公文書管理委員会第4回資料を読む [公文書管理委員会]
11月30日に公文書管理委員会の第4回会合が開かれた。
私は都合で出席できなかったが、資料がアップロードされているので、それを少し見ながら思いついたことを書いておきたい。
今回の審議は、17の行政機関の「行政文書管理規則」案が議題であった。
これらは、内閣総理大臣の同意と公文書管理委員会への諮問が義務となっている。今回はその第一弾ということになる。
なお、17の機関とは
内閣法制局、内閣府、公正取引委員会、国家公安委員会、警察庁、総務省、消防庁、法務省、公安審査委員会、公安調査庁、外務省、財務省、国税庁、厚生労働省、中央労働委員会、農林水産省、防衛省
である。
人づてに聞いた話だと、審議内容は
・各行政機関からの説明のみが行われた。1週間以内に各委員が問題点を指摘する(おそらく)。
・配付資料が直前になって内閣府に届いたため、傍聴者には印刷したものが配られなかった。委員にもどうやら直前の配布だったようで、委員の中からもう少し早くしてほしいとの発言があったが、どうやら次回もぎりぎりになるらしい。
これだけを見ると、何というか「説明責任」という概念はいずこという感じだ。
委員の方があとから内々に指摘しても、それは議事録には残らない。国会の与野党協議みたいなものだ。
これでは、何がどう議論されたのかがわからない。
それに、当日配付資料がないということは、傍聴者にとっては何が何だかという感じだったのではないだろうか。
最低限この用意はするべきだと思うんだが。
また、そもそも内閣府は、各行政機関の締め切りをもう少し前にできなかったんだろうか。
それとも、委員会の開催日を見越して、先方が「本当の締め切り」を推測して、締め切りを破っているのか。
いずれにしろ、大量に審議をしなくてはいけない委員の方達の負担は半端ではないと思う。
説明責任を明確にするはずの公文書管理法の関係することで、こういったことがあってはなあと思わざるをえない。
さて、それでは、各行政機関の管理規則案の内容を読んだ感想について簡単に。
まず、私にとって関心のあった内閣府、外務省、警察庁、防衛省の4つから見てみた。
管理規則案を見ると、どの機関も先に定められた「行政文書の管理に関するガイドライン」との対比表がついている。
また、別表については赤字赤線で訂正が入っており、機関によっては解説もしっかりと入っている。
なので、ガイドラインと何が異なっているのかについてはわかりやすい。
まず規則の本文については、この4機関でごまかしている部分は一切なかった。
つまり、ガイドラインの通りである。
注目する所は、本文よりは、作成する文書(保存年限)を決めている別表第一と、最終的に廃棄するか国立公文書館等へ移管するかを定めている別表第二のほうであろう。
ここがごまかされていると、重要な文書が廃棄されることになる。
そして、ここについても基本的にそれほど問題があるようには思えなかった。
なお、防衛省では、なぜか閣議関係の部分が大量に削除されているが(16頁)、他機関では全て残っているので、何か解釈を勘違いした可能性がある。あまり意図的に消したようには見えなかった。
なので、こういったところは、別の機関と比較して、しっかりと修正する必要があるだろう。
ただ、「付け足された類型」については注意を払う必要があるように感じた。
付け足されたものは、各機関固有の情報群になる。
例えば、外務省では「国家的儀式・行事に関する事項」が文書類型に加えられ、具体的には、即位の礼、大喪の礼、オリンピック、万国博覧会に関する文書がそこに入った。そしてこれらは「移管」される対象となった(36、45頁)。
国家的なものがこの4つだけなのかという点は正直疑問なんだが、それ以外のものは他の部分でカバーできているということなんだろう。
また、他にも文書類型が数点加わっている。
警察庁では「専門的な調査研究に関する事項」「世論調査の実施に関する事項」などが加わっている。
これらは、移管対象が「重要な調査研究(世論調査)に関する報告書」となっている。
ただ、本来、調査したものについては、報告書については重要性を問わず残すべきものだと思う。
調査原票を残せとまでは言わないが、調査のために行った資料調査の結果などは、きちんと残すべきものだよなと、研究者としては個人的には思う。
このように、新たに付け加えられた部分は、各機関が自分たちで移管廃棄基準を決めているので、やや恣意的な判断が入っている可能性がある。
なので、チェックをするときには、別表第一と第二の赤字で付け足された部分を注意深く見た方が良いように思う。
さて、この4機関を見た感想としては、ガイドラインに逆らっているところは一つもないということである。
その後、残りの13機関を斜め読みしたが、似たようなものだったように思う。
ただし、私もきちんと読みこんでないので、各人が、自分の関心のある機関の規則については、しっかりとチェックをすることが必要であろう。
(なお、財務省は付け足された部分が赤字になっていないので注意。法務省は色々と留保が付いている。)
結局、最終的には「運用」とその「監視」次第というところなのかなと思う。
今回の別表第一と第二の修正を見ていても、ほとんど手直しをせずに出してきた厚生労働省や消防庁、中央労働委員会などは、公文書管理法の重要性についての認識にやや不安がある。
「ガイドラインが良くできていて直す必要がなかった」という判断もできるかもしれないが・・・
次回は12月14日。15日も予備日として取ってあるようですが・・・。
また、今回の17機関の規則案の何が修正されたのかは、次回にきちんと報告してほしいと思う。
追記12/5
書き忘れていましたが1点。
ファイル管理簿の「廃棄簿」(どの文書を捨てたのか)は、結局30年保存後に廃棄となってしまった。
これはガイドライン自体が変わらなかったということなので、当然各機関の規則でも同じ対応になっている。
廃棄簿というのは、どのような書類が作られていたのかを後日確認するためにも必要ですし、その組織が「どのように」運営されてきたのかを示すためにも重要な文書なのですが。
加藤聖文氏の「喪われた記録--戦時下の公文書廃棄」のような、廃棄簿を用いた優れた研究なども存在しているのですし・・・
http://ci.nii.ac.jp/naid/40006752548
この点については、もう来年4月の管理法施行の際には変わることがないでしょう。
今後、それを変えていくように働きかけをしていく必要があるように思います。
私は都合で出席できなかったが、資料がアップロードされているので、それを少し見ながら思いついたことを書いておきたい。
今回の審議は、17の行政機関の「行政文書管理規則」案が議題であった。
これらは、内閣総理大臣の同意と公文書管理委員会への諮問が義務となっている。今回はその第一弾ということになる。
なお、17の機関とは
内閣法制局、内閣府、公正取引委員会、国家公安委員会、警察庁、総務省、消防庁、法務省、公安審査委員会、公安調査庁、外務省、財務省、国税庁、厚生労働省、中央労働委員会、農林水産省、防衛省
である。
人づてに聞いた話だと、審議内容は
・各行政機関からの説明のみが行われた。1週間以内に各委員が問題点を指摘する(おそらく)。
・配付資料が直前になって内閣府に届いたため、傍聴者には印刷したものが配られなかった。委員にもどうやら直前の配布だったようで、委員の中からもう少し早くしてほしいとの発言があったが、どうやら次回もぎりぎりになるらしい。
これだけを見ると、何というか「説明責任」という概念はいずこという感じだ。
委員の方があとから内々に指摘しても、それは議事録には残らない。国会の与野党協議みたいなものだ。
これでは、何がどう議論されたのかがわからない。
それに、当日配付資料がないということは、傍聴者にとっては何が何だかという感じだったのではないだろうか。
最低限この用意はするべきだと思うんだが。
また、そもそも内閣府は、各行政機関の締め切りをもう少し前にできなかったんだろうか。
それとも、委員会の開催日を見越して、先方が「本当の締め切り」を推測して、締め切りを破っているのか。
いずれにしろ、大量に審議をしなくてはいけない委員の方達の負担は半端ではないと思う。
説明責任を明確にするはずの公文書管理法の関係することで、こういったことがあってはなあと思わざるをえない。
さて、それでは、各行政機関の管理規則案の内容を読んだ感想について簡単に。
まず、私にとって関心のあった内閣府、外務省、警察庁、防衛省の4つから見てみた。
管理規則案を見ると、どの機関も先に定められた「行政文書の管理に関するガイドライン」との対比表がついている。
また、別表については赤字赤線で訂正が入っており、機関によっては解説もしっかりと入っている。
なので、ガイドラインと何が異なっているのかについてはわかりやすい。
まず規則の本文については、この4機関でごまかしている部分は一切なかった。
つまり、ガイドラインの通りである。
注目する所は、本文よりは、作成する文書(保存年限)を決めている別表第一と、最終的に廃棄するか国立公文書館等へ移管するかを定めている別表第二のほうであろう。
ここがごまかされていると、重要な文書が廃棄されることになる。
そして、ここについても基本的にそれほど問題があるようには思えなかった。
なお、防衛省では、なぜか閣議関係の部分が大量に削除されているが(16頁)、他機関では全て残っているので、何か解釈を勘違いした可能性がある。あまり意図的に消したようには見えなかった。
なので、こういったところは、別の機関と比較して、しっかりと修正する必要があるだろう。
ただ、「付け足された類型」については注意を払う必要があるように感じた。
付け足されたものは、各機関固有の情報群になる。
例えば、外務省では「国家的儀式・行事に関する事項」が文書類型に加えられ、具体的には、即位の礼、大喪の礼、オリンピック、万国博覧会に関する文書がそこに入った。そしてこれらは「移管」される対象となった(36、45頁)。
国家的なものがこの4つだけなのかという点は正直疑問なんだが、それ以外のものは他の部分でカバーできているということなんだろう。
また、他にも文書類型が数点加わっている。
警察庁では「専門的な調査研究に関する事項」「世論調査の実施に関する事項」などが加わっている。
これらは、移管対象が「重要な調査研究(世論調査)に関する報告書」となっている。
ただ、本来、調査したものについては、報告書については重要性を問わず残すべきものだと思う。
調査原票を残せとまでは言わないが、調査のために行った資料調査の結果などは、きちんと残すべきものだよなと、研究者としては個人的には思う。
このように、新たに付け加えられた部分は、各機関が自分たちで移管廃棄基準を決めているので、やや恣意的な判断が入っている可能性がある。
なので、チェックをするときには、別表第一と第二の赤字で付け足された部分を注意深く見た方が良いように思う。
さて、この4機関を見た感想としては、ガイドラインに逆らっているところは一つもないということである。
その後、残りの13機関を斜め読みしたが、似たようなものだったように思う。
ただし、私もきちんと読みこんでないので、各人が、自分の関心のある機関の規則については、しっかりとチェックをすることが必要であろう。
(なお、財務省は付け足された部分が赤字になっていないので注意。法務省は色々と留保が付いている。)
結局、最終的には「運用」とその「監視」次第というところなのかなと思う。
今回の別表第一と第二の修正を見ていても、ほとんど手直しをせずに出してきた厚生労働省や消防庁、中央労働委員会などは、公文書管理法の重要性についての認識にやや不安がある。
「ガイドラインが良くできていて直す必要がなかった」という判断もできるかもしれないが・・・
次回は12月14日。15日も予備日として取ってあるようですが・・・。
また、今回の17機関の規則案の何が修正されたのかは、次回にきちんと報告してほしいと思う。
追記12/5
書き忘れていましたが1点。
ファイル管理簿の「廃棄簿」(どの文書を捨てたのか)は、結局30年保存後に廃棄となってしまった。
これはガイドライン自体が変わらなかったということなので、当然各機関の規則でも同じ対応になっている。
廃棄簿というのは、どのような書類が作られていたのかを後日確認するためにも必要ですし、その組織が「どのように」運営されてきたのかを示すためにも重要な文書なのですが。
加藤聖文氏の「喪われた記録--戦時下の公文書廃棄」のような、廃棄簿を用いた優れた研究なども存在しているのですし・・・
http://ci.nii.ac.jp/naid/40006752548
この点については、もう来年4月の管理法施行の際には変わることがないでしょう。
今後、それを変えていくように働きかけをしていく必要があるように思います。
公文書管理委員会第3回に行く [公文書管理委員会]
昨日、公文書管理委員会の第3回会合を傍聴しに行きました。
今回の議論は、前回提示されてパブコメを受けて変更になった「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン案」の正式案についてでした。
このガイドラインは、国立公文書館や外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館などの利用規則を作る際の「ガイドライン」になるものです。
とりあえず、「ガイドライン」で主に何が変わったのかについて、先に解説を。
具体的には、資料自体を見てもらえれば「赤字」で変更した箇所が示されているので、それで十分わかると思います。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/22/221012/221012haifu3.pdf
・P4~ 著作権問題
公文書の中に著作物(例えば、コンクールで応募されたポスター作品など)が入っていた場合に、その処理をきちんとするようにとの条項がさまざまなところに入った。
・P9 資料の保存方法
基準が厳しいという話がいくつか出ており、「国立公文書館ではこのように運用している」という書き方になった。
・P11 目録
サブタイトルを活用して、わかりやすいタイトルをつけて内容が容易に把握できるようにという点が加わった。
あと、利用制限理由がある場合、「審査日」を目録に明記することが加わった。→なおP15に、審査日と利用制限を行った理由を記録する必要も明記。
・P13 30年原則
ガイドライン本文に30年で基本公開という「30年原則」が明記。
・P14 審査基準
各館の「審査基準」を「策定」するだけでなく、「公表」することも書き加えられた。
・P18 マスキング(墨塗り)での公開の際の日どり
利用請求者に対して「作業に要する日数」ではなく「閲覧が可能となる日数」を知らせることと書き換えられた。
・P26 利用方法
「カメラ等を用いた撮影については、極力、認めることが望ましい」との記述が加えられた。
・P37 利用時間
「体制、経費等をふまえつつ」という留保はあるが、「昼休み時間帯の営業についても積極的に検討を行うことが望まれる」と明記された。
・P39 研修
研修の対象として、人材を育成するため、現職者以外にも門戸を広げることが加えられた。
内容としては「良くなった」というのが率直な感想。
私自身がパブコメで要求していた、「審査日明記」「審査基準公開」「デジカメ撮影許可」「昼休み廃止」という4点が書き加えられたことは非常に有難かった。
なお、著作権のことについては、文化庁で行われた5月27日の「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会」の第5回で、公文書の利用の際には著作権の制限をかけて、公開・複写可能にするという方向性がすでに出ており、おそらく公文書管理法施行までには著作権法の改正が行われるのではないかと思われる。
そのため、実際には著作権を理由とした利用制限は、来年4月にはそれほど問題にはならないのではないかと考えます。
さて、これを踏まえた上で、委員の議論について少しだけ。
大きな議論になっていたのが、外交史料館と宮内公文書館について。
つまり、このガイドラインは主語が「館」となっているが、外務省は、この「館」を「外務省」ないしは「外務大臣」に置き換えることが必要だと主張してきた。(資料2の1ページ)
外務省の言い分は、「外交史料館は外務省の一部署であり,行政庁としての処分・諮問等について,最終判断をする立場にないため。」とのことである。
これについて、加藤陽子委員をはじめとして、何人かが「それで問題がないのか」ということを発言されていた。
対して、内閣府からは「法令上そうなっていますので」という答えを返されていた。
これは残念ながら内閣府の言っていることは「正しい」。
本来ならば、公文書の移管元である外務省と宮内庁から移管先を「離す」必要があったにもかかわらず、結局外交史料館と宮内公文書館をそのまま維持してしまったわけだから、これは「仕方がない」ということになる。
ただ、やはり、移管元と移管先の責任者が「同一」人物である(大臣)場合に、その「移管・廃棄」や「開示・不開示」の判断の恣意性をどこまで排除できるのかは疑問がある。
もちろん、内閣総理大臣への報告義務など、さまざまなチェックが入るようになっているが、どこまで見抜くことができるか。
「同一」であることへの「危惧」が委員会で示されたという「事実」自体を覚えておき、何か問題が起きたときにそれを利用して批判するということが必要なのかもしれない。
他には、野口貴公美委員から、各館の「利用規則」案が作成された時にパブリックコメントを行ったらどうか(パブコメでもそういう意見が複数出ている)という意見や、三輪眞木子委員などから、目録を現用文書や各館とで統一化して連携できるようにするべきではという意見もあった。
さて、このガイドラインは基本的には「良いもの」として仕上がったと思うが、神奈川県立公文書館所属の石原一則委員が「自分の館でこれをやれと言われたら結構大変だ」とおっしゃっていたように、かなり基準が「高め」に設定されていることは間違いない。
既存の文書館であればそれなりに対応可能だろうが、文書館が存在しないところ(国立大学法人など)では、かなりハードルが高いのではないかと思う(特に保存設備の問題など)。
よって、「どこまで水準を落としても大丈夫なのか」というところが、おそらく文書館が無いところの気になるところだと思われる。パブコメでも「理想論過ぎる」という意見もいくつか見られてましたし。
ただ、だからといって「低くて良い」という問題でも無いので、そこは「できる範囲で頑張って」としか今のところは言いようがない・・・。
国がある程度お金を補助するという制度があると助かるのだが、そういうことにはならないだろうなあ・・・。そもそも国立公文書館にすら、あまりお金が増えないというのが現状だし・・・
第4回の会議は11月30日の予定です。その回で各府省の利用規則案の「第1陣」が出てくるとのこと。
委員会が承認しなければいけない規則が約40機関分あるので、12月には委員会が1~2回行われる予定とのこと。
この各省庁の利用規則案は、審査日程がある程度バラけてもらわないと、ごまかした省庁の規則を見破れない可能性が高まるので、何とか日程を調整してほしいと願っています。
なお施行令については、現在内閣法制局と調整中とのこと。
終わり次第、法定パブコメが行われることになるそうです。
次回の会議で施行令自体は委員会を通す予定とのことです。
今回の議論は、前回提示されてパブコメを受けて変更になった「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン案」の正式案についてでした。
このガイドラインは、国立公文書館や外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館などの利用規則を作る際の「ガイドライン」になるものです。
とりあえず、「ガイドライン」で主に何が変わったのかについて、先に解説を。
具体的には、資料自体を見てもらえれば「赤字」で変更した箇所が示されているので、それで十分わかると思います。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/22/221012/221012haifu3.pdf
・P4~ 著作権問題
公文書の中に著作物(例えば、コンクールで応募されたポスター作品など)が入っていた場合に、その処理をきちんとするようにとの条項がさまざまなところに入った。
・P9 資料の保存方法
基準が厳しいという話がいくつか出ており、「国立公文書館ではこのように運用している」という書き方になった。
