SSブログ
2014年公文書管理問題 ブログトップ
前の10件 | -

特定秘密以外の秘密文書の統一基準問題 (3)私のパブコメ [2014年公文書管理問題]

2014年12月17日、政府は「行政文書の管理に関するガイドラインの一部改正案についての意見の募集について」のパブリックコメントを開始しました。
締切は翌年1月6日です。

今回のガイドライン改定の主な狙いは、特定秘密「以外」の各行政機関に存在する秘密文書の統一基準の作成となります。

なお繰り返しになりますが、この問題に注目するのは、特定秘密保護法の濫用を防ぐためでもあります。
濫用を防ぐには、そもそもとして政府全体が所有している秘密文書を最小限に留めることや、いずれはきちんと公開されて検証できような仕組みの導入が必要なのです。

秘密文書全体の管理方法を厳密化することで、特定秘密指定自体も最小限に食い止めることが可能となります。
特定秘密だけを見ていては、木を見て森を見ずとなってしまいます。

第1回で、現在の「特定秘密以外の秘密文書」の管理について述べました。
第2回は、その改正案の解説をしました。
今回は最後に私が書いたパブリックコメントを挙げておきます。

具体的にはすでに前回のブログで解説をしていますので、細かくは説明しません。
読みやすさを考慮してレイアウトを変更してあります。

文中の「改正案」はこれです。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000121224


「行政文書の管理に関するガイドラインの一部改正案についてのパブリックコメント
2014年12月25日
瀬畑 源

・ガイドラインの「第6 行政文書ファイル管理簿」の改訂を行い、秘密文書(特定秘密も含む)の存在の有無、秘密の指定期限などを記載する欄を設けるべきである。

 改正案7頁の「第10 2(5)」において、「秘密文書は、秘密文書を管理するための簿冊において管理するもの」とされ、秘密文書管理簿を別に作成して、秘密指定はそこで管理をするとされている。しかし、行政文書ファイル管理簿との事実上の二重帳簿になっており、前者を見てもその文書に秘密文書が含まれていたかどうかはわからない。なお、特定秘密も同様の仕組みになっている。
 よって、「秘密文書(特定秘密も含む)の存在の有無」などの欄を行政文書ファイル管理簿に設け、秘密指定解除後に検証を行いやすくするべきである。なお、秘密指定中ならば、この欄を情報公開法に基づいて非開示にすることが可能であり、欄があること自体に問題はない。また、保存期間の満了の際の移管・廃棄の判断を行う際に、誤って「歴史公文書等」にあたるものの誤廃棄を防ぐためにも重要である。


・ガイドラインの「第8 点検・監査及び管理状況の報告等」のそれぞれの項に、秘密文書の点検・監査・報告を重点的に行うことを明記するべきである。

 秘密文書の適切な管理は、国民に対する責務というだけではなく、内部統制のためにも必要なはずである。よって、管理を徹底化するための点検や監査などの仕組みを、より厳密にすることをガイドラインに明記するべきである。

〔注:上記の2つは、今回の改正案に入っていなかった箇所に「追加すべき」ものとして挙げました。〕


・「第10 2(1)」解説部分(8頁)にある、「原則として、極秘文書及び秘文書の2つに区分し指定する」のうち、「原則として」は削除するべきである。

 今回のガイドライン改正は、これまで各行政機関に任されてきた秘密指定を統一化するために行われるものである。そこに「例外」を作ることは、現在の各行政機関独自の秘密指定制度を残すことに繋がるため、今回の改正自体を無意味にする可能性が高い。よって、「極秘」「秘」の2つの分類に、全ての秘密文書を合わせるべきである。
 ただ、どうしても「原則として」を残さざるをえないとするのであれば、例外にあたる秘密文書は「極秘文書と同様の文書管理を行うこと」(秘密指定期間など)をガイドラインに明記するべきである。また、例外規定を作成する場合は、公文書管理委員会の同意が必要であることを明記し、規定の公開を義務づけるべきである。
 秘密指定制度自体への国民の不信感の大きさは、特定秘密保護法への反対運動の大きさからもうかがえる。そのために、透明性のある仕組みの構築をするべきである。


・「第10 2(1)」の「極秘」「秘」文書の定義が曖昧であるため、特定秘密保護法における「別表」(特定秘密に指定できる情報の限定)と同様の規定を、各行政機関で作成される規定の中に、この作成義務を盛り込むべきである。

 特定秘密保護法において、「別表」が存在していても、指定範囲が広がることへの懸念が表明されていた。今回の「極秘」「秘」については、その「別表」にあたるものすらも、作成義務を各行政機関は負っていない。このため、無制限に指定範囲が広がる危険性がある。
 秘密指定を最小限に抑えることは、秘密文書を各行政機関がきちんと管理するためにも必要な措置である。よって、各行政機関に対して、秘密指定の可能な情報類型を規定に組み込なければならないという義務を、ガイドラインに入れるべきである。


・「第10 2(2)」の「秘文書」も、秘密指定の期間を「5年を超えない」と限定する。また、秘密指定の期限が満了した際に延長手続きが取られなかった場合、秘密を「自動解除」するようにするべきである。

 「極秘文書」は特定秘密に準じた期間設定をしているが、「秘文書」については全く限定がなく、無制限に指定が可能となっている。これも同様に「5年を超えない」といったような期間の限定を行い、満了時に指定の見直しを行うことを可能にするべきである。また、「秘文書」の場合、件数が多い可能性も高く、見直しが繁雑になることも想定されるので、延長手続きが取られなかった秘密指定は、自動的に解除される規定をガイドラインに入れるべきである。


・「第10 2(7)」の「管理状況」への大臣への報告義務についての解説部分(9頁)にある「秘密文書の管理状況については、第8-3-(1)の管理状況の報告事項とすることを予定している」の「ことを予定している」を削除すること。

 秘密文書の管理も、公文書管理法に基づいて行われる以上、管理状況の報告は管理法上の義務である。報告内容は、「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」の34-35頁に準じるものとするよう、報告の項目をガイドラインに列挙するべきである。


・改正案13頁「平成29年度末を目途に必要な措置を完了するよう努めるもの」とあるが、これを平成27年度末にするべきである。

 すでに公文書管理法が施行されて4年近くが経過しており、秘密文書の管理が徹底されるまでに3年かかるというのは、明らかに過剰な期間設定と考える。少なくとも1年以内には完了すべきである。


・改正案19頁「モデル要領」の「第13 秘密文書の管理の適正に関する通報」に関連する規定は、ガイドラインに新たな項目を立て、特定秘密における内部通報制度と同等の仕組みを構築するべきである。

 モデル要領のこの部分は、他に一切の説明が無い。公益通報者保護法に則って置かれているのならば、保護法自体が犯罪行為(刑罰規定に違反する行為)にあたるものしか保護していないため、ここで規定されている「秘密文書の管理が本要領に従って行われていないと思料した者は、○○(例:法令遵守対応窓口等)に通報できる」に適用されるのか疑問である。
 また、秘密指定の不正を通報した場合、具体的に対応する仕組みが全く述べられていない。よって、この規定は形式的に置かれているにすぎず、機能させることを意識しているとは思えない。
 秘密指定制度の適正な運用を担保するためには、公益通報制度は重要な役割を担っている。よって、最低限、特定秘密保護法における内部通報制度に準ずる統一的な仕組みをきちんと構築するべきである。

以上

連載はこれで終わりです。なにか御質問などがあればtwitterなどでご連絡下さい。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

特定秘密以外の秘密文書の統一基準問題 (2)ガイドライン改正案 [2014年公文書管理問題]

2014年12月17日、政府は「行政文書の管理に関するガイドラインの一部改正案についての意見の募集について」のパブリックコメントを開始した。
締切は翌年1月6日である。

今回のガイドライン改定の主な狙いは、特定秘密「以外」の各行政機関に存在する秘密文書の統一基準の作成である。

前回の記事で、現在の「特定秘密以外の秘密文書」の管理について述べた。

今回は解説の第2回。

なお、この問題に注目するのは、特定秘密保護法の濫用を防ぐためでもある。
濫用を防ぐには、そもそもとして政府全体が所有している秘密文書を最小限に留めることや、いずれはきちんと公開されて検証できような仕組みの導入が必要である。

秘密文書全体の管理方法を厳密化することで、特定秘密指定自体も最小限に食い止めることが可能になるのだ。
特定秘密だけを見ていては、木を見て森を見ずとなってしまうので注意が必要である。

