きな変化はないのではないか。
3.情報公開法改正案
枝野行政刷新相(第1次)の時に、行政刷新会議に「行政透明化検討チーム」が設置され、情報公開法改正へ向けて動き始めた。
チームのメンバーも、情報公開法改正に積極的なメンバーが多く、報告書も前向きな内容であった。
しかし、改正案作成中に東日本大震災が起き、2011年4月22日に閣議決定までは行ったが、その後は完全に放置。
結局衆院解散により廃案に追い込まれた。
内容的にも情報公開の推進のためには必要な改正案だった。
(毎日新聞の12月8日の記事にそのあたりが載ってます。)
http://mainichi.jp/select/news/20121208ddm012070017000c.html
これが廃案になったのは非常に残念。
安倍政権は早速行政刷新会議を廃止したので、改正は遠のいたのは間違いないだろう。
(補足)
上記の毎日の記事の取材を受けた時に、私が記者の方に送ったメールを下に貼っておきます。(読みやすいように若干直した。)
○なぜ情報公開法改正案は廃案になったのか
A:大震災の影響
大震災直前に改正案が出るとの報道があったが、震災で4月下旬にずれこみ、そのまま忘れられた。
B:民主党の情報公開への姿勢の後退
政権奪取当初は、情報公開に対して積極的であったため、枝野氏や蓮舫氏が行政刷新相として、情報公開法改正を目指した。
しかし、震災以後は、秘密保全法案なども提出してくるように、民主党内に情報公開に消極的な勢力が強くなっているように思われる。そのため、情報公開法改正の優先順位が低くなった。
岡田克也副総理など個人的に推進してくれた人もいた(閣議の文書を残すなど)が、総体として積極的とは言い難いところがあった。
C:ねじれ国会の影響
自民党はもとより情報公開に消極的(公文書管理法はたまたま福田氏が首相になったから通った)。よって、民主自民の全面対決になってしまった状況ではいかんともしがたかった。
公文書管理法の際には、自民に上川陽子氏がいて、枝野氏や西村智奈美氏などと繁雑に連絡が取れていた。だが上川氏が落選して、自民側にこの問題に関心のある実働部隊が居なくなったのも大きい。
逢坂議員などが今年になって動いていたが、実を結ばなかったのもこのあたりの影響もあるのではないか?
D:国民的な関心が薄い
議事録未作成問題だけでなく、SPEEDIの問題など、情報公開に関わる問題は色々とあったはず。だが、それが情報公開法という「基礎」の改正に目が行かなかった。
これは市民運動の方々に言えることのように思うが、個別の政策に目が行きすぎていて、その基礎となる情報開示などを問題にしきれていないのではないか(もちろん気づいているかたもおられるが)。
民主主義のインフラとなる制度であるがゆえに、関心から抜け落ちやすいように思う。
(以上)
4.原子力災害対策本部の議事録未作成問題
2012年1月に発覚した問題。
正確にはそれ以前から問題になっていたのだが、岡田副総理が調査を命じたことで実態の酷さが浮き彫りになり、大きく報じられることになった。
この問題の解決策を公文書管理委員会が提言することになり、「歴史的緊急事態」の際の記録作成についての規程を組み込むために、「行政文書の管理に関するガイドライン」が改正された。
そしてこの問題から波及して、閣議や閣僚懇談会、閣僚会議の議事録のあり方を考える検討チームが作られ、閣議・閣僚懇談会の議事録を作るべきという報告書が出たところで時間切れ。
議事録を作るためには、それを30年間非公開にするための情報公開法及び公文書管理法改正が必要だったので、法律の改正が行われないと議事録は作られない可能性が高い。
この改正を果たして自民党は行うかというのが大きな問題。
閣議や閣僚懇談会の議事録作成は、未来の国民に対する説明責任であり、それは政権の中身を問わずに行われるべきである。
ただ、自民党は基本的に情報公開問題については極めて消極的な政党。
担当相はおそらく稲田朋美行政改革相だと思われるが、果たしてこの問題を引き継いでくれるか注目したい。
まとめると、民主党というよりも、岡田克也、枝野幸男という、この問題に関心のある政治家が大臣にいる時に、良い方向に進んだという印象。
もちろん、この2名の足を引っ張る人もほとんどいなかったという意味で、民主党政権であったことは重要であったと思う。
公文書管理法施行時に民主党が政権にいたことは良かったのではないか、というのが私の結論。
一方、議事録未作成問題に見られるように、現場ではまだ公文書管理法が浸透していないということも浮き彫りになっており、定着までの努力がまだまだ求められる。
これからの自民党政権下で果たして公文書管理問題は進むのか、停滞するのか、あるいは逆行するのか。
きちんと情報を集めながらブログでも紹介していければと思う。
本年の更新はここまで。
お読みいただきありがとうございました。また来年もよろしく御願いします。
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書へのパブコメ [2012年公文書管理問題]
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書に対するパブリックコメントが16日まで募集されていました。
これに対して意見を送ったので、下記に貼っておきます(レイアウトはいじってます)。
これまでのブログ記事の
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-11-04
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む その2
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-12-17
で批判的に書いたことを、そのまま文章にまとめたものです。
特に解説はしません。上記記事を参照して下さい。
閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について
1.「議事録の作成義務 (1)議事録の記載事項」について
「議事録には、閣議等における発言者名及び発言内容を記載する」ことに賛成する。ただし「発言内容」が具体的に書かれる担保が必要である。公文書管理法改正案作成の際には、「発言内容」は公文書管理法第4条にあるように「経緯も含めた意思決定に至る過程」がわかるものであることに留意した法文にするべきである。
2.「一定期間経過後の国立公文書館への移管義務 (1)移管までの期間」について
原則30年で国立公文書館へ移管するが、「特に必要な場合にはこの期間を延長することができる仕組みについて検討する」とある。この延長を行うことについて反対する。公文書管理法第8条第3項には、国立公文書館等に移管する際に、利用制限を行うことが適切であると認める文書には移管元から意見書を付けることができる仕組みになっている。これを利用すべきである。
内閣官房が独自に判断を行う場合、必要以上に公開を制限しようというバイアスがかかるおそれがある。よって、第三者機関である国立公文書館が最終判断を行うべきである。またもし延長を認める場合、延長する際には理由を公文書管理委員会に報告をさせることや、延長の上限をつけるなどの一定の歯止めが必要である。
3.「移管までの期間の非公開」について
「案」の段階であったA案にすべきであると考える。これまで閣議等で議事録が作成されてこなかった以上、法改正が行われてもきちんと作成されているのかは疑問符が残る。30年後に公開された際に全く意味をなさない議事録が出てくるおそれもあり、監視できるようなしくみは必要である。また、情報公開法の理念は国民に対する説明責任を果たすことである(第1条)。よって、閣議等の議事録であっても情報公開請求を受けつけることにし、その情報の内容に応じて公開非公開を決めるべきである。また、国民にとって必要な情報であれば、公益裁量開示もできる余地を残すべきである。
閣僚会議等の議事録等の作成・公開について
1.「法的措置を講ずるべき会議の有無」について
副大臣会議や国の安全にかかわる会議であっても、閣議等と同等に扱わないという主旨に賛同する。また、国の安全に関わる会議であっても記録を作るべきだという主旨にも賛同する(秘密保全法には賛同しないが)。
2.「運用上講ずるべき措置の方向性 (1)議事録・議事概要の作成」について
「発言者名及び発言内容を記載した「議事録又は議事概要」を作成すること」の「議事概要」は外すべきであると考える。そもそも、もし「情報漏洩のおそれ」が理由で「議事概要」でも構わないとした場合、「発言者名及び発言内容を記載した議事概要」が作られるとも思えず、実質的には骨抜きになるだろう。また、この書き方であると、「議事録」「議事概要」のいずれかを作成すれば良いと取られかねず、これまで「議事録」を作成してきた閣僚会議等でも「議事概要」しか作らなくなるおそれもある。よって、「議事録」の作成を義務づけるべきである。秘密漏洩へのおそれなどは、情報の管理をきちんと行えばよいだけの話であり、それを理由に議事録を作らないというのは本末転倒ではないか。
3.「運用上講ずるべき措置の方向性 (3)移管までの期間の取扱い」について
「能動的な公開の有無、公開までの期間等については、会議の性格に応じ、それぞれの会議の運営要領等において定めることとする」とあるが、ガイドライン改定の際には「原則として能動的に公開することが望ましい」という方向性を示すべきだと考える。政策過程を公開することは、その政策への関心を喚起することにもつながり、国民の意見表明の機会を与えることにもつながるだろう。
これに対して意見を送ったので、下記に貼っておきます(レイアウトはいじってます)。
これまでのブログ記事の
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-11-04
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む その2
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-12-17
で批判的に書いたことを、そのまま文章にまとめたものです。
特に解説はしません。上記記事を参照して下さい。
閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について
1.「議事録の作成義務 (1)議事録の記載事項」について
「議事録には、閣議等における発言者名及び発言内容を記載する」ことに賛成する。ただし「発言内容」が具体的に書かれる担保が必要である。公文書管理法改正案作成の際には、「発言内容」は公文書管理法第4条にあるように「経緯も含めた意思決定に至る過程」がわかるものであることに留意した法文にするべきである。
2.「一定期間経過後の国立公文書館への移管義務 (1)移管までの期間」について
原則30年で国立公文書館へ移管するが、「特に必要な場合にはこの期間を延長することができる仕組みについて検討する」とある。この延長を行うことについて反対する。公文書管理法第8条第3項には、国立公文書館等に移管する際に、利用制限を行うことが適切であると認める文書には移管元から意見書を付けることができる仕組みになっている。これを利用すべきである。
内閣官房が独自に判断を行う場合、必要以上に公開を制限しようというバイアスがかかるおそれがある。よって、第三者機関である国立公文書館が最終判断を行うべきである。またもし延長を認める場合、延長する際には理由を公文書管理委員会に報告をさせることや、延長の上限をつけるなどの一定の歯止めが必要である。
3.「移管までの期間の非公開」について
「案」の段階であったA案にすべきであると考える。これまで閣議等で議事録が作成されてこなかった以上、法改正が行われてもきちんと作成されているのかは疑問符が残る。30年後に公開された際に全く意味をなさない議事録が出てくるおそれもあり、監視できるようなしくみは必要である。また、情報公開法の理念は国民に対する説明責任を果たすことである(第1条)。よって、閣議等の議事録であっても情報公開請求を受けつけることにし、その情報の内容に応じて公開非公開を決めるべきである。また、国民にとって必要な情報であれば、公益裁量開示もできる余地を残すべきである。
閣僚会議等の議事録等の作成・公開について
1.「法的措置を講ずるべき会議の有無」について
副大臣会議や国の安全にかかわる会議であっても、閣議等と同等に扱わないという主旨に賛同する。また、国の安全に関わる会議であっても記録を作るべきだという主旨にも賛同する(秘密保全法には賛同しないが)。
2.「運用上講ずるべき措置の方向性 (1)議事録・議事概要の作成」について
「発言者名及び発言内容を記載した「議事録又は議事概要」を作成すること」の「議事概要」は外すべきであると考える。そもそも、もし「情報漏洩のおそれ」が理由で「議事概要」でも構わないとした場合、「発言者名及び発言内容を記載した議事概要」が作られるとも思えず、実質的には骨抜きになるだろう。また、この書き方であると、「議事録」「議事概要」のいずれかを作成すれば良いと取られかねず、これまで「議事録」を作成してきた閣僚会議等でも「議事概要」しか作らなくなるおそれもある。よって、「議事録」の作成を義務づけるべきである。秘密漏洩へのおそれなどは、情報の管理をきちんと行えばよいだけの話であり、それを理由に議事録を作らないというのは本末転倒ではないか。
3.「運用上講ずるべき措置の方向性 (3)移管までの期間の取扱い」について
「能動的な公開の有無、公開までの期間等については、会議の性格に応じ、それぞれの会議の運営要領等において定めることとする」とあるが、ガイドライン改定の際には「原則として能動的に公開することが望ましい」という方向性を示すべきだと考える。政策過程を公開することは、その政策への関心を喚起することにもつながり、国民の意見表明の機会を与えることにもつながるだろう。
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む その2 [2012年公文書管理問題]
2012年11月29日、「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」が「閣僚会議等の議事録等の作成・公開について」という報告書(以下「報告書」と略記)を発表した。
これは、10月24日に出された「閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について」(以下「方向性」と略記)の追加版という位置づけになる。「方向性」の4に「閣僚会議の取扱い」という項目があり、これについて具体的に書かれたのが今回の報告書ということになる。
この報告書について簡単に解説を述べておきたい。
(「方向性」の方はすでに解説済)
まず「閣僚会議等」の定義であるが、「閣僚会議、省議などの閣僚を構成員として開催される政府の会議」と位置づけられている。