・P11 目録
サブタイトルを活用して、わかりやすいタイトルをつけて内容が容易に把握できるようにという点が加わった。
あと、利用制限理由がある場合、「審査日」を目録に明記することが加わった。→なおP15に、審査日と利用制限を行った理由を記録する必要も明記。
・P13 30年原則
ガイドライン本文に30年で基本公開という「30年原則」が明記。
・P14 審査基準
各館の「審査基準」を「策定」するだけでなく、「公表」することも書き加えられた。
・P18 マスキング(墨塗り)での公開の際の日どり
利用請求者に対して「作業に要する日数」ではなく「閲覧が可能となる日数」を知らせることと書き換えられた。
・P26 利用方法
「カメラ等を用いた撮影については、極力、認めることが望ましい」との記述が加えられた。
・P37 利用時間
「体制、経費等をふまえつつ」という留保はあるが、「昼休み時間帯の営業についても積極的に検討を行うことが望まれる」と明記された。
・P39 研修
研修の対象として、人材を育成するため、現職者以外にも門戸を広げることが加えられた。
内容としては「良くなった」というのが率直な感想。
私自身がパブコメで要求していた、「審査日明記」「審査基準公開」「デジカメ撮影許可」「昼休み廃止」という4点が書き加えられたことは非常に有難かった。
なお、著作権のことについては、文化庁で行われた5月27日の「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会」の第5回で、公文書の利用の際には著作権の制限をかけて、公開・複写可能にするという方向性がすでに出ており、おそらく公文書管理法施行までには著作権法の改正が行われるのではないかと思われる。
そのため、実際には著作権を理由とした利用制限は、来年4月にはそれほど問題にはならないのではないかと考えます。
さて、これを踏まえた上で、委員の議論について少しだけ。
大きな議論になっていたのが、外交史料館と宮内公文書館について。
つまり、このガイドラインは主語が「館」となっているが、外務省は、この「館」を「外務省」ないしは「外務大臣」に置き換えることが必要だと主張してきた。(資料2の1ページ)
外務省の言い分は、「外交史料館は外務省の一部署であり,行政庁としての処分・諮問等について,最終判断をする立場にないため。」とのことである。
これについて、加藤陽子委員をはじめとして、何人かが「それで問題がないのか」ということを発言されていた。
対して、内閣府からは「法令上そうなっていますので」という答えを返されていた。
これは残念ながら内閣府の言っていることは「正しい」。
本来ならば、公文書の移管元である外務省と宮内庁から移管先を「離す」必要があったにもかかわらず、結局外交史料館と宮内公文書館をそのまま維持してしまったわけだから、これは「仕方がない」ということになる。
ただ、やはり、移管元と移管先の責任者が「同一」人物である(大臣)場合に、その「移管・廃棄」や「開示・不開示」の判断の恣意性をどこまで排除できるのかは疑問がある。
もちろん、内閣総理大臣への報告義務など、さまざまなチェックが入るようになっているが、どこまで見抜くことができるか。
「同一」であることへの「危惧」が委員会で示されたという「事実」自体を覚えておき、何か問題が起きたときにそれを利用して批判するということが必要なのかもしれない。
他には、野口貴公美委員から、各館の「利用規則」案が作成された時にパブリックコメントを行ったらどうか(パブコメでもそういう意見が複数出ている)という意見や、三輪眞木子委員などから、目録を現用文書や各館とで統一化して連携できるようにするべきではという意見もあった。
さて、このガイドラインは基本的には「良いもの」として仕上がったと思うが、神奈川県立公文書館所属の石原一則委員が「自分の館でこれをやれと言われたら結構大変だ」とおっしゃっていたように、かなり基準が「高め」に設定されていることは間違いない。
既存の文書館であればそれなりに対応可能だろうが、文書館が存在しないところ(国立大学法人など)では、かなりハードルが高いのではないかと思う(特に保存設備の問題など)。
よって、「どこまで水準を落としても大丈夫なのか」というところが、おそらく文書館が無いところの気になるところだと思われる。パブコメでも「理想論過ぎる」という意見もいくつか見られてましたし。
ただ、だからといって「低くて良い」という問題でも無いので、そこは「できる範囲で頑張って」としか今のところは言いようがない・・・。
国がある程度お金を補助するという制度があると助かるのだが、そういうことにはならないだろうなあ・・・。そもそも国立公文書館にすら、あまりお金が増えないというのが現状だし・・・
第4回の会議は11月30日の予定です。その回で各府省の利用規則案の「第1陣」が出てくるとのこと。
委員会が承認しなければいけない規則が約40機関分あるので、12月には委員会が1~2回行われる予定とのこと。
この各省庁の利用規則案は、審査日程がある程度バラけてもらわないと、ごまかした省庁の規則を見破れない可能性が高まるので、何とか日程を調整してほしいと願っています。
なお施行令については、現在内閣法制局と調整中とのこと。
終わり次第、法定パブコメが行われることになるそうです。
次回の会議で施行令自体は委員会を通す予定とのことです。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドラインへのパブコメ [公文書管理委員会]
公文書管理委員会において、「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」についてのパブリックコメントの募集が始まりました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
そしてその解説も4回にわたって行ってきました。
第1回 前説
第2回 A:総則とB:保存
第3回 C:利用
第4回 D:廃棄以降
以下は、私が書いたパブコメです。すでに送付済み。何かご参考になればと思います。
特に、個人的には、「デジカメ撮影」については、是非とも実現させたい部分です。
あと、宮内公文書館でのコピーの「遅さ」の解決策は、デジカメ導入しかないと思います。マスキングも、デジカメ撮影のデータを印刷してマスキングすればよい。それで他の部分が「読めない」と言う人がいれば、その時に「マイクロ化」という選択肢を取れば良いと思う。
最近のデジカメは優秀ですから、それで9割方は解決すると思います。
以下、パブコメ本文。
○B-1「行政機関又は独立行政法人等からの受入れ」
「留意事項」に、審査の際の注意点として、「審査の際に不開示にした箇所には、不開示理由及び何年後に再審査の対象になるのかを記載すること」を加えるべきである。あまりに繁雑になる場合は、全面不開示の部分のみに限定することも考えられる。
情報は基本的に劣化するものである。例えば個人情報の場合、国立公文書館においては、情報類型によって不開示の年限が決められている。そのため、いずれは開示に転ずる情報である可能性が高い。米国の国立公文書館では、全面不開示の情報がある場合、「いつ、誰が審査をして、再審査はいつから受け付ける」というメモが挿入されている。
あらかじめ、不開示理由や再審査の対象になる日が記載されていれば、利用者にとって有益な情報となり、さらに審査の透明化にも役立つと思われる。また、審査を行う側も、新たに判断を行う際の基本情報となるので、審査の手間を省くことができる。
○B-7「目録の作成及び公表」の(1)
「規則」の列記された事項の中に、「利用制限事由の審査日」を入れるべきである。
この情報は、全面開示の文書の場合はそれほど重要ではないが、不開示箇所がある場合には重要な情報となる。国立公文書館では、現在「要審査」制度を導入しており、目録登載日と審査日にズレが生じている。また、不開示情報を含む場合、いつごろ再審査になるのかの参考にするためにも、いつ審査が行われたのかは重要な情報だと思われる。さらに、審査を行う側にとっても、いつの時点での不開示判断なのかを知るためにも重要な情報であろう。
○B-7「目録の作成及び公表」の「留意事項」(7頁)
「名称」は「行政文書又は法人文書として保存していた時期と連続性のあるものとすることが望ましい」ことは同意するが、現在の行政文書のファイル名があまりにも曖昧であることが多いので、但し書きとして「ただし、名称が不明瞭な場合にはその限りではない」との記載が必要だと思われる。
○C-2「利用請求の取扱い」の「留意事項」(13頁)
「審査基準の策定」だけでなく、審査基準の「公開」も記載するべきである。審査基準の透明化は、「国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務全うされるようにする」(公文書管理法第1条)ためにも必要不可欠である。国立公文書館等での審査が不透明であるという疑いをもたれないためにも、審査基準の公開は自発的に行われるべきものであるので、ガイドラインにぜひとも入れておくべきである。
○C-3「部分利用」の「留意事項」(17頁)
マスキングの際に時間がかかる場合、「あらかじめ作業に要する日数」については、「文書によって通知する必要」があることを明記するべきである。また、「マスキングを行う場合でも、できる限り迅速に対応するように努めるべき」といった但し書きを追加する必要がある。
以前、筆者は宮内庁書陵部において、公文書のマスキングによる閲覧を行った際、請求から閲覧までに6年かかったことがある。その理由として、「マスキングのためにマイクロフィルム化する必要があったが、予算がないので毎年少しずつ通常のマイクロ化の予算から割いて撮影していたから」との回答があった。このような事態はさすがに特殊だとしても、宮内庁書陵部宮内公文書館では、現在でも、複写を申請してからコピーを受け取るまでに約3ヶ月かかることが当たり前になっている。そしてその理由として、マイクロフィルム化の作業が「混んでいる」ために順番待ちで時間がかかっているとの説明がなされている。この状況が改善されない限り、宮内公文書館においてマスキングでの開示を要求した場合に、コピーを行うだけで3ヶ月かかるという状況が実際におこる可能性が高く、本来ならばマスキングされた以外の情報は見れたはずなのにもかかわらず、利用者が「諦めて」被覆による開示に納得せざるをえなくなる可能性がある。
利用者に負担を強いるようなことがないようにするためにも、上記の記述は必要であると考える。
○C-10「写しの交付の方法等」
写しの交付の中に、「利用者によるデジタルカメラによる撮影」を入れるべきである。25頁の「閲覧の方法等」には「利用者がカメラ等を用いて特定歴史公文書等を撮影する場合の留意点」との記載があり、デジカメでの撮影も想定した記述が読み取れる。そのため、「写しの交付」の中に、きちんと「デジカメでの撮影を許可する」ことを含めるべきである。
デジカメでの撮影は、「コピー料金を気にせずに複写できる」、「コピーに必要な待ち時間がなくなる(外部委託があるところなど)」、「資料をコピー機で複写する場合、押しつけたりするなどで資料が破損するおそれがあるが、デジカメは基本的に閲覧と同じ状態で撮影できるので、コピー機ほど資料を傷めない」、「職員がわざわざ複写を行ったり、外部に委託したりするという手続きが省ける」など、その利便性の高さだけでなく、職員側の業務軽減にも大きな力を発揮する。
すでに地方の公文書館では、デジカメでの撮影を容認しているところもある。北海道立文書館では、文書資料のコピー機での複写を禁じ、デジカメだけしか複写に応じていない。また、アメリカ国立公文書館ではすでにデジカメやスキャナーでの撮影は容認されている。
さらに、宮内庁書陵部宮内公文書館では、現在コピーをするためだけに申し込みから3ヶ月も待たされており、不便さが際だっている。是非とも、利用者によるデジカメでの撮影をガイドラインに組み込んでほしい。
○C-19「利用時間及び休館日」の「留意事項」
館の開館日に土日を検討することは、研究者以外の一般の方の利用を促進する意味でも賛成である。だが、まずは、「昼休み」を無くすことをここに明記すべきである。
現在、国立公文書館では、閲覧申込の受付時間が「午前は9時15分から11時45分まで、午後は1時から4時30分まで」のみとなっており、昼の文書出納を停止している。また、宮内公文書館では12時から13時の間は、出納どころか「閲覧」すらも停止している。審査のために専門の担当官がいないと出納できないのであれば別だが、普段は請求されたものを書棚から取ってこれば良いだけなのだから、それは一般の職員でも十分可能である。また、閲覧については、職員が交代で受付に残っていれば良いだけのことであり、わざわざ停止する必要があるとは思えない。利用者の利便を図るのであれば、まずはこの「昼休み」の廃止を行うべきである。
F「雑則」
「情報公開法が改正された場合には、その規定に合わせて規則も見直す」という条文をF-4に追加するべきである。
この秋の国会で、情報公開法改正が行われる可能性が高まっている。今回のガイドラインには、情報公開法の規定をそのまま記載しているケースも見られるので、情報公開法改正の際には、それに合わせた規則改正を奨励するべきである(例えば、請求から閲覧までの期日や、「みなし規定」の導入など)。
以上。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
そしてその解説も4回にわたって行ってきました。
第1回 前説
第2回 A:総則とB:保存
第3回 C:利用
第4回 D:廃棄以降
以下は、私が書いたパブコメです。すでに送付済み。何かご参考になればと思います。
特に、個人的には、「デジカメ撮影」については、是非とも実現させたい部分です。
あと、宮内公文書館でのコピーの「遅さ」の解決策は、デジカメ導入しかないと思います。マスキングも、デジカメ撮影のデータを印刷してマスキングすればよい。それで他の部分が「読めない」と言う人がいれば、その時に「マイクロ化」という選択肢を取れば良いと思う。
最近のデジカメは優秀ですから、それで9割方は解決すると思います。
以下、パブコメ本文。
○B-1「行政機関又は独立行政法人等からの受入れ」
「留意事項」に、審査の際の注意点として、「審査の際に不開示にした箇所には、不開示理由及び何年後に再審査の対象になるのかを記載すること」を加えるべきである。あまりに繁雑になる場合は、全面不開示の部分のみに限定することも考えられる。
情報は基本的に劣化するものである。例えば個人情報の場合、国立公文書館においては、情報類型によって不開示の年限が決められている。そのため、いずれは開示に転ずる情報である可能性が高い。米国の国立公文書館では、全面不開示の情報がある場合、「いつ、誰が審査をして、再審査はいつから受け付ける」というメモが挿入されている。
あらかじめ、不開示理由や再審査の対象になる日が記載されていれば、利用者にとって有益な情報となり、さらに審査の透明化にも役立つと思われる。また、審査を行う側も、新たに判断を行う際の基本情報となるので、審査の手間を省くことができる。
○B-7「目録の作成及び公表」の(1)
「規則」の列記された事項の中に、「利用制限事由の審査日」を入れるべきである。
この情報は、全面開示の文書の場合はそれほど重要ではないが、不開示箇所がある場合には重要な情報となる。国立公文書館では、現在「要審査」制度を導入しており、目録登載日と審査日にズレが生じている。また、不開示情報を含む場合、いつごろ再審査になるのかの参考にするためにも、いつ審査が行われたのかは重要な情報だと思われる。さらに、審査を行う側にとっても、いつの時点での不開示判断なのかを知るためにも重要な情報であろう。
○B-7「目録の作成及び公表」の「留意事項」(7頁)
「名称」は「行政文書又は法人文書として保存していた時期と連続性のあるものとすることが望ましい」ことは同意するが、現在の行政文書のファイル名があまりにも曖昧であることが多いので、但し書きとして「ただし、名称が不明瞭な場合にはその限りではない」との記載が必要だと思われる。
○C-2「利用請求の取扱い」の「留意事項」(13頁)
「審査基準の策定」だけでなく、審査基準の「公開」も記載するべきである。審査基準の透明化は、「国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務全うされるようにする」(公文書管理法第1条)ためにも必要不可欠である。国立公文書館等での審査が不透明であるという疑いをもたれないためにも、審査基準の公開は自発的に行われるべきものであるので、ガイドラインにぜひとも入れておくべきである。
○C-3「部分利用」の「留意事項」(17頁)
マスキングの際に時間がかかる場合、「あらかじめ作業に要する日数」については、「文書によって通知する必要」があることを明記するべきである。また、「マスキングを行う場合でも、できる限り迅速に対応するように努めるべき」といった但し書きを追加する必要がある。
以前、筆者は宮内庁書陵部において、公文書のマスキングによる閲覧を行った際、請求から閲覧までに6年かかったことがある。その理由として、「マスキングのためにマイクロフィルム化する必要があったが、予算がないので毎年少しずつ通常のマイクロ化の予算から割いて撮影していたから」との回答があった。このような事態はさすがに特殊だとしても、宮内庁書陵部宮内公文書館では、現在でも、複写を申請してからコピーを受け取るまでに約3ヶ月かかることが当たり前になっている。そしてその理由として、マイクロフィルム化の作業が「混んでいる」ために順番待ちで時間がかかっているとの説明がなされている。この状況が改善されない限り、宮内公文書館においてマスキングでの開示を要求した場合に、コピーを行うだけで3ヶ月かかるという状況が実際におこる可能性が高く、本来ならばマスキングされた以外の情報は見れたはずなのにもかかわらず、利用者が「諦めて」被覆による開示に納得せざるをえなくなる可能性がある。
利用者に負担を強いるようなことがないようにするためにも、上記の記述は必要であると考える。
○C-10「写しの交付の方法等」
写しの交付の中に、「利用者によるデジタルカメラによる撮影」を入れるべきである。25頁の「閲覧の方法等」には「利用者がカメラ等を用いて特定歴史公文書等を撮影する場合の留意点」との記載があり、デジカメでの撮影も想定した記述が読み取れる。そのため、「写しの交付」の中に、きちんと「デジカメでの撮影を許可する」ことを含めるべきである。
デジカメでの撮影は、「コピー料金を気にせずに複写できる」、「コピーに必要な待ち時間がなくなる(外部委託があるところなど)」、「資料をコピー機で複写する場合、押しつけたりするなどで資料が破損するおそれがあるが、デジカメは基本的に閲覧と同じ状態で撮影できるので、コピー機ほど資料を傷めない」、「職員がわざわざ複写を行ったり、外部に委託したりするという手続きが省ける」など、その利便性の高さだけでなく、職員側の業務軽減にも大きな力を発揮する。
すでに地方の公文書館では、デジカメでの撮影を容認しているところもある。北海道立文書館では、文書資料のコピー機での複写を禁じ、デジカメだけしか複写に応じていない。また、アメリカ国立公文書館ではすでにデジカメやスキャナーでの撮影は容認されている。
さらに、宮内庁書陵部宮内公文書館では、現在コピーをするためだけに申し込みから3ヶ月も待たされており、不便さが際だっている。是非とも、利用者によるデジカメでの撮影をガイドラインに組み込んでほしい。
○C-19「利用時間及び休館日」の「留意事項」
館の開館日に土日を検討することは、研究者以外の一般の方の利用を促進する意味でも賛成である。だが、まずは、「昼休み」を無くすことをここに明記すべきである。
現在、国立公文書館では、閲覧申込の受付時間が「午前は9時15分から11時45分まで、午後は1時から4時30分まで」のみとなっており、昼の文書出納を停止している。また、宮内公文書館では12時から13時の間は、出納どころか「閲覧」すらも停止している。審査のために専門の担当官がいないと出納できないのであれば別だが、普段は請求されたものを書棚から取ってこれば良いだけなのだから、それは一般の職員でも十分可能である。また、閲覧については、職員が交代で受付に残っていれば良いだけのことであり、わざわざ停止する必要があるとは思えない。利用者の利便を図るのであれば、まずはこの「昼休み」の廃止を行うべきである。
F「雑則」
