SSブログ

「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の開催 [2012年公文書管理問題]

7月30日に「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の初会合が開かれました。
このチームは、公文書管理委員会による「政府の重要な意思決定にかかわる会議に関する議事概要・議事録作成の在り方<論点整理>」(2012年7月4日)を受けて立ち上げられたものである。

この<論点整理>についてはすでにブログで解説しているので詳しくは述べません。
ただ簡単に経緯だけは書いておきます。

きっかけは1月に大きな問題となった原子力災害対策本部等での議事録未作成。
公文書管理担当の岡田副総理は、公文書管理委員会にこの問題の原因調査と改善策を提言するようにとの要請を行った。
委員会ではさまざまな議論があったが、「東日本大震災に対応するために設置された会議等の議事内容の記録の未作成事案についての原因分析及び改善策取りまとめ」が4月25日に出され、これに基づいて「行政文書の管理に関するガイドライン」が改正された。
これによって歴史的緊急事態においては議事録等をきちんと作ることなどがルール化されることになった。

一方、議論の中で日常的な議事録作成のあり方なども取り上げられた。
特に問題となったのは、議事録未作成問題で採り上げられた公文書管理法第4条第2号の「閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯」の定義についてである。

例えば、閣議の議事録は明治期以来作らないのが慣例となっている。
これは閣議は「全会一致」が原則であるため、「統一性の確保」のために記録は残さないとされていたからである。
意見の相違があったということが明らかになれば、閣内不一致ということで攻撃対象になりかねないためである。(今でも各閣僚は閣議で話しあわれたことを洩らさないことが原則になっている。官房長官がまとめて記者会見で話す。)

ただ、「公開しない」ことと「記録を残さない」ことの間には論理に飛躍がある。
しかも、公文書管理法第4条第2号から考えれば、残さないこと自体には問題がある。

このため、公文書管理委員会は、閣議などの議事録の残し方などについてルールが作られることが望ましいという意見で一致した。
しかし、情報公開法など他の法律なども大きく関わっており、公文書管理委員会の業務範囲を超えるということになったため、<論点整理>を出した上で、別の場所で再度議論が行われる事になった。
その「場所」が、今回の検討チームということになる。

まず今回の検討チームのメンバーである。

○共同座長
岡田 克也 副総理兼内閣府特命担当大臣(公文書管理担当)
藤村 修 内閣官房長官

○座長
中塚 一宏 内閣府副大臣 (公文書管理担当)

○構成員
竹歳 誠 内閣官房副長官(事務)
大島 敦 総務副大臣 (情報公開制度担当)
■宇賀 克也 (東京大学大学院法学政治学研究科教授) 行政法
梶田信一郎 (前内閣法制局長官)  元自治官僚
■加藤 陽子 (東京大学大学院人文社会系研究科教授) 歴史学
小早川光郎 (成蹊大学法科大学院客員教授) 行政法
長谷部恭男 (東京大学大学院法学政治学研究科教授) 憲法学
■御厨 貴 (放送大学教授、東京大学名誉教授) 歴史学
■三宅 弘 (弁護士) 行政法


共同座長に岡田副総理と藤村官房長官。
作業チームの座長に中塚内閣府副大臣。

座長クラスに閣僚・副大臣が並んだということで、このチームで決まったことが政権の決定にそのままつながる可能性が高い。有識者会議だと決定と法案が乖離する事があるので。
中塚副大臣が座長に適任なのかは、公文書管理委員会で眠そうに議論を聞いていたところを複数回見ているので若干心配なところ。

構成員は、閣議の事務を担う内閣官房から官房副長官、情報公開制度との関係で総務副大臣が起用。
有識者7名のうち、4名(■を付けた人)は公文書管理委員会の委員と兼任のため、公文書管理委員会の議論が引き継がれることは間違いないだろう。
他の3名は、梶田氏はこれまでの法制との調整、小早川氏は情報公開法制定に関わっており情報公開法との整合性、長谷部氏は憲法との整合性という所の知識を求められたのだろう。
人選としては問題がないと思われる。

この会議で検討すべき事項は、資料によれば「閣議」と「閣僚会議」についてのみ。
公文書管理委員会の<論点整理>にはこれに加えて「省議」の問題が入っていたのだが、なぜかスッポリと落ちてしまっている。

これについては議事録を見ないとどうして落ちたのかがわからないが、岡田氏が10月までに結論を出すと急いでいること(民主党政権の寿命との関係?)もあり、時間がかかりそうな省議の部分はとりあえず後回しにした可能性が高い。
タイムスケジュールによると、法制上の論点整理と海外調査(英国、ドイツ)を行って、これを10月を目途に検討チームに報告することとなっている。

岡田副総理の記者会見によれば、10月に報告書をまとめると話しているので、論点整理と現地調査の報告と同時に報告書まで作られるということになるだろう。
また、岡田副総理によれば、この問題は最終的に法制化する必要があり、さらに政権交代ごとに制度が変わることのないように、与野党協議を事前に行いたいということである。

岡田氏の方針なら、もし政権が代わったとしても、議事録を作成するという部分についてはなんとか確保できるということになる。
ただ、省議の問題が取り残されたこともあり、今後どのように展開するのかは、民主党政権のゆくえと大きく関わっていくことになるだろう。

閣議や閣僚懇談会などの議事録作成は、将来の国民が現在行われている政策を検証するためにも必要なものである。
何とか与野党一致して法制化をしてほしいと思う。

細かい論点についての解説は、議事録が上げられたときにでも行いたいと思います。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。