今回の記事は相変わらず長いですが、気長におつきあい下さい。
しかも技術的な話なのでわかりづらいかもしれません。かみ砕いて説明しているつもりではありますが・・・。

(2)ガイドライン改正案

「特定秘密以外の秘密文書」(以後「秘密文書」)の統一基準を決めるために、「行政文書の管理に関するガイドライン」の改正案が政府から提示されている。
このガイドラインは公文書管理法に基づくものであり、行政文書の管理はすべてこれに基づいて行われることを原則としている。
なので、ガイドラインに基準が書き込まれれば、必然的に各行政機関はこれに従う義務が発生することになる。

改正案は新旧対照表が見やすいので、こちらの方が分かりやすいかもしれない。

今回の改正案は、ガイドラインに「第10」を新設して、秘密文書に関する規定を付け足す形になっている。
1項目ずつ見ていきたい。

第10 公表しないこととされている情報が記録された行政文書の管理

特定秘密である情報を記録する行政文書の管理
 特定秘密(特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)第3条第1項に規定する特定秘密をいう。以下同じ。)である情報を記録する行政文書については、この訓令に定めるもののほか、同法、特定秘密の保護に関する法律施行令(平成26年政令第336号)、特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(平成26年10月14日閣議決定)及び同令第12条第1項の規定に基づき定められた○○省特定秘密保護規程に基づき管理するものとする。


まず、1では「特定秘密」に関する規定も、ついでとばかりに放り込まれている。
要するに、特定秘密保護法やその運用基準で細かいことは決めたからそちらを見ろということである。

(5)でも書くが、事実上の「二重帳簿」になっていることが大きな問題である。
これについては、すでに以前にブログに書いたことがある。

特定秘密保護法関連のパブコメについて(4)特定秘密指定管理簿
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-07

「特定秘密」も公文書管理法の適用を受けるので、すべての行政文書が登載される「行政文書ファイル管理簿」に情報が記載される。
ただし、今の行政文書ファイル管理簿の仕組みでは、特定秘密であるかどうかはわからない。

以前から私は、行政文書ファイル管理簿に「特定秘密であるか否か(過去も含む)」の欄を作ること、特定秘密の期間はファイル名自体を非公開にしてもかまわないこと(情報公開法上可能)、特定秘密の指定が解除された際には過去に特定秘密であったことが外部から分かるようにすること(検証のため)、を主張している。

ただ、最近公文書管理委員会の議事録を見て気づいたのだが、どうやら内閣情報調査室は「特定秘密」が含まれる文書を「ファイル名を曖昧にして行政文書ファイル管理簿に載せる」ように指導しているようなのだ(公文書管理委員会第38回議事録、2014年8月1日、8頁)。
これは、「特定秘密隠し」を指導しているとしか思えない。

つまり「ファイル名を公開している」と見せかけて、名称を曖昧にすることで内容をわからなくさせ(特定秘密が解除された後も)、廃棄のチェックをすり抜けることも容易にさせようとしている(チェックする側がファイル名から重要度が分からない)。
せめて、過去に特定秘密であったことがわかるような記載欄があれば良いが、それが存在しない以上、簡単に他の文書に紛れ込ませて特定秘密を廃棄することが可能になってしまう。

つくづく思うのだが、特定秘密保護法にしろ、今回の秘密文書統一規定にしろ、現行の「行政文書ファイル管理簿」を蔑ろにし、二重帳簿で管理して最終的な廃棄をやりやすくさせようとする制度設計をしているようにしか見えない。
秘密制度の導入を正当化するなら、きちんと残して公開する仕組みを担保しなければならないのだが、そこに対する意識の低さには唖然とするところがある。

次からが今回の本題。

2 特定秘密以外の公表しないこととされている情報が記録された行政文書のうち秘密保全を要する行政文書(特定秘密である情報を記録する行政文書を除く。以下「秘密文書」という。)の管理

(1) 秘密文書は、次の種類に区分し、指定する。
 極秘文書 秘密保全の必要が高く、その漏えいが国の安全、利益に損害を与えるおそれ
       のある情報を含む行政文書
 秘文書  極秘文書に次ぐ程度の秘密であって、関係者以外には知らせてならない情報を
       含む極秘文書以外の行政文書


秘密文書は「極秘」と「秘」の2つで統一する。これまでの「機密」が無くなった。

ただ、この解説にあたる部分で、「原則として、極秘文書及び秘文書の2つに区分し・・・」(改正案8頁)と記載されており、「原則として」という不穏な言葉が入っている。

この言葉が存在すると、これまで各行政機関が勝手に作ってきた秘密文書カテゴリーを容認する余地を残すことに繋がってしまう。
今回は基準の統一化が目的である以上、この2つのカテゴリーに全てを当てはめさせるべきである。
なので、「原則として」は外させる必要があるだろう。

また、ここに書かれている「極秘」と「秘」の違いはかなり曖昧である。
各行政機関によって事情が異なるので、統一基準での限定は難しいだろう。
ただ、ほおっておくと曖昧に拡大するので、各行政機関ごとに「特定秘密」の別表のような、具体的な情報類型の設定を行うことの義務化は求めてよいと思われる。


(2) 秘密文書の指定は、極秘文書については各部局長が、秘文書については各課長が期間(極秘文書については5年を超えない範囲内の期間とする。(3)において同じ。)を定めてそれぞれ行うものとし(以下これらの指定をする者を「指定者」という。)、その指定は必要最小限にとどめるものとする。
(3) 指定者は、秘密文書の指定期間(この規定により延長した指定期間を含む。)が満了する時において、満了後も引き続き秘密文書として管理を要すると認めるときは、期間を定めてその指定期間を延長するものとする。また、指定期間は、通じて当該行政文書の保存期間を超えることができないものとする。


「極秘文書」は「特定秘密」と同様に5年以内の期限を切って(2)、満了時に延長するかを見直す(3)ことになる。
また、文書自体の保存年限を超えて秘密指定を行うことができなくなっている。

これは、「特定秘密」とのバランスを考えたということになるだろう。

ただ、なぜ「秘文書」には期限が何も書かれていないのかが理解に苦しむ。
極秘よりも短くても大丈夫なはずなのだから、例えば5年以内で原則延長不可みたいな制度にするべきではないのか。

なお、情報公開クリアリングハウスの調査によれば、各行政機関においては、秘密文書の「指定期間」の設定を義務づけているケースがほとんどのようである(4頁)。
なので、こういった年限制度自体は受容される可能性が高いように思われる。

ただ、期限満了後に自動的に指定解除になる仕組みは半分程度しか導入されていなかったとのこと。
つまり、期限満了した後も、秘密が指定されたまま放置されているケースが認められてしまっている。

なので、「延長手続き」が採られなかった文書については、「自動秘密解除」の仕組みが必要不可欠だと思われる。


(4) 指定者は、秘密文書の管理について責任を負うものを秘密文書管理責任者として指名するものとする。

「極秘」は官房長・局長クラス、「秘」は課長クラスが指定する。
1965年の規定にも似たようなものがあるが、今回は「責任者」であることが明記されたことであろうか。

この項目は特に問題はないだろう。


(5) 秘密文書は、秘密文書を管理するための簿冊において管理するものとする。

この「簿冊」というのは、「秘密文書管理簿」のことを指す。
「特定秘密」と同様に、二重帳簿を作って秘密の指定や解除はそちらで管理をするということである。
すでに、上記の「特定秘密」の所で述べたので繰り返さないが、「行政文書ファイル管理簿」上で秘密指定も管理するべきだと思う。


(6) 秘密文書には、秘密文書と確認できる表示を付すものとする。

これも「特定秘密」と同様の仕組み。これまでも当然存在している(ハンコを押したりする)。


(7) 総括文書管理者は、秘密文書の管理状況について、毎年度、○○大臣に報告するものとする。

これは新しい仕組みであり、かつ重要な部分。
前回の記事でも紹介したが、おそらく各行政機関では、自分達がどのくらい秘密文書を持っているかを把握できていない(各部局でも把握できているか怪しい)。

管理状況を報告する義務が発生すれば、当然件数などは報告対象になる。
また、この数字は公文書管理法上の「管理状況の報告」に含まれる「予定」と解説で述べているので、「特定秘密」と同様に公表されることになるのだろう(改正案9頁)。

どこまでが報告対象になるのかがわからないが、公文書管理法上の報告になるので、おかしな点があれば公文書管理委員会が説明を求めることも可能なので、最低限の濫用の歯止めにはなるかもしれない。


(8) 他の行政機関に秘密文書を提供する場合には、あらかじめ当該秘密文書の管理について提供先の行政機関と協議した上で行うものとする。

これも「特定秘密」と同様の措置。

解説の部分を見ると、国会に対しても同様の対応を要求するとのこと。
「国会の秘密文書に係る保護措置等を踏まえ、適切な対応を行う」改正案9頁)との言い回しなので、国会に必ず提供するとは限らないというようには読める。
このあたりは、国会側の規定次第ということになるのだろうか。