「情報公開法が改正された場合には、その規定に合わせて規則も見直す」という条文をF-4に追加するべきである。
この秋の国会で、情報公開法改正が行われる可能性が高まっている。今回のガイドラインには、情報公開法の規定をそのまま記載しているケースも見られるので、情報公開法改正の際には、それに合わせた規則改正を奨励するべきである(例えば、請求から閲覧までの期日や、「みなし規定」の導入など)。
以上。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン解説 第4回 D:廃棄以降 [公文書管理委員会]
公文書管理委員会において、「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」についてのパブリックコメントの募集が始まりました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
そこで、ガイドラインの解説をしてみたいとおもいます。自分の備忘録も兼ねて。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(検討素案)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf
第4回はD:廃棄、E:研修、F:雑則について。
取り上げる項目は第1回を参照。
D-1 特定歴史公文書等の廃棄
(1) 館は、特定歴史公文書等として保存している文書について、劣化が極限まで進展して判読及び修復が不可能で利用できなくなり、歴史資料として重要でなくなったと認める場合には、内閣総理大臣に協議し、その同意を得て、当該特定歴史公文書等を廃棄することができる。
(2) 館は、(1)の規定に基づき特定歴史公文書等の廃棄を行った場合には、廃棄に関する記録を作成し、公表するものとする。
公文書館に移された文書の廃棄に関する規定。
法律制定時には、何か隠すために使われるのではと危惧されていたが、結局「劣化」以外の理由では使えないことになった。
解説でも「外形的な要素のみがその理由として是認される」との限定がある。
基本的に保存されている文書が「劣化」して読めないレベルにまでなるというのは、あまり想定できない。そういう文書は先にマイクロフィルム化されて、そちらで読むようになることがほどんどであろう。
なので、実際にはほとんど使われることのない条項になりそうである。
第E章 研修
E-1 研修の実施
(1) 館は、その職員に対し、歴史公文書等を適切に保存し利用に供するために必要な専門的知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとする。
(2) 館は、(1)の他に、△△省(△△法人)の職員に対し、歴史公文書等の適切な保存及び移管を確保するために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとする。
(3) 館は、(1)及び(2)の研修の実施に当たっては、その必要性を把握し、その結果に基づいて研修の計画を立てなければならない。
(4) 館は、(1)及び(2)の研修を実施したときは、研修計画の改善その他歴史公文書等の適切な保存及び移管の改善に資するため、その効果の把握に努めるものとする。
これは、第1回でも少し書いたが、公文書管理法第27条第2項に列記された「利用等規則」に書かなければならないものに含まれていない。
だが、各行政機関の規則用の「行政文書の管理に関するガイドライン」において、この「研修」が独立させておかれることになったことに合わせたのだと思われる。
この制度がうまくいくかは、結局は現場の人たちの意欲や技術の問題が非常に大きい。
予算をきちんと研修に配分して貰うためにも、この項目は独立させて入れておく必要があると思う。
F-1 保存及び利用の状況の報告
(1) 館は、特定歴史公文書等の保存及び利用の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。
(2) 館は、(1)に規定する報告のため、必要に応じて調査を実施するものとする。
この報告する項目は、解説によると以下の通り。
○ 報告すべき事項として、具体的に、以下のものが考えられる。 ・保存している特定歴史公文書等の数量、書架延長、媒体別の数量
・保存している特定歴史公文書等の分類状況
・目録の作成状況
・年間移管冊数、媒体別の数量
・B-1(3)に定める事前審査の方針
・著作権の処理状況
・利用制限事由に関する審査を行った件数(事前審査によるもの、利用請求によるものを分けて記載)
・複製物の作成計画及び実績(数量、内容)
・利用件数、閲覧・写しの交付の内訳
・移管元行政機関等による利用件数
・手数料収入その他の収入の実績
・利用請求されたもののうち、利用制限が行われたものの件数
・利用制限事由の適用の内訳
・審査の所要日数別内訳(即日、30日以内、60日以内、それ以上)
・異議申立件数、処理件数
・異議申立てから公文書管理委員会への諮問の期間(即日、30日以内、90日以内、それ以上。90日を超えた場合にはその理由も併せて報告)
・異議申立の結果及び館における反映状況
・答申を受けてから決定までの期間(30日以内、60日以内、それ以上。60日を超えた場合はその理由も併せて報告)
・訴訟件数、処理件数
・C-14に定める展示会の開催等の計画及び実績
・見学者受入総数
・外部貸出しの実績
・レファレンスのための体制
・廃棄冊数
・実施規程各種
非常に詳細である。審査期日についての報告などが入っているのは重要。
なお、公文書管理法第26条第2項にはこの「概要」を公表すると書いてあるので、これについてもきちんと解説の中に書き込んでおくべきだろう。
F-2 利用等規則の備付等
館は、本規則について、閲覧室に常時備え付けるほか、インターネットの利用等により公表するものとする。
もちろんこれも重要。
さすがに利用規則については、これまで書陵部も外交史料館も公表しているので、問題はないと思う。
以上で解説は終わりです。
全体を通して気になることとしては、8月まで行われていた「行政透明化検討チーム」での情報公開法改正の動きとの連動性についてです。
今回のガイドラインは、「現在の」情報公開法を参考にして書かれた文章が数多くあります(開示までの期日、開示期日が守られなかった際の「みなし規定」など)。
これらは、情報公開法改正がなった際にはどうするつもりなのか。そのあたりは、きちんと委員会の場ではっきりさせておいた方が良い気がします。
このガイドラインに則って、国立公文書館、外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館の規則が作られることになります。
また、日銀アーカイブなどの関係施設も、実質的にはこのガイドラインを参照して規則を作ることになると思います。
自分の研究に関係のある研究者の方、アーカイブズ関係の方など、是非ともこのガイドラインに興味を持ってくれることを期待しています。そして、気づいた点をパブリックコメントとして送っていただければと思います。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
相変わらずの長さですが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
そこで、ガイドラインの解説をしてみたいとおもいます。自分の備忘録も兼ねて。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(検討素案)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf
第4回はD:廃棄、E:研修、F:雑則について。
取り上げる項目は第1回を参照。
D-1 特定歴史公文書等の廃棄
(1) 館は、特定歴史公文書等として保存している文書について、劣化が極限まで進展して判読及び修復が不可能で利用できなくなり、歴史資料として重要でなくなったと認める場合には、内閣総理大臣に協議し、その同意を得て、当該特定歴史公文書等を廃棄することができる。
(2) 館は、(1)の規定に基づき特定歴史公文書等の廃棄を行った場合には、廃棄に関する記録を作成し、公表するものとする。
公文書館に移された文書の廃棄に関する規定。
法律制定時には、何か隠すために使われるのではと危惧されていたが、結局「劣化」以外の理由では使えないことになった。
解説でも「外形的な要素のみがその理由として是認される」との限定がある。
基本的に保存されている文書が「劣化」して読めないレベルにまでなるというのは、あまり想定できない。そういう文書は先にマイクロフィルム化されて、そちらで読むようになることがほどんどであろう。
なので、実際にはほとんど使われることのない条項になりそうである。
第E章 研修
E-1 研修の実施
(1) 館は、その職員に対し、歴史公文書等を適切に保存し利用に供するために必要な専門的知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとする。
(2) 館は、(1)の他に、△△省(△△法人)の職員に対し、歴史公文書等の適切な保存及び移管を確保するために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとする。
(3) 館は、(1)及び(2)の研修の実施に当たっては、その必要性を把握し、その結果に基づいて研修の計画を立てなければならない。
(4) 館は、(1)及び(2)の研修を実施したときは、研修計画の改善その他歴史公文書等の適切な保存及び移管の改善に資するため、その効果の把握に努めるものとする。
これは、第1回でも少し書いたが、公文書管理法第27条第2項に列記された「利用等規則」に書かなければならないものに含まれていない。
だが、各行政機関の規則用の「行政文書の管理に関するガイドライン」において、この「研修」が独立させておかれることになったことに合わせたのだと思われる。
この制度がうまくいくかは、結局は現場の人たちの意欲や技術の問題が非常に大きい。
予算をきちんと研修に配分して貰うためにも、この項目は独立させて入れておく必要があると思う。
F-1 保存及び利用の状況の報告
(1) 館は、特定歴史公文書等の保存及び利用の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。
(2) 館は、(1)に規定する報告のため、必要に応じて調査を実施するものとする。
この報告する項目は、解説によると以下の通り。
○ 報告すべき事項として、具体的に、以下のものが考えられる。 ・保存している特定歴史公文書等の数量、書架延長、媒体別の数量
・保存している特定歴史公文書等の分類状況
・目録の作成状況
・年間移管冊数、媒体別の数量
・B-1(3)に定める事前審査の方針
・著作権の処理状況
・利用制限事由に関する審査を行った件数(事前審査によるもの、利用請求によるものを分けて記載)
・複製物の作成計画及び実績(数量、内容)
・利用件数、閲覧・写しの交付の内訳
・移管元行政機関等による利用件数
・手数料収入その他の収入の実績
・利用請求されたもののうち、利用制限が行われたものの件数
・利用制限事由の適用の内訳
・審査の所要日数別内訳(即日、30日以内、60日以内、それ以上)
・異議申立件数、処理件数
・異議申立てから公文書管理委員会への諮問の期間(即日、30日以内、90日以内、それ以上。90日を超えた場合にはその理由も併せて報告)
・異議申立の結果及び館における反映状況
・答申を受けてから決定までの期間(30日以内、60日以内、それ以上。60日を超えた場合はその理由も併せて報告)
・訴訟件数、処理件数
・C-14に定める展示会の開催等の計画及び実績
・見学者受入総数
・外部貸出しの実績
・レファレンスのための体制
・廃棄冊数
・実施規程各種
非常に詳細である。審査期日についての報告などが入っているのは重要。
なお、公文書管理法第26条第2項にはこの「概要」を公表すると書いてあるので、これについてもきちんと解説の中に書き込んでおくべきだろう。
F-2 利用等規則の備付等
館は、本規則について、閲覧室に常時備え付けるほか、インターネットの利用等により公表するものとする。
もちろんこれも重要。
さすがに利用規則については、これまで書陵部も外交史料館も公表しているので、問題はないと思う。
以上で解説は終わりです。
全体を通して気になることとしては、8月まで行われていた「行政透明化検討チーム」での情報公開法改正の動きとの連動性についてです。
今回のガイドラインは、「現在の」情報公開法を参考にして書かれた文章が数多くあります(開示までの期日、開示期日が守られなかった際の「みなし規定」など)。
これらは、情報公開法改正がなった際にはどうするつもりなのか。そのあたりは、きちんと委員会の場ではっきりさせておいた方が良い気がします。
このガイドラインに則って、国立公文書館、外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館の規則が作られることになります。
また、日銀アーカイブなどの関係施設も、実質的にはこのガイドラインを参照して規則を作ることになると思います。
自分の研究に関係のある研究者の方、アーカイブズ関係の方など、是非ともこのガイドラインに興味を持ってくれることを期待しています。そして、気づいた点をパブリックコメントとして送っていただければと思います。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
相変わらずの長さですが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン解説 第3回 C:利用 [公文書管理委員会]
公文書管理委員会において、「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」についてのパブリックコメントの募集が始まりました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
そこで、ガイドラインの解説をしてみたいとおもいます。自分の備忘録も兼ねて。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(検討素案)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf
第3回はC:利用について。
取り上げる項目は第1回を参照。
項目が多いので2回に分けようかと思ったのですが、分けたところで長いことに変わりはないので、そのまま行きます。申し訳ないです。
C-2 利用請求の取扱い
(1) 館は、特定歴史公文書等について前条に定める利用請求があった場合には、次に掲げる場合を除き、これを利用に供するものとする。
① 【行政機関から移管を受ける施設の場合】
当該特定歴史公文書等に次に掲げる情報が記録されている場合
イ 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「行政機関情報公開法」という。)第5条第1号に掲げる情報
ロ 行政機関情報公開法第5条第2号又は第6号イ若しくはホに掲げる情報 ハ 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
ニ 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
【独立行政法人等から移管を受ける施設の場合】
当該特定歴史公文書等に次に掲げる情報が記録されている場合
イ 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第5条第1号に掲げる情報
ロ 独立行政法人等情報公開法第5条第2号又は第4号イからハまで若しくはトに掲げる情報
② 当該特定歴史公文書等がその全部又は一部を一定の期間公にしないことを条件に法人等又は個人から寄贈され、又は寄託されたものであって、当該期間が経過していない場合
③ 当該特定歴史公文書等の原本を利用に供することにより当該原本の破損若しくはその汚損を生ずるおそれがある場合又は当該原本が現に使用されている場合
(2) 館は、利用請求に係る特定歴史公文書等が(1)①に該当するか否かについて判断するに当たっては、当該特定歴史公文書等が行政文書(法人文書)として作成又は取得されてからの時の経過を考慮するとともに、当該特定歴史公文書等に法第8条第3項又は第11条第5項の規定による意見が付されている場合には、当該意見を参酌する。
これは公文書管理法第16条にある不開示規定をそのまま記載したもの。
この不開示規定自体の解説は、まだ国会審議前だった時(結局原案通り成立)に一回書いたので、そちらを参照。
ただ、今更ながら気づいたことがある。
具体的な解説に次のようなことが記載されている。
○ 利用請求があった特定歴史公文書等については、法第16条第1項に規定する利用制限事由がある場合を除き、利用に供しなければならない。利用制限事由の該当性については、適正な審査を行うため、館において審査基準を策定しておく必要がある。
これ自体は別に問題はない。
しかし「審査基準」について、このガイドラインには一言も記載がない。
そして、今頃気づいたのだが、公文書管理法第27条第2項の「利用等規則」に書かなければならない項目の中に「審査基準」が含まれていない。
2年近くもこの法律に関わっていて、この事実に全く気づいてなかった。不覚にもいいところで、本当に情けなくて穴でも掘って埋まりたい気分だ・・・
なので、このガイドラインに「審査基準」が入っていないのは、当たり前だということになる。
現在、国立公文書館では、個人情報の「時の経過」による開示基準を、きちんとウェブサイトで公開している(一番下の「別表」)。
例えば、個人情報で、「学歴」や「財産」は30年以上50年未満の保護、「門地」などは80年以上という制限がついている。
ただし、他の審査基準については公開されていない。
もちろん、外交史料館や宮内公文書館では、全く審査基準は公開されていない。
審査基準の公開義務を負っていないということは、現在国立公文書館で公開されている基準ですらも公表義務を負わないということを意味する。
審査基準が公表されないということは、内部で恣意的な審査が行われる可能性を否定できないということになる。
だからこそ、「公表」されることは絶対に必要。
だが、法的にその決め手が無い以上、「自発的」に公表する道を作るしかない。
少なくとも、公文書管理法の理念は「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであること」(第1条)であることから、この審査基準はできるかぎり公表すべきとガイドラインに書き込んでもらうべきだと思う。
国立公文書館が現在よりも後退した対応を取らないと信じたいが、外交史料館や宮内公文書館は現在でも基準を公開していない。
もし公開されなかった場合、来年4月以降、情報公開請求を行って、その基準の公開を求めていく必要があるかもしれない。
注記
三木由希子さんによると、国立公文書館は義務を負っていないが、外交史料館や宮内公文書館は義務を負っているとブログに書かれており、現在照会中。後日結果を記載します。
追記 10/12
三木さんによれば、
「宮内庁書稜部も外交資料館も行政機関だからです。利用請求に対する決定権者も、おそらく宮内庁長官、外務大臣となるか、あるいは権限移管が行われればより下位の立場のものになります。そのため、行政手続法の適用を受けるということです。独立行政法人とはそこが違います。」
だそうです。
行政手続法については最近位置づけがやっとわかってきた。もう少し勉強します。
C-3 部分利用
(1) 館は、C-2(1)①又は②に掲げる場合であっても、(1)①に掲げる情報又は(1)②の条件に係る情報(以下C-3において「利用制限情報」という。)が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、利用請求者に対し、当該部分を除いた部分を利用させなければならない。ただし、当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない。
(2) (1)に規定する区分の方法は、次の各号に掲げる特定歴史公文書等の種類に応じ、当該各号に掲げる方法とする。