具体的には作業チームの第2回資料3に一覧となっている(174ある)。
この一覧表を見ていると、複数の閣僚が参加しているにもかかわらず、議事概要すら作成していないような会議もあり、全く統一性が無い。
そして報告書を作る前に、各会議の担当者に「① 閣議等と同様の法的措置を講ずるべき会議の有無 ② 発言者名及び発言内容を記載した議事録又は議事概要を作成できない会議の有無」の2点について調査を行った。
その結果は検討チーム第3回資料1-1に記載されている。
①は「議事録を作成した場合、30年間は情報公開法の対象外にするべきか」を聞いたものであり、②は「議事録や議事概要を作れない会議をあぶり出す(理由付)」ためのものである。
その結果によると
①が必要と回答したのは「副大臣会議」。
②のうち、「議事録も概要も作成できない」と回答したのが3、「概要のみ可」と回答したのが12。
理由は資料1-2でまとめられている。
①については、副大臣会議は閣僚並に高度な政治性を有している会議なので、閣僚懇談会と同様の扱いをすべきということである。
②については、議事録等を作成できないと回答した会議の多くが、貿易関係と安全保障関係である。沖縄関係の会議が4つ入っているのが特に目を引く(米軍基地関係。振興策も対象)。
理由は議事録や概要を作ると「自由闊達な意見交換が阻害」「情報漏洩の恐れ」があるという、定番の回答である。
この①と②に対する回答を兼ねて作られたのが、今回の報告書ということになる。
よってこの報告書は「法的措置を講ずるべき会議の有無」「運用上講ずるべき措置の方向性」の2つの部分から構成されている。
1.法的措置を講ずるべき会議の有無
この章は、「副大臣会議」(①)と「国の安全に関わる会議」(②のうち、概要すらも作れないと回答した会議)の2つに回答を行っている。
「副大臣会議」については、結論は「閣僚懇談会と同じ扱いをする必要はない」という答えである。
つまり議事録を作っても情報公開法の対象外とする必要はないということである。閣僚ほど重要なことを話していないということのようだ。
なお、副大臣の「政務」(政党などとの連絡調整)に関わるものについては、相手が行政職だけでは無い(「政治にまたがる性格」)ので記録作成義務から外すべきとされ、「政策」「企画」と「政務」の会議をきちんと分けて開催することを提言している(後者のみ議事録・概要は作成しない)。
次に「国の安全に関わる会議」であるが、議事録や概要を全く作成しないのはおかしいと書かれている。
ただし、秘密保全法案の策定する中で必要な検討を行い、重要な意思決定に至る過程の記録が作成されるようにすべきという書きまわしである。
また、「30年で公開はできないので作成できない」という主張に対しても、他国でも重要機密は30年以上非公開にしているので公開までの期間を延長できるとし、機密情報の一定期間後の公開は外務省が行っているので参考にすればよいとして、「将来の公開」を理由として「作れない」という主張は一刀両断されている。
結論は、閣議や閣僚懇談会に適用する予定の30年間情報公開法の対象外にするという考え方は、他の会議には適用する必要が無いというものである。
感想としては結論は「当然」というところに落ち着いている。
(私個人の意見は、閣議等を30年間情報公開法の対象外とすること自体に反対ではあるが。)
「副大臣会議」の「政務」を議事録作成の対象外にするという点については、これは立法公文書管理法作成の際の問題かなと思っている。
つまり、行政職に就いていない議員との意見交換をどこまで記録するかという問題である。
議員と副大臣のみで行う話し合い(官僚が立ち会っていない)の記録を「行政文書」として保存するのは、確かに公文書管理法的にも難しいラインになる。これは今後の課題だろうか。
「国の安全に関わる会議」に関する記述も概ね同意。
というか、もうそろそろ「いま公開できないから作成しない」という言い訳をするのは勘弁願いたい。
「いま」公開できないからといって、「将来」公開できないということは無いのだ。これは公文書管理法の根幹に関わる部分なので、そろそろ常識的にわかってほしいものだが。
また「情報漏洩」のおそれがあるから作成できない、というのは「情報管理」の問題であって、「作成するか否か」の話とは次元が異なる。
漏洩しないようにきちんと「管理」すればよいだけの話で、元々作成しないというのは話の筋が違う。
だからといって、秘密保全法が制定されることには相当の注意が必要だが(場合によっては、過度な情報公開規制につながりかねない)。
2.運用上講ずるべき措置の方向性
この章で書かれた内容が、すべての閣僚会議等における議事録・議事概要の作成・公開の方針となる。
最終的には「行政文書の管理に関するガイドライン」などを改正する(公文書管理委員会に検討を要請)ということなので、政権が代わっても前進する可能性は十分ある。
「(1)議事録・議事概要の作成」においては、結論は「閣僚会議等については、発言者名及び発言内容を記載した「議事録又は議事概要」を作成すること」としている。
「議事概要」でもOKとしている点が特徴として挙げられる。
これは、先述した②のうち「概要のみ作成可」と答えた会議への対応の結果である。
安全保障や外交に絡む会議が含まれる以上、逐語の議事録の作成は情報漏洩のおそれがある。また、そもそも逐語の議事録を作ることが、「適正かつ効率的な運営」に支障を出すという懸念がある。
よって、「議事概要」でもやむなしというのが結論となっている。
この部分は、「言葉が足りていない」というのが私の感想である。
そもそも「発言者及び発言内容を記載した」という修飾語が「議事録又は議事概要」に係っている。よって、「発言者及び発言内容を記載した議事概要」を作る必要があるということになる。
もちろん、このような解釈でよければきちんとした概要が作成されるということになろうが、先述の②の「概要のみ作成可」と回答した会議は、「発言者及び発言内容」を「記載したくない」から「議事概要」にしたいと言っているわけなので、この報告書に書かれているような「議事概要」など作らないだろう。
なので「空文」になる可能性が非常に高い。
また、この書き方だと「議事録」か「議事概要」のいずれかを作成すれば良いという読み方が可能である。
よって、これまで議事録を作ってきた会議すら、議事概要の作成のみに切り替えてしまう可能性がある。
衆院解散の関係で駆け込みで作ったっぽいので、文面詰められなかったのかなという印象。
このあたりは公文書管理委員会できちんと詰めてもらえれば。
「(2)一定期間経過後の国立公文書館等への移管」は、保存期間10年経ったら国立公文書館等へ移管ということが書かれているので特に問題なし。
延長のことが書いていないのは、やはり詰めていないからか?
「(3)移管までの期間の取扱い」は、議事録・議事概要の「能動的な公開」などについては、個別に会議で決めることが述べてある。特に現状と大きく変わるものではない。
個人的には「能動的公開」を原則とするということにして、情報公開請求を待つのではなく、積極的に公開をしてほしいところ。
以上がこの報告書の解説。
内容的にはそれほど大きな違和感があるわけではない。
公文書管理委員会に今後の検討が要請されるようなので、そこできちんと詰めるところを詰めてほしいと思う。
昨日の総選挙で民主党が惨敗し、自民党中心の政権に変わることになった。
この閣議や閣僚会議などの議事録問題は今後どうなるか予断を許さない。
ただ、岡田克也副総理がここまでレールを引いたので、さすがにちゃぶ台を全部ひっくり返すというわけにはいかないだろうと思う(願望込)。
何とか前に進めてほしいと心から願ってやまない。
これは、10月24日に出された「閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について」(以下「方向性」と略記)の追加版という位置づけになる。「方向性」の4に「閣僚会議の取扱い」という項目があり、これについて具体的に書かれたのが今回の報告書ということになる。
この報告書について簡単に解説を述べておきたい。
(「方向性」の方はすでに解説済)
まず「閣僚会議等」の定義であるが、「閣僚会議、省議などの閣僚を構成員として開催される政府の会議」と位置づけられている。
具体的には作業チームの第2回資料3に一覧となっている(174ある)。
この一覧表を見ていると、複数の閣僚が参加しているにもかかわらず、議事概要すら作成していないような会議もあり、全く統一性が無い。
そして報告書を作る前に、各会議の担当者に「① 閣議等と同様の法的措置を講ずるべき会議の有無 ② 発言者名及び発言内容を記載した議事録又は議事概要を作成できない会議の有無」の2点について調査を行った。
その結果は検討チーム第3回資料1-1に記載されている。
①は「議事録を作成した場合、30年間は情報公開法の対象外にするべきか」を聞いたものであり、②は「議事録や議事概要を作れない会議をあぶり出す(理由付)」ためのものである。
その結果によると
①が必要と回答したのは「副大臣会議」。
②のうち、「議事録も概要も作成できない」と回答したのが3、「概要のみ可」と回答したのが12。
理由は資料1-2でまとめられている。
①については、副大臣会議は閣僚並に高度な政治性を有している会議なので、閣僚懇談会と同様の扱いをすべきということである。
②については、議事録等を作成できないと回答した会議の多くが、貿易関係と安全保障関係である。沖縄関係の会議が4つ入っているのが特に目を引く(米軍基地関係。振興策も対象)。
理由は議事録や概要を作ると「自由闊達な意見交換が阻害」「情報漏洩の恐れ」があるという、定番の回答である。
この①と②に対する回答を兼ねて作られたのが、今回の報告書ということになる。
よってこの報告書は「法的措置を講ずるべき会議の有無」「運用上講ずるべき措置の方向性」の2つの部分から構成されている。
1.法的措置を講ずるべき会議の有無
この章は、「副大臣会議」(①)と「国の安全に関わる会議」(②のうち、概要すらも作れないと回答した会議)の2つに回答を行っている。
「副大臣会議」については、結論は「閣僚懇談会と同じ扱いをする必要はない」という答えである。
つまり議事録を作っても情報公開法の対象外とする必要はないということである。閣僚ほど重要なことを話していないということのようだ。
なお、副大臣の「政務」(政党などとの連絡調整)に関わるものについては、相手が行政職だけでは無い(「政治にまたがる性格」)ので記録作成義務から外すべきとされ、「政策」「企画」と「政務」の会議をきちんと分けて開催することを提言している(後者のみ議事録・概要は作成しない)。
次に「国の安全に関わる会議」であるが、議事録や概要を全く作成しないのはおかしいと書かれている。
ただし、秘密保全法案の策定する中で必要な検討を行い、重要な意思決定に至る過程の記録が作成されるようにすべきという書きまわしである。
また、「30年で公開はできないので作成できない」という主張に対しても、他国でも重要機密は30年以上非公開にしているので公開までの期間を延長できるとし、機密情報の一定期間後の公開は外務省が行っているので参考にすればよいとして、「将来の公開」を理由として「作れない」という主張は一刀両断されている。
結論は、閣議や閣僚懇談会に適用する予定の30年間情報公開法の対象外にするという考え方は、他の会議には適用する必要が無いというものである。
感想としては結論は「当然」というところに落ち着いている。
(私個人の意見は、閣議等を30年間情報公開法の対象外とすること自体に反対ではあるが。)
「副大臣会議」の「政務」を議事録作成の対象外にするという点については、これは立法公文書管理法作成の際の問題かなと思っている。
つまり、行政職に就いていない議員との意見交換をどこまで記録するかという問題である。
議員と副大臣のみで行う話し合い(官僚が立ち会っていない)の記録を「行政文書」として保存するのは、確かに公文書管理法的にも難しいラインになる。これは今後の課題だろうか。
「国の安全に関わる会議」に関する記述も概ね同意。
というか、もうそろそろ「いま公開できないから作成しない」という言い訳をするのは勘弁願いたい。
「いま」公開できないからといって、「将来」公開できないということは無いのだ。これは公文書管理法の根幹に関わる部分なので、そろそろ常識的にわかってほしいものだが。
また「情報漏洩」のおそれがあるから作成できない、というのは「情報管理」の問題であって、「作成するか否か」の話とは次元が異なる。
漏洩しないようにきちんと「管理」すればよいだけの話で、元々作成しないというのは話の筋が違う。
だからといって、秘密保全法が制定されることには相当の注意が必要だが(場合によっては、過度な情報公開規制につながりかねない)。
2.運用上講ずるべき措置の方向性
この章で書かれた内容が、すべての閣僚会議等における議事録・議事概要の作成・公開の方針となる。
最終的には「行政文書の管理に関するガイドライン」などを改正する(公文書管理委員会に検討を要請)ということなので、政権が代わっても前進する可能性は十分ある。
「(1)議事録・議事概要の作成」においては、結論は「閣僚会議等については、発言者名及び発言内容を記載した「議事録又は議事概要」を作成すること」としている。
「議事概要」でもOKとしている点が特徴として挙げられる。
これは、先述した②のうち「概要のみ作成可」と答えた会議への対応の結果である。
安全保障や外交に絡む会議が含まれる以上、逐語の議事録の作成は情報漏洩のおそれがある。また、そもそも逐語の議事録を作ることが、「適正かつ効率的な運営」に支障を出すという懸念がある。
よって、「議事概要」でもやむなしというのが結論となっている。
この部分は、「言葉が足りていない」というのが私の感想である。
そもそも「発言者及び発言内容を記載した」という修飾語が「議事録又は議事概要」に係っている。よって、「発言者及び発言内容を記載した議事概要」を作る必要があるということになる。
もちろん、このような解釈でよければきちんとした概要が作成されるということになろうが、先述の②の「概要のみ作成可」と回答した会議は、「発言者及び発言内容」を「記載したくない」から「議事概要」にしたいと言っているわけなので、この報告書に書かれているような「議事概要」など作らないだろう。
なので「空文」になる可能性が非常に高い。
また、この書き方だと「議事録」か「議事概要」のいずれかを作成すれば良いという読み方が可能である。
よって、これまで議事録を作ってきた会議すら、議事概要の作成のみに切り替えてしまう可能性がある。
衆院解散の関係で駆け込みで作ったっぽいので、文面詰められなかったのかなという印象。
このあたりは公文書管理委員会できちんと詰めてもらえれば。
「(2)一定期間経過後の国立公文書館等への移管」は、保存期間10年経ったら国立公文書館等へ移管ということが書かれているので特に問題なし。
延長のことが書いていないのは、やはり詰めていないからか?
