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特定秘密保護法案関連で話します [2013年公文書管理問題]

特定秘密保護法案関係で話をすることになりました。
メインは三木さんで、私はプラスアルファみたいな立ち位置です。
重要な問題だと思いますので、ご興味のある方は是非どうぞ。


ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ 第 20 回

国家秘密と情報公開 ― 特定秘密保護法案は、秘密のブラックホールか!―

 10月15日に開会される臨時国会に、特定秘密保護法案が提出されます。国の防衛や外交の秘密を守る法律がないのはおかしいという主張、国民の知る権利や報道の自由が制限されるという主張がせめぎあっています。その議論の賛否を問う前に、そもそも、この法律によって何が秘密とされるのか、秘密とされるその基準や運用のルールはどうなっているのか、それがよく分からない。秘密指定されたものが、時間をへて指定解除となる基準もルールも分かりません。
 そこで、秘密が影も形も見えないまま、後世の歴史に検証されることなく、闇から闇へと吸い込まれるブラックホールのようになりかねないと指摘するNPO 法人情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長をゲストに、特定秘密保護法案を考えます。

ゲスト; 三木 由希子 さん(NPO 法人情報公開クリアリングハウス理事長)
コメンテーター; 瀬畑 源 さん(都留文科大学ほか非常勤講師)

■日 時: 10 月 24 日(木)18:30~21:00 (18:15 開場)
終了後、会場近くにて懇親会を開催します。どうぞご参加ください。

■場 所: 文京シビックセンター 4F シルバーホール
東京都文京区春日1-16-21(丸ノ内線・後楽園駅1 分、三田線/大江戸線・春日駅1分)
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_shisetsukanri_shisetsu_civic.html

■資料代: 一般 1,000 円 学生 500 円

詳しくはこちら
http://socialjustice.jp/p/20131024/

「人数の把握のため、事前登録にご協力ください。」とのことです。
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情報保存研究会で講演します [2013年公文書管理問題]

2013年10月21日(月)に情報保存研究会の第7回資料保存シンポジウムで講演します。
参加費は無料ですが、事前申込が必要とのこと。
話す内容は、公文書管理法施行以後の民主党・自民党政権下での公文書管理問題の動きについてです。
今回は歴史の話はしません。ご興味のある方はぜひ。
http://www.e-jhk.com/html/index.html

第7回資料保存シンポジウム

期日 2013年10月21日(月) 9:50~18:00 (受付9:20)
場所 東京国立博物館 平成館 大講堂

【特別講演】
 09:55~10:40 「現代日本の資料保存活動と2011 年の意義」
            筑波大学図書館情報メディア系准教授 白井哲哉氏
 10:50~11:35 「公文書管理法施行から2 年半~浮上した課題はなにか」
            都留文科大学非常勤講師 瀬畑 源氏
 13:15~14:00 「図書館員に必要とされるデジタルアーカイブ開発の能力」
            京都橘大学現代ビジネス学部教授 谷口知司氏
【プレゼンテーション】
 14:10~17:35 資料保存関連企業の「資料保存実用講座」
【企業展示】
 all time     ラウンジにおいて資料保存関連の企業展示

ビラ
http://www.e-jhk.com/html/symposium.pdf
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公文書管理推進議員懇話会 [2013年公文書管理問題]

前回のブログで紹介した上川陽子衆議院議員を中心とした公文書管理推進議員懇話会の国立公文書館新館建設の要請書(2013年6月19日)。
上川事務所に手紙を送った所、要請書の原文をいただいた。
公開を検討中とのことなので、引用の範囲内で紹介してみたい。

要望書の題名は「国会・霞ヶ関周辺への新たな公文書館建設に関する要請書」

日本の国立公文書館は他国と比べて規模が「著しく見劣りする」などのため、現在は「広く国民が利用できる国民本位の公文書館体制となっていない」。
そこで、「全国から国会見学に訪れる小中学生を始めとする多数の国民が訪れやすい国会・霞ヶ関周辺の土地(例えば、衆議院所轄の自動車置場など)を活用」して、重要な公文書などを展示解説するなど、「国民共有の知的資源として公文書を身近に利用できる中核的施設を新たに整備すべき」である。
そのため、「政府において、国会・霞ヶ関周辺への新たな公文書館建設に係る調査検討費を平成二十六年度予算に計上すること」を求めている。

内容を分析すると、現在の施設にプラスして新館を建設するというよりは、「中核的施設」として、分散している歴史公文書を一括して管理できる施設の新たな建設を要望しているように見える。
前回紹介した新聞記事を見ると、尖閣などの文書を展示することが要望書にあるとのことだったが、要請書を見ると、重要歴史公文書として列挙された中に「領土」は入っているが、尖閣や竹島のような具体名が入っているわけではなかった。
これは口頭で話をしたということなのかもしれない。