① 文書又は図画 当該特定歴史公文書等の写しを作成し、当該写しに記載されている利用制限情報を墨塗りする方法(ただし、利用請求者の同意があれば、利用制限情報が記載されている範囲を被覆する方法によることを妨げない。)
② 電磁的記録 当該記録の写しを作成し、当該写しに記載されている利用制限情報を消除する方法
部分利用の規定にあたる。
気になるのは(2)の①について。
基本的には墨塗り箇所を含む場合はコピーしてから塗ることが大前提。ただし、そのページ全体にカバーをかける(被覆)ことも、利用請求者の「同意」があれば良いということになった。
これは、宮内公文書館での現在の公文書の開示方法を考慮してということになるだろう。
ただ、「利用者の同意」がないと被覆できないという部分は非常に大きい。
これまで、私は、宮内公文書館で、ちょっとした個人情報のために、まとまった報告書が途中1ページだけ覆われて見れなくなっているという事態に何度も遭遇して泣いてきたので。
しかし、解説部分の「なお、マスキングによる方法は作業に一定の時間を要するため、利用請求者に対して、あらかじめ作業に要する日数について情報提供しておく必要がある。」という説明は、甘いと思う。
私は以前宮内公文書館で、マスキングによって公開された文書を見たことがあるが、見るまでに請求してから6年もかかった。
その時に言われた理由が、「マスキングのためにマイクロフィルムにする必要があったが、予算がないので毎年少しずつ通常のマイクロ化の予算から割いて撮影していたから」とのことだった。
いまでも、宮内庁書陵部では、普通に文書のコピーを行うだけで3ヶ月待たされる(専門の業者に依頼するため)。
もしマスキング対象の枚数が膨大になった場合、コピーを作るだけで何年かかるかわかったもんじゃない。
だからこそ、「要する日数」については「文書によって通知する必要」があることを明記させるべきだし、マスキングする際でも「できる限り迅速に対応するように努めるべき」といったような文章を入れておく必要もあるだろう。
この部分は、最終的には、運用が始まってから色々と問題になるのかなとは思っている。
C-6 利用決定
(1) 館は、利用請求があった場合は速やかに、これに係る処分についての決定(以下「利用決定」という。)をしなければならない。ただし、利用制限事由の存否に係る確認作業が必要な場合その他の時間を要する事情がある場合は、利用請求があった日から30日以内に利用決定をするものとする。この場合において、館がC-1(5)の規定により補正を求めたときは、当該補正に要した日数は、当該期間に算入しない。
(2) 利用決定においては、利用請求のあった特定歴史公文書等ごとに、次の各号に掲げる処分のいずれかを決定するものとする。
① 全部の利用を認めること(ただし法第19条ただし書の規定に基づき写しを閲覧させる方法を用いる場合にはその旨を明記すること。②において同じ。)
② 一部の利用を認めないこと
③ 全部の利用を認めないこと
(3) 館は、利用決定に関し、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、(1)の規定に関わらず、(1)ただし書に規定する期間を30日以内に限り延長することができる。この場合において、館は、利用請求者に対し、遅滞なく、延長後の期間及び延長の理由を通知するものとする。
(4) 館は、利用請求に係る特定歴史公文書等が著しく大量であるため、利用請求があった日から60日以内にそのすべてについて利用決定をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、(1)及び(3)の規定に関わらず、利用請求に係る特定歴史公文書等のうちの相当の部分につき当該期間内に利用決定をし、残りの部分については相当の期間内に利用決定をすることができる。この場合において、館は、利用請求があった日の翌日から30日以内(C-1(5)の規定により補正に要した日数を除く。)に、利用請求者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
① 本規定を適用する旨及び理由
② 残りの部分について利用決定をする期限
これは、情報公開法の利用決定までの期日に合わせたもの。
基本は来館してすぐに見れるようにする。
確認が必要な場合、30日以内(+30日延長可)。
膨大な量がある場合、60日以上にしても良いが、一部は60日以内に開示、それ以外は開示予定日を明記。
この日数制限は非常に良い規定だと思う。
宮内公文書館では、私は請求後2ヶ月から3ヶ月ぐらい見るのにかかっているので、日数制限できちんといつ見れるのかが文書で明記されるのはありがたいと思う。(昔は数年単位というのもあったが・・・)
知り合いに聞くと、国立公文書館の要審査の文書も、ものによっては2ヶ月ぐらいはかかっているらしい。だが、1ヶ月ごとに担当者から進行具合を連絡してくるそうである。こういったところは「放置されていない」という安心感につながるので良いことだと思う。
C-9 閲覧の方法等
(1) 特定歴史公文書等の閲覧は、閲覧室で行うものとする。
(2) 閲覧室における特定歴史公文書等の利用に関しては、別に定めるところによる。
C-10 写しの交付の方法等
(1) 特定歴史公文書等の写しの交付は、当該特定歴史公文書等の全部について行うほか、その一部についても行うことができる。この場合において、館は、利用請求者に対し、具体的な範囲の特定を求めるものとする。
(2) 写しの交付は、次の①及び②の各号に掲げる特定歴史公文書等の媒体について、当該各号に定めるものの中から館が指定した方法のうち、利用請求者の希望するものについて、利用請求者から部数の指定を受けた上で実施するものとする。
① 文書又は図画(法第16条第3項の規定に基づく利用のために作成された複製物を含む。②において同じ。)
ア 用紙に複写したもの
イ 撮影したマイクロフィルムのネガ
ウ スキャナにより読み取ってできた電磁的記録
エ ウをフレキシブルディスクカートリッジや光ディスク等に複写したもの
② 電磁的記録
ア 用紙に出力したもの
イ 電磁的記録として複写したもの
ウ イをフレキシブルディスクカートリッジや光ディスク等に複写したもの
(3) 館は、利用請求者より、写しの交付を行う範囲、方法及び部数の指定を受けた場合は速やかに料金表(※各館の利用等規則において別表として添付)に基づき手数料額を算定し、当該料金を利用請求者に通知するものとする。
(4) 館は、C-11に定める手数料の納付が確認されたのち、速やかに写しの交付を行うものとする。
(5) 写しの交付は、館において行うほか、利用請求者の求めに応じ、次の各号に掲げる方法により行うこともできる。この場合、①の方法において必要な郵送料は、利用請求者が負担するものとする。
① 利用請求者に郵送する方法
② 情報通信技術を用いて利用請求者に送付する方法
9と10はまとめて。
写しの交付に、電磁記録化して交付するという方法(①のウやエ)が入ったのは良いと思う。
また、(5)の②を見ると、電子メールでの送付もOKということになるようである。
だが、この文を見ると、利用者による「デジタルカメラによる撮影」が含まれていないことに気づく。
ただ、解説の「閲覧の方法等」の部分には以下の記述がある。
この定めには、特定歴史公文書等の利用に関しての手続き、特定歴史公文書等の取扱い(利用者がカメラ等を用いて特定歴史公文書等を撮影する場合の留意点、特定歴史公文書等の破損に関する利用者の責任等)等、閲覧室で特定歴史公文書等を利用する際の全般的な事項に関して規定する。
つまり、デジカメ撮影を想定した文章が入っている。
だが、写しの交付の解説には一切このことが入っていない。
歴史公文書のデジカメ撮影は、例えば米国国立公文書館ではすでにOKとなっている。スキャナーを持ち込んでいる人もよく見かける。
デジカメで撮影できるメリットは
・コピー料金を気にせずに複写できる。
・コピーに必要な待ち時間がなくなる。(外部委託があるところなど)
・資料をコピー機で複写する場合、押しつけたりするなどで資料が破損するおそれがあるが、デジカメは基本的に閲覧と同じ状態で撮影できるので、コピー機より資料を傷めない。
・職員がわざわざ複写を行ったり、外部に委託したりするという手続きが省ける。
と、業務の軽減化や資料保存なども考えると、得なことが大きい。
撮影方法は、職員が最初にきちんと指導すれば良い。
撮影箇所がどこなのか把握したいのであれば、書類を提出させ、デジカメのデータのチェックなどを行えばよい。
地方の公文書館ではすでにデジカメOKのところもある。
例えば、北海道立文書館では、文書資料のコピー機での複写を禁じ、デジカメだけしか複写に応じていない。
すでに上記したが、宮内庁書陵部では、現在コピーをするために3ヶ月も待たされる。これでは、思いついてすぐに研究ができず、利用しづらいことこの上ない。
クリアするべきは著作権法の問題ぐらいだが、公文書そのものに著作権はそもそも存在しないと思う。
問題になるのは、著作物が公文書の中に含まれていた場合だと思われるが、その場合は、その資料はデジカメ撮影を不可にするなどの対策を取ればよいだろう。
デジカメ撮影をOKにすることは、公文書館側にも利用者側にもどちらにもメリットが非常に高い。
ガイドラインの解説で実際にはそれを想定する文章を入れているのであれば、もっときちんと書き込むべきだと思われる。
C-11 手数料等
(1) 館は、利用請求者が写しの交付を受ける場合には、料金表に基づき算出した手数料の納入を、次の各号に定めるもののうち、館が指定する方法により受け取るものとする。
① 館において直接納入する方法
② 館に郵便書留で送付する方法
③ 館の指定する銀行口座へ振り込む方法
④ 館において印紙を直接納付する方法
⑤ 印紙を所定の書類に貼付して館に郵便書留で送付する方法
(2) (1)②、③又は⑤の手続に必要な費用は、利用請求者が負担するものとする。
(3) 館は、料金表を閲覧室に常時備え付けるとともに、インターネットの利用等により公表する。
(3)がものすごく重要。
現在の外交史料館や宮内庁書陵部では、複写料金がウェブ上に一切公開されていない。
きちんとした料金表を手許に持っていないので具体例を出せないが、かなり高額な料金を取られている。
今後どうなるかはわからないが、これはきちんと公表されるべき情報だと思う。
C-12 異議申立て
(1) 館は、法第21条に基づく異議申立てがあった時は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、公文書管理委員会に諮問する。
① 異議申立てが不適法であり、却下するとき。
② 決定で、異議申立てに係る利用請求に対する処分を取り消し又は変更し、当該異議申立てに係る特定歴史公文書等の全部を利用させることとするとき。ただし、当該異議申立てに係る特定歴史公文書等の利用について反対意見書が提出されているときを除く。
(2) 館は、(1)の諮問をした場合は、次に掲げる者に対し、諮問をした旨を通知する。
① 異議申立人及び参加人
② 利用請求者(利用請求者が異議申立人又は参加人である場合を除く。)
③ 当該異議申立てに係る利用請求に対する処分について反対意見書を提出した第三者(当該第三者が異議申立人又は参加人である場合を除く。)
(3) C-5(4)の規定は、次の各号のいずれかに該当する決定をする場合について準用する。
① 利用させる旨の決定に対する第三者からの異議申立てを却下し、又は棄却する決定
② 異議申立てに係る利用請求に対する処分を変更し、当該利用請求に対する処分に係る特定歴史公文書等を利用させる旨の決定(第三者である参加人が当該特定歴史公文書等を利用させることに反対の意思を表示している場合に限る。)
(4) 館は、公文書管理委員会から(1)の諮問に対する答申を受けた場合は、当該答申を踏まえ、速やかに決定を行うものとする。
公文書管理法の目玉の一つ。
歴史公文書の不開示決定に対して不満がある場合、不服申立を第三者機関(公文書管理委員会)に可能となった。
これまでは、その館の「館長」に行うか、そもそも行えないかだったので、不開示決定を逆転開示させる道ができたということになる。
内容は基本的には、情報公開法における情報公開・個人情報保護審査会の仕組みとほぼ同じだといってよいだろう。
解説の部分で、情報公開法施行後に問題になったこと(諮問までに長期間かかるなど)がきちんとフォローされているので、きちんと情報公開法の教訓を組み込んだものになりそうだ。
C-19 館の開館
(1) 館は、利用に関する業務を実施するため、次に掲げる日を除き、毎日開館する。
① ○○○○
② ○○○○
③ ○○○○
(2) 館は、(1)の規定にかかわらず、特に必要がある場合には、臨時に開館し又は休館することができる。この場合には、館は、原則として開館又は休館の2週間前までにその旨及び理由を公表しなければならない。
(3) 館の利用時間は○時から○時までとする。ただし、特に必要がある場合には、臨時に変更することができる。この場合には、館は、事前にその旨及び理由を公表しなければならない。
開館日の規定で、とくに文面に問題はない。
解説には「利用者の立場からすれば、例えば、土曜日、日曜日にも利用可能な施設であることが、その利便性に適うことが容易に想定される。従って、体制、経費等を踏まえつつ、こうした土曜日、日曜日の開館についても積極的に検討を行うことが望まれる。」との記載があり、これは是非とも考慮してほしい。
またこれ以上に言いたいのは「昼休みを無くしてくれ」ということだ。
現在の国立公文書館の利用時間は次のようになっている。
・午前9時15分から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
・公文書等の閲覧申込の受付時間は、午前は9時15分から11時45分まで、午後は1時から4時30分まで
つまり、出納を11;45-13:00まで中止しているのである。
また、宮内庁書陵部では、12時から13時まで、出納どころか閲覧まで中止となり、閲覧室から追い出される。
(外交史料館には特に昼休みの規定はないようである。)
昔、国立国会図書館にもこういった昼休みがあって、その間出納を中止していた。しかし、今では昼休みが無くなっている。
昼休みは時間をずらして取れば良い。
もし、専門の「唯一の」担当官がいないと出納できないのであれば別だけれども、普通は請求されたものを書棚から取ってこれば良いだけなのだから、それは一般の職員でも十分可能だろう。(たとえば、審査が必要なものについてのみ、昼の出納を中止するとか。)
また、どうしても人数がいなくて出納は無理というのであれば、せめて「閲覧」だけはその時間も行うべきだろう(これは受付が一人いれば済むことだ)。もちろん書陵部の話である。
土日を空けるべきという解説が付くことからもわかるように、公文書館はできるかぎり利用者の便宜を図るべきだと思う。
昼休みの廃止は真剣に検討されてしかるべきだと考える。
C:利用については以上です。次回は残りの部分です。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
そこで、ガイドラインの解説をしてみたいとおもいます。自分の備忘録も兼ねて。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(検討素案)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf
第3回はC:利用について。
取り上げる項目は第1回を参照。
項目が多いので2回に分けようかと思ったのですが、分けたところで長いことに変わりはないので、そのまま行きます。申し訳ないです。
C-2 利用請求の取扱い
(1) 館は、特定歴史公文書等について前条に定める利用請求があった場合には、次に掲げる場合を除き、これを利用に供するものとする。
① 【行政機関から移管を受ける施設の場合】
当該特定歴史公文書等に次に掲げる情報が記録されている場合
イ 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「行政機関情報公開法」という。)第5条第1号に掲げる情報
ロ 行政機関情報公開法第5条第2号又は第6号イ若しくはホに掲げる情報 ハ 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
ニ 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
【独立行政法人等から移管を受ける施設の場合】
当該特定歴史公文書等に次に掲げる情報が記録されている場合
イ 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第5条第1号に掲げる情報
ロ 独立行政法人等情報公開法第5条第2号又は第4号イからハまで若しくはトに掲げる情報
② 当該特定歴史公文書等がその全部又は一部を一定の期間公にしないことを条件に法人等又は個人から寄贈され、又は寄託されたものであって、当該期間が経過していない場合
③ 当該特定歴史公文書等の原本を利用に供することにより当該原本の破損若しくはその汚損を生ずるおそれがある場合又は当該原本が現に使用されている場合
(2) 館は、利用請求に係る特定歴史公文書等が(1)①に該当するか否かについて判断するに当たっては、当該特定歴史公文書等が行政文書(法人文書)として作成又は取得されてからの時の経過を考慮するとともに、当該特定歴史公文書等に法第8条第3項又は第11条第5項の規定による意見が付されている場合には、当該意見を参酌する。
これは公文書管理法第16条にある不開示規定をそのまま記載したもの。
この不開示規定自体の解説は、まだ国会審議前だった時(結局原案通り成立)に一回書いたので、そちらを参照。
ただ、今更ながら気づいたことがある。
具体的な解説に次のようなことが記載されている。
○ 利用請求があった特定歴史公文書等については、法第16条第1項に規定する利用制限事由がある場合を除き、利用に供しなければならない。利用制限事由の該当性については、適正な審査を行うため、館において審査基準を策定しておく必要がある。
これ自体は別に問題はない。
しかし「審査基準」について、このガイドラインには一言も記載がない。
そして、今頃気づいたのだが、公文書管理法第27条第2項の「利用等規則」に書かなければならない項目の中に「審査基準」が含まれていない。
2年近くもこの法律に関わっていて、この事実に全く気づいてなかった。不覚にもいいところで、本当に情けなくて穴でも掘って埋まりたい気分だ・・・
なので、このガイドラインに「審査基準」が入っていないのは、当たり前だということになる。
現在、国立公文書館では、個人情報の「時の経過」による開示基準を、きちんとウェブサイトで公開している(一番下の「別表」)。
例えば、個人情報で、「学歴」や「財産」は30年以上50年未満の保護、「門地」などは80年以上という制限がついている。
ただし、他の審査基準については公開されていない。
もちろん、外交史料館や宮内公文書館では、全く審査基準は公開されていない。
審査基準の公開義務を負っていないということは、現在国立公文書館で公開されている基準ですらも公表義務を負わないということを意味する。
審査基準が公表されないということは、内部で恣意的な審査が行われる可能性を否定できないということになる。
だからこそ、「公表」されることは絶対に必要。
だが、法的にその決め手が無い以上、「自発的」に公表する道を作るしかない。
少なくとも、公文書管理法の理念は「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであること」(第1条)であることから、この審査基準はできるかぎり公表すべきとガイドラインに書き込んでもらうべきだと思う。
国立公文書館が現在よりも後退した対応を取らないと信じたいが、外交史料館や宮内公文書館は現在でも基準を公開していない。
もし公開されなかった場合、来年4月以降、情報公開請求を行って、その基準の公開を求めていく必要があるかもしれない。
注記
三木由希子さんによると、国立公文書館は義務を負っていないが、外交史料館や宮内公文書館は義務を負っているとブログに書かれており、現在照会中。後日結果を記載します。
追記 10/12
三木さんによれば、
「宮内庁書稜部も外交資料館も行政機関だからです。利用請求に対する決定権者も、おそらく宮内庁長官、外務大臣となるか、あるいは権限移管が行われればより下位の立場のものになります。そのため、行政手続法の適用を受けるということです。独立行政法人とはそこが違います。」