「(3)移管までの期間の取扱い」は、議事録・議事概要の「能動的な公開」などについては、個別に会議で決めることが述べてある。特に現状と大きく変わるものではない。
個人的には「能動的公開」を原則とするということにして、情報公開請求を待つのではなく、積極的に公開をしてほしいところ。
以上がこの報告書の解説。
内容的にはそれほど大きな違和感があるわけではない。
公文書管理委員会に今後の検討が要請されるようなので、そこできちんと詰めるところを詰めてほしいと思う。
昨日の総選挙で民主党が惨敗し、自民党中心の政権に変わることになった。
この閣議や閣僚会議などの議事録問題は今後どうなるか予断を許さない。
ただ、岡田克也副総理がここまでレールを引いたので、さすがにちゃぶ台を全部ひっくり返すというわけにはいかないだろうと思う(願望込)。
何とか前に進めてほしいと心から願ってやまない。
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む [2012年公文書管理問題]
岡田克也副総理の下で行われていた「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書が2012年10月24日に発表された。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gijiroku/kettei/241024houkou.pdf
このチームが発足するまでの経緯はすでにブログで書いているのでそちらを参考にして下さい。
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の開催
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-08-05
今回の報告書に何が書かれているのかを解説してみようと思います。
ただし議事録の公開が遅れているので、多くは資料を見ながらの解説に留まります。
まずは前文。
閣議の議事録等については、閣僚同士の議論は自由に忌憚なく行われる必要があること、また、内閣の連帯責任の帰結として、対外的な一体性、統一性の確保が要請されていることから、これを作成し公開することは適当でないとされてきた。
昨年4月に施行された公文書等の管理に関する法律(平成 21 年法律第 66 号。以下「公文書管理法」という。)は、閣議等の政府の重要な会議について一律に議事録等の作成を義務付けるものではない。
しかし、原子力災害対策本部を始め東日本大震災に対応するために設置された会議において議事録等が作成されていなかった問題を契機として、政府の重要な意思決定にかかわる会議については、「行政が適正かつ効率的に運営されるようにする」とともに、「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにする」という同法第1条に掲げられた公文書管理制度の目的に照らし、議事録等を作成し、保存していくことが望ましいのではないかと考えられるようになってきている。
ここまでは過去の経緯。
原子力災害対策本部の議事録未作成問題をきっかけに公文書管理委員会で議論が行われ、これまで作られていなかった閣議などの議事録についてどうするか考えようという流れ。
なかでも閣議は、内閣の最高かつ最終的な意思決定の場であるため議事録等を作成することが望ましいと考えられるが、その一方で、議事録等が比較的短期間のうちに公開されれば、高度に政治性を有する事柄も含めた閣僚同士の自由かつ忌憚のない議論の要請や、憲法上の連帯責任の帰結としての内閣の一体性、統一性の確保の要請を満たすことができなくなるおそれがあるという問題がある。
この点について、我が国と同様に議院内閣制を採用するイギリスやドイツにおいては、記録の作成・保存と公開は分けて考え、閣議の議事録等を作成・保存した上で、一定期間は原則非公開とすることにより、このような問題を回避している。
このため、当検討チームとしては、このような制度を参考にしつつ、以下の方向性により、閣議等の議事録を作成し一定期間後に公開する仕組みを制度化することとし、公文書管理法を改正して所要の規定を置くことを提案する。
閣議は内閣の最高かつ最終的な意思決定の場である。
だが、明治期の内閣制度発足以来、ずっと「議事録」は作られていなかった。ただし、官房長官や副長官などによる「私的メモ」は残っていることもあるようだ(第1回会議の御厨貴氏の発言→議事録7ページ目)。
現在作られていない主要な根拠は、憲法第66条第3項の「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。 」にある。
「連帯して」責任を取る以上、閣議は「全会一致」が原則であり、もし閣議の中で議論が割れたとしても、表向きには意見の相違が明らかになってはならないとされている。
また、公開されると自由な議論が妨げられるというありがちな理由も組み込まれている。
詳しくは第1回の資料5-1にコンパクトにまとめられているので参考になる。
なおこの資料5-1によれば、初閣議の際には、官房長官から「公表すべき事項は内閣官房長官から統一的に公表している。各閣僚におかれても,閣議や閣僚懇談会の議論を外部に漏らすことは,厳に慎んでいただきたい」との釘が刺されているようである。
しかし、そもそもこの論理には飛躍がある。
引用文のイギリスとドイツの例を挙げるとしているところに書かれているように、「記録の作成・保存と公開は分けて考え」るべきである。
「すぐに公開できない」=「議事録を作成しない」というのは論理的におかしいわけで、「作成したけれどもすぐには公開できない」というのが筋論である。
今回の報告書はこの筋に沿って改革案が作られているのが特徴である。
それでは本文。
1.議事録の作成義務
閣議等(閣議及び閣僚懇談会をいう。以下同じ。)については、政府における意思決定に至る過程として特に重要であることに鑑み、議事録の作成を法律上、義務付けることとする。
意思決定に至る過程の記録としての議事録は、各種政策判断に当たっての参考資料として「行政の適正かつ効率的な運営」に資するとともに、現在の国民への説明のためのバック・データとして、また、後世の国民が政策を検証するための歴史資料として「現在及び将来の国民に説明する責務」を全うすることに資すると考えられる。
(1)議事録の記載事項
意思決定に至る過程の記録として法律上の作成義務を課すという趣旨を踏まえ、議事録には、閣議等における発言者名及び発言内容を記載する。
まず「閣議」と「閣僚懇談会」について。
「閣議」は政府の最高決定の場であるが、事前調整が終わったものが提出されるだけなので、実質的な議論はほとんど行われていないようである。
そのため、閣議後に「閣僚懇談会」が開かれ、ざっくばらんな意見交換を行っているようである。
よって、「閣議」の議事録だけを残してもほとんど意味がないと思われるため、意思決定過程に関わる「閣僚懇談会」に議事録の対象を広げたというところである。
なお、事前の案では「閣議における主要な発言を記載」となっていたのが、最終では「閣議等における発言者名及び発言内容を記載」と直されている。
もし前者の書き方であった場合、いわゆる「議事概要」で良いことになり、スカスカな議事録が作られる可能性が十分にありえた。後者の書き方になったということは、おそらく会議の場で委員から批判があったのではないかと思われる。
2.一定期間経過後の国立公文書館への移管義務
公文書管理法では、一般的な文書の保存期間や移管・廃棄については、行政機関の長が判断することとしている。
しかし、閣議等の議事録については、歴史公文書等としての重要性に鑑み、作成から法律で定める一定期間を経過した時点で国立公文書館への移管を義務付ける。
国立公文書館への移管後は、公文書管理法に基づき、一般の利用に供し、利用の促進を図る。
閣議等の議事録は必ず国立公文書館に移管せよというルール。
これは当然必要。
(1)移管までの期間
移管までの期間については、①公文書管理法に基づく閣議資料の保存期間(業務上必要な期間及び歴史公文書等として国立公文書館に移管し公開されるまでの期間)が30年とされていること、②諸外国の閣議等の議事録が移管・公開されるまでの期間が内閣の一体性、統一性を確保しつつ自由な意見交換を行う必要性に鑑みて30年とされていること(イギリスは、現行は原則30年だが、2013 年から10年をかけて20年に移行。ドイツは原則30年)などを踏まえ、原則として30年とする。
ただし、諸外国の例なども踏まえ、特に必要な場合にはこの期間を延長することができる仕組みについて検討する。
国立公文書館への移管は、イギリスなどの制度なども参考にした上で、30年経ったら「原則」行うことにする。
ただし、「移管せずに保存期間を延長することも可能」という文章が入っている。
これは、安全保障等に関するものなどを考慮してということのようである。
移管されるのはよいのだが、やはり30年で強制的に移管をするべきであると私は考える。
もし、安全保障上等の問題があれば、公文書管理法に基づいて「利用制限が適切であるとの意見書」を官房長官が提出すればよい。国立公文書館はそれを「参酌」しなければならないと定められている。
おそらく内閣官房等が気にしているのは、公開するか否かの最終決定権が「国立公文書館」の側にあるという点に不安を感じているということなのだろう。
つまり、「国立公文書館の判断力を信用していない」ということである。
ただ、もしこれを認めてしまえば、安全保障等の案件を恣意的に国立公文書館へ移管しないなどの問題が生じるのは明白。
そして、往々にして過剰に隠される可能性が十分にありうる。
やはり、国立公文書館のアーキビストが、専門家の判断から公開非公開を決めることが望ましいと思うので、どのような内容であっても移管は行われるべきである。
(2)公文書管理法に基づく一般の利用等
移管後は、公文書管理法に基づき、国立公文書館において一般の利用に供するとともに、デジタル化してホームページ上で公開するなどにより利用の促進を図る。
途中の案から「デジタル化」という話が挿入され、国立公文書館に移管された後にデジタルアーカイブで公開することを勧めることになっている。
これはもちろん良いことだと思う。
3.移管までの期間の非公開
内閣は、憲法上、国会に対して連帯責任を負い、外部に対しては一体として行動する義務を負っているため、意思決定に至る過程の閣僚間の議論は外部に漏れてはならないものとされている。
閣議等における閣僚間の議論が公開された場合、高度に政治性を有する事柄も含めた閣僚同士の自由かつ忌憚のない議論の要請や、憲法上の連帯責任の帰結としての内閣の一体性、統一性の確保の要請を満たすことができなくなるおそれがあるという問題がある。
このため、閣議等の議事録については、国立公文書館に移管されるまでの間は、非公開とする。
(1)議事録の公開禁止
議事録は、法律上、国立公文書館に移管するまでの間は、保有する行政機関が公にすることを禁止する。
(2)行政機関情報公開法を適用除外
一定期間が経過する前に閣議等の議事録が開示される余地を残すことは、閣議等における議論を萎縮させるおそれがあり、議事録の作成・公開を制度化する趣旨を損なうと考えられるため、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成 11 年法律第 42 号)は全て適用除外とする。
作成された議事録は国立公文書館に移管されるまで、つまり最低30年間は非公開とするということである。
しかも情報公開請求があっても全て不開示にするということであり、相当に厳しいものであると言える。
情報公開法の適用については、当初の案では2つ挙げられていた。
A案は、情報公開法の第5条第6号の「公開すると事務などの適正な遂行に支障を及ぼす情報」を適用して議事録を不開示とするが、「公益裁量開示」(首相が公益があると認めた場合に議事録を開示することができる)ができるというものである。
ただ、「公益裁量開示」は、場合によっては対立する政党の首相が前政権の政策の暴露するために利用するおそれがあるため、第三者機関(公文書管理委員会を想定?)に意見を聴く仕組みを設けることを検討するとされた。
B案は、議事録を情報公開法の適用除外を法的に定めるということである。
例えば、刑事訴訟に関する書類や押収物は、刑事訴訟法によって情報公開法の対象外になっており、こういうものを想定していると思われる。
両案とも原則30年非開示というのは共通しているが、前者は開示される余地が残されているのに対し、後者は開示される余地は残されていない。
結局、後者が選択された。