国会・霞ヶ関周辺という場所については、学生生徒の国会などの見学ツアーに組み込めるようにということが念頭にあるようだ。
具体的な場所まで書かれているので、ひょっとするとその土地を使える算段があるのかもしれない。
ただ、霞ヶ関の官僚が見に来やすいようにというニュアンスは入っておらず、基本的には「歴史資料」をどうするかという視点で書かれた文章だなと感じた。

なお、懇話会のメンバーであるが、要請書に書かれているのは

会長 谷垣禎一
副会長 保利耕輔、河村建夫、細田博之、魚住裕一郎(公明)
幹事 佐藤勉、岡田広(参議院)、大口善徳(公明)
事務局長 上川陽子


公文書管理法制定時の「公文書館推進議員懇談会」のメンバーと比較すると、重なっているのは保利、河村、細田、上川各氏の4名。
もちろん、他にもメンバーはいると思われるので、重なっている人はもっといるのではないかとは思う。

今後この問題がどのように展開しているのか注目したい。

なお、秘密保全法案がこの秋に提出されることはほぼ確実な情勢なので、これについては案が出てきた段階で一度きちんと分析してみたい。
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国立公文書館の新館建設問題 [2013年公文書管理問題]

やっと少し時間が取れたので、ここ半年の公文書管理問題の動きのうち、特に国立公文書館の新館建設問題について、情報をまとめておきたい。
新聞記事を検索してみると、最近の動きをまとめたものとして下記の記事が一番詳しかったので、とりあえず引用する。

公文書館 新館建設へ 書架あと3年で満杯 憲法原本、政府文書など所蔵
2013年8月10日 読売新聞夕刊

 政府は、重要な歴史公文書を所蔵し、展示・解説している国立公文書館の機能を拡充するため、新館を建設する方針を固めた。場所や機能を具体的に検討するため、2014年度予算の概算要求に調査費を盛り込み、認められれば17年度までの開館を目指す。
 国立公文書館は、明治政府の基本方針を示した「五箇条の御誓文」や明治憲法、日本国憲法の原本などの貴重な文書を含む公文書を所蔵している。日常業務で作成される公文書も収容の対象で、年々文書が増えている。
 内閣府によると、公文書館の書架は総延長72キロに及ぶが、それでも米国立公文書館で使用中の書架の20分の1程度。しかも、昨年3月末時点で既に書架の約8割が埋まっており、16年度には書架がいっぱいになる見込みだ。新館の候補地には、国会周辺の敷地などが挙がっている。
 自民、公明両党議員は今年5月、公文書管理体制の整備に注力した福田康夫・元首相の意向を受けて「公文書管理推進議員懇話会」(会長・谷垣法相)を設立した。
 6月には、〈1〉憲法など国の統治機構の成り立ちに関する文書〈2〉尖閣諸島(沖縄県石垣市)、竹島(島根県)や北方領土に関する日本の主張を裏付ける文書——を中心に公開することなどを盛り込んだ要請書を安倍首相に提出した。首相も前向きな姿勢で、新館建設と合わせて公開方法が検討される予定だ。
 懇話会は、政府の作業と並行して新館の機能について年内に政府に提言を行う方針だ。公文書館の職員を43人(3月末現在)から、英国やフランス並みの500〜600人体制とすることなどを盛り込むほか、現在の公文書館に収められていない外交文書や行政資料などの保管基準を定めることも求めていく方向だ。
(引用終)

安倍政権が昨年2012年末に発足してから、公文書管理問題についてはほとんど進展が見られなかった。
担当大臣は稲田朋美氏であるが、あまりこの問題については関心が無さそうである。

昨年の総選挙では、民主党の公文書問題の中核にいた西村智奈美氏や逢坂誠二氏などが落選し、福田康夫元首相が引退したが、元公文書管理担当大臣の上川陽子氏が国会に戻ってきた。
そして上川氏は福田元首相の意向を受けて、国立公文書館の拡充のための動きを水面下で続けていたようである。

その動きが表面化したのが、6月26日。
自公議員によって結成された「公文書管理推進議員懇話会」が、安倍首相、衆参両議長、菅官房長官、稲田行政改革担当相の5名に、国立公文書館新館建設の要望書を提出したことが新聞で報じられた。
また、上川氏のウェブサイトでもこのことが報告された。
http://www.kamikawayoko.net/archives/7