(9) 総括文書管理者は、この訓令の定めを踏まえ、秘密文書の管理に関し必要な事項の細則を規定する秘密文書の管理に関する要領を定めるものとする。

このガイドラインに基づいて、秘密文書に関連する規則を各行政機関は作らなければならないということである。


なお、このための「モデル要領」(改正案10頁以降)が記載されている。
ほとんどはこれまで述べてきたことを、具体的に規則に落としたものであるが、いくつか重要なことが追加されている。

一つ目は「廃棄」の問題
モデル要領には次のように書かれている。

第10 秘密文書の廃棄
 1 秘密文書の廃棄に当たっては、歴史公文書等を廃棄することのないよう留意すること。
 2 秘密文書の廃棄は、焼却、粉砕、細断、溶解、破壊等の復元不可能な方法により確実に
   行わなければならない。


文書の保存期間が満了して、国立公文書館等に移管して永久保存するか廃棄するかを決める時に、秘密指定が解除されていない。
つまり、秘密文書のまま、移管・廃棄の判断がされるということである。
これは、必ず解除される「特定秘密」との大きな違いになる。

1の「歴史公文書等を廃棄することのないよう留意」はスローガンとしては必要ではあるが、これをどうやって担保するのかが重要。

制度設計をしている内調は、「特定秘密」や「極秘」を設定したかどうかは、原則として永久保存するかの判断基準では無いという態度を取り続けている。
つまりガイドラインの別表第2で移管と決まっている情報を移管するということである。

これは、一見すると制度を忠実に守っているように見えるが、逆に言えば、制度を守ることで特定秘密や極秘などの文書を他の文書に紛れ込ませようとしているようにも見える。
ここのズレをどうやって埋めるのかは、管理簿の問題も含めて重要だと考えている。

もう一つ「モデル要領」で気になるのは、内部通報者制度が組み込まれていることだ。

第13 秘密文書の管理の適正に関する通報
 1 秘密文書の管理が本要領に従って行われていないと思料した者は、○○(例:法令遵守対応   窓口等)に通報できる。
 2 ○○に通報又は相談をしたことを理由として、通報者又は相談者に対し不利益な取扱いを   してはならない。


「特定秘密」に合わせたのだと思うが、他の部分に一切解説も無く、唐突に「モデル要領」の中に現れるので、どう判断して良いのか困る。
制度をきちんと整備するならば、別に項目を立てて「特定秘密」の運用基準並みの解説はするべきだ。
これだけだと、行政機関の側だって戸惑うだろう。

あと気になる所は、解説の部分に、この規程は「平成29年度末を目途に必要な措置を完了するよう努めるもの」改正案10頁)とすると書かれている。
このガイドラインの改正は、2015(平成27)年4月から適用されると思われるので、3年間の猶予が各行政機関に与えられるということになる。

正直長いと思う半面、このぐらい時間をかけないと、カオスな状態になっている秘密文書のコントロールを各行政機関自体が取り戻すことが不可能だと考えられているのだろうと推測せざるをえない。
もっと早くするべきという主張はパブコメでするとは思うが、現在の秘密文書の管理状況は相当に末期的なのかもしれない。


まとめると、結局、公文書管理法の改正を行わず、現在の仕組みを変えることなく、これに秘密保護制度を接ぎ木しようとしていることに問題があるように思われる。
今後の公文書管理法の見直しと合わせて、この秘密保護制度を全体としてどうコントロールしていくかを考えていく必要があると思われる。

長くなりましたが以上です。次回は私の書いたパブコメを載せます。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

特定秘密以外の秘密文書の統一基準問題 (1)現在の制度 [2014年公文書管理問題]

2014年12月17日、政府は「行政文書の管理に関するガイドラインの一部改正案についての意見の募集について」のパブリックコメントを開始した。
締切は翌年1月6日である。

今回のガイドライン改定の主な狙いは、特定秘密「以外」の各行政機関に存在する秘密文書の統一基準の作成である。

特定秘密保護法でよく勘違いをされるのだが、「特定秘密」はあくまでも外交や防衛、テロ対策などに該当する秘密文書を指定して罰則を強化したものであり、それ以外にも秘密文書は腐るほど存在する。
特定秘密はむしろ「氷山の一角」に過ぎない。

これまで、秘密文書の取扱いは各行政機関に丸投げされてきた。そのため、指定も管理もずさんきわまりない状態が続いている。
この制度に詳しい情報公開クリアリングハウスの三木由希子さんからうかがった話だと、おそらく各行政機関は秘密文書をどのくらい持っているのか自分達で把握できていないとのことだ。
なので、統一基準ができること自体には私は賛成である。

また、統一基準を作ることは、政府の側にとっても必要なことだったと思われる。
特定秘密以外の秘密文書をきちんとコントロールすることは、秘密漏洩の防止などに繋がるので、基準を作らないとさすがにまずいと考えたのだろう。

さて、この統一基準だが、当然無条件で政府案に賛同できるものでないことは確かである。
特定秘密保護法案の審議を見るだけでもわかるとおり、官僚の側はできるかぎり秘密を広げようとする傾向がある。

よって、この機会に、過剰に秘密が設定されないような仕組みを構築し、重要な文書はきちんと保存されて公開されるような仕組みをきちんと整備する必要があるだろう。

今回の連載では、まず現在の制度の解説から始め、次にガイドラインの改正案の解説、最後に自分のパブコメを公開するという流れで書いていきたい。


(1)現在の制度

特定秘密以外の秘密指定は、そもそも何を根拠にして行われているのか。
実は、今からほぼ50年近く前に出された、1965年4月15日の「秘密文書等の取扱いについて」(事務次官等会議申合せ)に基づいて行われている。

「秘密文書等の取扱いについて」(1965年4月15日事務次官等会議申合せ)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2014/20140801/20140801haifu3-1.pdf

この規定は、1965年に自衛隊で行われていた有事想定演習(いわゆる「三矢研究」)が社会党の議員によって暴露されて大問題となった事件をきっかけに、各行政機関の事務次官等による申合せによって整備されたものである(1953年に元になった申合せがあり、それを改訂したもの)。

これによれば、

2 秘密文書は、原則として次の種類に区分すること。
 極秘 秘密保全の必要が高く、その漏えいが国の安全、利益に損害を与えるおそれのあるもの。
     ただし、「極秘」のうちその秘密保全の必要度がきわめて高度のものを「機密」とすることが
     できるものとすること。
 秘   極秘につぐ程度の秘密であって、関係者以外には知らせてならないもの。


とされ、「機密」「極秘」「秘」という分け方がされているということがわかる。他に管理の仕方などが書かれている。

なお、この文書には、「不要の秘密文書は、必ず焼却する等復元できない方法により処分すること」という規定があり、政府全体の方針として秘密文書を廃棄処分して後世に残さないことが決められている。
「防衛秘密」が粛々と廃棄されていたのは、防衛省の体質という問題だけではなく、こういった日本の行政機関全体に存在する「秘密は捨てる」という文化に影響されているということだろう。

ただ、この申合せは原文を見てもらえればわかるが、かなりザックリとしたことしか書かれていない。
その理由は、私が色々なところで書いてきたが、公文書管理が各行政機関に任されてきたからである。

つまり、ザックリとルールは作るから、あとは各機関できちんとやってねということである。
これで50年間もこの申合せは使われてきたのである。

ただ、いくらなんでも、このザックリとした基準では、秘密文書の管理はきちんと行えなかった。
特に2000年代に入って、ネットからの情報漏洩などが本格化する中で、「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」(2005年から。最新は2014年版)や「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」(2007年作成、2009年から施行)などを作成し、上からかぶせるようにセキュリティーを強化する方針を取ってきた。

内閣府が作った現在の「秘密情報等を記録する行政文書の相互関係」の図が下記のリンクにある(「情報の管理の在り方に関する検討チーム」第2回資料1、2014年7月18日)。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/joho_kanri/dai2/siryou1.pdf
無題.jpg
(注はリンク先で)

この図の記述は

「機密性1、2、3情報」・・・「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」
「機密」「極秘」「秘」・・・「秘密文書等の取扱いについて」
「特別管理秘密」・・・「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」
「特定秘密」・・・特定秘密保護法


で根拠が分かれている。
また、「機密性2」より内側の情報は、情報公開法上の「不開示情報」と書かれており、この内側は請求しても墨塗りされて公開されない部分だと言える。

具体的に説明は省略するが、要するに「複層化していてなんだかよくわからない」ということだけ分かってもらえれば良いと思う。
しかも、この図は最も単純な分け方であり、秘密文書の区分けは、各行政機関独自のものが他にも様々な形で存在している。