だそうです。
行政手続法については最近位置づけがやっとわかってきた。もう少し勉強します。
C-3 部分利用
(1) 館は、C-2(1)①又は②に掲げる場合であっても、(1)①に掲げる情報又は(1)②の条件に係る情報(以下C-3において「利用制限情報」という。)が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、利用請求者に対し、当該部分を除いた部分を利用させなければならない。ただし、当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない。
(2) (1)に規定する区分の方法は、次の各号に掲げる特定歴史公文書等の種類に応じ、当該各号に掲げる方法とする。
① 文書又は図画 当該特定歴史公文書等の写しを作成し、当該写しに記載されている利用制限情報を墨塗りする方法(ただし、利用請求者の同意があれば、利用制限情報が記載されている範囲を被覆する方法によることを妨げない。)
② 電磁的記録 当該記録の写しを作成し、当該写しに記載されている利用制限情報を消除する方法
部分利用の規定にあたる。
気になるのは(2)の①について。
基本的には墨塗り箇所を含む場合はコピーしてから塗ることが大前提。ただし、そのページ全体にカバーをかける(被覆)ことも、利用請求者の「同意」があれば良いということになった。
これは、宮内公文書館での現在の公文書の開示方法を考慮してということになるだろう。
ただ、「利用者の同意」がないと被覆できないという部分は非常に大きい。
これまで、私は、宮内公文書館で、ちょっとした個人情報のために、まとまった報告書が途中1ページだけ覆われて見れなくなっているという事態に何度も遭遇して泣いてきたので。
しかし、解説部分の「なお、マスキングによる方法は作業に一定の時間を要するため、利用請求者に対して、あらかじめ作業に要する日数について情報提供しておく必要がある。」という説明は、甘いと思う。
私は以前宮内公文書館で、マスキングによって公開された文書を見たことがあるが、見るまでに請求してから6年もかかった。
その時に言われた理由が、「マスキングのためにマイクロフィルムにする必要があったが、予算がないので毎年少しずつ通常のマイクロ化の予算から割いて撮影していたから」とのことだった。
いまでも、宮内庁書陵部では、普通に文書のコピーを行うだけで3ヶ月待たされる(専門の業者に依頼するため)。
もしマスキング対象の枚数が膨大になった場合、コピーを作るだけで何年かかるかわかったもんじゃない。
だからこそ、「要する日数」については「文書によって通知する必要」があることを明記させるべきだし、マスキングする際でも「できる限り迅速に対応するように努めるべき」といったような文章を入れておく必要もあるだろう。
この部分は、最終的には、運用が始まってから色々と問題になるのかなとは思っている。
C-6 利用決定
(1) 館は、利用請求があった場合は速やかに、これに係る処分についての決定(以下「利用決定」という。)をしなければならない。ただし、利用制限事由の存否に係る確認作業が必要な場合その他の時間を要する事情がある場合は、利用請求があった日から30日以内に利用決定をするものとする。この場合において、館がC-1(5)の規定により補正を求めたときは、当該補正に要した日数は、当該期間に算入しない。
(2) 利用決定においては、利用請求のあった特定歴史公文書等ごとに、次の各号に掲げる処分のいずれかを決定するものとする。
① 全部の利用を認めること(ただし法第19条ただし書の規定に基づき写しを閲覧させる方法を用いる場合にはその旨を明記すること。②において同じ。)
② 一部の利用を認めないこと
③ 全部の利用を認めないこと
(3) 館は、利用決定に関し、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、(1)の規定に関わらず、(1)ただし書に規定する期間を30日以内に限り延長することができる。この場合において、館は、利用請求者に対し、遅滞なく、延長後の期間及び延長の理由を通知するものとする。
(4) 館は、利用請求に係る特定歴史公文書等が著しく大量であるため、利用請求があった日から60日以内にそのすべてについて利用決定をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、(1)及び(3)の規定に関わらず、利用請求に係る特定歴史公文書等のうちの相当の部分につき当該期間内に利用決定をし、残りの部分については相当の期間内に利用決定をすることができる。この場合において、館は、利用請求があった日の翌日から30日以内(C-1(5)の規定により補正に要した日数を除く。)に、利用請求者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
① 本規定を適用する旨及び理由
② 残りの部分について利用決定をする期限
これは、情報公開法の利用決定までの期日に合わせたもの。
基本は来館してすぐに見れるようにする。
確認が必要な場合、30日以内(+30日延長可)。
膨大な量がある場合、60日以上にしても良いが、一部は60日以内に開示、それ以外は開示予定日を明記。
この日数制限は非常に良い規定だと思う。
宮内公文書館では、私は請求後2ヶ月から3ヶ月ぐらい見るのにかかっているので、日数制限できちんといつ見れるのかが文書で明記されるのはありがたいと思う。(昔は数年単位というのもあったが・・・)
知り合いに聞くと、国立公文書館の要審査の文書も、ものによっては2ヶ月ぐらいはかかっているらしい。だが、1ヶ月ごとに担当者から進行具合を連絡してくるそうである。こういったところは「放置されていない」という安心感につながるので良いことだと思う。
C-9 閲覧の方法等
(1) 特定歴史公文書等の閲覧は、閲覧室で行うものとする。
(2) 閲覧室における特定歴史公文書等の利用に関しては、別に定めるところによる。
C-10 写しの交付の方法等
(1) 特定歴史公文書等の写しの交付は、当該特定歴史公文書等の全部について行うほか、その一部についても行うことができる。この場合において、館は、利用請求者に対し、具体的な範囲の特定を求めるものとする。
(2) 写しの交付は、次の①及び②の各号に掲げる特定歴史公文書等の媒体について、当該各号に定めるものの中から館が指定した方法のうち、利用請求者の希望するものについて、利用請求者から部数の指定を受けた上で実施するものとする。
① 文書又は図画(法第16条第3項の規定に基づく利用のために作成された複製物を含む。②において同じ。)
ア 用紙に複写したもの
イ 撮影したマイクロフィルムのネガ
ウ スキャナにより読み取ってできた電磁的記録
エ ウをフレキシブルディスクカートリッジや光ディスク等に複写したもの
② 電磁的記録
ア 用紙に出力したもの
イ 電磁的記録として複写したもの
ウ イをフレキシブルディスクカートリッジや光ディスク等に複写したもの
(3) 館は、利用請求者より、写しの交付を行う範囲、方法及び部数の指定を受けた場合は速やかに料金表(※各館の利用等規則において別表として添付)に基づき手数料額を算定し、当該料金を利用請求者に通知するものとする。
(4) 館は、C-11に定める手数料の納付が確認されたのち、速やかに写しの交付を行うものとする。
(5) 写しの交付は、館において行うほか、利用請求者の求めに応じ、次の各号に掲げる方法により行うこともできる。この場合、①の方法において必要な郵送料は、利用請求者が負担するものとする。
① 利用請求者に郵送する方法
② 情報通信技術を用いて利用請求者に送付する方法
9と10はまとめて。
写しの交付に、電磁記録化して交付するという方法(①のウやエ)が入ったのは良いと思う。
また、(5)の②を見ると、電子メールでの送付もOKということになるようである。
だが、この文を見ると、利用者による「デジタルカメラによる撮影」が含まれていないことに気づく。
ただ、解説の「閲覧の方法等」の部分には以下の記述がある。
この定めには、特定歴史公文書等の利用に関しての手続き、特定歴史公文書等の取扱い(利用者がカメラ等を用いて特定歴史公文書等を撮影する場合の留意点、特定歴史公文書等の破損に関する利用者の責任等)等、閲覧室で特定歴史公文書等を利用する際の全般的な事項に関して規定する。
つまり、デジカメ撮影を想定した文章が入っている。
だが、写しの交付の解説には一切このことが入っていない。
歴史公文書のデジカメ撮影は、例えば米国国立公文書館ではすでにOKとなっている。スキャナーを持ち込んでいる人もよく見かける。
デジカメで撮影できるメリットは
・コピー料金を気にせずに複写できる。
・コピーに必要な待ち時間がなくなる。(外部委託があるところなど)
・資料をコピー機で複写する場合、押しつけたりするなどで資料が破損するおそれがあるが、デジカメは基本的に閲覧と同じ状態で撮影できるので、コピー機より資料を傷めない。
・職員がわざわざ複写を行ったり、外部に委託したりするという手続きが省ける。
と、業務の軽減化や資料保存なども考えると、得なことが大きい。
撮影方法は、職員が最初にきちんと指導すれば良い。
撮影箇所がどこなのか把握したいのであれば、書類を提出させ、デジカメのデータのチェックなどを行えばよい。
地方の公文書館ではすでにデジカメOKのところもある。
例えば、北海道立文書館では、文書資料のコピー機での複写を禁じ、デジカメだけしか複写に応じていない。
すでに上記したが、宮内庁書陵部では、現在コピーをするために3ヶ月も待たされる。これでは、思いついてすぐに研究ができず、利用しづらいことこの上ない。
クリアするべきは著作権法の問題ぐらいだが、公文書そのものに著作権はそもそも存在しないと思う。
問題になるのは、著作物が公文書の中に含まれていた場合だと思われるが、その場合は、その資料はデジカメ撮影を不可にするなどの対策を取ればよいだろう。
デジカメ撮影をOKにすることは、公文書館側にも利用者側にもどちらにもメリットが非常に高い。
ガイドラインの解説で実際にはそれを想定する文章を入れているのであれば、もっときちんと書き込むべきだと思われる。
C-11 手数料等
(1) 館は、利用請求者が写しの交付を受ける場合には、料金表に基づき算出した手数料の納入を、次の各号に定めるもののうち、館が指定する方法により受け取るものとする。
① 館において直接納入する方法
② 館に郵便書留で送付する方法
③ 館の指定する銀行口座へ振り込む方法
④ 館において印紙を直接納付する方法
⑤ 印紙を所定の書類に貼付して館に郵便書留で送付する方法
(2) (1)②、③又は⑤の手続に必要な費用は、利用請求者が負担するものとする。
(3) 館は、料金表を閲覧室に常時備え付けるとともに、インターネットの利用等により公表する。
(3)がものすごく重要。
現在の外交史料館や宮内庁書陵部では、複写料金がウェブ上に一切公開されていない。
きちんとした料金表を手許に持っていないので具体例を出せないが、かなり高額な料金を取られている。
今後どうなるかはわからないが、これはきちんと公表されるべき情報だと思う。
C-12 異議申立て
(1) 館は、法第21条に基づく異議申立てがあった時は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、公文書管理委員会に諮問する。
① 異議申立てが不適法であり、却下するとき。
② 決定で、異議申立てに係る利用請求に対する処分を取り消し又は変更し、当該異議申立てに係る特定歴史公文書等の全部を利用させることとするとき。ただし、当該異議申立てに係る特定歴史公文書等の利用について反対意見書が提出されているときを除く。
(2) 館は、(1)の諮問をした場合は、次に掲げる者に対し、諮問をした旨を通知する。
① 異議申立人及び参加人
② 利用請求者(利用請求者が異議申立人又は参加人である場合を除く。)
③ 当該異議申立てに係る利用請求に対する処分について反対意見書を提出した第三者(当該第三者が異議申立人又は参加人である場合を除く。)
(3) C-5(4)の規定は、次の各号のいずれかに該当する決定をする場合について準用する。
① 利用させる旨の決定に対する第三者からの異議申立てを却下し、又は棄却する決定
② 異議申立てに係る利用請求に対する処分を変更し、当該利用請求に対する処分に係る特定歴史公文書等を利用させる旨の決定(第三者である参加人が当該特定歴史公文書等を利用させることに反対の意思を表示している場合に限る。)
(4) 館は、公文書管理委員会から(1)の諮問に対する答申を受けた場合は、当該答申を踏まえ、速やかに決定を行うものとする。
公文書管理法の目玉の一つ。
歴史公文書の不開示決定に対して不満がある場合、不服申立を第三者機関(公文書管理委員会)に可能となった。
これまでは、その館の「館長」に行うか、そもそも行えないかだったので、不開示決定を逆転開示させる道ができたということになる。
内容は基本的には、情報公開法における情報公開・個人情報保護審査会の仕組みとほぼ同じだといってよいだろう。
解説の部分で、情報公開法施行後に問題になったこと(諮問までに長期間かかるなど)がきちんとフォローされているので、きちんと情報公開法の教訓を組み込んだものになりそうだ。
C-19 館の開館
(1) 館は、利用に関する業務を実施するため、次に掲げる日を除き、毎日開館する。
① ○○○○
② ○○○○
③ ○○○○
(2) 館は、(1)の規定にかかわらず、特に必要がある場合には、臨時に開館し又は休館することができる。この場合には、館は、原則として開館又は休館の2週間前までにその旨及び理由を公表しなければならない。
(3) 館の利用時間は○時から○時までとする。ただし、特に必要がある場合には、臨時に変更することができる。この場合には、館は、事前にその旨及び理由を公表しなければならない。
開館日の規定で、とくに文面に問題はない。
解説には「利用者の立場からすれば、例えば、土曜日、日曜日にも利用可能な施設であることが、その利便性に適うことが容易に想定される。従って、体制、経費等を踏まえつつ、こうした土曜日、日曜日の開館についても積極的に検討を行うことが望まれる。」との記載があり、これは是非とも考慮してほしい。
またこれ以上に言いたいのは「昼休みを無くしてくれ」ということだ。
現在の国立公文書館の利用時間は次のようになっている。
・午前9時15分から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
・公文書等の閲覧申込の受付時間は、午前は9時15分から11時45分まで、午後は1時から4時30分まで
つまり、出納を11;45-13:00まで中止しているのである。
また、宮内庁書陵部では、12時から13時まで、出納どころか閲覧まで中止となり、閲覧室から追い出される。
(外交史料館には特に昼休みの規定はないようである。)
昔、国立国会図書館にもこういった昼休みがあって、その間出納を中止していた。しかし、今では昼休みが無くなっている。
昼休みは時間をずらして取れば良い。
もし、専門の「唯一の」担当官がいないと出納できないのであれば別だけれども、普通は請求されたものを書棚から取ってこれば良いだけなのだから、それは一般の職員でも十分可能だろう。(たとえば、審査が必要なものについてのみ、昼の出納を中止するとか。)
また、どうしても人数がいなくて出納は無理というのであれば、せめて「閲覧」だけはその時間も行うべきだろう(これは受付が一人いれば済むことだ)。もちろん書陵部の話である。
土日を空けるべきという解説が付くことからもわかるように、公文書館はできるかぎり利用者の便宜を図るべきだと思う。
昼休みの廃止は真剣に検討されてしかるべきだと考える。
C:利用については以上です。次回は残りの部分です。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン解説 第2回 A:総則とB:保存 [公文書管理委員会]
公文書管理委員会において、「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」についてのパブリックコメントの募集が始まりました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
そこで、ガイドラインの解説をしてみたいとおもいます。自分の備忘録も兼ねて。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(検討素案)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf
第2回はA:総則とB:保存について。
取り上げる項目は第1回を参照。
A-2 定義
この規則において「特定歴史公文書等」とは、法第2条第7項に規定する特定歴史公文書等のうち、館に移管され、又は寄贈され、若しくは寄託されたもの及び法の施行の際、現に館が保存する歴史公文書等(現用のものを除く。)をいう。
法第2条第7項で規定されているものは、行政機関・独立行政法人・国の機関(立法、司法)から移管された公文書と、その他からの寄贈を受けた文書のこと。
寄託された私文書であっても、この規則は関係があることに注意。
宮内庁書陵部では、この項目がある故に、中近世文書を「図書寮文庫」、公文書を「宮内公文書館」に分けた。
おそらく、近現代に関する個人からの寄託文書などがあったとしても、「図書寮文庫」に入れているのではないかと推測。このあたりは、来年4月以降に確認してみたい。
国立公文書館の内閣文庫の扱いがどうなるのかは少し気になるところ。
B-1 行政機関又は独立行政法人等からの受入れ
(1) 館は、△△省(△△法人)で保存する歴史公文書等(法第2条第6項に定める歴史公文書等をいう。以下同じ。)として、保存期間が満了したときに館に移管する措置が設定されたものについて、保存期間が満了した日から可能な限り早い時期に受入れの日を設定し、当該歴史公文書等を受け入れるものとする。
(2) 館は、(1)の規定に基づき受け入れた特定歴史公文書等について、次の各号に掲げる措置を施した上で、原則として受入れから1年以内に排架を行うものする。
① くん蒸その他の保存に必要な措置
② B-4(4)に定める識別番号の付与
③ C-2(1)①に掲げる事由(以下「利用制限事由」という。)の該当性に関する事前審査
④ B-7(1)に定める目録の作成
(3) 館は、特定歴史公文書等の利用が円滑に行われるようにするため、(2)③に規定する事前審査の方針を定めるものとする。
途中のB-4とかの表記は気にせずに読んでもらっても大勢に影響ないです。
注目は、受け入れてから「1年以内に排架」というところ。
もちろん、ただ棚に並べるという話ではない。
具体的な説明を見ると、「目録を作成して排架」と書かれている。
つまり、目録登載も1年以内ということである。
これは、かなり重要。
移管されたのに目録に載らなければ、その文書は情報公開の対象にもならず、公文書館でも見れずという「利用不可能な文書」になってしまう。
昔の国立公文書館では良く起きていた現象。菊池前館長の時に、「要審査」制度(審査を請求後にして目録登載を先にする)を入れて、やっと登載が進んだのだが。
ちなみに、全国公文書館長会議で配布された今年の資料によると、宮内公文書館では所蔵公文書の約83%しか目録で公開されていないとのこと。
このデータは最近知ったのだが、かなり問題ありすぎる。
情報公開法施行からもう10年にもなろうとしているのに、いまだに100%にならんとはどういうことなのか。
あと、引用はしないが、6頁に「排架」の「基本的な考え方」というのが載っているのだが、これはアーカイブズ学的に問題がないのかは気になる。私にはちょっとわかりにくいので。
次に気になるのは(3)の事前審査について。
具体的な説明を見てみると、利用頻度が高い資料は事前に審査を終わらせておくべき(請求したらその場ですぐに見せられるように)で、その審査計画を作れという話だ。
これは、おそらく国立公文書館は今でもおこなっていると思われるので良いのだが、審査済のものしか公開していないと思われる外交史料館や、毎回審査を行ってから公開する宮内公文書館ではどうなるのかは気になるところ。
この事前審査の「方針」はF-1の内閣総理大臣への報告事項に含まれているので、何もしないという訳にはいかないだろう。
どのように対応するのか注目してみたい。(それともこの項目を規則から落としてくるか?)