そもそも、30年間絶対に不開示というのが腑に落ちない。
30年経たずとも公開して問題のない案件はあるはずである。
情報の内容を吟味してその都度開示するかどうかを決めるべきだというのが情報公開法の理念であるはずだ。
また、もし30年非公開を法定化してしまった場合、例えば今回の原発事故の検証を行う際に、公開される報告書には閣議や閣僚懇談会で何が議論されたのかを書けないということになる。
よって、最低でもA案にしておくべきであり、B案を選んだのは問題があると言わざるをえない。
この点は「法制化」しないといけないため、まだ議論の余地は残されているだろう。
法案として出てきた時には注意する必要がある。
4.閣僚会議の取扱い
閣議等と同様の法的措置を講ずるべき閣僚会議の有無、閣僚会議の議事録の作成・公開について運用上講ずるべき措置の方向性、運用上の措置の対象とすべき会議の範囲(省議など閣僚を構成員とする会議全般の取扱い)等について、引き続き、当検討チームで検討を行い、早急に結論を得るべきである。
閣僚会議とは、閣僚が複数人出席して行われている会議のことである。
この文面を見ればよくわかるとおり「先送り」された。
当初の案では、閣議と閣僚懇談会と併記されて、これも議事録作成の対象となっていた。
しかし、最後の案で外されることになった。
理由は「出席者や運用方法が多様」であると報道されている(『日経新聞』10月10日)ので、おそらく委員の中から異論が出たということなのだろう。
作業チームの第2回資料3に、閣僚会議における議事録等の作成・公表状況が一覧となって公開されている。
この一覧表は非常に興味深いので是非ともご覧頂きたいが、閣僚が複数絡んでいる会議にもかかわらず、議事概要レベルも作っていないような会議すらある。
また、議事録を作っているような会議も少なく、公表にもあまり積極的ではない。
確かに設置根拠が様々であることは一覧表を見てもよくわかるが、そもそもの公文書管理法の理念を考えた場合、政策決定過程に重要な意味を持つ閣僚会議の記録がきちんと取られていないのはやはり論外ではないか。
逐語の議事録が必要かは議論があるだろうが、何を議論したのかをきちんと記録する必要は当然あるはずだ。
なお、閣議や閣僚懇談会の記録と同列とされると、公開までに30年という枷がかけられるので、別々に考えるというのは悪くはないと思う。
閣僚会議については、チームでそのまま議論を続けるということのようであるので、今後の議論を注視したい。
今回の改革は法制化が必要になるものもある。(ただ閣議や閣僚懇談会の議事録は法制化しなくても取れるはずだが。)
また、法制化しておかないと、政権交代した時に議論が投げっぱなしにされる可能性がある。
この問題は超党派で合意すべきものであるので、何とか良い方向に行ってほしいと願っている。
追記1
この件については、情報公開クリアリングハウスの三木由希子さんが詳しく書かれているので、合わせて参照されるとわかりやすいかと思います。
閣議等の議事録の作成・公開制度の方向性
http://johokokai.exblog.jp/18552291/
追記2
今回の検討チームがイギリスとドイツで調査してきた記録が結構面白い。
政治学系の方などは見てみると面白いかも。
第3回資料2「「閣議の議事録等の作成・一定期間経過後公開ルール」 に関する海外現地調査について」
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gijiroku/sagyou3/3siryou2.pdf
関連して第1回資料4-3「英国の閣議及び閣僚委員会について」も。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gijiroku/sagyou1/1siryou4-3.pdf
「ラドクリフ報告」(元大臣が回顧録を書く場合、閣議で話した内容は15年間は基本的には書いてはいけないなど)が興味深い。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gijiroku/kettei/241024houkou.pdf
このチームが発足するまでの経緯はすでにブログで書いているのでそちらを参考にして下さい。
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の開催
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-08-05
今回の報告書に何が書かれているのかを解説してみようと思います。
ただし議事録の公開が遅れているので、多くは資料を見ながらの解説に留まります。
まずは前文。
閣議の議事録等については、閣僚同士の議論は自由に忌憚なく行われる必要があること、また、内閣の連帯責任の帰結として、対外的な一体性、統一性の確保が要請されていることから、これを作成し公開することは適当でないとされてきた。
昨年4月に施行された公文書等の管理に関する法律(平成 21 年法律第 66 号。以下「公文書管理法」という。)は、閣議等の政府の重要な会議について一律に議事録等の作成を義務付けるものではない。
しかし、原子力災害対策本部を始め東日本大震災に対応するために設置された会議において議事録等が作成されていなかった問題を契機として、政府の重要な意思決定にかかわる会議については、「行政が適正かつ効率的に運営されるようにする」とともに、「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにする」という同法第1条に掲げられた公文書管理制度の目的に照らし、議事録等を作成し、保存していくことが望ましいのではないかと考えられるようになってきている。
ここまでは過去の経緯。
原子力災害対策本部の議事録未作成問題をきっかけに公文書管理委員会で議論が行われ、これまで作られていなかった閣議などの議事録についてどうするか考えようという流れ。
なかでも閣議は、内閣の最高かつ最終的な意思決定の場であるため議事録等を作成することが望ましいと考えられるが、その一方で、議事録等が比較的短期間のうちに公開されれば、高度に政治性を有する事柄も含めた閣僚同士の自由かつ忌憚のない議論の要請や、憲法上の連帯責任の帰結としての内閣の一体性、統一性の確保の要請を満たすことができなくなるおそれがあるという問題がある。
この点について、我が国と同様に議院内閣制を採用するイギリスやドイツにおいては、記録の作成・保存と公開は分けて考え、閣議の議事録等を作成・保存した上で、一定期間は原則非公開とすることにより、このような問題を回避している。
このため、当検討チームとしては、このような制度を参考にしつつ、以下の方向性により、閣議等の議事録を作成し一定期間後に公開する仕組みを制度化することとし、公文書管理法を改正して所要の規定を置くことを提案する。
閣議は内閣の最高かつ最終的な意思決定の場である。
だが、明治期の内閣制度発足以来、ずっと「議事録」は作られていなかった。ただし、官房長官や副長官などによる「私的メモ」は残っていることもあるようだ(第1回会議の御厨貴氏の発言→議事録7ページ目)。
現在作られていない主要な根拠は、憲法第66条第3項の「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。 」にある。
「連帯して」責任を取る以上、閣議は「全会一致」が原則であり、もし閣議の中で議論が割れたとしても、表向きには意見の相違が明らかになってはならないとされている。
また、公開されると自由な議論が妨げられるというありがちな理由も組み込まれている。
詳しくは第1回の資料5-1にコンパクトにまとめられているので参考になる。
なおこの資料5-1によれば、初閣議の際には、官房長官から「公表すべき事項は内閣官房長官から統一的に公表している。各閣僚におかれても,閣議や閣僚懇談会の議論を外部に漏らすことは,厳に慎んでいただきたい」との釘が刺されているようである。
しかし、そもそもこの論理には飛躍がある。
引用文のイギリスとドイツの例を挙げるとしているところに書かれているように、「記録の作成・保存と公開は分けて考え」るべきである。
「すぐに公開できない」=「議事録を作成しない」というのは論理的におかしいわけで、「作成したけれどもすぐには公開できない」というのが筋論である。
今回の報告書はこの筋に沿って改革案が作られているのが特徴である。
それでは本文。
1.議事録の作成義務
閣議等(閣議及び閣僚懇談会をいう。以下同じ。)については、政府における意思決定に至る過程として特に重要であることに鑑み、議事録の作成を法律上、義務付けることとする。
意思決定に至る過程の記録としての議事録は、各種政策判断に当たっての参考資料として「行政の適正かつ効率的な運営」に資するとともに、現在の国民への説明のためのバック・データとして、また、後世の国民が政策を検証するための歴史資料として「現在及び将来の国民に説明する責務」を全うすることに資すると考えられる。
(1)議事録の記載事項
意思決定に至る過程の記録として法律上の作成義務を課すという趣旨を踏まえ、議事録には、閣議等における発言者名及び発言内容を記載する。
まず「閣議」と「閣僚懇談会」について。
「閣議」は政府の最高決定の場であるが、事前調整が終わったものが提出されるだけなので、実質的な議論はほとんど行われていないようである。
そのため、閣議後に「閣僚懇談会」が開かれ、ざっくばらんな意見交換を行っているようである。
よって、「閣議」の議事録だけを残してもほとんど意味がないと思われるため、意思決定過程に関わる「閣僚懇談会」に議事録の対象を広げたというところである。
なお、事前の案では「閣議における主要な発言を記載」となっていたのが、最終では「閣議等における発言者名及び発言内容を記載」と直されている。
もし前者の書き方であった場合、いわゆる「議事概要」で良いことになり、スカスカな議事録が作られる可能性が十分にありえた。後者の書き方になったということは、おそらく会議の場で委員から批判があったのではないかと思われる。
2.一定期間経過後の国立公文書館への移管義務
公文書管理法では、一般的な文書の保存期間や移管・廃棄については、行政機関の長が判断することとしている。
しかし、閣議等の議事録については、歴史公文書等としての重要性に鑑み、作成から法律で定める一定期間を経過した時点で国立公文書館への移管を義務付ける。
国立公文書館への移管後は、公文書管理法に基づき、一般の利用に供し、利用の促進を図る。
閣議等の議事録は必ず国立公文書館に移管せよというルール。
これは当然必要。
(1)移管までの期間
移管までの期間については、①公文書管理法に基づく閣議資料の保存期間(業務上必要な期間及び歴史公文書等として国立公文書館に移管し公開されるまでの期間)が30年とされていること、②諸外国の閣議等の議事録が移管・公開されるまでの期間が内閣の一体性、統一性を確保しつつ自由な意見交換を行う必要性に鑑みて30年とされていること(イギリスは、現行は原則30年だが、2013 年から10年をかけて20年に移行。ドイツは原則30年)などを踏まえ、原則として30年とする。
ただし、諸外国の例なども踏まえ、特に必要な場合にはこの期間を延長することができる仕組みについて検討する。
国立公文書館への移管は、イギリスなどの制度なども参考にした上で、30年経ったら「原則」行うことにする。
ただし、「移管せずに保存期間を延長することも可能」という文章が入っている。
これは、安全保障等に関するものなどを考慮してということのようである。
移管されるのはよいのだが、やはり30年で強制的に移管をするべきであると私は考える。
もし、安全保障上等の問題があれば、公文書管理法に基づいて「利用制限が適切であるとの意見書」を官房長官が提出すればよい。国立公文書館はそれを「参酌」しなければならないと定められている。
おそらく内閣官房等が気にしているのは、公開するか否かの最終決定権が「国立公文書館」の側にあるという点に不安を感じているということなのだろう。
つまり、「国立公文書館の判断力を信用していない」ということである。
ただ、もしこれを認めてしまえば、安全保障等の案件を恣意的に国立公文書館へ移管しないなどの問題が生じるのは明白。
そして、往々にして過剰に隠される可能性が十分にありうる。
やはり、国立公文書館のアーキビストが、専門家の判断から公開非公開を決めることが望ましいと思うので、どのような内容であっても移管は行われるべきである。
(2)公文書管理法に基づく一般の利用等