ただ、根本的な管理方法自体にメスを入れずに、上から色々なものをかぶせても限界はある。

なお、「特定秘密」制度は、管理方法にメスを入れられないから、罰則を強化することで漏洩を防ごうとする発想で作られている(だから、秘密指定の範囲の限定が甘くなっている)。
本来ならば、特定秘密保護法を作る前に、この統一基準を整備して秘密文書の管理を徹底し、その上で、必要ならば特定秘密保護法を作るというのが筋論だったはずである。

脱線したので戻す。

そこで、この相互関係をスッキリさせようというのが、今回の統一基準の作成ということになるのだろう。
ただ、すでに「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」はそのまま運用すると官僚側は決定しており(情報管理の在り方に関する検討チーム第2回会合議事概要、2014年7月18日)、これ(機密性1,2,3情報)と特定秘密以外の秘密指定に関する部分をできる限り統一化しようということのようだ。

次回からは、では政府はどういう提案をしてきているのかについて解説してみたい。


なお、今回の記事の参考として次の二つを挙げておく。

一つは、私が書いたものだが、「日本における秘密保護法制の歴史」『歴史評論』2014年11月号で、戦後の秘密保護制度の変遷については簡単に述べておいた。興味がある方はぜひ。


もう一つは、情報公開クリアリングハウスが作成した「政府の秘密指定・保護制度に関する調査結果」(2014年11月7日)。
各行政機関における秘密指定に関係する規則を片っ端から情報公開請求して公開させた調査結果。
これを見ると、「秘密文書等の取扱いについて」にあるような「機密」「極秘」「秘」だけでなく、別のカテゴリーの秘密指定文書が様々な行政機関に存在することがよくわかる。
非常に参考になるので、是非とも御覧いただければと思う。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

公文書管理法5年見直しについての合同研究集会 [2014年公文書管理問題]

2014年12月20日、日本アーカイブズ学会などが主催した「公文書管理法5年見直しについての合同研究集会」に聴衆として参加した。
この「5年見直し」の話は重要なことなので、シンポの内容を私の視点からではあるが紹介してみたい。

「公文書管理法」は2011年4月に施行された法律である。
公文書の作成、管理を初めとして、最終的に廃棄するか永久に残すかの方法などを統一的に定めた法律である。
この法律によって、日本ではやっと各省庁統一の文書の管理基準ができることになった(それまでは捨てるも残すも各省庁任せ)。

公文書管理法は、原子力災害対策本部の議事録未作成問題や、昨年の特定秘密保護法案の審議でなんども取り上げられた。
この法律がなければ、公文書の未作成や隠匿といったようなことも、法的には大きな問題とならなかったかもしれない。

さて、この公文書管理法は「附則」に次の文言がある。

第13条 政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況を勘案しつつ、行政文書及び法人文書の範囲その他の事項について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2  国会及び裁判所の文書の管理の在り方については、この法律の趣旨、国会及び裁判所の地位及び権能等を踏まえ、検討が行われるものとする。


施行後5年を目途として、法律のあり方を見直すということがうたわれている。
すでに、内閣府は予算を今年度から獲得して、内々では見直しの準備は行っているようである。

施行後5年は2016年3月末である以上、見直しの作業は来年度に行われることは間違いないだろう。
情報公開法の時にも同じような附則があり、有識者会議が開かれて報告書が作成された。ただし法改正には至らず、コピー代が下がるなどといった微修正のみで終わった。

そこで、日本アーカイブズ学会などの文書管理に詳しい各団体が、現在の公文書管理法をどうやってより良いものに変えていくのかを公開シンポで論議することになったのが今回の催しである。

内容を紹介してみたい。
もちろん私が聞き取ったまとめなので、御本人の意図とは異なる可能性があるので注意してください。


冒頭で講演を行ったのは高山正也・国立公文書館フェロー(前国立公文書館長)
内容は、

・立法府と司法府での公文書管理の問題は、司法府は最高裁長官と協議してそれなりに進んだが、立法府が全く進んでいない。衆議院と参議院のどちらが窓口になるのか、公文書管理に興味があると思われる国会図書館との関係をどうするのかなど、立法府側の体制がはっきりしない。国会議員の中から気運が高まれば良いが・・・

・公文書管理法制定時に、附帯決議が衆議院で15参議院で21も付いた。これだけ付いたということは、制定当時からまだまだ不完全なものだと考えられていた証拠。ただ、全てを現在直せるかというのは残念ながら厳しい(それをできる体制がない)。優先順位はどこなのか、基盤部分を直すとしたらどこなのかを考えていく必要がある。

公文書管理法が議論の前提・常識となるような社会(行政機関の職員だけでなく主権者の側も)を作っていくためにも、研修制度の充実化が課題。そこに金も人もかけていく仕組みをもっと整備しないといけない。

・アーキビスト関係の資格制度が乱立している状況があり、資格の基盤となる理論体系の不在が問題。つぶし合いではなく、共通した基盤を作っていくための話し合いは必要ではないか。

他にも様々な論点を挙げておられた。

次に、パネルディスカッションでの4名の発言を紹介してみる。

早川和宏・桐蔭横浜大学大学院教授(行政法)
・公文書管理法は「基本法」。「特別法」が別にできてしまうと骨抜きになってしまう(ちなみに特定秘密保護法は「特別法」ではない)。特別法がしっかりしていればいいのだが、そうでないと抜け道がいくらでもできてしまうのは注意したい。

独立行政法人に「国立公文書館等」(文書を移管できるアーカイブズ)がほとんど存在しないことをどうにかしなければならない。

「特定歴史公文書等」(国立公文書館等に移管された公文書)への利用請求権を明示化するべき(現在は機関側が利用させる義務を負っているのみ)。

・専門職員の配置や外部監査制度など、公文書管理がきちんと行われているかをチェックする制度を充実させる必要がある。


西川康男・ARMA International 東京支部会長
・「特定秘密」の国立公文書館への移管の義務化や、隠蔽するための廃棄への罰則などが必要。

・国立公文書館を米国の国立公文書館のような権限を持つ機関に拡充するべき。専門職の配置や施設の充実化も必要。

電子公文書の利用を原則とし、その保存や管理に関する施策をもっと充実させる必要。

・地方公共団体に公文書管理条例を広げていくために、自治法や行政法などとの関係を明確にしていく啓蒙活動が必要(報告書を作成中とのこと)。


小高哲茂・群馬県立文書館公文書係指導主事
・公文書管理法ができて、公文書管理条例や地方公文書館の設立が進んできたが、まだまだ不十分。公文書管理法を地方に適用することも、自治体それぞれの事情が多様であり難しい。また予算減や職員数減もあって体力が落ちている。

・国立大学法人に「国立公文書館等」を置く際に要求される施設などのハードルが高すぎることが問題。

・「国」として現場の声を拾って様々な検証を行ってほしい。実態の把握をすすめ、それに合わせた施策が必要。

・管理法の中に、定期的な公文書管理政策の作成を必要とする文言を入れ、見直しが常に行われ続けるようにする仕組みが必要。

・専門職員を「当分の間」置かなくてよいとされた「公文書館法」の改正も視野に入れながら、地方や国立大学法人などの公文書も残るような、全国的な公文書管理政策振興による底上げが不可欠。

・特定秘密保護法と公文書管理法の整合性も、十分検討されるべき。

・アーカイブズ関連団体の連携を軸とした、国への強力な陳情を行える状況の構築。


古賀崇・天理大学准教授(記録管理学)→レジュメを御本人がアップロードしています
・「情報法」の枠組みの中で、「情報の自由な流通原則」などの視点から、「特定歴史公文書等」の公開の際に考慮される「時の経過」を考える必要。

・国立大学法人におけるアーカイブズを作るための基準の見直し(現在は基準が厳しすぎる)。

公文書管理法を情報公開法や個人情報保護法などとセットで捉えた上で、どのように改正するかを考える必要があるのではないか。

「デジタルアーカイブズ」が政府によって推進されているが、これとの関係をどうやって整理するか。その推進の担い手である国立国会図書館との関係をどうやって整理するのか。


以上がパネリストの意見。

まず共通しているのは、独立行政法人(特に国立大学法人)における「国立公文書館等」の設置問題。

公文書管理法においては、独法の公文書(法人文書)は国立公文書館に移管することができるが、国立公文書館はスペースの問題などもあり、事実上これを拒否している。
そのため、独法の保存期限が満了した公文書のほとんどは廃棄処分されている。

本来は、各独法が「国立公文書館等」にあたる施設(アーカイブズ)を作って、そこで文書をきちんと管理して公開する仕組みができればいいのだが、国が定めたガイドラインにおける「国立公文書館等」の設置の要件が厳しい。
国の中央館たる国立公文書館と同等の施設を事実上要求しているため、当然資金や人員に余裕の無い独法は二の足を踏むことになった。
アーカイブズを持っている独法ですら「国立公文書館等」に「ならない」という選択をしたところも多かった。
ただ、「ならない」場合は、公文書の移管を受けることができないので、結局は捨てる以外の選択肢が無くなってしまう。