B-2 寄贈・寄託された文書の受入れ
(1) 館は、法人その他の団体(国及び独立行政法人等を除く。以下「法人等」という。)又は個人から特定の文書を寄贈又は寄託する旨の申出があった場合、当該文書が歴史公文書等に該当すると判断する場合には、当該文書を受け入れるものとする。
(2) 館は、(1)に基づき受け入れた特定歴史公文書等について、寄贈又は寄託をした者の希望に応じ、利用の制限を行う範囲及びこれが適用される期間を定めた上で、次に掲げる措置を施し、原則として受入れから1年以内に排架を行うものとする。
① くん蒸その他の保存に必要な措置
② B-4(4)に定める識別番号の付与
③ B-7(1)に定める目録の作成
寄贈・寄託文書であっても「1年以内」の排架が義務づけられた。
これは分量にもよるし、個人資料である可能性もあることを考えると「1年」と期限を区切ることが果たして良いのかという気がしなくもない。
昔、公的機関だったところからの「元公文書」の寄贈というならわからなくもないが、雑多な個人資料が寄贈されたときに、期限が1年というのは結構しんどいかもしれない。
もちろん、目録のない資料は無いことと同じなので、寄託された以上早く出てくるにこしたことはない。
これについては、実際に個人資料の整理などをされた方などが、どう考えるのか聞いてみたいところ。アーカイブズ関係の方はどう思うのだろうか?
B-3 館は、B-1及びB-2に基づき受け入れた特定歴史公文書等に著作物(著作権法第2条第1項第1号に規定する著作物をいう。)が含まれている場合は、当該著作物について、必要に応じて、著作者(同法同条同項第2号に規定する著作者をいう。)と著作権(同法第17条第1項に規定する著作権をいう。)の調整を行うこと等により、当該著作物の円滑な利用に備えるものとする。
なぜかこの項目だけに「見出し」がないんだが・・・。
著作権法第2条第1項第1号は、「著作物」の定義で、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」。
第17条第1項に規定の「著作権」とは、具体的には複製権や上映権、公衆送信権、展示権などが入ってくる。
つまり、手書きの資料などの著作権をどう処理するのか、きちんと決めておけよということ。
いちいち見たり引用する際に、著作権者の承諾をえないといけない資料は結構面倒。
国会図書館の憲政資料室の寄託文書に、複写の際には許可が寄託者の必要な資料があった記憶があるが、当日複写不可とかの縛りはあった(いまでもそうかはわからないが、関屋貞三郎文書とかがそうだった)。
もちろん寄託者の意思が入るのは、寄託文書の場合は仕方ないところもあるが、できるかぎり制限無く見れるように事前調整をしっかりしてほしいのは確か。
そういったことが書かれている部分にあたる。
B-7 目録の作成及び公表
(1) 館は、特定歴史公文書等に関して、次の各号に掲げる事項について1つの集合物ごとに記載した目録を作成する。
① 分類及び名称
② 移管又は寄贈若しくは寄託をした者の名称又は氏名
③ 移管又は寄贈若しくは寄託を受けた時期
④ 保存場所
⑤ 媒体の種別
⑥ 識別番号
⑦ 利用することができる複製物の存否
⑧ 利用制限の区分(全部利用、一部利用、利用不可又は要審査のいずれかを記載のこと)
⑨ その他適切な保存及び利用に資する情報
(2) 館は、(1)に規定する目録の記載に当たり、法第16条第1項第1号から第4号までに規定する事由に該当すると解される情報がある場合には、当該情報を明示しないようにしなければならない。
(3) 館は、(1)に規定する目録を閲覧室に備えて付けておくとともに、インターネットの利用等により公表する。
目録の作成・公表の義務化。
これは、解説はいらないと思うのだが、個人的に重要なものが「足りてないな」という気がしたのであえて取り上げた。パブコメでも書く予定。
それは、目録の記載項目に、不開示等の「審査日」を入れるべきだということ。
この情報は、全面開示の文書の場合はそれほど重要ではないが、不開示箇所がある場合にはかなり重要な情報となる。
情報は基本的に「劣化」する。
例えば、個人情報などは、本人が死去した後にはかなりの情報が不開示にする必要のないものになったりする。
また、外交に関わる情報でも、例えば現在は北朝鮮との外交関係の文書は出しにくいかもしれないが、将来的に北朝鮮との関係が変わった場合、それが出せるようになるかもしれない。
だからこそ、「○年○月に行った審査ではダメだった」ということを明記しておく必要がある。
しかも、できれば審査官の名前も必要(あとでなぜその判断をしたのかを調査しやすい)。
審査官の名前まで目録に載せるかは微妙としても、内部では必ず残さなければならない情報だろう。
米国の国立公文書館の資料を見ていて感心したのは、不開示の情報がある場合、メモ用紙が入っていて、「いつ、誰が審査をして、再審査はいつから受け付ける」ということが明記されていることだ。
日本の国立公文書館でも、前述した「要審査」制度があるので、受け入れた時期と審査の時期がずれる資料は、不開示部分が含まれるほど多くなる可能性が高い。
もし、審査日を目録に載せないとしても、資料そのものを見ればわかるようにしておいてほしいと思う。
以上、AとBについてはここまで。次回はC:利用について。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
そこで、ガイドラインの解説をしてみたいとおもいます。自分の備忘録も兼ねて。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(検討素案)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf
第2回はA:総則とB:保存について。
取り上げる項目は第1回を参照。
A-2 定義
この規則において「特定歴史公文書等」とは、法第2条第7項に規定する特定歴史公文書等のうち、館に移管され、又は寄贈され、若しくは寄託されたもの及び法の施行の際、現に館が保存する歴史公文書等(現用のものを除く。)をいう。
法第2条第7項で規定されているものは、行政機関・独立行政法人・国の機関(立法、司法)から移管された公文書と、その他からの寄贈を受けた文書のこと。
寄託された私文書であっても、この規則は関係があることに注意。
宮内庁書陵部では、この項目がある故に、中近世文書を「図書寮文庫」、公文書を「宮内公文書館」に分けた。
おそらく、近現代に関する個人からの寄託文書などがあったとしても、「図書寮文庫」に入れているのではないかと推測。このあたりは、来年4月以降に確認してみたい。
国立公文書館の内閣文庫の扱いがどうなるのかは少し気になるところ。
B-1 行政機関又は独立行政法人等からの受入れ
(1) 館は、△△省(△△法人)で保存する歴史公文書等(法第2条第6項に定める歴史公文書等をいう。以下同じ。)として、保存期間が満了したときに館に移管する措置が設定されたものについて、保存期間が満了した日から可能な限り早い時期に受入れの日を設定し、当該歴史公文書等を受け入れるものとする。
(2) 館は、(1)の規定に基づき受け入れた特定歴史公文書等について、次の各号に掲げる措置を施した上で、原則として受入れから1年以内に排架を行うものする。
① くん蒸その他の保存に必要な措置
② B-4(4)に定める識別番号の付与
③ C-2(1)①に掲げる事由(以下「利用制限事由」という。)の該当性に関する事前審査
④ B-7(1)に定める目録の作成
(3) 館は、特定歴史公文書等の利用が円滑に行われるようにするため、(2)③に規定する事前審査の方針を定めるものとする。
途中のB-4とかの表記は気にせずに読んでもらっても大勢に影響ないです。
注目は、受け入れてから「1年以内に排架」というところ。
もちろん、ただ棚に並べるという話ではない。
具体的な説明を見ると、「目録を作成して排架」と書かれている。
つまり、目録登載も1年以内ということである。
これは、かなり重要。
移管されたのに目録に載らなければ、その文書は情報公開の対象にもならず、公文書館でも見れずという「利用不可能な文書」になってしまう。
昔の国立公文書館では良く起きていた現象。菊池前館長の時に、「要審査」制度(審査を請求後にして目録登載を先にする)を入れて、やっと登載が進んだのだが。
ちなみに、全国公文書館長会議で配布された今年の資料によると、宮内公文書館では所蔵公文書の約83%しか目録で公開されていないとのこと。
このデータは最近知ったのだが、かなり問題ありすぎる。
情報公開法施行からもう10年にもなろうとしているのに、いまだに100%にならんとはどういうことなのか。
あと、引用はしないが、6頁に「排架」の「基本的な考え方」というのが載っているのだが、これはアーカイブズ学的に問題がないのかは気になる。私にはちょっとわかりにくいので。
次に気になるのは(3)の事前審査について。
具体的な説明を見てみると、利用頻度が高い資料は事前に審査を終わらせておくべき(請求したらその場ですぐに見せられるように)で、その審査計画を作れという話だ。
これは、おそらく国立公文書館は今でもおこなっていると思われるので良いのだが、審査済のものしか公開していないと思われる外交史料館や、毎回審査を行ってから公開する宮内公文書館ではどうなるのかは気になるところ。
この事前審査の「方針」はF-1の内閣総理大臣への報告事項に含まれているので、何もしないという訳にはいかないだろう。
どのように対応するのか注目してみたい。(それともこの項目を規則から落としてくるか?)
B-2 寄贈・寄託された文書の受入れ
(1) 館は、法人その他の団体(国及び独立行政法人等を除く。以下「法人等」という。)又は個人から特定の文書を寄贈又は寄託する旨の申出があった場合、当該文書が歴史公文書等に該当すると判断する場合には、当該文書を受け入れるものとする。
(2) 館は、(1)に基づき受け入れた特定歴史公文書等について、寄贈又は寄託をした者の希望に応じ、利用の制限を行う範囲及びこれが適用される期間を定めた上で、次に掲げる措置を施し、原則として受入れから1年以内に排架を行うものとする。
① くん蒸その他の保存に必要な措置
② B-4(4)に定める識別番号の付与
③ B-7(1)に定める目録の作成
寄贈・寄託文書であっても「1年以内」の排架が義務づけられた。
これは分量にもよるし、個人資料である可能性もあることを考えると「1年」と期限を区切ることが果たして良いのかという気がしなくもない。
昔、公的機関だったところからの「元公文書」の寄贈というならわからなくもないが、雑多な個人資料が寄贈されたときに、期限が1年というのは結構しんどいかもしれない。
もちろん、目録のない資料は無いことと同じなので、寄託された以上早く出てくるにこしたことはない。
これについては、実際に個人資料の整理などをされた方などが、どう考えるのか聞いてみたいところ。アーカイブズ関係の方はどう思うのだろうか?
B-3 館は、B-1及びB-2に基づき受け入れた特定歴史公文書等に著作物(著作権法第2条第1項第1号に規定する著作物をいう。)が含まれている場合は、当該著作物について、必要に応じて、著作者(同法同条同項第2号に規定する著作者をいう。)と著作権(同法第17条第1項に規定する著作権をいう。)の調整を行うこと等により、当該著作物の円滑な利用に備えるものとする。
なぜかこの項目だけに「見出し」がないんだが・・・。
著作権法第2条第1項第1号は、「著作物」の定義で、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」。
第17条第1項に規定の「著作権」とは、具体的には複製権や上映権、公衆送信権、展示権などが入ってくる。
つまり、手書きの資料などの著作権をどう処理するのか、きちんと決めておけよということ。
いちいち見たり引用する際に、著作権者の承諾をえないといけない資料は結構面倒。
国会図書館の憲政資料室の寄託文書に、複写の際には許可が寄託者の必要な資料があった記憶があるが、当日複写不可とかの縛りはあった(いまでもそうかはわからないが、関屋貞三郎文書とかがそうだった)。
もちろん寄託者の意思が入るのは、寄託文書の場合は仕方ないところもあるが、できるかぎり制限無く見れるように事前調整をしっかりしてほしいのは確か。
そういったことが書かれている部分にあたる。
B-7 目録の作成及び公表
(1) 館は、特定歴史公文書等に関して、次の各号に掲げる事項について1つの集合物ごとに記載した目録を作成する。
① 分類及び名称
② 移管又は寄贈若しくは寄託をした者の名称又は氏名
③ 移管又は寄贈若しくは寄託を受けた時期
④ 保存場所
⑤ 媒体の種別
⑥ 識別番号
⑦ 利用することができる複製物の存否
⑧ 利用制限の区分(全部利用、一部利用、利用不可又は要審査のいずれかを記載のこと)
⑨ その他適切な保存及び利用に資する情報
(2) 館は、(1)に規定する目録の記載に当たり、法第16条第1項第1号から第4号までに規定する事由に該当すると解される情報がある場合には、当該情報を明示しないようにしなければならない。
(3) 館は、(1)に規定する目録を閲覧室に備えて付けておくとともに、インターネットの利用等により公表する。
目録の作成・公表の義務化。
これは、解説はいらないと思うのだが、個人的に重要なものが「足りてないな」という気がしたのであえて取り上げた。パブコメでも書く予定。
それは、目録の記載項目に、不開示等の「審査日」を入れるべきだということ。
この情報は、全面開示の文書の場合はそれほど重要ではないが、不開示箇所がある場合にはかなり重要な情報となる。
情報は基本的に「劣化」する。
例えば、個人情報などは、本人が死去した後にはかなりの情報が不開示にする必要のないものになったりする。
また、外交に関わる情報でも、例えば現在は北朝鮮との外交関係の文書は出しにくいかもしれないが、将来的に北朝鮮との関係が変わった場合、それが出せるようになるかもしれない。
だからこそ、「○年○月に行った審査ではダメだった」ということを明記しておく必要がある。
しかも、できれば審査官の名前も必要(あとでなぜその判断をしたのかを調査しやすい)。
審査官の名前まで目録に載せるかは微妙としても、内部では必ず残さなければならない情報だろう。
米国の国立公文書館の資料を見ていて感心したのは、不開示の情報がある場合、メモ用紙が入っていて、「いつ、誰が審査をして、再審査はいつから受け付ける」ということが明記されていることだ。
日本の国立公文書館でも、前述した「要審査」制度があるので、受け入れた時期と審査の時期がずれる資料は、不開示部分が含まれるほど多くなる可能性が高い。
もし、審査日を目録に載せないとしても、資料そのものを見ればわかるようにしておいてほしいと思う。
以上、AとBについてはここまで。次回はC:利用について。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン解説 第1回 前説 [公文書管理委員会]
公文書管理委員会において、「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」についてのパブリックコメントの募集が始まりました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
そこで、ガイドラインの解説をしてみたいとおもいます。自分の備忘録も兼ねて。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(検討素案)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf
このガイドラインは、「国立公文書館等が適切に利用等規則を制定できるよう、内閣府が国立公文書館等に対し、指針として示すもの」と冒頭に掲げているように、公文書管理法に基づいて、国立公文書館、外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館などが定める利用規則の指針となるものです。
このガイドラインに沿って、各施設の歴史公文書の扱いが決まることになるので、かなり重要なものになると思われます。
そのため、歴史研究者やアーカイブズ関係者の方などは特に注意して読んだ方が良いと思います。
パブコメは9月29日までです。
400字と制限が書いてありますが、実際には1000字は打てるそうです。また、複数送っても問題ありませんので、思いついたことはとにかく送った方がよいと思います。
なお全項目を説明しません。
説明しなくてもわかるものも多いですので。
下に目次を貼っておきます。
×は説明しないもの、○は説明するものです。
なお、×と○は私の興味のありかに等しいので、それが重要性を意味するものではありません。
場合によっては×と書いてあるものでも、御質問を受ければ付け加えます。
目次
第A章 総則
×A-1 目的
○A-2 定義
第B章 保存
第1節 受入れ
○B-1 行政機関又は独立行政法人等からの受入れ
○B-2 寄贈・寄託された文書の受入れ
○B-3 (著作権の調整)
第2節 保存
×B-4 保存方法等
×B-5 複製物
×B-6 個人情報漏えい防止のために必要な措置
○B-7 目録の作成及び公表
第C章 利用
第1節 利用の請求
×C-1 利用請求の手続
○C-2 利用請求の取扱い
○C-3 部分利用
×C-4 本人情報の取扱い
×C-5 第三者に対する意見提出機会の付与等
○C-6 利用決定
×C-7 利用決定の通知
×C-8 利用の方法
○C-9 閲覧の方法等
○C-10 写しの交付の方法等
○C-11 手数料等
○C-12 異議申立て
第2節 利用の促進
×C-13 簡便な方法による利用等
×C-14 展示会の開催等
×C-15 特定歴史公文書等の貸出し
×C-16 原本の特別利用
×C-17 レファレンス
第3節 移管元行政機関の利用
×C-18 移管元行政機関等の利用
第4節 利用時間及び休館日
○C-19 館の開館
第D章 廃棄
○D-1 特定歴史公文書等の廃棄
第E章 研修
○E-1 研修の実施
第F章 雑則
○F-1 保存及び利用の状況の報告
○F-2 利用等規則の備付等
×F-3 実施規程
なお、このAからFは以下の公文書管理法の条文から成り立っています。
(利用等規則)
第二十七条
〔中略〕
2 利用等規則には、特定歴史公文書等に関する次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 保存に関する事項
二 第二十条に規定する手数料その他一般の利用に関する事項
三 特定歴史公文書等を移管した行政機関の長又は独立行政法人等による当該特定歴史公文書等の利用に関する事項
四 廃棄に関する事項
五 保存及び利用の状況の報告に関する事項
一・・・B
二、三・・・C
四・・・D
五・・・F
Eについては施行令のガイドラインでも独立した項目になったのでそれに合わせたものと思われます。
それでは次回から解説を始めます。→第2回
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
そこで、ガイドラインの解説をしてみたいとおもいます。自分の備忘録も兼ねて。
特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(検討素案)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf
このガイドラインは、「国立公文書館等が適切に利用等規則を制定できるよう、内閣府が国立公文書館等に対し、指針として示すもの」と冒頭に掲げているように、公文書管理法に基づいて、国立公文書館、外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館などが定める利用規則の指針となるものです。
このガイドラインに沿って、各施設の歴史公文書の扱いが決まることになるので、かなり重要なものになると思われます。
そのため、歴史研究者やアーカイブズ関係者の方などは特に注意して読んだ方が良いと思います。
パブコメは9月29日までです。
400字と制限が書いてありますが、実際には1000字は打てるそうです。また、複数送っても問題ありませんので、思いついたことはとにかく送った方がよいと思います。
なお全項目を説明しません。
説明しなくてもわかるものも多いですので。
下に目次を貼っておきます。
×は説明しないもの、○は説明するものです。
なお、×と○は私の興味のありかに等しいので、それが重要性を意味するものではありません。
場合によっては×と書いてあるものでも、御質問を受ければ付け加えます。
目次
第A章 総則
×A-1 目的
