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民主党政権と公文書管理制度 [2012年公文書管理問題]

12月16日の総選挙で自民党が大勝し、民主党は下野しました。
2009年に政権に就いてから3年強。この間、公文書管理制度に関する重要な改革がいくつか行われました。
いったい民主党は公文書管理問題で何を達成したのか。まとめてみたいと思います。

1.外交文書の大量公開

鳩山内閣発足時に、岡田克也外相が沖縄返還時の有事の核持ち込み密約などを徹底に調査すると宣言し、有識者委員会を立ち上げた。
その有識者委員会は、報告書で外交文書の積極的な公開についての提言を行った。
これを受けて岡田外相は、作成から30年できちんと公開するという体制を作らなければならないとし、大量の外交文書の外交史料館への移管・公開が現在まで続いている。

これは間違いなく「民主党だったからできた」と言える。
というより「岡田克也氏だからこそできた」と言っても良いかもしれない。

この流れが政権交代でどうなるかは注目したい。

2.公文書管理法の施行への手続き

公文書管理法が2011年4月に施行されるまでの準備は、民主党政権によって担われた。
担当は行政刷新相だったので、仙石由人→枝野幸男→蓮舫→枝野→蓮舫→岡田克也、と変化した。

公文書管理委員会の立ち上げ、施行令制定、各種ガイドラインの策定、各機関の文書管理規則の制定、などなど色々な手続きが行われたが、これらが法律の骨抜きにはならず、法律に沿ったものになっていったのは、やはり情報公開に積極的な大臣の影響があったのかなとも思われる。
要の公文書管理委員に中央官僚出身者が選ばれなかったというのも、やはり民主党政権であって良かったのではないかと思う。

委員の改選も2012年7月に行われたばかりなので、自民党政権下でも委員会に大きな変化はないのではないか。

3.情報公開法改正案

枝野行政刷新相(第1次)の時に、行政刷新会議に「行政透明化検討チーム」が設置され、情報公開法改正へ向けて動き始めた。
チームのメンバーも、情報公開法改正に積極的なメンバーが多く、報告書も前向きな内容であった。
しかし、改正案作成中に東日本大震災が起き、2011年4月22日に閣議決定までは行ったが、その後は完全に放置。
結局衆院解散により廃案に追い込まれた。

内容的にも情報公開の推進のためには必要な改正案だった。
(毎日新聞の12月8日の記事にそのあたりが載ってます。)
http://mainichi.jp/select/news/20121208ddm012070017000c.html
これが廃案になったのは非常に残念。

安倍政権は早速行政刷新会議を廃止したので、改正は遠のいたのは間違いないだろう。

(補足)
上記の毎日の記事の取材を受けた時に、私が記者の方に送ったメールを下に貼っておきます。(読みやすいように若干直した。)

○なぜ情報公開法改正案は廃案になったのか
A:大震災の影響
 大震災直前に改正案が出るとの報道があったが、震災で4月下旬にずれこみ、そのまま忘れられた。

B:民主党の情報公開への姿勢の後退
 政権奪取当初は、情報公開に対して積極的であったため、枝野氏や蓮舫氏が行政刷新相として、情報公開法改正を目指した。
 しかし、震災以後は、秘密保全法案なども提出してくるように、民主党内に情報公開に消極的な勢力が強くなっているように思われる。そのため、情報公開法改正の優先順位が低くなった。
 岡田克也副総理など個人的に推進してくれた人もいた(閣議の文書を残すなど)が、総体として積極的とは言い難いところがあった。

C:ねじれ国会の影響
 自民党はもとより情報公開に消極的(公文書管理法はたまたま福田氏が首相になったから通った)。よって、民主自民の全面対決になってしまった状況ではいかんともしがたかった。
 公文書管理法の際には、自民に上川陽子氏がいて、枝野氏や西村智奈美氏などと繁雑に連絡が取れていた。だが上川氏が落選して、自民側にこの問題に関心のある実働部隊が居なくなったのも大きい。
 逢坂議員などが今年になって動いていたが、実を結ばなかったのもこのあたりの影響もあるのではないか?

D:国民的な関心が薄い
 議事録未作成問題だけでなく、SPEEDIの問題など、情報公開に関わる問題は色々とあったはず。だが、それが情報公開法という「基礎」の改正に目が行かなかった。
 これは市民運動の方々に言えることのように思うが、個別の政策に目が行きすぎていて、その基礎となる情報開示などを問題にしきれていないのではないか(もちろん気づいているかたもおられるが)。
民主主義のインフラとなる制度であるがゆえに、関心から抜け落ちやすいように思う。

(以上)

4.原子力災害対策本部の議事録未作成問題

2012年1月に発覚した問題。
正確にはそれ以前から問題になっていたのだが、岡田副総理が調査を命じたことで実態の酷さが浮き彫りになり、大きく報じられることになった。

この問題の解決策を公文書管理委員会が提言することになり、「歴史的緊急事態」の際の記録作成についての規程を組み込むために、「行政文書の管理に関するガイドライン」が改正された。
そしてこの問題から波及して、閣議や閣僚懇談会、閣僚会議の議事録のあり方を考える検討チームが作られ、閣議・閣僚懇談会の議事録を作るべきという報告書が出たところで時間切れ。
議事録を作るためには、それを30年間非公開にするための情報公開法及び公文書管理法改正が必要だったので、法律の改正が行われないと議事録は作られない可能性が高い。

この改正を果たして自民党は行うかというのが大きな問題。
閣議や閣僚懇談会の議事録作成は、未来の国民に対する説明責任であり、それは政権の中身を問わずに行われるべきである。

ただ、自民党は基本的に情報公開問題については極めて消極的な政党。
担当相はおそらく稲田朋美行政改革相だと思われるが、果たしてこの問題を引き継いでくれるか注目したい。

まとめると、民主党というよりも、岡田克也、枝野幸男という、この問題に関心のある政治家が大臣にいる時に、良い方向に進んだという印象。
もちろん、この2名の足を引っ張る人もほとんどいなかったという意味で、民主党政権であったことは重要であったと思う。
公文書管理法施行時に民主党が政権にいたことは良かったのではないか、というのが私の結論。

一方、議事録未作成問題に見られるように、現場ではまだ公文書管理法が浸透していないということも浮き彫りになっており、定着までの努力がまだまだ求められる。

これからの自民党政権下で果たして公文書管理問題は進むのか、停滞するのか、あるいは逆行するのか。
きちんと情報を集めながらブログでも紹介していければと思う。

本年の更新はここまで。
お読みいただきありがとうございました。また来年もよろしく御願いします。
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