また7月9日には、麻生副総理兼財務大臣にも同じく要望書を提出した。
http://www.kamikawayoko.net/archives/174

6月27日の会見で、菅官房長官は、上記の動きについて記者からコメントを求められた際に、公文書館の重要性・必要性は認識しているが霞ヶ関周辺への新たな建設にはさまざまな課題があり、稲田大臣が対応する。調査費の要請があったが適切に対応していくんだろう、と答えた。
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201306/27_a.html
(冒頭の2分弱)

この会見を聞いている限りでは、菅官房長官は細かいことはまでは関心がないという感じに私には見えた。

この「公文書管理推進議員懇話会」は記事によれば5月に発足したという。
おそらく、公文書管理法制定を後押しするために作った「公文書館推進議員懇談会」が活動停止していたので、新たに作り直したというところなのだろう。

会長に谷垣禎一法相を持ってきているが、現役の大臣かつ管轄外のことである以上、トップに担がれているだけと考えることが自然だろう。
上川氏のページの写真から見ると、首相に渡しているときに同行しているのは、細田博之元官房長官、河村建夫元文科相、上川氏とプラス1名(右端の人が不明→追記(8/30)佐藤勉衆議院議員)。
他の写真を見ると、保利耕輔元文相の写っている回数が多いが、一番多いのは河村氏であろう。

前記した「公文書館推進議員懇談会」の時のメンバー表を見ると、河村、保利、細田各氏はメンバーに入っている。そのうち、河村氏と細田氏が世話人。
細田氏は上川氏の写真を見る限り、首相の時にしか同行していないことを考えれば、中心として活動しているのは上川氏と河村氏と考えるのが妥当というところだろうか。

河村氏は安倍首相と同郷の山口県選出の議員であることから、もし河村氏がこの問題に積極的に関わっているのであれば、福田元首相の代わりとしては十分な存在ということになるのだろう。
公文書館についてどのような考えを持っているのかがまだわからないので、どなたか新聞社が取材してくれないだろうか・・・
(アーキビストの小川千代子さんのブログを見ると、2002年に河村氏が公文書管理は重要だと話していたということのようです。松岡さんの本にひょっとして載ってるのかな?)

要望書自体は公開されていないので良くわからないが、新聞記事を見ると、国立公文書館の許容量は2016年度末にも埋まるので新館を国会周辺に建設すること、また尖閣や竹島問題についての日本の主張を裏付ける文書の展示などの要望が出されたようである。
後者の部分については、安倍首相や稲田担当相が食いつきそうなネタをあえてぶら下げたということのように思える。

また、政府も前向きに検討しており、建設のための調査費が認められそうとのこと。
ちなみに、『読売新聞』2013年8月9日の大阪版朝刊によれば、調査費は前年度に4600万円を要請したが見送られた(要するに財務省が首を縦に振らなかった)とのこと。
なお今のところは、オーバーする文書は国立国会図書館関西館が新設する施設に一部間借りをする方針が決まっているという。
「懇話会」が後日麻生財務相のところにも要望書を出しに行っているのは、そのあたりの経緯も踏まえて財務省に御願いの釘を刺しに行ったということもあるのだろう。

また、6月20日に発表された自民党の「J-ファイル2013 総合政策集」には、次の文面が含まれている(77頁)。

344 公文書管理体制の抜本的強化

 国家等の活動記録である公文書等は、悠久の時を超えて保存され、国民に利用されていくべき国民共有の知的資源であるとの認識の下、国立公文書館の組織的位置づけの強化、国会・霞が関周辺への新たな施設建設など公文書管理体制の抜本的な強化を目指します。


ちなみに2012年版にはこの文面が入っていないので、おそらく上川氏などの活動によってこの一文を入れさせたということなのだろう。

これによって、自民党の方針として国立公文書館新館建設が位置づけられたということになる。
安倍政権が長期政権になりそうな状況である以上、ここまで外堀を埋めていれば、おそらく新館建設は進む可能性が高いだろう。
もちろん国会の近くに建設するとなれば、土地や金の問題なども関わってくるので、財務省次第ということになる可能性が高そうだが・・・

なお、気になるのは「懇話会」が年内に出すとされている要望について。
規模の拡大はわかるとして、「国立公文書館の組織的位置づけの強化」というところはどういうことか。
上川氏が大臣として関わった「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の最終報告(20~22頁)では、①国の機関に戻すか、②独法よりも強化された「特別の法人」とするか、という2点についての検討が行われ、②の方が望ましいという結論であった。