移管後は、公文書管理法に基づき、国立公文書館において一般の利用に供するとともに、デジタル化してホームページ上で公開するなどにより利用の促進を図る。
途中の案から「デジタル化」という話が挿入され、国立公文書館に移管された後にデジタルアーカイブで公開することを勧めることになっている。
これはもちろん良いことだと思う。
3.移管までの期間の非公開
内閣は、憲法上、国会に対して連帯責任を負い、外部に対しては一体として行動する義務を負っているため、意思決定に至る過程の閣僚間の議論は外部に漏れてはならないものとされている。
閣議等における閣僚間の議論が公開された場合、高度に政治性を有する事柄も含めた閣僚同士の自由かつ忌憚のない議論の要請や、憲法上の連帯責任の帰結としての内閣の一体性、統一性の確保の要請を満たすことができなくなるおそれがあるという問題がある。
このため、閣議等の議事録については、国立公文書館に移管されるまでの間は、非公開とする。
(1)議事録の公開禁止
議事録は、法律上、国立公文書館に移管するまでの間は、保有する行政機関が公にすることを禁止する。
(2)行政機関情報公開法を適用除外
一定期間が経過する前に閣議等の議事録が開示される余地を残すことは、閣議等における議論を萎縮させるおそれがあり、議事録の作成・公開を制度化する趣旨を損なうと考えられるため、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成 11 年法律第 42 号)は全て適用除外とする。
作成された議事録は国立公文書館に移管されるまで、つまり最低30年間は非公開とするということである。
しかも情報公開請求があっても全て不開示にするということであり、相当に厳しいものであると言える。
情報公開法の適用については、当初の案では2つ挙げられていた。
A案は、情報公開法の第5条第6号の「公開すると事務などの適正な遂行に支障を及ぼす情報」を適用して議事録を不開示とするが、「公益裁量開示」(首相が公益があると認めた場合に議事録を開示することができる)ができるというものである。
ただ、「公益裁量開示」は、場合によっては対立する政党の首相が前政権の政策の暴露するために利用するおそれがあるため、第三者機関(公文書管理委員会を想定?)に意見を聴く仕組みを設けることを検討するとされた。
B案は、議事録を情報公開法の適用除外を法的に定めるということである。
例えば、刑事訴訟に関する書類や押収物は、刑事訴訟法によって情報公開法の対象外になっており、こういうものを想定していると思われる。
両案とも原則30年非開示というのは共通しているが、前者は開示される余地が残されているのに対し、後者は開示される余地は残されていない。
結局、後者が選択された。
そもそも、30年間絶対に不開示というのが腑に落ちない。
30年経たずとも公開して問題のない案件はあるはずである。
情報の内容を吟味してその都度開示するかどうかを決めるべきだというのが情報公開法の理念であるはずだ。
また、もし30年非公開を法定化してしまった場合、例えば今回の原発事故の検証を行う際に、公開される報告書には閣議や閣僚懇談会で何が議論されたのかを書けないということになる。
よって、最低でもA案にしておくべきであり、B案を選んだのは問題があると言わざるをえない。
この点は「法制化」しないといけないため、まだ議論の余地は残されているだろう。
法案として出てきた時には注意する必要がある。
4.閣僚会議の取扱い
閣議等と同様の法的措置を講ずるべき閣僚会議の有無、閣僚会議の議事録の作成・公開について運用上講ずるべき措置の方向性、運用上の措置の対象とすべき会議の範囲(省議など閣僚を構成員とする会議全般の取扱い)等について、引き続き、当検討チームで検討を行い、早急に結論を得るべきである。
閣僚会議とは、閣僚が複数人出席して行われている会議のことである。
この文面を見ればよくわかるとおり「先送り」された。
当初の案では、閣議と閣僚懇談会と併記されて、これも議事録作成の対象となっていた。
しかし、最後の案で外されることになった。
理由は「出席者や運用方法が多様」であると報道されている(『日経新聞』10月10日)ので、おそらく委員の中から異論が出たということなのだろう。
作業チームの第2回資料3に、閣僚会議における議事録等の作成・公表状況が一覧となって公開されている。
この一覧表は非常に興味深いので是非ともご覧頂きたいが、閣僚が複数絡んでいる会議にもかかわらず、議事概要レベルも作っていないような会議すらある。
また、議事録を作っているような会議も少なく、公表にもあまり積極的ではない。
確かに設置根拠が様々であることは一覧表を見てもよくわかるが、そもそもの公文書管理法の理念を考えた場合、政策決定過程に重要な意味を持つ閣僚会議の記録がきちんと取られていないのはやはり論外ではないか。
逐語の議事録が必要かは議論があるだろうが、何を議論したのかをきちんと記録する必要は当然あるはずだ。
なお、閣議や閣僚懇談会の記録と同列とされると、公開までに30年という枷がかけられるので、別々に考えるというのは悪くはないと思う。
閣僚会議については、チームでそのまま議論を続けるということのようであるので、今後の議論を注視したい。
今回の改革は法制化が必要になるものもある。(ただ閣議や閣僚懇談会の議事録は法制化しなくても取れるはずだが。)
また、法制化しておかないと、政権交代した時に議論が投げっぱなしにされる可能性がある。
この問題は超党派で合意すべきものであるので、何とか良い方向に行ってほしいと願っている。
追記1
この件については、情報公開クリアリングハウスの三木由希子さんが詳しく書かれているので、合わせて参照されるとわかりやすいかと思います。
閣議等の議事録の作成・公開制度の方向性
http://johokokai.exblog.jp/18552291/
追記2
今回の検討チームがイギリスとドイツで調査してきた記録が結構面白い。
政治学系の方などは見てみると面白いかも。
第3回資料2「「閣議の議事録等の作成・一定期間経過後公開ルール」 に関する海外現地調査について」
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gijiroku/sagyou3/3siryou2.pdf
関連して第1回資料4-3「英国の閣議及び閣僚委員会について」も。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gijiroku/sagyou1/1siryou4-3.pdf
「ラドクリフ報告」(元大臣が回顧録を書く場合、閣議で話した内容は15年間は基本的には書いてはいけないなど)が興味深い。
「JBMIA 文書管理システムセミナー KANSAI 2012」で講演します。 [2012年公文書管理問題]
一般社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)のドキュメントマネジメントシステム部会の関西セミナーで講演します。
7月に東京でやったものをもう一度大阪でやります。
対象はビジネス関係者向けということと思いますが、話すことは色々なところで話していることとそんなに変わりません。
関東以外で講演するのはおそらくそうめったにありませんので、ご興味のある方はどうぞお越し下さいませ。
無料ですが事前申込が必要になります。
JBMIA 文書管理システムセミナー KANSAI 2012
開催日 2012年10月26日(金)
開催時間 13:30~17:00 (受付開始13:00)
会場 梅田スカイビル タワーウエスト36階 スペース36R
定員100名 (定員になり次第、締め切らせていただきます)
大阪市北区大淀中1丁目1-88 TEL 06-6440-3901〔総合受付〕
交通案内 ・JR大阪駅(中央北口)/阪急梅田駅(茶屋町口)/地下鉄御堂筋線梅田駅(5番出口) 各々徒歩約9分
・阪神梅田駅 徒歩約13分
申込締切 2012年10月25日 17時まで
内容
「「国民共有の知的資源」である公文書を適切に管理し公開する仕組みを定めた公文書管理法が施行されて1年が経過したいま、公文書管理法は政府の議事録未作成問題でふたたび注目されています。この議事録未作成問題は、はたして中央官庁に特有の現象でしょうか。そして現在の文書管理システムを考える手がかりとなるのでしょうか。
本年は、「公文書管理法と文書管理の新たな変化」をテーマに、公文書管理法がもたらしたもの、残された課題を検証し、文書管理に求められる新たな変化を紹介して参りますので、奮ってのご参加をお願いいたします。
【プログラム】
13:30~13:35 挨拶 一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会 DMS部会 副部会長 井上 紀雄(いのうえ のりお)
13:35~14:45 特別講演(70分)一橋大学大学院社会学研究科特任講師 瀬畑 源(せばた はじめ)氏
テーマ:公文書管理制度の来歴を再考する―文書管理システムを考える手がかりとして
14:55~15:40 講演(45分)富士ゼロックス株式会社 営業本部 文教営業統括 全国支援チーム長 松尾 伸彦(まつお のぶひこ)氏
テーマ:「公文書の管理に関する法律」対応ソリューションの展開と課題について
15:50~16:35 講演(45分)JBMIA DMS部会 部会長 株式会社日立コンサルティング 伊藤 泰樹(いとう やすき)
テーマ:Case Managementによる非定型業務の情報保全、管理のご提案
http://www.jbmia.or.jp/event_seminar/seminar.php?id=18
7月に東京でやったものをもう一度大阪でやります。
対象はビジネス関係者向けということと思いますが、話すことは色々なところで話していることとそんなに変わりません。
関東以外で講演するのはおそらくそうめったにありませんので、ご興味のある方はどうぞお越し下さいませ。
無料ですが事前申込が必要になります。
JBMIA 文書管理システムセミナー KANSAI 2012
開催日 2012年10月26日(金)
開催時間 13:30~17:00 (受付開始13:00)
会場 梅田スカイビル タワーウエスト36階 スペース36R
定員100名 (定員になり次第、締め切らせていただきます)
大阪市北区大淀中1丁目1-88 TEL 06-6440-3901〔総合受付〕
交通案内 ・JR大阪駅(中央北口)/阪急梅田駅(茶屋町口)/地下鉄御堂筋線梅田駅(5番出口) 各々徒歩約9分
・阪神梅田駅 徒歩約13分
申込締切 2012年10月25日 17時まで
内容
「「国民共有の知的資源」である公文書を適切に管理し公開する仕組みを定めた公文書管理法が施行されて1年が経過したいま、公文書管理法は政府の議事録未作成問題でふたたび注目されています。この議事録未作成問題は、はたして中央官庁に特有の現象でしょうか。そして現在の文書管理システムを考える手がかりとなるのでしょうか。
本年は、「公文書管理法と文書管理の新たな変化」をテーマに、公文書管理法がもたらしたもの、残された課題を検証し、文書管理に求められる新たな変化を紹介して参りますので、奮ってのご参加をお願いいたします。
【プログラム】
13:30~13:35 挨拶 一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会 DMS部会 副部会長 井上 紀雄(いのうえ のりお)
13:35~14:45 特別講演(70分)一橋大学大学院社会学研究科特任講師 瀬畑 源(せばた はじめ)氏
テーマ:公文書管理制度の来歴を再考する―文書管理システムを考える手がかりとして
14:55~15:40 講演(45分)富士ゼロックス株式会社 営業本部 文教営業統括 全国支援チーム長 松尾 伸彦(まつお のぶひこ)氏
テーマ:「公文書の管理に関する法律」対応ソリューションの展開と課題について
15:50~16:35 講演(45分)JBMIA DMS部会 部会長 株式会社日立コンサルティング 伊藤 泰樹(いとう やすき)
テーマ:Case Managementによる非定型業務の情報保全、管理のご提案
http://www.jbmia.or.jp/event_seminar/seminar.php?id=18
「皇室文書」の定義とは? [2012年公文書管理問題]
ウェブサイトで「「皇室文書」の定義をめぐる公文書管理委員会での不服審査(2012年1月16日~7月31日)」を公開しました。
ウェブサイトのトップページにリンクを貼ってあります。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/