○A-2 定義
第B章 保存
第1節 受入れ
○B-1 行政機関又は独立行政法人等からの受入れ
○B-2 寄贈・寄託された文書の受入れ
○B-3 (著作権の調整)
第2節 保存
×B-4 保存方法等
×B-5 複製物
×B-6 個人情報漏えい防止のために必要な措置
○B-7 目録の作成及び公表
第C章 利用
第1節 利用の請求
×C-1 利用請求の手続
○C-2 利用請求の取扱い
○C-3 部分利用
×C-4 本人情報の取扱い
×C-5 第三者に対する意見提出機会の付与等
○C-6 利用決定
×C-7 利用決定の通知
×C-8 利用の方法
○C-9 閲覧の方法等
○C-10 写しの交付の方法等
○C-11 手数料等
○C-12 異議申立て
第2節 利用の促進
×C-13 簡便な方法による利用等
×C-14 展示会の開催等
×C-15 特定歴史公文書等の貸出し
×C-16 原本の特別利用
×C-17 レファレンス
第3節 移管元行政機関の利用
×C-18 移管元行政機関等の利用
第4節 利用時間及び休館日
○C-19 館の開館
第D章 廃棄
○D-1 特定歴史公文書等の廃棄
第E章 研修
○E-1 研修の実施
第F章 雑則
○F-1 保存及び利用の状況の報告
○F-2 利用等規則の備付等
×F-3 実施規程
なお、このAからFは以下の公文書管理法の条文から成り立っています。
(利用等規則)
第二十七条
〔中略〕
2 利用等規則には、特定歴史公文書等に関する次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 保存に関する事項
二 第二十条に規定する手数料その他一般の利用に関する事項
三 特定歴史公文書等を移管した行政機関の長又は独立行政法人等による当該特定歴史公文書等の利用に関する事項
四 廃棄に関する事項
五 保存及び利用の状況の報告に関する事項
一・・・B
二、三・・・C
四・・・D
五・・・F
Eについては施行令のガイドラインでも独立した項目になったのでそれに合わせたものと思われます。
それでは次回から解説を始めます。→第2回
公文書管理委員会パブコメ第2回募集開始 [公文書管理委員会]
公文書管理委員会で、「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン検討素案」に対する意見の募集が始まりました。
期限は9月29日(水)までの2週間です。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
これは国立公文書館と外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館の規則の元となるガイドラインと考えてもらえば良いと思います。
歴史研究者には相当に重要なものになる可能性があります。
また、アーカイブズ関係者の人にも是非ともいろいろと目を通していただきたいです。
保管方法などかなり技術的な話も色々と出てきます。私にはやや難しい点もありますので。
是非とも関係者は1回は目を通して下さい。そして意見がある方はきちんと言っておくべきだと思います。
第1回目の施行令関係のパブコメのいくつかは、本文に反映されました。パブコメをする意味は十分にあるかと思います。
なお、検討素案本文(↓)については明日にでも私の解釈を載せたいと思います。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf
期限は9月29日(水)までの2週間です。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html
これは国立公文書館と外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館の規則の元となるガイドラインと考えてもらえば良いと思います。
歴史研究者には相当に重要なものになる可能性があります。
また、アーカイブズ関係者の人にも是非ともいろいろと目を通していただきたいです。
保管方法などかなり技術的な話も色々と出てきます。私にはやや難しい点もありますので。
是非とも関係者は1回は目を通して下さい。そして意見がある方はきちんと言っておくべきだと思います。
第1回目の施行令関係のパブコメのいくつかは、本文に反映されました。パブコメをする意味は十分にあるかと思います。
なお、検討素案本文(↓)については明日にでも私の解釈を載せたいと思います。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf
公文書管理委員会第2回を聞きに行く [公文書管理委員会]
8月31日に公文書管理委員会の第2回の会合を見に行ってきた。
傍聴人は20人強。報道関係者はおなじみの日経の松岡資明氏以外に1名のみ。
1回目にはテレビカメラもいたらしいが、今回はゼロ。やはり注目度は低いのかなあという感じだ。
今回検討されたのは、前回提示された公文書管理法「施行令」案と各行政機関が作る文書管理規則の雛形である「ガイドライン」案の修正について。
施行令の修正案
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/22/220831/220831haifu3.pdf
ガイドラインの修正案
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/22/220831/220831haifu4.pdf
どこが修正されたかは赤字で書かれているので、わかりやすいと思う。
施行令については、ほぼ技術的な修正のみ。
変わったところは、20頁の「公共事業の実施に関する事項」の保存年限が「事業終了後五年」に追加して「事後評価終了後十年のいずれか長い期間」となった点と、21頁の「文書の管理に関する事項」、いわゆるファイル管理簿の保存年限の追加という点ぐらいであろう。
前者については公共事業などの話がよくわからないので何とも言えないのだが、「いずれか長い期間」ということなので、以前の案より後退したわけではないと思われる。
後者については問題ない。ただ、移管か廃棄かという点がガイドラインで問題に。
委員の議論でも、施行令にはほとんど触れることがなかったように思う。
次にガイドラインについて。
基本的に「修正」というより「追記」という感じ。
付け足された主な点としては
・「管理体制」に管理者の「実務的な補佐体制」を置くことも考えられると記載(5、6頁)
・「管理体制」に、専門家(レコードマネージャー、アーキビスト等)の支援も考えられると記載(6頁)
・「作成」に電子メールも行政文書に含まれることがあることが明記(9頁)
・「作成」に審議会の議事録は後から検証可能にするために「発言者名を記載した議事録を作成する必要」と明記(9頁)
・「作成」の「取得」に関する部分で、委託事業において説明責務を果たすために必要な文書は「仕様書に明記する」などして適切に取得するべきと記載(10頁)
・「保存」で電子文書の保存方法について国際標準を考慮すること、またセキュリティーをしっかりすることが記載(23頁)
・「移管廃棄延長」の「延長」の部分に「必要な限度において」との制限を追記(33頁)
・「別表第2」の69-70頁の条約関係の部分と77頁の国際会議の部分で「重要なもの」は移管という書かれ方に変更になった(委員会で議論に)。
といったところであろうか。
重要な点としては、審議会の議事録に「発言者名」をきちんと書けという点だと思う。発言者名を書かない議事録を作って情報を隠そうとする省庁もまだまだたくさんあるので。
なお一般からのパブコメのいくつかは反映された。しかし、文書管理関係のパブコメのほとんどがスルーされた。
このあたりは、内閣府と考え方が合わないということなのかなあと思う。
また、各省庁からの意見もあったが、技術的な部分や別表にあたる項目書きの部分に意見が集中していたように思う。
それ以外のガイドラインの内容に対する意見は、あまり修正に反映されていないように感じる。
委員会での議論の内容については、すでに三木由希子さんがブログに紹介されているので、そちらの方を参照のこと。
付け足すこともあまり無いという感じですので。
施行令については、これから政令化の作業に入り、その後改めてパブコメを経て、委員会で承認という手続きになります。
ガイドラインについてはこれで修正は終わり。
これに基づいて作られる各省庁の文書管理規則にはパブコメがあるのかな?委員会での承認は必要ですし、いずれにしろ勝手に各省庁が作成することが許されていないので、意見を言う機会はあるでしょう。
個人的な感想としては、細かい点でまだまだだと思う部分もあるが、今のところはこれで十分かなという気もします。
あとは、各省庁がごまかした管理規則を作ってこないか、施行令が文章になった際に内容が変わってないかをきちんと監視する必要があるかと思います。
特に、今回の各省庁からのコメントの中に、あきれ果てたコメントが一つあったので紹介。
資料2、14頁
財務省
意見
「職員が起案の下書きをしている段階のものも、一般的には行政文書に当たらないが、当該メモに行政機関における法律立案の基礎となった国政上の重要な事項に係る意思決定が記録されている場合などについては、行政文書として適切に保存すべきである。」という記述は削除していただきたい。
理由
個人のメモは、法第2条第4項の定める行政文書に該当しないため。
財務省は、公文書管理法がどのような意図で作られたか、なんも理解しておらん!
「意思決定過程」を残すことが重要だとどれほど言えばわかるのか。
個人メモとして作っていても、その意思決定過程が記録されているならば残せという主張に対して、「メモだから除外すべき」というのは理由になってない。
こういった相手が公文書管理法施行の前途に大量に立ちはだかっていることは、あらためて考えなければならない。
管理規則が作られる際に、行政文書の定義を狭くしようと画策するところは絶対に出てくると思う。
そこは注意しなければならない。
最後に、歴史研究者としてこの話には触れておく必要があるかなと思ったので書きます。
御厨貴委員長の発言について。
今回、傍聴していて、御厨氏に情報公開関係者の人が「大丈夫か?」と思っている理由の一端を理解することができた。(ちなみにこの不安の話については、以前にまさのさんや三木さんとやりとりをしたことがある→こちら)
特に、ファイル管理の廃棄簿(何のファイルを捨てたかを記載した文書)を30年経ったら廃棄するということについてのやりとりが象徴的であった。
まず、三宅弘委員が、何を捨てたかはきちんと残しておかないと問題だと発言し、「歴史学者にとってもそうではないのですか」と御厨委員長に話を振った。
そうしたら、御厨委員長は、「廃棄簿が残っていても実際の資料は無いわけでしょう。文学作家とかならそういったことに興味があるかもしれないが、歴史学者はどうも・・・。だから廃棄簿を残すかどうかは難しい問題では・・・」みたいな返しをされた。
私は聞いていてそれはないだろうと思ったところ、石原一則委員がすかさず、「それでも100年残る文書は全体の一部でしかない。だから、文書構造がわかるためにも廃棄簿はきちんと残しておくべき」という意見をかぶせてくれた。
それで安心したのだが、それでもまだ御厨委員長は「残すか難しい問題ですね・・・」と話されていた。
このやりとりから、三木さんは「それにしても、やはり御厨委員長よくわからないです。」とばっさり切っている。
それを見て、やはりきちんと書く必要があるのかなと感じた次第。
御厨氏の発想は、良くも悪くも「歴史学者」の発想そのものだと思う。
歴史研究をする際に前提としてあるのは、ある歴史的事実を解明するための資料が100%の形で残ることはありえないということがある。
歴史研究者の腕の見せ所というのは、断片的な情報(公文書や、その事実に関与していた個人の記録など)を組み合わせて、歴史的事実を再構成するという点にある。
だから、「無い資料」をあてにして論文を書くということはあり得ない世界なのだ。「無いもの」は諦めて、他の資料で何とかするというのが歴史研究者の発想なのだ。
御厨氏は公文書の残存が良くないことから、「オーラルヒストリー」によって官僚や政治家から大量の聞き取り調査を行って、政治過程の再構成を図ろうとしている方である。
よって「資料は残ってほしい」という意識は強くもっておられると思う。だけど、「無いならないで何とかする」という発想があるので、ああいう発言をされるところがあるのかなと思うのだ。
また、もう一つあるのが、歴史研究者の現実の法制度に対する理解度の低さというところがあるように思う。
どうしても過去の話が中心になってしまうので、実際に自分たちが置かれている現状の制度に対する理解度が不足しがちになるようにおもう。
これは私自身の実体験ということもあるのだが、私もそもそもは「宮内庁の資料が見たい」というレベルの理解度で情報公開制度を使い始めた。
だけど、それではたいした資料は出てこなかった。
そして必要に迫られて、情報公開法を勉強することになった。そして裁判もやった。
でも、どうして自分が求めている資料が存在しないのか、出てこないのかということをやっと理解したのは、このブログを始めた時に、ネタを求めてさまざまな本を読んだり、ウェブで福田康夫官房長官時代の公文書管理制度についての議論などを見つけたあたりの頃だったと思う。
つまり、この問題が「法制度」の問題と直結しているということに気づけたからこそ、問題の構造が把握できた。
そして、このような委員会などの解説が書けるレベル程度の知恵が身に付いた。(まだ専門家の域にはほど遠いが・・・)
こういうことを言うのはおこがましいのかもしれないが、今の御厨氏のこの問題への理解度は、私が情報公開制度を使い始めた頃の理解度に近いのではないかと思う。
つまり、「制度の重要性は理解している」けど、それを自分の知識として「使える」レベルではないということだ。
だから、どうしても発言が「趣味的」に見えることが多くなりがちである。
むしろ、制度としてきちんと理解しているのは、情報公開問題に長年関わっていた弁護士の三宅弘委員や、アーカイブズの現場で培った知識のある神奈川県立公文書館の石原一則委員であったりするのだ。
御厨氏がもう少し意識して制度を理解して下さるとありがたいのだが、あまりそういったことを気にされるような方には見えない。
とすると、情報公開法改正の「行政透明化検討チーム」で三宅氏が担っていた座長代理としての役割(報告書の文章自体を書く)は、御厨氏には期待できないと思う。むしろ、内閣府の振り付けに従うことを選択されるだろうと思う。
今は内閣府が積極的に制度を良くしようとする傾向で動いているのでそれほど問題にはならないかもしれない。今後どうなるかはもちろんわからないが。
ただ、もし、御厨氏が自分が「歴史研究者」としてあの場に呼ばれているという自覚があったとしても、やはりその発想からもう一歩前に踏み出す必要があると思う。
公文書管理法の原点は、過去、現在、そして未来に対する「説明責任」である。
現在と未来に対して、もう少し意識を持っていただければと強く願ってやまない。
そうしなれば、公文書管理法や国立公文書館が歴史研究者のためにのみ存在するという「誤解」を生みかねない。
それだけは避けなければならないと思う。
もちろん、上記のことは、私の「推測」にすぎない。
というか大先生の意識を推測するのも、正直自分の今の立場としてどうなんだという気もするけれども・・・。
でも、歴史研究者として、情報公開系の関係者に、おそらくこういうことだということは説明する必要があるのかなと思っておもいきって書いてみた。
あくまでも「私見」です。また、御厨氏を貶めようという気など全くありません。念のため。
なお、今回の委員会で議題に上がった「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン検討素案」については、パブコメ募集までに再修正があると思われますので、パブコメ開始後に内容についての解説を書く予定です。
傍聴人は20人強。報道関係者はおなじみの日経の松岡資明氏以外に1名のみ。
1回目にはテレビカメラもいたらしいが、今回はゼロ。やはり注目度は低いのかなあという感じだ。
今回検討されたのは、前回提示された公文書管理法「施行令」案と各行政機関が作る文書管理規則の雛形である「ガイドライン」案の修正について。
施行令の修正案
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/22/220831/220831haifu3.pdf
ガイドラインの修正案
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/22/220831/220831haifu4.pdf
どこが修正されたかは赤字で書かれているので、わかりやすいと思う。
施行令については、ほぼ技術的な修正のみ。
変わったところは、20頁の「公共事業の実施に関する事項」の保存年限が「事業終了後五年」に追加して「事後評価終了後十年のいずれか長い期間」となった点と、21頁の「文書の管理に関する事項」、いわゆるファイル管理簿の保存年限の追加という点ぐらいであろう。
前者については公共事業などの話がよくわからないので何とも言えないのだが、「いずれか長い期間」ということなので、以前の案より後退したわけではないと思われる。
後者については問題ない。ただ、移管か廃棄かという点がガイドラインで問題に。
委員の議論でも、施行令にはほとんど触れることがなかったように思う。
次にガイドラインについて。
基本的に「修正」というより「追記」という感じ。
付け足された主な点としては
・「管理体制」に管理者の「実務的な補佐体制」を置くことも考えられると記載(5、6頁)
・「管理体制」に、専門家(レコードマネージャー、アーキビスト等)の支援も考えられると記載(6頁)
・「作成」に電子メールも行政文書に含まれることがあることが明記(9頁)
・「作成」に審議会の議事録は後から検証可能にするために「発言者名を記載した議事録を作成する必要」と明記(9頁)
・「作成」の「取得」に関する部分で、委託事業において説明責務を果たすために必要な文書は「仕様書に明記する」などして適切に取得するべきと記載(10頁)
・「保存」で電子文書の保存方法について国際標準を考慮すること、またセキュリティーをしっかりすることが記載(23頁)
・「移管廃棄延長」の「延長」の部分に「必要な限度において」との制限を追記(33頁)
・「別表第2」の69-70頁の条約関係の部分と77頁の国際会議の部分で「重要なもの」は移管という書かれ方に変更になった(委員会で議論に)。
といったところであろうか。
重要な点としては、審議会の議事録に「発言者名」をきちんと書けという点だと思う。発言者名を書かない議事録を作って情報を隠そうとする省庁もまだまだたくさんあるので。
なお一般からのパブコメのいくつかは反映された。しかし、文書管理関係のパブコメのほとんどがスルーされた。
このあたりは、内閣府と考え方が合わないということなのかなあと思う。
また、各省庁からの意見もあったが、技術的な部分や別表にあたる項目書きの部分に意見が集中していたように思う。
それ以外のガイドラインの内容に対する意見は、あまり修正に反映されていないように感じる。
委員会での議論の内容については、すでに三木由希子さんがブログに紹介されているので、そちらの方を参照のこと。
付け足すこともあまり無いという感じですので。
施行令については、これから政令化の作業に入り、その後改めてパブコメを経て、委員会で承認という手続きになります。
ガイドラインについてはこれで修正は終わり。
これに基づいて作られる各省庁の文書管理規則にはパブコメがあるのかな?委員会での承認は必要ですし、いずれにしろ勝手に各省庁が作成することが許されていないので、意見を言う機会はあるでしょう。
個人的な感想としては、細かい点でまだまだだと思う部分もあるが、今のところはこれで十分かなという気もします。
あとは、各省庁がごまかした管理規則を作ってこないか、施行令が文章になった際に内容が変わってないかをきちんと監視する必要があるかと思います。
特に、今回の各省庁からのコメントの中に、あきれ果てたコメントが一つあったので紹介。
資料2、14頁
財務省
意見
「職員が起案の下書きをしている段階のものも、一般的には行政文書に当たらないが、当該メモに行政機関における法律立案の基礎となった国政上の重要な事項に係る意思決定が記録されている場合などについては、行政文書として適切に保存すべきである。」という記述は削除していただきたい。
理由
個人のメモは、法第2条第4項の定める行政文書に該当しないため。
財務省は、公文書管理法がどのような意図で作られたか、なんも理解しておらん!