では具体的にどうするのかは特に提案は上がっていなかったが、私見を述べると

国の「国立公文書館等」と独法の「国立公文書館等」でガイドラインを分ける。
・分けた上で、独法の側は施設や一部の機能は「当分の間」は置かなくてよい、ということとし、全史料協が主張しているような「公文書館機能」をきちんと整備することで、国立公文書館等に代わるものと認定する。


ではどうだろうか。
後者は書き方を工夫しないと「機能」だけを整備すれば良いという話になりかねない。
ただ、管理法施行から4年近く経過して、独法での公文書館設置がほとんど進まなかったことを考えれば、「施設」などの過度な要求が設置を妨げたと言っても過言ではないだろう。
これらは一定程度緩和するしかないのではないか。

次に、現在の公文書管理には関心がなさそうな政権に対して、どうやってアピールしていけば良いのかということも議論に上がった。
古賀氏からは、NPO法人で子育て支援を行っている駒崎弘樹氏の論説の紹介があった。

「草の根ロビイング(1)~現場から政治を変える~」(読売新聞、2014年12月18日)
http://www.yomiuri.co.jp/job/entrepreneurship/komazaki/20141215-OYT8T50130.html

政治家や官僚、メディアにどこまでアピールしていくかは当然課題となるだろう。
そのためには、駒崎氏も書いているが、具体的な提案を現場から伝えるという姿勢が必要である。
つまり、「説得材料」を揃えるということである。

これはパネリストも私も共通している見解だったが、まずは現場から声を集めるということは大切だと思う。
できるなら内閣府が、各省庁などの職員に対して、公文書管理実務に関連するアンケート調査などをしてくれると大変ありがたいと思っている。

具体的に何が問題となっていて、どのような改定をすれば良いのか。
理念で訴えるのも必要だとは思うが、現場からの声を活かすということが、この公文書管理制度においては重要である。

よって、アーキビストの業界からも積極的に声を上げていってほしいと思う(特に国立公文書館等の職員のみなさま)。
声を公式に上げにくかったら、声の大きい人たちに伝えるのでも良いのだ。

他にシンポジウムの会場からいくつか意見があった中で、気になったことを1つだけ挙げておきたい。

それは「特定歴史公文書等」の「廃棄」を認めてほしいという意見である。
つまり、公文書館側で「二次選別」を行わせてほしいということである。

今の公文書管理法の仕組みだと、原課が「移管したい」と主張した場合、それを公文書館側が断ることは非常に難しい。そのため、受け入れざるを得ない仕組みになっている。
そして一度受け入れたものは、永久保存することが求められている。

ただ、専門のアーキビストの目から見ると「それは永久保存する必要は無いだろう」というものも存在する。
これを、公文書館側の権限で廃棄することを認めてほしいということである。

公文書管理法の第25条には、特定歴史公文書等の廃棄の規定が存在する(内閣総理大臣に協議し、その同意が必要)。
ただ、国会で議論された際に、隠蔽のために利用されるのではないかとの危惧があったため、廃棄できるのは「劣化が極限まで進展して判読及び修復が不可能で利用できなくなり、歴史資料として重要でなくなったと認める場合」ガイドライン37頁)に限られてしまった。
つまり、事実上「二次選別」の根拠としては使えなくなっている。

この意見は現場の方からの提言であったが、その方によれば、保存スペースが足りない上に捨てることができないため、重要な文書の受け入れを制限するという本末転倒なことになっているとのことである。

歴史研究者としては、誰がその資料を重要と思うのかわからないので、どのような資料であれ、残っているものはできれば捨ててほしくないと言いたくなるところではある。
しかし、現場からのこの意見は様々なところでうかがっているし、スペースを増やせば良いではないかとも簡単に言えるものでもない(それが簡単に手に入れば苦労しない)。
むやみに歴史研究者の論理を振り回すことは難しいとも思っている。

法文は存在するので、ガイドラインを変えるかどうかという問題になる。
ここは、歴史研究者も含めて(その説得も兼ねて)、もっとつっこんだ議論をする必要があると感じている。


今回の集会の主催者であった保坂裕興・学習院大学教授は、今後もこういった集会や個別の意見交換を積み重ねて提言を出せるようにしたいとの意気込みを語られていた。
私自身もブログなどを通して、公文書管理法見直し問題への提言はどんどんと出していこうと考えている。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

特定秘密保護法施行に思う [2014年公文書管理問題]

特定秘密保護法が、本日2014年12月10日に施行されました。

改めて確認をしておきたいのは、法律は施行されたら終わりではありません。

運用していくなかで、様々な不備や問題点が現れてくるでしょう。
その時に、一つ一つ、特定秘密を減らす仕組みを作っていく提案をする必要があります。

こちらが「きちんと見てるよ!」という姿勢を見せ続けることが、運用する側へのプレッシャーになります。
それが濫用を食い止める一つのカギになります。

特定秘密であろうとも、国民への説明責任は無くなりません。
秘密の範囲を限りなく限定すること、もし秘密にしたとしても必ずいつかは(できる限り早く)公開して検証を受けること。
こういった仕組みを、修正して組み込んでいく必要があるかと思います。

私は、公文書管理法の改正が必要だと考えます。
特定秘密に指定された情報に関する文書の作成義務や、簡単に廃棄できないような仕組みの構築など、公文書管理の視点から特定秘密をコントロールすることは可能だと考えます。

さらに、特定秘密以外にも存在する、各行政機関内の秘密文書のコントロールも、今後どうしていくかを考えていく必要があります(内閣府で検討はしているようですが・・・)。

また、情報公開法を改正して、安保公安関係の情報が公開される幅を拡大することも、監視を強める効果があるでしょう。

他国との関係がある以上、残念ながら特定秘密保護法が廃止されることは期待薄だと思います。
だからこそ、濫用を防ぐための制約をどうやって増やしていくか、具体的な提案を伴った活動が今後の課題になるかと思います。

今後も引き続き、この問題を追いかけていきたいと思います。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

沖縄県公文書館で講演します [2014年公文書管理問題]

今週末になりましたが、沖縄県公文書館で講演します。
沖縄に在住の方はよろしければお越し下さい。

平成26年度公文書講演会

日時:2014年11月22日(土)午後2時~4時
場所:沖縄県公文書館本館講堂
901-1105 沖縄県南風原町字新川148番地の3
http://www.archives.pref.okinawa.jp/riyou/guide/

入場無料、要電話申込み(098-888-3875 普及広報担当までどうぞ)

「公文書はだれのもの?公文書管理制度と歴史研究、民主主義」
講演者:瀬畑 源(長野県短期大学助教)

〔以下、公文書館からの紹介〕
講師の瀬畑源さんは「国家と秘密 隠される公文書」「戦後史の中の象徴天皇制」「公文書をつかう 公文書管理制度と歴史研究」等の著作で知られる気鋭の研究者。日本での公文書管理の現状、公開が進まない背景にあるもの、公文書館での公開が持つ重要な意義をみなさんとともに考えます。

http://www.archives.pref.okinawa.jp/publication/2014/10/26-2.html


今回は秘密保護法ではなく、公文書管理制度の話をメインに、沖縄県の公文書のあり方などにも触れる予定です。
講演後に参加者との茶話会を1時間ぐらい取るとも聞いておりますので、質問などありましたらぜひご参加下さい。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

『国家と秘密 隠される公文書』ほか刊行 [2014年公文書管理問題]

2014年10月17日(金)に集英社新書から『国家と秘密 隠される公文書』が発売されます。



内容は、公文書管理制度から見た秘密保護法制についてです(下記参照)。

久保さんと私で意気投合して書いた本です。
二人とも、特定秘密保護法案の昨年の議論を見ながら、賛成する側も反対する側も、あまりにも前提となる公文書管理制度の知識が欠けていることに不満を持っていました。

久保さんも私も、スタンスは特定秘密保護法に反対の立場ですが、本の趣旨としては、最低限この内容は踏まえた上でお互いに議論しようよということを書いたつもりです。
なので、特定秘密保護法に賛成される方にも手にとっていただけるといいなと思っています。

また、15日には、『歴史評論』2014年11月号が刊行され、「日本における秘密保護法制の歴史」という論文を書いています。。



秘密保護法制の歴史を、明治から現在までザックリと整理したものです。
上記の新書の補遺のような形になりますので、合わせてお読みになると制度への理解が深まるかと思います

よろしければお手にとって下さいませ。


久保 亨・瀬畑 源『国家と秘密 隠される公文書』集英社新書、2014年10月

内容紹介

情報公開の世界的な流れに逆行!

特定秘密保護法施行で
葬られる歴史と責任!