この問題は2年前に書いたブログの記事の続編と言うことになります。
「宮内庁書陵部における「皇室文書」への移管問題」
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17
たまたま書陵部宮内公文書館で、以前に見れた文書が目録から削除されていたことがわかり、どうやら宮内庁には「皇室文書」という非公開の資料群が存在しているのではないかという疑いが出ました。
そこで、公文書管理委員会の不服審査を通して「皇室文書」の定義をできる限りはっきりさせようとした経緯と結末の話ということになります。
最後まで宮内庁側は「皇室文書」という資料群があることを認めませんでしたが、ある程度のところまでは言葉の定義を詰められたとは思っています。
全部読むのは大変かもしれませんので、もし読むのであれば、前提を話した第0章と答申の解説をした第3章あたりを読んでいただければと思います。
ウェブサイトのトップページにリンクを貼ってあります。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/
この問題は2年前に書いたブログの記事の続編と言うことになります。
「宮内庁書陵部における「皇室文書」への移管問題」
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17
たまたま書陵部宮内公文書館で、以前に見れた文書が目録から削除されていたことがわかり、どうやら宮内庁には「皇室文書」という非公開の資料群が存在しているのではないかという疑いが出ました。
そこで、公文書管理委員会の不服審査を通して「皇室文書」の定義をできる限りはっきりさせようとした経緯と結末の話ということになります。
最後まで宮内庁側は「皇室文書」という資料群があることを認めませんでしたが、ある程度のところまでは言葉の定義を詰められたとは思っています。
全部読むのは大変かもしれませんので、もし読むのであれば、前提を話した第0章と答申の解説をした第3章あたりを読んでいただければと思います。
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の開催 [2012年公文書管理問題]
7月30日に「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の初会合が開かれました。
このチームは、公文書管理委員会による「政府の重要な意思決定にかかわる会議に関する議事概要・議事録作成の在り方<論点整理>」(2012年7月4日)を受けて立ち上げられたものである。
この<論点整理>についてはすでにブログで解説しているので詳しくは述べません。
ただ簡単に経緯だけは書いておきます。
きっかけは1月に大きな問題となった原子力災害対策本部等での議事録未作成。
公文書管理担当の岡田副総理は、公文書管理委員会にこの問題の原因調査と改善策を提言するようにとの要請を行った。
委員会ではさまざまな議論があったが、「東日本大震災に対応するために設置された会議等の議事内容の記録の未作成事案についての原因分析及び改善策取りまとめ」が4月25日に出され、これに基づいて「行政文書の管理に関するガイドライン」が改正された。
これによって歴史的緊急事態においては議事録等をきちんと作ることなどがルール化されることになった。
一方、議論の中で日常的な議事録作成のあり方なども取り上げられた。
特に問題となったのは、議事録未作成問題で採り上げられた公文書管理法第4条第2号の「閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯」の定義についてである。
例えば、閣議の議事録は明治期以来作らないのが慣例となっている。
これは閣議は「全会一致」が原則であるため、「統一性の確保」のために記録は残さないとされていたからである。
意見の相違があったということが明らかになれば、閣内不一致ということで攻撃対象になりかねないためである。(今でも各閣僚は閣議で話しあわれたことを洩らさないことが原則になっている。官房長官がまとめて記者会見で話す。)
ただ、「公開しない」ことと「記録を残さない」ことの間には論理に飛躍がある。
しかも、公文書管理法第4条第2号から考えれば、残さないこと自体には問題がある。
このため、公文書管理委員会は、閣議などの議事録の残し方などについてルールが作られることが望ましいという意見で一致した。
しかし、情報公開法など他の法律なども大きく関わっており、公文書管理委員会の業務範囲を超えるということになったため、<論点整理>を出した上で、別の場所で再度議論が行われる事になった。
その「場所」が、今回の検討チームということになる。
まず今回の検討チームのメンバーである。
○共同座長
岡田 克也 副総理兼内閣府特命担当大臣(公文書管理担当)
藤村 修 内閣官房長官
○座長
中塚 一宏 内閣府副大臣 (公文書管理担当)
○構成員
竹歳 誠 内閣官房副長官(事務)
大島 敦 総務副大臣 (情報公開制度担当)
■宇賀 克也 (東京大学大学院法学政治学研究科教授) 行政法
梶田信一郎 (前内閣法制局長官) 元自治官僚
■加藤 陽子 (東京大学大学院人文社会系研究科教授) 歴史学
小早川光郎 (成蹊大学法科大学院客員教授) 行政法
長谷部恭男 (東京大学大学院法学政治学研究科教授) 憲法学
■御厨 貴 (放送大学教授、東京大学名誉教授) 歴史学
■三宅 弘 (弁護士) 行政法
共同座長に岡田副総理と藤村官房長官。
作業チームの座長に中塚内閣府副大臣。
座長クラスに閣僚・副大臣が並んだということで、このチームで決まったことが政権の決定にそのままつながる可能性が高い。有識者会議だと決定と法案が乖離する事があるので。
中塚副大臣が座長に適任なのかは、公文書管理委員会で眠そうに議論を聞いていたところを複数回見ているので若干心配なところ。
構成員は、閣議の事務を担う内閣官房から官房副長官、情報公開制度との関係で総務副大臣が起用。
有識者7名のうち、4名(■を付けた人)は公文書管理委員会の委員と兼任のため、公文書管理委員会の議論が引き継がれることは間違いないだろう。
他の3名は、梶田氏はこれまでの法制との調整、小早川氏は情報公開法制定に関わっており情報公開法との整合性、長谷部氏は憲法との整合性という所の知識を求められたのだろう。
人選としては問題がないと思われる。
この会議で検討すべき事項は、資料によれば「閣議」と「閣僚会議」についてのみ。
公文書管理委員会の<論点整理>にはこれに加えて「省議」の問題が入っていたのだが、なぜかスッポリと落ちてしまっている。
これについては議事録を見ないとどうして落ちたのかがわからないが、岡田氏が10月までに結論を出すと急いでいること(民主党政権の寿命との関係?)もあり、時間がかかりそうな省議の部分はとりあえず後回しにした可能性が高い。
タイムスケジュールによると、法制上の論点整理と海外調査(英国、ドイツ)を行って、これを10月を目途に検討チームに報告することとなっている。
岡田副総理の記者会見によれば、10月に報告書をまとめると話しているので、論点整理と現地調査の報告と同時に報告書まで作られるということになるだろう。
また、岡田副総理によれば、この問題は最終的に法制化する必要があり、さらに政権交代ごとに制度が変わることのないように、与野党協議を事前に行いたいということである。
岡田氏の方針なら、もし政権が代わったとしても、議事録を作成するという部分についてはなんとか確保できるということになる。
ただ、省議の問題が取り残されたこともあり、今後どのように展開するのかは、民主党政権のゆくえと大きく関わっていくことになるだろう。
閣議や閣僚懇談会などの議事録作成は、将来の国民が現在行われている政策を検証するためにも必要なものである。
何とか与野党一致して法制化をしてほしいと思う。
細かい論点についての解説は、議事録が上げられたときにでも行いたいと思います。
このチームは、公文書管理委員会による「政府の重要な意思決定にかかわる会議に関する議事概要・議事録作成の在り方<論点整理>」(2012年7月4日)を受けて立ち上げられたものである。
この<論点整理>についてはすでにブログで解説しているので詳しくは述べません。
ただ簡単に経緯だけは書いておきます。
きっかけは1月に大きな問題となった原子力災害対策本部等での議事録未作成。
公文書管理担当の岡田副総理は、公文書管理委員会にこの問題の原因調査と改善策を提言するようにとの要請を行った。
委員会ではさまざまな議論があったが、「東日本大震災に対応するために設置された会議等の議事内容の記録の未作成事案についての原因分析及び改善策取りまとめ」が4月25日に出され、これに基づいて「行政文書の管理に関するガイドライン」が改正された。
これによって歴史的緊急事態においては議事録等をきちんと作ることなどがルール化されることになった。
一方、議論の中で日常的な議事録作成のあり方なども取り上げられた。
特に問題となったのは、議事録未作成問題で採り上げられた公文書管理法第4条第2号の「閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯」の定義についてである。
例えば、閣議の議事録は明治期以来作らないのが慣例となっている。
これは閣議は「全会一致」が原則であるため、「統一性の確保」のために記録は残さないとされていたからである。
意見の相違があったということが明らかになれば、閣内不一致ということで攻撃対象になりかねないためである。(今でも各閣僚は閣議で話しあわれたことを洩らさないことが原則になっている。官房長官がまとめて記者会見で話す。)
ただ、「公開しない」ことと「記録を残さない」ことの間には論理に飛躍がある。
しかも、公文書管理法第4条第2号から考えれば、残さないこと自体には問題がある。
このため、公文書管理委員会は、閣議などの議事録の残し方などについてルールが作られることが望ましいという意見で一致した。
しかし、情報公開法など他の法律なども大きく関わっており、公文書管理委員会の業務範囲を超えるということになったため、<論点整理>を出した上で、別の場所で再度議論が行われる事になった。
その「場所」が、今回の検討チームということになる。
まず今回の検討チームのメンバーである。
○共同座長
岡田 克也 副総理兼内閣府特命担当大臣(公文書管理担当)
藤村 修 内閣官房長官
○座長
中塚 一宏 内閣府副大臣 (公文書管理担当)
○構成員
竹歳 誠 内閣官房副長官(事務)
大島 敦 総務副大臣 (情報公開制度担当)
■宇賀 克也 (東京大学大学院法学政治学研究科教授) 行政法
梶田信一郎 (前内閣法制局長官) 元自治官僚
■加藤 陽子 (東京大学大学院人文社会系研究科教授) 歴史学
小早川光郎 (成蹊大学法科大学院客員教授) 行政法
長谷部恭男 (東京大学大学院法学政治学研究科教授) 憲法学
■御厨 貴 (放送大学教授、東京大学名誉教授) 歴史学
■三宅 弘 (弁護士) 行政法
共同座長に岡田副総理と藤村官房長官。
作業チームの座長に中塚内閣府副大臣。
座長クラスに閣僚・副大臣が並んだということで、このチームで決まったことが政権の決定にそのままつながる可能性が高い。有識者会議だと決定と法案が乖離する事があるので。
中塚副大臣が座長に適任なのかは、公文書管理委員会で眠そうに議論を聞いていたところを複数回見ているので若干心配なところ。
構成員は、閣議の事務を担う内閣官房から官房副長官、情報公開制度との関係で総務副大臣が起用。
有識者7名のうち、4名(■を付けた人)は公文書管理委員会の委員と兼任のため、公文書管理委員会の議論が引き継がれることは間違いないだろう。
他の3名は、梶田氏はこれまでの法制との調整、小早川氏は情報公開法制定に関わっており情報公開法との整合性、長谷部氏は憲法との整合性という所の知識を求められたのだろう。
人選としては問題がないと思われる。
この会議で検討すべき事項は、資料によれば「閣議」と「閣僚会議」についてのみ。
公文書管理委員会の<論点整理>にはこれに加えて「省議」の問題が入っていたのだが、なぜかスッポリと落ちてしまっている。
これについては議事録を見ないとどうして落ちたのかがわからないが、岡田氏が10月までに結論を出すと急いでいること(民主党政権の寿命との関係?)もあり、時間がかかりそうな省議の部分はとりあえず後回しにした可能性が高い。
タイムスケジュールによると、法制上の論点整理と海外調査(英国、ドイツ)を行って、これを10月を目途に検討チームに報告することとなっている。