「意思決定過程」を残すことが重要だとどれほど言えばわかるのか。
個人メモとして作っていても、その意思決定過程が記録されているならば残せという主張に対して、「メモだから除外すべき」というのは理由になってない。
こういった相手が公文書管理法施行の前途に大量に立ちはだかっていることは、あらためて考えなければならない。
管理規則が作られる際に、行政文書の定義を狭くしようと画策するところは絶対に出てくると思う。
そこは注意しなければならない。
最後に、歴史研究者としてこの話には触れておく必要があるかなと思ったので書きます。
御厨貴委員長の発言について。
今回、傍聴していて、御厨氏に情報公開関係者の人が「大丈夫か?」と思っている理由の一端を理解することができた。(ちなみにこの不安の話については、以前にまさのさんや三木さんとやりとりをしたことがある→こちら)
特に、ファイル管理の廃棄簿(何のファイルを捨てたかを記載した文書)を30年経ったら廃棄するということについてのやりとりが象徴的であった。
まず、三宅弘委員が、何を捨てたかはきちんと残しておかないと問題だと発言し、「歴史学者にとってもそうではないのですか」と御厨委員長に話を振った。
そうしたら、御厨委員長は、「廃棄簿が残っていても実際の資料は無いわけでしょう。文学作家とかならそういったことに興味があるかもしれないが、歴史学者はどうも・・・。だから廃棄簿を残すかどうかは難しい問題では・・・」みたいな返しをされた。
私は聞いていてそれはないだろうと思ったところ、石原一則委員がすかさず、「それでも100年残る文書は全体の一部でしかない。だから、文書構造がわかるためにも廃棄簿はきちんと残しておくべき」という意見をかぶせてくれた。
それで安心したのだが、それでもまだ御厨委員長は「残すか難しい問題ですね・・・」と話されていた。
このやりとりから、三木さんは「それにしても、やはり御厨委員長よくわからないです。」とばっさり切っている。
それを見て、やはりきちんと書く必要があるのかなと感じた次第。
御厨氏の発想は、良くも悪くも「歴史学者」の発想そのものだと思う。
歴史研究をする際に前提としてあるのは、ある歴史的事実を解明するための資料が100%の形で残ることはありえないということがある。
歴史研究者の腕の見せ所というのは、断片的な情報(公文書や、その事実に関与していた個人の記録など)を組み合わせて、歴史的事実を再構成するという点にある。
だから、「無い資料」をあてにして論文を書くということはあり得ない世界なのだ。「無いもの」は諦めて、他の資料で何とかするというのが歴史研究者の発想なのだ。
御厨氏は公文書の残存が良くないことから、「オーラルヒストリー」によって官僚や政治家から大量の聞き取り調査を行って、政治過程の再構成を図ろうとしている方である。
よって「資料は残ってほしい」という意識は強くもっておられると思う。だけど、「無いならないで何とかする」という発想があるので、ああいう発言をされるところがあるのかなと思うのだ。
また、もう一つあるのが、歴史研究者の現実の法制度に対する理解度の低さというところがあるように思う。
どうしても過去の話が中心になってしまうので、実際に自分たちが置かれている現状の制度に対する理解度が不足しがちになるようにおもう。
これは私自身の実体験ということもあるのだが、私もそもそもは「宮内庁の資料が見たい」というレベルの理解度で情報公開制度を使い始めた。
だけど、それではたいした資料は出てこなかった。
そして必要に迫られて、情報公開法を勉強することになった。そして裁判もやった。
でも、どうして自分が求めている資料が存在しないのか、出てこないのかということをやっと理解したのは、このブログを始めた時に、ネタを求めてさまざまな本を読んだり、ウェブで福田康夫官房長官時代の公文書管理制度についての議論などを見つけたあたりの頃だったと思う。
つまり、この問題が「法制度」の問題と直結しているということに気づけたからこそ、問題の構造が把握できた。
そして、このような委員会などの解説が書けるレベル程度の知恵が身に付いた。(まだ専門家の域にはほど遠いが・・・)
こういうことを言うのはおこがましいのかもしれないが、今の御厨氏のこの問題への理解度は、私が情報公開制度を使い始めた頃の理解度に近いのではないかと思う。
つまり、「制度の重要性は理解している」けど、それを自分の知識として「使える」レベルではないということだ。
だから、どうしても発言が「趣味的」に見えることが多くなりがちである。
むしろ、制度としてきちんと理解しているのは、情報公開問題に長年関わっていた弁護士の三宅弘委員や、アーカイブズの現場で培った知識のある神奈川県立公文書館の石原一則委員であったりするのだ。
御厨氏がもう少し意識して制度を理解して下さるとありがたいのだが、あまりそういったことを気にされるような方には見えない。
とすると、情報公開法改正の「行政透明化検討チーム」で三宅氏が担っていた座長代理としての役割(報告書の文章自体を書く)は、御厨氏には期待できないと思う。むしろ、内閣府の振り付けに従うことを選択されるだろうと思う。
今は内閣府が積極的に制度を良くしようとする傾向で動いているのでそれほど問題にはならないかもしれない。今後どうなるかはもちろんわからないが。
ただ、もし、御厨氏が自分が「歴史研究者」としてあの場に呼ばれているという自覚があったとしても、やはりその発想からもう一歩前に踏み出す必要があると思う。
公文書管理法の原点は、過去、現在、そして未来に対する「説明責任」である。
現在と未来に対して、もう少し意識を持っていただければと強く願ってやまない。
そうしなれば、公文書管理法や国立公文書館が歴史研究者のためにのみ存在するという「誤解」を生みかねない。
それだけは避けなければならないと思う。
もちろん、上記のことは、私の「推測」にすぎない。
というか大先生の意識を推測するのも、正直自分の今の立場としてどうなんだという気もするけれども・・・。
でも、歴史研究者として、情報公開系の関係者に、おそらくこういうことだということは説明する必要があるのかなと思っておもいきって書いてみた。
あくまでも「私見」です。また、御厨氏を貶めようという気など全くありません。念のため。
なお、今回の委員会で議題に上がった「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン検討素案」については、パブコメ募集までに再修正があると思われますので、パブコメ開始後に内容についての解説を書く予定です。
公文書管理委員会へのパブコメ [公文書管理委員会]
公文書等の管理に関する法律施行令の検討素案等に対する意見の募集に意見を送りました。公文書管理法施行令とガイドラインの素案に対する意見です。
一度に一項目しか送れなかったので、合計8通になりました。
下記に貼っておきます。
施行令については、法律の文章なので何ともわからないので、特にパブコメはしませんでした。
ガイドラインの方、つまり「解釈」の方に全てのコメントを集中させてあります。
最も気になったのは、文章の長さからもわかるように行政文書ファイル管理簿です。
ここがどのように機能するかで、文書の残り方も変わってくると思っています。
なお元になっているガイドライン素案はこちら
公文書管理委員会第1回配布物よりも、若干の修正が入っています。
何かを書き忘れているような気もするのですが、とりあえず思いついたことを書いています。
以下意見(強調、下線はブログ用に付けたものです)
第3
意思決定過程の文書には「電子メール」も含まれることをどこかに明記すべきである。これまで、公務員が決裁文書中心の文書の残し方をしていたことからすると、「電子メールが公文書になりうる」という意識がない可能性は高い。そのため、この点をどこかに明記しておく必要がある。(手紙やツイッターのことが書かれている8から9頁あたりか。)
第3
10頁「委託事業」の「説明責務を果たすために必要な文書」の例に具体的な項目を挙げるべきである。民間委託事業の場合、データが取得されないと「公文書」にすらならないケースが散見される。審議会の録音データなど、具体的にどのようなデータを取得する必要があるのかを記しておくべきである。
第5
「独立行政法人国立公文書館が運営する中間書庫(国立公文書館法(平成11年法律第79号)第11条第1項第2号又は同条第3項第2号に基づき、独立行政法人国立公文書館が行政機関からの委託を受けて行政文書の保存を行う書庫)」について、独立した項目を立てて説明を行うべきである。現在の表記だと、府省の枠を超えたプロジェクトの中間書庫としてのみ利用できるという読み方をされるおそれがある(20頁)。府省の枠を超えなくても、国立公文書館の中間書庫は利用可能であるということを明記しておく必要がある。
第6
行政文書ファイル管理簿の様式についての様式例をもっと詳細に説明し、全行政機関でのファイル項目の統一化を図るべきである。文書がいくらきちんと作成され、保管されても、検索することができないのであれば、その意義は大幅に低下する。
現在の行政文書ファイル管理簿の使いにくさの主要な理由として、文書分類名が各行政機関の内部統制のためだけに付けられているため、行政機関ごとに方式が異なっており、行政機関内ですら不統一が散見される点が挙げられる。そのことが、文書の検索性を著しく低下させている。今回、行政文書ファイル管理簿を大幅に改訂する以上、基準の統一化を目指すべきである。もし今回統一化ができなかった場合、管理簿記載事項の統一化は数十年遅れることになるだろう。
そのため、各項目に書き込む情報を指定して、全行政機関に共通した統一基準を導入するべきである。例えば、「大分類」には現在の管理簿のファイル名を記載すること、「中分類」には文書の種類を入れ、「小分類」に文書の具体的な名称を入れるといったことが考えられる。内閣府で様式のガイドラインを提示する以上、「このような項目の書き込みを奨励する」という方針を書き込むべきである。現在、各行政機関で様式が統一化されていないからということを言い訳にしてこの点を曖昧にすることは責任逃れに他ならない。統一的な文書管理システムの導入を図る以上、各項目に記載される情報を統一化することは必須であろう。(またこれに合わせて15頁の名称の付け方の例も修正されるべきである。)
第6
ファイル管理簿の様式説明において、現在の行政文書ファイル管理簿と内容が断絶していても構わないということを明記するべきである。不備のある現在の形式を踏襲することなく、新たに管理簿を作るのだということをはっきりと示すべきである。そうしなければ、各行政機関が現在の曖昧なファイル名を踏襲することを優先させる可能性がある。例えば、「小分類は行政文書ファイル等の名称とし」(25頁)との記載があるが、現在の行政文書ファイル名をそのままコピーして貼り付ける可能性も想定される。そのため、今回記載される「名称(小分類)」が必ずしも今までのファイル名と一致しなくても構わないということは強調されるべきである。また、過去に遡及してファイル名を直すことも検討するべきである。
第7
「保存期間の延長」の部分に、「内閣府においては、法第9条第2項に基づく報告概要の公表の中で、当該延長後の期間及び当該延長の理由を公表することを予定している。」(31頁)とあるが、「予定している」は削除し、「全ての理由を原則として公表する」(理由説明に不開示相当部分がある場合、部分開示にする)と記載するべきである。安易な延長を認めないためには、延長理由に対する監視も必要であり、そのためには、一つ一つのファイルが何のために延長措置が取られたのかについて、公表される必要がある。
別表第2
「昭和27年度までに作成・取得された文書」(73頁)は、「作成から30年以上経過し、すでに延長手続きを取られている文書」に拡大するべきである。延長手続きまでして保存している以上、該当文書はその行政機関にとって重要な文書であることは疑いないと思われる。さらに、もしこの項目が「廃棄を禁止する」という意味であるのならば、そのような記載を行うべきである。なお、昭和27年以前に限定する理由が明記されていないため、この項目の持つ意味が不明確となっており、説明を厚くする必要がある。
別表第2
「国会及び審議会等における審議に関する事項」(72頁)の「議員への説明」が移管されるものに入っていないが、これは移管されるべきものである。公務員による議員への説明は、政策決定上重要な意味を持ちうる可能性が高いため、原則として破棄すべきではない。
一度に一項目しか送れなかったので、合計8通になりました。
下記に貼っておきます。
施行令については、法律の文章なので何ともわからないので、特にパブコメはしませんでした。
ガイドラインの方、つまり「解釈」の方に全てのコメントを集中させてあります。
最も気になったのは、文章の長さからもわかるように行政文書ファイル管理簿です。
ここがどのように機能するかで、文書の残り方も変わってくると思っています。
なお元になっているガイドライン素案はこちら
公文書管理委員会第1回配布物よりも、若干の修正が入っています。
何かを書き忘れているような気もするのですが、とりあえず思いついたことを書いています。
以下意見(強調、下線はブログ用に付けたものです)
第3
意思決定過程の文書には「電子メール」も含まれることをどこかに明記すべきである。これまで、公務員が決裁文書中心の文書の残し方をしていたことからすると、「電子メールが公文書になりうる」という意識がない可能性は高い。そのため、この点をどこかに明記しておく必要がある。(手紙やツイッターのことが書かれている8から9頁あたりか。)
第3
10頁「委託事業」の「説明責務を果たすために必要な文書」の例に具体的な項目を挙げるべきである。民間委託事業の場合、データが取得されないと「公文書」にすらならないケースが散見される。審議会の録音データなど、具体的にどのようなデータを取得する必要があるのかを記しておくべきである。
第5
「独立行政法人国立公文書館が運営する中間書庫(国立公文書館法(平成11年法律第79号)第11条第1項第2号又は同条第3項第2号に基づき、独立行政法人国立公文書館が行政機関からの委託を受けて行政文書の保存を行う書庫)」について、独立した項目を立てて説明を行うべきである。現在の表記だと、府省の枠を超えたプロジェクトの中間書庫としてのみ利用できるという読み方をされるおそれがある(20頁)。府省の枠を超えなくても、国立公文書館の中間書庫は利用可能であるということを明記しておく必要がある。
第6
行政文書ファイル管理簿の様式についての様式例をもっと詳細に説明し、全行政機関でのファイル項目の統一化を図るべきである。文書がいくらきちんと作成され、保管されても、検索することができないのであれば、その意義は大幅に低下する。
現在の行政文書ファイル管理簿の使いにくさの主要な理由として、文書分類名が各行政機関の内部統制のためだけに付けられているため、行政機関ごとに方式が異なっており、行政機関内ですら不統一が散見される点が挙げられる。そのことが、文書の検索性を著しく低下させている。今回、行政文書ファイル管理簿を大幅に改訂する以上、基準の統一化を目指すべきである。もし今回統一化ができなかった場合、管理簿記載事項の統一化は数十年遅れることになるだろう。
そのため、各項目に書き込む情報を指定して、全行政機関に共通した統一基準を導入するべきである。例えば、「大分類」には現在の管理簿のファイル名を記載すること、「中分類」には文書の種類を入れ、「小分類」に文書の具体的な名称を入れるといったことが考えられる。内閣府で様式のガイドラインを提示する以上、「このような項目の書き込みを奨励する」という方針を書き込むべきである。現在、各行政機関で様式が統一化されていないからということを言い訳にしてこの点を曖昧にすることは責任逃れに他ならない。統一的な文書管理システムの導入を図る以上、各項目に記載される情報を統一化することは必須であろう。(またこれに合わせて15頁の名称の付け方の例も修正されるべきである。)
第6
ファイル管理簿の様式説明において、現在の行政文書ファイル管理簿と内容が断絶していても構わないということを明記するべきである。不備のある現在の形式を踏襲することなく、新たに管理簿を作るのだということをはっきりと示すべきである。そうしなければ、各行政機関が現在の曖昧なファイル名を踏襲することを優先させる可能性がある。例えば、「小分類は行政文書ファイル等の名称とし」(25頁)との記載があるが、現在の行政文書ファイル名をそのままコピーして貼り付ける可能性も想定される。そのため、今回記載される「名称(小分類)」が必ずしも今までのファイル名と一致しなくても構わないということは強調されるべきである。また、過去に遡及してファイル名を直すことも検討するべきである。
第7
「保存期間の延長」の部分に、「内閣府においては、法第9条第2項に基づく報告概要の公表の中で、当該延長後の期間及び当該延長の理由を公表することを予定している。」(31頁)とあるが、「予定している」は削除し、「全ての理由を原則として公表する」(理由説明に不開示相当部分がある場合、部分開示にする)と記載するべきである。安易な延長を認めないためには、延長理由に対する監視も必要であり、そのためには、一つ一つのファイルが何のために延長措置が取られたのかについて、公表される必要がある。
別表第2
「昭和27年度までに作成・取得された文書」(73頁)は、「作成から30年以上経過し、すでに延長手続きを取られている文書」に拡大するべきである。延長手続きまでして保存している以上、該当文書はその行政機関にとって重要な文書であることは疑いないと思われる。さらに、もしこの項目が「廃棄を禁止する」という意味であるのならば、そのような記載を行うべきである。なお、昭和27年以前に限定する理由が明記されていないため、この項目の持つ意味が不明確となっており、説明を厚くする必要がある。
別表第2
「国会及び審議会等における審議に関する事項」(72頁)の「議員への説明」が移管されるものに入っていないが、これは移管されるべきものである。公務員による議員への説明は、政策決定上重要な意味を持ちうる可能性が高いため、原則として破棄すべきではない。