国民の「知る権利」を軽んじ、秘密が横行する権力は必ず暴走する――。
第二次世界大戦敗戦直後の軍部による戦争責任資料の焼却指令から福島第一原発事故にいたるまで変わらない、
情報を隠し続けて責任を曖昧にする国家の論理。この「無責任の体系」を可能にするものは何か?
本書はその原因が情報公開と公文書の管理体制の不備にあることをわかりやすく説明する。

そして、世界の情報公開の流れに完全に逆行した形で、2013年末に可決された特定秘密保護法の問題点と今後を展望する。
行政の責任を明確にし、歴史の真相を明らかにするための一冊。

「知識は無知を永遠に支配する」
ジェームズ・マディソン(米国第四代大統領)

〈目次〉
序章 もともと秘密だらけの公文書――情報公開の後進国日本 久保亨
第一章 捨てられる公文書――日本の公文書管理の歴史 瀬畑源
第二章 情報公開法と公文書管理法の制定 瀬畑源
第三章 現代日本の公文書管理の実態と問題点 瀬畑源
第四章 公文書館の国際比較 久保亨
第五章 特定秘密保護法と公文書管理 瀬畑源
あとがき 公文書と共に消されていく行政の責任と歴史の真相 久保亨/瀬畑源


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

特定秘密保護法パブコメを受けて(後編) パブコメへの回答集 [2014年公文書管理問題]

2014年9月10日、第3回の情報保全諮問会議が開催され、パブリックコメントを受けて特定秘密保護法の施行令案と運用基準案の修正が行われた。
運用基準案改正の話は前編で既に述べた。

今回の諮問会議の配付資料で重要なのは、パブコメへの回答集である。

意見募集に対し寄せられた御意見の概要及び御意見に対する考え方(案)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jyouhouhozen/dai3/siryou2.pdf

細かいExcelの表が68頁にわたるもので、読むにも骨が折れるが、内閣官房がここまで回答集を作らなければならないところに追い込まれていたことも確かだろう。
パブコメへの回答方法にはフォーマットがあるわけではなく、中にはおざなりにしか回答しないケースもあるので。

この回答集を見ると、疑問に対してきちんと答えているケースもあるが、原則論に終始したり、ずらして答えたり、拒否したりするなど、ツッコミ所が満載である。
これ以上のツッコミ手段が一般市民からは限られているので、これを元に、疑問を国会で追及するといいのではと個人的には思う。

論点が多岐に亘るので、私の興味関心から、2つだけコメントしたい。

国民からの特定秘密解除請求の仕組み(米国に存在する)についてだが、内閣官房によれば、「情報公開法の手続きがある」から、新たに制度は不要であるという言い回しをしている(パブコメ回答3頁)。

特定秘密文書は行政文書であるので、情報公開請求の対象である。
よって請求を行うことはできるが、防衛公安関係の情報はもともと不開示なので、不服がある場合は情報公開・個人情報保護審査会に異議を申し立てることができる。

審査会は、特定秘密保護法の規定によって、実際にその文書自体を見て可否を判断できる(インカメラ審査)ので、「調査審議の過程で、特定秘密の指定の適否についてもチェックされ、特定秘密に係る部分を開示することとなれば、指定を解除する」とのことである。
よって「御指摘のMDR〔引用者注:米国の強制的機密指定解除審査請求〕による解除審査請求と類似の機能を情報公開法の開示請求が担うことができると考えます」と主張されている。

この説明はまやかしである。
米国の制度とは似て非なるものである。

まず、審査会が判断するのは、「情報公開法に基づいて」開示するか不開示にするかである。
よって、特定秘密の指定の是非を問題にする機関ではない。

また、そもそもとして審査会は「決定」する機関ではない。
あくまで「答申」を出すだけで、その答申に従うかは各機関に委ねられる。
開示せよとの答申が出ても、それを行政機関側は拒否できるのだ。

つまり、ここで内閣官房が言っているのは、情報公開法上「公開すべき」と判断した情報(「特定秘密に係る部分を開示することとなれば」)は、特定秘密であることはおかしいと言っているにすぎない。

そんなことは当たり前だ。
国民に即座に開示できるような文書を、特定秘密に指定していることがおかしいのだから。

そもそも情報公開法上の「不開示」基準と、特定秘密保護法上の特定秘密「指定」基準は異なる
特定秘密に指定できなくても、「不開示」になる情報など腐るほどある。
それこそ防衛公安情報は、情報公開法上、合法的に不開示にできる。特定秘密で無い文書ですらも。

ということは、防衛公安情報を審査会で争ったとしても、「不開示」は覆らない。
審査会が、「不開示」ではあるが「特定秘密指定はおかしい」という答申を行うことは不可能である(そのような機能は法的に存在しない)。
よって、審査会が特定秘密の適否についてチェックするなどということは、実質的には機能することはない。

「特定秘密も情報公開法で請求できるので、そこでチェックできるから大丈夫」と、諮問会議のある委員がテレビで話していたのを見たことがあるが、情報公開法の防衛公安情報の不開示基準の広さを無視した論であって、実態からかけはなれている。

本当にこの制度を機能させようとするのであれば、情報公開法を改正して、不開示の基準を狭める努力がなされる必要がある。
それとセットでないと意味が無い。


もう一つ気になったのは、特定秘密であった文書の廃棄について。
特定秘密に指定された文書が、いずれは解除され、公開されることは、検証のためには必要不可欠な制度である。

ただし、特定秘密をすべて残すかと言われると、兵器の部品を買った領収書のたぐいまですべて残せという話になり、そこまでする必要があるのかと言われると微妙な所でもある。
もちろんそれも含めて残せという主張はあり得るとは思うが、保存費用やスペースの問題からしても、あまり現実的とは思えない。
ただ、当然ではあるが、他の一般の文書よりは、永久に残す必要のある文書は多いはずである。

今回のパブコメへの回答を見ていると、「特定秘密である情報を記録する行政文書についても、公文書管理法に従って国立公文書館等への移管が行われる」(パブコメ回答7頁38)といったように、公文書管理法に丸投げするという書かれ方がされている。

公文書管理法に基づくならば、保存期間が満了した際に、各行政機関が国立公文書館等に移管して永久保存するか、廃棄するかを決定し、廃棄をする場合は内閣総理大臣の承認が必要(内閣府公文書管理課と国立公文書館がリストをチェック)となっている。

なお特定秘密保護法では、特例で、30年以上特定秘密に指定されていたものは、保存期間満了後にすべて国立公文書館等へ移管される(運用基準でもそこは明記)。
25年を超えるものは、運用基準案で「慎重に判断」すると書かれており、実質的には移管されるだろう。

そうすると、25年以下の文書は、「特別扱いせず、他の文書と同様の基準で判断をする」というのが内閣官房の方針のようである。
もちろん、特定秘密であった以上「重要」ではあるはずだが、国立公文書館等に移管して永久保存か廃棄を決める第一次的な判断をするのは各行政機関であるから、何食わぬ顔で他に紛れ込ませて廃棄する可能性はあるだろう。

これを防ぐためには、移管か廃棄するかを判断する際に使っていると思われる、公文書管理法上の行政文書ファイル管理簿に、当該文書が「特定秘密であった」との表示がなされる必要がある。
そうしておけば、内閣府公文書管理課や国立公文書館などが廃棄のチェックをする際に、厳重に審査できることになるだろう。
ただ、書いてきたような内容のパブコメに対して、内閣官房は回答をスルーしているため(パブコメ回答39頁38など)、そういったことをしたくない(つまり紛れ込ませて廃棄する手段は確保したい)という本音が透けて見えなくもない。

特定秘密であった時のチェック機能については、それなりに配慮が示されるようになってきたと思うが、特定秘密を外れた後の処置については、相当に不備が多いように思える。


さて、パブコメを振り返って考えたいのは、パブコメは果たして意味があったのかということだ。
結論から言うと、意味はあったとは思う。

総数は23,820通である。
法律が国会を通って1年近く経つのにこれだけ集まったのだから、色々な人々が監視をしているということをアピールできたので、十分なプレッシャーにはなっただろう。

法律はできたら終わりということではなく、執行のされ方が問題である。
常に監視されているというプレッシャーをかけ続けることが、法律の濫用を妨げることに繋がるのだ。

パブコメの意見を受けて、内容が大幅に修正される見込みは、募集の時期から考えてほぼありえなかった。
公布から施行まで1年というのは法律で決まっている以上、残り3ヵ月の段階で大幅な修正を加えることは不可能だったろう。

もしパブコメを官僚の側が本当に活かそうとするのであれば、もっと前の叩き台の段階を提示してパブコメを求めるべきである。
昨年の特定秘密保護法案の時は、まさしく叩き台を出してパブコメを募集したわけで、そういったことは制度上可能なはずである。
これは、パブコメをやる側の意識の問題でいかようにもなるのだ。

