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「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む その2 [2012年公文書管理問題]

2012年11月29日、「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」「閣僚会議等の議事録等の作成・公開について」という報告書(以下「報告書」と略記)を発表した。
これは、10月24日に出された「閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について」(以下「方向性」と略記)の追加版という位置づけになる。「方向性」の4に「閣僚会議の取扱い」という項目があり、これについて具体的に書かれたのが今回の報告書ということになる。

この報告書について簡単に解説を述べておきたい。
(「方向性」の方はすでに解説済

まず「閣僚会議等」の定義であるが、「閣僚会議、省議などの閣僚を構成員として開催される政府の会議」と位置づけられている。
具体的には作業チームの第2回資料3に一覧となっている(174ある)。
この一覧表を見ていると、複数の閣僚が参加しているにもかかわらず、議事概要すら作成していないような会議もあり、全く統一性が無い。

そして報告書を作る前に、各会議の担当者に「① 閣議等と同様の法的措置を講ずるべき会議の有無 ② 発言者名及び発言内容を記載した議事録又は議事概要を作成できない会議の有無」の2点について調査を行った。
その結果は検討チーム第3回資料1-1に記載されている。
①は「議事録を作成した場合、30年間は情報公開法の対象外にするべきか」を聞いたものであり、②は「議事録や議事概要を作れない会議をあぶり出す(理由付)」ためのものである。

その結果によると
①が必要と回答したのは「副大臣会議」。
②のうち、「議事録も概要も作成できない」と回答したのが3、「概要のみ可」と回答したのが12。

理由は資料1-2でまとめられている。

①については、副大臣会議は閣僚並に高度な政治性を有している会議なので、閣僚懇談会と同様の扱いをすべきということである。

②については、議事録等を作成できないと回答した会議の多くが、貿易関係と安全保障関係である。沖縄関係の会議が4つ入っているのが特に目を引く(米軍基地関係。振興策も対象)。
理由は議事録や概要を作ると「自由闊達な意見交換が阻害」「情報漏洩の恐れ」があるという、定番の回答である。

この①と②に対する回答を兼ねて作られたのが、今回の報告書ということになる。
よってこの報告書は「法的措置を講ずるべき会議の有無」「運用上講ずるべき措置の方向性」の2つの部分から構成されている。

1.法的措置を講ずるべき会議の有無

この章は、「副大臣会議」(①)と「国の安全に関わる会議」(②のうち、概要すらも作れないと回答した会議)の2つに回答を行っている。

「副大臣会議」については、結論は「閣僚懇談会と同じ扱いをする必要はない」という答えである。
つまり議事録を作っても情報公開法の対象外とする必要はないということである。閣僚ほど重要なことを話していないということのようだ。

なお、副大臣の「政務」(政党などとの連絡調整)に関わるものについては、相手が行政職だけでは無い(「政治にまたがる性格」)ので記録作成義務から外すべきとされ、「政策」「企画」と「政務」の会議をきちんと分けて開催することを提言している(後者のみ議事録・概要は作成しない)。

次に「国の安全に関わる会議」であるが、議事録や概要を全く作成しないのはおかしいと書かれている。
ただし、秘密保全法案の策定する中で必要な検討を行い、重要な意思決定に至る過程の記録が作成されるようにすべきという書きまわしである。
また、「30年で公開はできないので作成できない」という主張に対しても、他国でも重要機密は30年以上非公開にしているので公開までの期間を延長できるとし、機密情報の一定期間後の公開は外務省が行っているので参考にすればよいとして、「将来の公開」を理由として「作れない」という主張は一刀両断されている。

結論は、閣議や閣僚懇談会に適用する予定の30年間情報公開法の対象外にするという考え方は、他の会議には適用する必要が無いというものである。

感想としては結論は「当然」というところに落ち着いている。
(私個人の意見は、閣議等を30年間情報公開法の対象外とすること自体に反対ではあるが。)