岡田副総理の記者会見によれば、10月に報告書をまとめると話しているので、論点整理と現地調査の報告と同時に報告書まで作られるということになるだろう。
また、岡田副総理によれば、この問題は最終的に法制化する必要があり、さらに政権交代ごとに制度が変わることのないように、与野党協議を事前に行いたいということである。
岡田氏の方針なら、もし政権が代わったとしても、議事録を作成するという部分についてはなんとか確保できるということになる。
ただ、省議の問題が取り残されたこともあり、今後どのように展開するのかは、民主党政権のゆくえと大きく関わっていくことになるだろう。
閣議や閣僚懇談会などの議事録作成は、将来の国民が現在行われている政策を検証するためにも必要なものである。
何とか与野党一致して法制化をしてほしいと思う。
細かい論点についての解説は、議事録が上げられたときにでも行いたいと思います。
「JBMIA 文書管理システムセミナー2012」で講演します [2012年公文書管理問題]
一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)ドキュメントマネージメントシステム(DMS)部会の「文書管理システムセミナー」で講演を行うことになりました。
参加には申込が必要です。
よろしく御願いします。
http://www.jbmia.or.jp/event_seminar/seminar.php?id=13
JBMIA 文書管理システムセミナー2012
開催日 2012年7月27日(金)
開催時間 13:30~17:00 (受付開始13:00)
会場
THE GLAND HALL (グランドホール)
定員150名 (定員になり次第、締め切らせていただきます)
東京都港区港南2-16-4 品川グランドセントラルタワー3階 TEL 03-5463-9973〔受付専用〕
交通案内
・JR 品川駅、港南口(東口)よりスカイウェイにて直結 (徒歩3分)
・京浜急行 品川駅より連絡通路を進みJR品川駅、港南口を経てスカイウェイにて直結 (徒歩6分)
http://document.jbmia.or.jp/pdf/map_ShinagawaGrandHall.pdf
申込締切
2012年7月26日 17時まで
内容
「国民共有の知的資源」である公文書を適切に管理し公開する仕組みを定めた公文書管理法が施行されて1年が経過したいま、公文書管理法は政府の議事録未作成問題でふたたび注目されています。
同法の目的は行政(組織活動)の適正運営や現在および将来の国民に対する説明責任の確保です。これを民間企業に置き換えると「企業活動のカギとなる内部統制」や「透明性の確保」といった業務改革を実現することとなります。
本年は、「公文書管理法に基づく業務改革の実現」をテーマに、公文書管理法がもたらしたもの、残された課題を検証し、文書管理に求められる新たな変化を紹介して参りますので、奮ってのご参加をお願いいたします。
【プログラム】
13:30~13:35 挨拶 一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会 専務理事 中西 英夫(なかにし ひでお)
13:35~14:45 特別講演(70分)一橋大学大学院社会学研究科特任講師 瀬畑 源(せばた はじめ)
テーマ:公文書管理制度の来歴を再考する―文書管理システムを考える手がかりとして
14:55~15:55 講演(60分)JBMIA DMS部会 部会長 株式会社日立コンサルティング 伊藤 泰樹(いとう やすき)
テーマ:Case Managementによる非定型業務の情報保全、管理のご提案
16:05~16:55 講演(50分)富士ゼロックス株式会社 営業本部 ヘルスケア営業部長 畑仲 俊彦(はたなか としひこ)氏
テーマ:DACSコンセプトとその実装について (診療録管理事例)
案内状はこちら
http://document.jbmia.or.jp/pdf/JBMIA_DdocumentManagement_Seminar2012.pdf
参加には申込が必要です。
よろしく御願いします。
http://www.jbmia.or.jp/event_seminar/seminar.php?id=13
JBMIA 文書管理システムセミナー2012
開催日 2012年7月27日(金)
開催時間 13:30~17:00 (受付開始13:00)
会場
THE GLAND HALL (グランドホール)
定員150名 (定員になり次第、締め切らせていただきます)
東京都港区港南2-16-4 品川グランドセントラルタワー3階 TEL 03-5463-9973〔受付専用〕
交通案内
・JR 品川駅、港南口(東口)よりスカイウェイにて直結 (徒歩3分)
・京浜急行 品川駅より連絡通路を進みJR品川駅、港南口を経てスカイウェイにて直結 (徒歩6分)
http://document.jbmia.or.jp/pdf/map_ShinagawaGrandHall.pdf
申込締切
2012年7月26日 17時まで
内容
「国民共有の知的資源」である公文書を適切に管理し公開する仕組みを定めた公文書管理法が施行されて1年が経過したいま、公文書管理法は政府の議事録未作成問題でふたたび注目されています。
同法の目的は行政(組織活動)の適正運営や現在および将来の国民に対する説明責任の確保です。これを民間企業に置き換えると「企業活動のカギとなる内部統制」や「透明性の確保」といった業務改革を実現することとなります。
本年は、「公文書管理法に基づく業務改革の実現」をテーマに、公文書管理法がもたらしたもの、残された課題を検証し、文書管理に求められる新たな変化を紹介して参りますので、奮ってのご参加をお願いいたします。
【プログラム】
13:30~13:35 挨拶 一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会 専務理事 中西 英夫(なかにし ひでお)
13:35~14:45 特別講演(70分)一橋大学大学院社会学研究科特任講師 瀬畑 源(せばた はじめ)
テーマ:公文書管理制度の来歴を再考する―文書管理システムを考える手がかりとして
14:55~15:55 講演(60分)JBMIA DMS部会 部会長 株式会社日立コンサルティング 伊藤 泰樹(いとう やすき)
テーマ:Case Managementによる非定型業務の情報保全、管理のご提案
16:05~16:55 講演(50分)富士ゼロックス株式会社 営業本部 ヘルスケア営業部長 畑仲 俊彦(はたなか としひこ)氏
テーマ:DACSコンセプトとその実装について (診療録管理事例)
案内状はこちら
http://document.jbmia.or.jp/pdf/JBMIA_DdocumentManagement_Seminar2012.pdf
公文書管理委員会メンバー交代 [2012年公文書管理問題]
公文書管理委員会の任期が7月5日で満了し、新たに6日に新メンバーが公表された。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinmeibo/iinmeibo.pdf
メンバーは以下の通り。
○宇賀克也(東京大学大学院法学政治学研究科教授) 行政法
○江上節子(武蔵大学社会学部教授) 企業組織論・情報戦略論
加藤陽子(東京大学大学院人文社会系研究科教授) 歴史学
杉本重雄(筑波大学図書館情報メディア系教授) 図書館情報学
野口貴公美(中央大学法学部教授) 行政法
御厨貴(東京大学先端科学技術研究センター客員教授) 歴史学
三宅弘(弁護士) 行政法
(○は新任)
交代したのは、三輪真木子氏(放送大学教授、図書館情報学)と石原一則氏(神奈川県立公文書館資料課長、アーカイブズ学)の2名。
三輪氏は、私が会議を傍聴していた印象だと、他のメンバーと比較して、そこまでこの分野に熱心というわけではないのかなと思っていたので、交代は順当なのかなと。
石原氏は次の任期中に公文書館の定年が来てしまうということで交代となったようだ。
その代わりに就任したのは江上節子氏と宇賀克也氏。
おそらく江上氏が三輪氏、宇賀氏が石原氏の後任ということなんだろう。
江上氏は私は良く存じ上げないが、企業組織論や人材育成という所を専門とする実務家教員のようです。
http://www.musashi.ac.jp/modules/gakubu_sociology/index.php?content_id=102
公文書管理法の定着をどう図っていくかというのを考える際に、組織論ができる方が必要だという観点から選ばれたのかなと思われます。
宇賀氏はこの業界では言わずとしれた情報公開法や公文書管理法などの行政法の大家。法律解釈本は数知れず。
むしろ今まで入っていなかったことがおかしいぐらいの方ではある。
新任の方の選択意図はよくわかるので、良い人事なのではないだろうか。
ただ、アーカイブズ系の方がこれで誰もいなくなったのはバランス的にどうかなと思う。
加藤氏や三宅氏あたりがいるから、そこそこはカバーできるとは思うけれども。
他のメンバーは留任。思ったよりも留任者が多かったなという印象。
政権が代わっていなかったというのも大きかったかもしれない。
御厨氏が留任したので委員長も留任でしょう。
三輪氏が勤めていた委員長代理は、メンツ的に三宅氏でしょうか。
継続性はかなり担保されそうなので、その点は安心しました。
追記7/24
委員長代理は三輪さんの後任の江上さんがそのまま就任しました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20120718/20120718youshi.pdf
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinmeibo/iinmeibo.pdf
メンバーは以下の通り。
○宇賀克也(東京大学大学院法学政治学研究科教授) 行政法
○江上節子(武蔵大学社会学部教授) 企業組織論・情報戦略論
加藤陽子(東京大学大学院人文社会系研究科教授) 歴史学
杉本重雄(筑波大学図書館情報メディア系教授) 図書館情報学
野口貴公美(中央大学法学部教授) 行政法
御厨貴(東京大学先端科学技術研究センター客員教授) 歴史学
三宅弘(弁護士) 行政法
(○は新任)
交代したのは、三輪真木子氏(放送大学教授、図書館情報学)と石原一則氏(神奈川県立公文書館資料課長、アーカイブズ学)の2名。
三輪氏は、私が会議を傍聴していた印象だと、他のメンバーと比較して、そこまでこの分野に熱心というわけではないのかなと思っていたので、交代は順当なのかなと。
石原氏は次の任期中に公文書館の定年が来てしまうということで交代となったようだ。
その代わりに就任したのは江上節子氏と宇賀克也氏。
おそらく江上氏が三輪氏、宇賀氏が石原氏の後任ということなんだろう。
江上氏は私は良く存じ上げないが、企業組織論や人材育成という所を専門とする実務家教員のようです。
http://www.musashi.ac.jp/modules/gakubu_sociology/index.php?content_id=102
公文書管理法の定着をどう図っていくかというのを考える際に、組織論ができる方が必要だという観点から選ばれたのかなと思われます。
宇賀氏はこの業界では言わずとしれた情報公開法や公文書管理法などの行政法の大家。法律解釈本は数知れず。
むしろ今まで入っていなかったことがおかしいぐらいの方ではある。
新任の方の選択意図はよくわかるので、良い人事なのではないだろうか。
ただ、アーカイブズ系の方がこれで誰もいなくなったのはバランス的にどうかなと思う。
加藤氏や三宅氏あたりがいるから、そこそこはカバーできるとは思うけれども。
他のメンバーは留任。思ったよりも留任者が多かったなという印象。
政権が代わっていなかったというのも大きかったかもしれない。
御厨氏が留任したので委員長も留任でしょう。
三輪氏が勤めていた委員長代理は、メンツ的に三宅氏でしょうか。
継続性はかなり担保されそうなので、その点は安心しました。
追記7/24
委員長代理は三輪さんの後任の江上さんがそのまま就任しました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20120718/20120718youshi.pdf
公文書管理委員会第20回傍聴記 [2012年公文書管理問題]
公文書管理委員会の第20回の会議(2012年7月4日)の傍聴に行ってきました。
委員会が立ち上がってから翌日で2年となるので、この会議が1期目の最後の会合ということになります。