パブコメを真に意味のあるものにするのであれば、もう少しやり方を考える必要があるのでは無いかと思う。

今回の諮問会議で運用基準は固まり、あとは各行政機関の特定秘密の管理規則の策定がなされた上で施行されることになるだろう。

今後も分析は続けていきたいと考えている。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

特定秘密保護法パブコメを受けて(前編) 運用基準案改正 [2014年公文書管理問題]

2014年9月10日、第3回の情報保全諮問会議が開催され、パブリックコメントを受けて特定秘密保護法の施行令案と運用基準案の修正が行われた。

施行令案では修正ゼロ。
運用基準案はパブコメによって27ヵ所、その他文面の調整が行われた。


基本的には、曖昧であったところが具体的な記述になったり、書き込み忘れていたことを書いたりといったことがほとんどであり、27ヵ所とは言っているが、根本的な部分は手を付けられることは無かった。
ただ、もちろん、すべてが改善に繋がったことは評価していいだろう。

具体的に27ヵ所も説明するのは冗漫なので、内閣官房が取り上げた「主な修正点」7つについて簡単にコメントをしてみる。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jyouhouhozen/dai3/siryou1.pdf

なお運用基準案の改正は以下を参照のこと。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jyouhouhozen/dai3/sankou1.pdf

1.基本的な考え方に、国民の知る権利の尊重について具体的に記述しました。

元から入っていなければならないことである。


2.別表第1号(防衛に関する事項)該当性について、米軍に関する事項は、自衛隊との関わりの限りで指定の対象となることを明らかにしました。

最初から、そのような意図で書こうとしていたが、日本語がおかしかったために誤解を生み、修正したにすぎない。


3.公益通報の通報対象事実その他の行政機関による違法行為の事実は特定秘密に指定してはならないことを明記しました。

隠蔽工作のために特定秘密制度を利用することを禁じたもの。
公益通報の通報対象事実その他の行政機関による法令違反の事実を指定し、又はその隠蔽を目的として指定してはならないこと」(改正案9~10頁)という下線の部分が追加された。

「法令違反の事実を指定」「その隠蔽」ということだから、悪意の有無は問われておらず、それを行った時点でダメである。
これは重要であり、書き込まれて良かったと思う。
もちろん、特定秘密に何が指定されているかは外部からはわからないが、内部告発のリスクを背負う以上、一定の心理的な歯止めにはなるだろう。

政府としては、防衛や公安関係の情報を特定秘密に指定したいわけであり、不信をもたれるような可能性はできるだけ排除したいということではあるのだろう。
これは秘密保護法反対運動の圧力があったからこその成果だろう。


4.緊急廃棄した時は、その理由等を記載した書面を作成し、行政機関の長等に報告するものとしました。

これは大幅に修正された部分だが、そもそもそういったことが全く書かれていなかったことがおかしい。

運用基準案の原案の段階では、緊急事態における廃棄については、ほぼ何も書いていないに等しく、各行政機関に投げっぱなしの状態であった。
今回の修正で、緊急廃棄を行った際には、行政機関の長への報告義務などが課されることになった。

ただ、そもそも特定秘密制度の前身の一つである防衛秘密制度においては、緊急廃棄を行った際には、防衛大臣に報告する義務が存在している「防衛秘密の保護に関する訓令」43条3~5項)

つまり、そもそもとして最初から入っていなければいけない内容である。

なので、最初から入れる予定のものをあえて外し、それを直すことで「改善しました」というポーズを取って他の修正をかわそうとしたとしか思えない。

例えば、「緊急事態」とは結局どのような定義であるのかを、例を挙げることすらも拒否しており、緊急事態の定義の限定をかけられないための手段だったのではと疑わざるをえない(パブコメ回答20頁116への回答)。
もちろん、今後想定外の事態が起こる可能性はあるわけだが、ある程度の例示は可能だったと思う。


5.適性評価の苦情処理の結果を通知する際は、判断の根拠等を具体的に説明することとしました。

これも元々入っていなければならないもの。


6.内閣府独立公文書管理監が行政機関の長に特定秘密の指定等について是正を求めたときは、内閣保全監視委員会にもその内容を通知することとしました。

保全監視委員会に伝える理由は「同様の事案について適切な措置をとるよう主要関係省庁で是正要求の内容を共有することとしました。このことにより、内閣府独立公文書管理監から是正を求められた行政機関の長がより実効的な措置をとることにも資するものと考えます」とのことである(パブコメ回答38頁29)。
内閣官房の言い分を斟酌すると、チェック機関に強制的な解除権はいらず、類似した事例の積み重ねを共有することで適切に機能すると言いたいらしい。

ちなみに、このパブコメへの回答は、「チェック機関に指定の強制解除権を持たせるべき」という質問への答えである。

全く答えになってないと思うのだが。
逆に是正を拒否する事例が共有されて積み重ねられそうな感じがしなくも無い。

保全委員会に伝えることは問題ないが、強制的な解除権が結局付与されていないのはまずいだろう。


7.運用基準は、特定秘密保護法の施行後5年を経過した場合に見直すとともに、定期的、又は必要に応じ見直すこととしました。また、その内容も公表することとしました。

5年での見直しが入ったのは良いと思われる。
だが、これも最初から入っていなければならないことだろう。


結局、もともと入っていなければならないものがほとんどであることが、これらを見ても分かるだろう。

根本的な改正は、そもそも法律自体の不備が多いのでありえないとは思っていたが、やはりということだろうか。

長くなったので、パブコメへの回答集の話は後編に。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

特定秘密保護法関連のパブコメについて(7)私のパブコメ [2014年公文書管理問題]

これまで6回にわたって、特定秘密保護法関連のパブコメに関連する記事を書いてきました。

特定秘密保護法関連のパブコメについて(1)募集内容〔修正版)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-07-28
特定秘密保護法関連のパブコメについて(2)施行令案、特定秘密廃棄問題
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-03
特定秘密保護法関連のパブコメについて(3)運用基準案
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-05
特定秘密保護法関連のパブコメについて(4)特定秘密指定管理簿
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-07
特定秘密保護法関連のパブコメについて(5)監視機関
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-13
特定秘密保護法関連のパブコメについて(6)内部通報制度
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-14

今回はこれを踏まえて書いた私のパブコメを貼っておきます。
ちなみに募集しているパブコメは以下の3つ。

①「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」に対する意見募集の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072401&Mode=0

②「内閣府本府組織令の一部を改正する政令(案)」に対する意見募集の実施について(特定秘密保護法関連)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072403&Mode=0

③「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」に対する意見募集の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072402&Mode=0

②については特に書くこともなかったのでスルー。
①と③について貼っておきます。

ジャブ代わりに書くか迷って結局は書かなかったのですが、特定秘密保護法廃止をパブコメで要求することは意思表示として意味はあると思いますが、そこで留まってはいけないと思います。

残念ですが自民党政権が12月までに崩壊することは無いでしょう。
そうである以上、特定秘密保護法が施行されることを前提に、これを少しでもまともにするというための努力をするしかありません。

もちろん、パブコメは形式的になされることが多く、意見が政策に反映されることは非常に少ないです。
ただ、反対派であった清水勉弁護士が情報保全諮問会議のメンバーにいることですし、なにも反映されないということもなかろうと信じたいところです。

さて、以下が本文。解説はもう書きません(記事とのリンクは付けておきます)。
読みやすいように太字や下線を付けておきます。
文章が硬いのはご勘弁を。


①施行令案に対するパブコメ

1.第4条第1項 特定秘密指定管理簿について 関連記事

 「次に掲げる事項」に、「公文書管理法第5条において定められた保存期間及び保存期間の満了日」を追加するべきである。
 特定秘密の指定期間は、当然ではあるが当該文書の保存期間以下になるべきである。そのため、特定秘密の指定期間の参考にするために、当該文書の保存期間がすぐに見える状態にしておくことで、安易な指定延長の歯止めとするべきである。

2.第12条第1項 運用基準に基づいて定められる各行政機関の規程について 関連記事

 本規程が運用基準に基づいて作成されているかは、適正な運用の確保のためには重要な意味を持つ。そのため、この規程の作成にあたり、内閣総理大臣の同意を必要とすること、内閣総理大臣は情報保全諮問会議への諮問を義務づけることにするべきである。また、ここで定められた規程の公開も義務づけるべきである。
 以上の項目を、施行令の当該部分に加えるべきである(公文書管理法における各機関の文書管理規程の作成・公開方法に準ずるべき)。