「副大臣会議」の「政務」を議事録作成の対象外にするという点については、これは立法公文書管理法作成の際の問題かなと思っている。
つまり、行政職に就いていない議員との意見交換をどこまで記録するかという問題である。
議員と副大臣のみで行う話し合い(官僚が立ち会っていない)の記録を「行政文書」として保存するのは、確かに公文書管理法的にも難しいラインになる。これは今後の課題だろうか。

「国の安全に関わる会議」に関する記述も概ね同意。
というか、もうそろそろ「いま公開できないから作成しない」という言い訳をするのは勘弁願いたい。
「いま」公開できないからといって、「将来」公開できないということは無いのだ。これは公文書管理法の根幹に関わる部分なので、そろそろ常識的にわかってほしいものだが。
また「情報漏洩」のおそれがあるから作成できない、というのは「情報管理」の問題であって、「作成するか否か」の話とは次元が異なる。
漏洩しないようにきちんと「管理」すればよいだけの話で、元々作成しないというのは話の筋が違う。
だからといって、秘密保全法が制定されることには相当の注意が必要だが(場合によっては、過度な情報公開規制につながりかねない)。

2.運用上講ずるべき措置の方向性

この章で書かれた内容が、すべての閣僚会議等における議事録・議事概要の作成・公開の方針となる。
最終的には「行政文書の管理に関するガイドライン」などを改正する(公文書管理委員会に検討を要請)ということなので、政権が代わっても前進する可能性は十分ある。

「(1)議事録・議事概要の作成」においては、結論は「閣僚会議等については、発言者名及び発言内容を記載した「議事録又は議事概要」を作成すること」としている。
「議事概要」でもOKとしている点が特徴として挙げられる。

これは、先述した②のうち「概要のみ作成可」と答えた会議への対応の結果である。
安全保障や外交に絡む会議が含まれる以上、逐語の議事録の作成は情報漏洩のおそれがある。また、そもそも逐語の議事録を作ることが、「適正かつ効率的な運営」に支障を出すという懸念がある。
よって、「議事概要」でもやむなしというのが結論となっている。

この部分は、「言葉が足りていない」というのが私の感想である。
そもそも「発言者及び発言内容を記載した」という修飾語が「議事録又は議事概要」に係っている。よって、「発言者及び発言内容を記載した議事概要」を作る必要があるということになる。
もちろん、このような解釈でよければきちんとした概要が作成されるということになろうが、先述の②の「概要のみ作成可」と回答した会議は、「発言者及び発言内容」を「記載したくない」から「議事概要」にしたいと言っているわけなので、この報告書に書かれているような「議事概要」など作らないだろう。
なので「空文」になる可能性が非常に高い。

また、この書き方だと「議事録」か「議事概要」のいずれかを作成すれば良いという読み方が可能である。
よって、これまで議事録を作ってきた会議すら、議事概要の作成のみに切り替えてしまう可能性がある。
衆院解散の関係で駆け込みで作ったっぽいので、文面詰められなかったのかなという印象。
このあたりは公文書管理委員会できちんと詰めてもらえれば。

「(2)一定期間経過後の国立公文書館等への移管」は、保存期間10年経ったら国立公文書館等へ移管ということが書かれているので特に問題なし。
延長のことが書いていないのは、やはり詰めていないからか?

「(3)移管までの期間の取扱い」は、議事録・議事概要の「能動的な公開」などについては、個別に会議で決めることが述べてある。特に現状と大きく変わるものではない。
個人的には「能動的公開」を原則とするということにして、情報公開請求を待つのではなく、積極的に公開をしてほしいところ。

以上がこの報告書の解説。
内容的にはそれほど大きな違和感があるわけではない。
公文書管理委員会に今後の検討が要請されるようなので、そこできちんと詰めるところを詰めてほしいと思う。

昨日の総選挙で民主党が惨敗し、自民党中心の政権に変わることになった。
この閣議や閣僚会議などの議事録問題は今後どうなるか予断を許さない。
ただ、岡田克也副総理がここまでレールを引いたので、さすがにちゃぶ台を全部ひっくり返すというわけにはいかないだろうと思う(願望込)。

何とか前に進めてほしいと心から願ってやまない。

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