今回は前回議論したものの最終版を確定して、岡田副総理に提出するというセレモニーに近いものであった。
前回(6月20日)の傍聴に行っていないので細かい事情はよくわからないのだが、資料を見ながら簡単に分析してみたい。
今回の資料はこちら。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20120704haifu.html
前々回の第18回に歴史的緊急事態における文書作成のあり方についてのとりまとめが出され(解説)、それに基づいて「行政文書の管理に関するガイドライン」の改訂案が提示された。
これについてはパブリックコメントの募集もあり、私も書いて送ったが、結局は文面が変わらずにそのまま決定された。
残ったのは、緊急事態に対応する前提となる日常的な記録作成のあり方についての部分。
これについては第18回で「論点整理」が出されており、私もブログに解説を書いた。
しかし、結局は公文書管理法第4条の「文書の作成」のうち、第2号の「閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯」の定義に関する論点を整理するという点に絞られ、さらに別の委員会を立ち上げて議論を継続することになった。
上記の①から⑤を見ると、かなり地平が広い話だったと思うのだが、「公文書管理委員会」という公文書管理法に関わることを議論することに限定された機関では、できることに限界があった。
また、上記したように任期切れの直前でもあり、大きな議論はしにくいという事情もあっただろう。
そこで「政府の重要な意思決定にかかわる会議に関する議事概要・議事録作成の在り方<論点整理>」が今回承認されて岡田副総理に提出された。
この文書は「論点整理」とタイトルに書かれている通り、何かを決めた報告書ではない。
目的としては「公文書管理制度の観点から、閣議、閣僚会議などの政府の重要な意思決定にかかわる会議の記録作成の確保のために、「議事概要・議事録の作成・一定期間経過後公開ルール」の制度化を提案する」ことが掲げられている。
具体的には、先ほど挙げた管理法第4条第2号に関係して、「閣議」「関係行政機関の長で構成される会議」「省議」の3つについて検討が行われた。
A:閣議
閣議は、これまで議事録・概要は作られていない。
閣議後に行われている閣僚懇談会も同様。
理由としては「閣僚同士の議論は、特に重大な国家機密や高度に政治性を有する事柄をも含め、自由に忌憚なく行われる必要があること、また、内閣の連帯責任の帰結として、対外的な一体性、統一性の確保が要請されている」ので、公開することは適当で無いということで作られていない。
本来「公開しない」=「作らない」ということでは無いはずなのだが、そういう発想が当たり前のように使われている。
情報公開法の不開示規定では隠しきれないのでということらしい。たしかに、第5号の中立性が損なわれるという部分ぐらいしか適用しようがないかなという感じではあるんだが。
今回の報告書では、閣議と閣僚懇談会については議事録・議事概要を作る。そして非公開にした上で、「一定期間経過後公開」という仕組みを作ったらどうかということを提案している。
これは是非とも行うべきだと思う。
英国とドイツの例が資料として挙げられているが、もっと各国の調査をして、適切な公開までの年数も含めてきちんとルール化するべきだろう。
B:関係行政機関の長で構成される会議
2つに分けて書いてある。
一つは法律に基づいた明確な会議については、議事録・概要作成が望ましい。
もう一つは法律に基づかない会議についてだが、決定・了解をしている会議は作成が望ましいという書き方になっている。(逆にそうでないものは作らなくても良いとも読める。)
これらについても、「一定期間経過後公開」ルールを作るべきだと提言している。
「決定・了解」に拘わらず、閣僚が複数参加している以上、このカテゴリーの会議は議事録・概要を作るべきだと思うが。
C:省議
省議については、重要な決定・了解が行われる場合は議事録・概要作成が望ましい。
ただ、行政機関内の会議なので、一定期間経過後公開ルールは必要ない。
省議の定義をするために「制度的な位置付けや、各府省の意思決定過程における所掌事務・権限の明確化などが望まれる」とも提言されている。
この部分で気になるのは、「省議、さらには大臣等との打合せや意見交換などについても、率直な意見交換を損なうおそれ等のために、議事概要・議事録などの記録が作成・保存されないことも多いとの指摘もある。このため、適切な記録の作成・保存を確保していく観点からは、諸外国の実情も把握しつつ、情報公開との関係について運用面も含めた検討を行う必要があると考えられる。」という部分。
省議レベルで公開へのおそれから記録が作られないから配慮しなければというのはどうなんだと。
ここは、そういった記録を作るのがあたりまえという意識をつける努力が必要だと思う。
最後のまとめの部分で「運用上の課題」の部分で、「退職公務員など専門的な知見を有する者の活用なども検討すべき」と書かれている。
今回の会議での委員の方の発言を聞いていると、その退職公務員「など」の部分にアーキビストなどの専門職も含まれているということらしい。
会議の場で三宅委員が「天下りではなく、自分のやった記録を整理して定年まで勤めて辞めるという慣例ができればよい」というようなことを言われていたが、そういう慣例ができると良いと私も思う。
以上がこの報告書の内容と私のコメントになる。
この報告書の内容自体は納得できる部分が多く、きちんとまとめられて良かったと思う。
問題はこれを受けてちゃんと政治の側が動いてくれるかである。
ここまで政権が不安定な状況で、果たして岡田副総理はこのあとの作業に取りかかってくれるだろうか。
せめて、この案件が引き継がれる審議会だけは立ち上げておいてくれると助かるのだが・・・
もちろん政権が代わってしまうとどうなるかわからないが、それ以上に岡田副総理のようなこの問題に熱心に取り組んでくれる人が担当閣僚になる可能性の方がもっと低いので、議論できる形だけでも残しておいてほしいと思う。
最後にこの2年間、公文書管理委員会の委員の方は、制度の立ち上げという重要な時期に本当に頑張って下さったと思う。
良い形で次に引き継がれるといいなと思う次第。
委員会が立ち上がってから翌日で2年となるので、この会議が1期目の最後の会合ということになります。
今回は前回議論したものの最終版を確定して、岡田副総理に提出するというセレモニーに近いものであった。
前回(6月20日)の傍聴に行っていないので細かい事情はよくわからないのだが、資料を見ながら簡単に分析してみたい。
今回の資料はこちら。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20120704haifu.html
前々回の第18回に歴史的緊急事態における文書作成のあり方についてのとりまとめが出され(解説)、それに基づいて「行政文書の管理に関するガイドライン」の改訂案が提示された。
これについてはパブリックコメントの募集もあり、私も書いて送ったが、結局は文面が変わらずにそのまま決定された。
残ったのは、緊急事態に対応する前提となる日常的な記録作成のあり方についての部分。
これについては第18回で「論点整理」が出されており、私もブログに解説を書いた。
しかし、結局は公文書管理法第4条の「文書の作成」のうち、第2号の「閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯」の定義に関する論点を整理するという点に絞られ、さらに別の委員会を立ち上げて議論を継続することになった。
上記の①から⑤を見ると、かなり地平が広い話だったと思うのだが、「公文書管理委員会」という公文書管理法に関わることを議論することに限定された機関では、できることに限界があった。
また、上記したように任期切れの直前でもあり、大きな議論はしにくいという事情もあっただろう。
そこで「政府の重要な意思決定にかかわる会議に関する議事概要・議事録作成の在り方<論点整理>」が今回承認されて岡田副総理に提出された。
この文書は「論点整理」とタイトルに書かれている通り、何かを決めた報告書ではない。
目的としては「公文書管理制度の観点から、閣議、閣僚会議などの政府の重要な意思決定にかかわる会議の記録作成の確保のために、「議事概要・議事録の作成・一定期間経過後公開ルール」の制度化を提案する」ことが掲げられている。
具体的には、先ほど挙げた管理法第4条第2号に関係して、「閣議」「関係行政機関の長で構成される会議」「省議」の3つについて検討が行われた。
A:閣議
閣議は、これまで議事録・概要は作られていない。
閣議後に行われている閣僚懇談会も同様。
理由としては「閣僚同士の議論は、特に重大な国家機密や高度に政治性を有する事柄をも含め、自由に忌憚なく行われる必要があること、また、内閣の連帯責任の帰結として、対外的な一体性、統一性の確保が要請されている」ので、公開することは適当で無いということで作られていない。
本来「公開しない」=「作らない」ということでは無いはずなのだが、そういう発想が当たり前のように使われている。
情報公開法の不開示規定では隠しきれないのでということらしい。たしかに、第5号の中立性が損なわれるという部分ぐらいしか適用しようがないかなという感じではあるんだが。
今回の報告書では、閣議と閣僚懇談会については議事録・議事概要を作る。そして非公開にした上で、「一定期間経過後公開」という仕組みを作ったらどうかということを提案している。
これは是非とも行うべきだと思う。
英国とドイツの例が資料として挙げられているが、もっと各国の調査をして、適切な公開までの年数も含めてきちんとルール化するべきだろう。
B:関係行政機関の長で構成される会議
2つに分けて書いてある。
一つは法律に基づいた明確な会議については、議事録・概要作成が望ましい。
もう一つは法律に基づかない会議についてだが、決定・了解をしている会議は作成が望ましいという書き方になっている。(逆にそうでないものは作らなくても良いとも読める。)
これらについても、「一定期間経過後公開」ルールを作るべきだと提言している。
「決定・了解」に拘わらず、閣僚が複数参加している以上、このカテゴリーの会議は議事録・概要を作るべきだと思うが。
C:省議
省議については、重要な決定・了解が行われる場合は議事録・概要作成が望ましい。
ただ、行政機関内の会議なので、一定期間経過後公開ルールは必要ない。
省議の定義をするために「制度的な位置付けや、各府省の意思決定過程における所掌事務・権限の明確化などが望まれる」とも提言されている。
この部分で気になるのは、「省議、さらには大臣等との打合せや意見交換などについても、率直な意見交換を損なうおそれ等のために、議事概要・議事録などの記録が作成・保存されないことも多いとの指摘もある。このため、適切な記録の作成・保存を確保していく観点からは、諸外国の実情も把握しつつ、情報公開との関係について運用面も含めた検討を行う必要があると考えられる。」という部分。
省議レベルで公開へのおそれから記録が作られないから配慮しなければというのはどうなんだと。
ここは、そういった記録を作るのがあたりまえという意識をつける努力が必要だと思う。
最後のまとめの部分で「運用上の課題」の部分で、「退職公務員など専門的な知見を有する者の活用なども検討すべき」と書かれている。
今回の会議での委員の方の発言を聞いていると、その退職公務員「など」の部分にアーキビストなどの専門職も含まれているということらしい。
会議の場で三宅委員が「天下りではなく、自分のやった記録を整理して定年まで勤めて辞めるという慣例ができればよい」というようなことを言われていたが、そういう慣例ができると良いと私も思う。
以上がこの報告書の内容と私のコメントになる。
この報告書の内容自体は納得できる部分が多く、きちんとまとめられて良かったと思う。
問題はこれを受けてちゃんと政治の側が動いてくれるかである。
ここまで政権が不安定な状況で、果たして岡田副総理はこのあとの作業に取りかかってくれるだろうか。
せめて、この案件が引き継がれる審議会だけは立ち上げておいてくれると助かるのだが・・・
もちろん政権が代わってしまうとどうなるかわからないが、それ以上に岡田副総理のようなこの問題に熱心に取り組んでくれる人が担当閣僚になる可能性の方がもっと低いので、議論できる形だけでも残しておいてほしいと思う。
最後にこの2年間、公文書管理委員会の委員の方は、制度の立ち上げという重要な時期に本当に頑張って下さったと思う。
良い形で次に引き継がれるといいなと思う次第。