3.関連:公文書管理法施行令の改正 関連記事

 行政文書ファイル管理簿に、特定秘密の指定に関連する欄を設けるため、公文書管理法施行令第11条第1項の記載事項の一覧に「特定秘密の指定の有無」(解除や満了の記載も)「特定秘密の指定期間」を加えるべきである。
 特定秘密にあたる文書は行政文書ファイル管理簿に登載される。特定秘密が解除されれば、外部から行政文書ファイル管理簿で確認できるようになるが、そこに特定秘密であったか否かが記載されていなければ検証を行うことができない。また、保存期間満了時に移管・廃棄を行う際の参考にするためにも、特定秘密に関する情報が行政文書ファイル管理簿に記載されている必要がある。これを法的にきちんと整備するべきである。

以上


③運用基準案へのパブコメ

1.Ⅱ2 特定秘密指定管理簿に関して(9頁) 関連記事

 特定秘密指定管理簿への満了や解除の記載は、施行令案の第8条第1項第3号、第11条第1項第3号にある。しかし、これがいつまで管理簿に登載されているのかについて、運用基準案には記載が存在しない。各行政機関の運用に委ねることになりかねないので、満了や解除された特定秘密については、当該文書が保存期間を満了して移管もしくは廃棄されるまで登載すべきである。また、毎年度、特定秘密移管廃棄簿を作成し、移管・廃棄後の特定秘密に関する情報を登載した上で、この帳簿を国立公文書館等に移管して永年保存するべきである。
 移管・廃棄を選択する際には、当該文書が過去に特定秘密であったかどうかは判断基準として重要な意味を持つ。そのため、管理簿へ記載が残っていることは必要不可欠である。また、移管・廃棄の検証のために、移管廃棄簿を作成して永年保存し、国立公文書館等で公開されるべきである。


2.Ⅱ6(1) 緊急の事態での廃棄について(11頁) 関連記事

 運用基準案には「緊急の事態」における廃棄については、「危機管理に万全を期すため、その実施手続その他必要な事項を定めるものとする」とのみあるだけであり、「緊急の事態」がいかなるものであるかについて何も記載が無く、各行政機関の運用に委ねられている。
 特定秘密保護法への最大の批判が「濫用」や「隠蔽」にあることは言を俟たない。その疑いを晴らすために、特定秘密の廃棄は特例中の特例に限定される必要がある。もちろん、「緊急の事態」のすべての類型を記載することは不可能であるが、できる限りの例を提示し、濫用を避ける工夫がなされるべきである。
 また、この緊急事態における廃棄を行った際には、できるだけ早い段階で内閣総理大臣への報告を義務づける必要がある。廃棄した文書類型など、その報告書に記載するべき情報を列記したものを、運用基準案のいずれかの部分に加筆するべきである。
 関連して、施行令案や運用基準案を見ている限り、緊急事態以外での特定秘密の廃棄を否定する文言がどこにも見当たらない。「隠蔽」を疑われないためにも、緊急事態以外での特定秘密の廃棄を禁止すると明記するべきである。

3.Ⅱ6(2) 特定秘密保護の規程について(11頁) 関連記事→施行令案パブコメとも関連

 「行政機関の長は、規程を定めようとするときは、あらかじめ、その案を内閣総理大臣に通知するものとする」とあるが、本運用基準に則って作成されたかのチェックをする必要がある。そのため、規程を作成する際には、内閣総理大臣の同意を必要とし、内閣総理大臣は情報保全諮問会議への諮問を義務とするべきである。また、ここで定められた規程は公開されるべきである。
 これに合わせて、当該部分に上記した内容の記述を加筆するべきである。

4.Ⅲ3(2)ア 歴史公文書等に該当しないもの(14頁) (マニアックなので記事を書かなかった)

 「歴史公文書等に該当しないもの(例えば、正本・原本以外の写しの文書、断片情報を記録した文書)」とあるが、この「例えば」以下の具体例は削除されるべきである。
 歴史公文書等に該当するかしないかは、文書「類型」によるものではなく、文書の関連性に基づくものである。写しであったとしても、その写しを参考にして政策が行われていることもある。また断片情報を記録したものであっても、他の情報とつなぎ合わせることで歴史的に重要な事実が明らかになることもある。文書「類型」を示すことで、かえって一律的にその類型に適合する文書を抜き取って廃棄する事態を招きかねないので、誤解を生む記載は削除されるべきである。

5.Ⅲ3(2)イ 指定の有効期間が通じて30年以下の特定秘密(14頁) 関連記事

 「指定の有効期間が通じて25 年を超える」特定秘密文書の廃棄は慎重に判断するとあるが、これを「10年」に変更するべきである。
 そもそもなぜ「25年」であるのか根拠が不明である。公文書管理法に基づく各行政機関の文書管理規程を見ると、保存期間が10年以上の文書を国立公文書館等へ移管して保管するケースが多い。特定秘密の有効期間が通じて10年を超える文書は、当然レコードスケジュールで保存期間が10年以上に設定されているはずである。よって、「慎重に判断」するものは「10年」以上と変更するべきである。

6.Ⅴ 監視機関に関連して(27-28頁) 関連記事

 内閣保全監視委員会ないしは独立公文書管理監に対して、国民が特定秘密の解除の申請を行えることを可能にするべきである。
 本パブコメにおける資料(秘密指定された国家安全保障情報に関する米国の主な監督機関)にも挙げられているように、米国では省庁間上訴委員会に対して国民から秘密解除請求が可能である。こういった仕組みがあることが、監視機関を適正に機能させるためには必要不可欠である。

7.Ⅴ4(1) 通報の処理の枠組み(30頁) 関連記事

 通報する内容を、「特定秘密の指定及びその解除又は特定行政文書ファイル等の管理が特定秘密保護法等に従って行われていないと思料する場合」といった法令違反に限っているが、この範囲を広げ、行政上の過誤の隠蔽や国家安全保障上保護する必要の無い情報開示を防止したり遅延させる目的といったような、行政が不当に利益を得るための特定秘密指定も、通報の対象にするべきである。
 特定秘密制度自体が不信感をもたれている現状では、適正な運用が行われる担保が必要である。「隠蔽」のために利用されるのではという批判に応えるためには、法令違反以外の問題も告発対象とするべきである。
 公益通報者保護法との関係で、これを認めることが困難であるのであれば、公益通報者保護法を強化するための改正をセットにするべきである。

8.Ⅴ4(2) 通報の処理について(30頁) 関連記事

 通報する際に「特定秘密である情報を特定秘密として取り扱うことを要しないよう要約して通報するなどし、特定秘密を漏らしてはならない」とあるが、通報する際に特定秘密の内容を知らせずに不正を告発するのは困難である。通報窓口の職員に適性評価を受けさせていれば問題無いので、この部分は削除されるべきである。
 各行政機関は自らの所有する特定秘密を、例え不正の告発であったとしても外部に渡したくないと考えているのかもしれないが、独立公文書管理監やその下にある情報保全監察室における情報管理を徹底すれば良いだけではないか。

9.4(2) 通報の処理について(30-31頁) 関連記事

 内部通報は、例外に適合しない限り、自分の所属する行政機関に第一に通報することになっている。これを改め、独立公文書管理監への通報をどのような状況でもできるようにするべきである。
 内部通報を自分の所属する行政機関に伝えるのは心理的に難しいケースが多いだろう。また、「おそれがあると信ずるに足りる相当な理由」がないと独立公文書管理監に通報することができないが、この「おそれ」を通報者が証明しなければならないので通報へのハードルが高い。よって、独立公文書管理監にどのような状況でも通報可能にするべきである。

10.Ⅴ4(2)イ(カ) 独立公文書管理監による調査(31頁) 関連記事

 独立公文書管理監が内部通報に基づいて調査する際に、「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認められない」場合には特定秘密の提供を行政機関側が拒否できるという項目があるが、これは削除されるべきである。
 独立公文書管理監が監視機関として十全に機能しなければ、制度自体への不信感を招く。著しい支障がどうしてもあるという場合には、米国における大統領補佐官を通じて大統領の判断を仰ぐ制度を参考にして、例えば官房副長官か首相補佐官が当該文書を閲覧した上で首相の判断を仰ぐ制度を作り、該当する行政機関の内部のみの判断で結論を出すことをしないようにするべきである。

11.その他 人事の独立性 関連記事

 運用基準の末尾に、特定秘密を担当する内閣府特命担当大臣を常設することを明記し、さらにその大臣が独立公文書管理監や情報保全監察室の職員を任命する際には、国民からその中立性に疑念を持たれないように務めること、という努力規定を加筆すべきである。
 独立公文書管理監や情報保全監察室は、監視機関として重要な役割を担うことになる。この職員が、各行政機関からの出向組のみで形成されるといったような、中立性に疑いを招く者で構成されることは,制度そのものへの国民の疑念が増幅するだけである。そのため、閣議決定される運用基準に、このような努力規定を入れておくことは必要であると考える。

以上
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問
前の10件 | - 2014年公文書管理問題 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。