しかし、この最終報告の通りにはならず、今でも国立公文書館は独法のままである。
公文書管理法制定という追い風がありながら「特別の法人」という位置づけを獲得できなかったということを考えると、独法とは異なる新しい機関概念を作り上げることは、霞ヶ関の論理では難しいのかもしれない。

そうなると①の案が復活してくる可能性もあるだろう。
このあたりは「懇話会」の方針をきちんと見ていく必要があるだろう。


バラバラと情報を整理しつつ、思いつくことを書いてきたのだが、とりあえず国立公文書館の新館建設や機能や規模拡大などについては、自民党政権下でも進むようだ。
ただ、一方で民主党政権下で検討されていた情報公開法の改正や閣議議事録作成の問題は完全に忘れ去られており、さらに政府は秘密保全法案を秋の臨時国会に提出する方針とのことであり、明らかに情報公開の流れからは逆行する動きが続いてもいる。

国立公文書館が拡充されることは望ましいが、公文書がきちんと作成・保存され、公開されることが重要。
特に機密文書については、現用の時期はきちんと管理を、一定の年月が過ぎたら公開されなければならない。
秘密保全法案の動き次第では、機密文書を公文書館に渡さない(いまでも現実にそうなっていることも多いのだが・・・)動きが正当化される可能性もある。
こういった動きにもきちんと目を光らせておく必要があるだろう。

なかなか夏休みのようなまとまった時間が取れないと記事を書くのが難しくなっているが、できうる限り今後も情報は追っていきたいと考えている。


補足

国立公文書館の館長の公募が2月に行われたが、結局適切な人がおらずに館長を続投させ、最終的に加藤丈夫富士電機元会長を6月1日付で任命されることになった。
加藤新館長が公文書管理法制定の際の「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の委員であったことから、おそらく福田康夫元首相が推薦した可能性が高いだろう。

「懇話会」発足の裏にも福田元首相が関係しているようだし、政界を引退されてもこの問題に関与してくださるようである。
ありがたいことだと思う。
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神戸大学附属図書館大学文書史料室&震災文庫 [2013年公文書管理問題]

2013年3月7日から8日にかけて、所属大学のプロジェクトの一環で、大阪大学アーカイブズと神戸大学附属図書館大学文書史料室を訪問してきました。
せっかくなので、簡単な見学記を。

なお、ここでの記述は、私が見聞きしたことを私の解釈で書いているものです。よってその施設の公式見解では無いことはあらかじめお断りしておきます。

今回は神戸大学を。前回の大阪大学アーカイブズはこちら
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■図書館の一部局として

神戸大学の大学アーカイブズである大学文書史料室(以下「史料室」と略す)は、附属図書館に属している。
場所は百年記念館の一角にある。
綺麗な建物なのだが、後述するように、アーカイブズの書庫としては使いづらい形である。
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史料室の向かいに、歌人の山口誓子の記念文庫があり、書庫や施設を半々にして使っている。

なお、本来、文書館と図書館は異なる機能を持っているため「分離しなければダメ」と言われることが多い。
そのため、国立公文書館等の指定を受けた施設の中では、神戸大学が唯一図書館に属する施設となっている
もちろん、図書館とアーカイブズの機能はきちんと分けられている。

ただ、話を聞いていると、むしろ「図書館の一部局のメリット」を享受している側面が強い。
例えば、文書の目録検索システムは図書館のデジタルアーカイブズ事業で使っているものを無料で転用している。項目を変えることができるシステムだったので、アーカイブ資料にも使うことができたそうだ。
さらに、史料室立ち上げの際には、図書館のシステム管理者を再雇用で雇ってそのシステムの立ち上げに関わってもらったそうだ。

予算折衝も図書館が財務と向き合ってくれるので、史料室自体が矢面に立たずに済むという。
また、図書館長を議長とする「大学文書史料室運営会議」が設置されており(教員も含む)、そこが各部局で「移管・廃棄」を申請してきた文書を精査し、原課の判断をひっくりかえすこともかなりあるらしい。
よって、むしろ「図書館に守られている」という状況のようだ。

私から「デメリットは何ですか?」とうかがったところ、担当者は「うーん」としばらく黙ってしまって、「図書館の一組織として見られがちで、全学的な組織に見られないことがあるということですかね」という答えだった。
あまりデメリットが思いつかないという感じだそうだ。

これは視察に行ってびっくりした点。
「文書館は図書館と分けなければ」というのが頭に入っていたので、中できちんと機能を分けていれば、図書館に所属していることがむしろ学内的には立場を強化することもある、というのは新鮮な発想だった。

■概要

順番は逆になったが概要を。

史料室設立は2010年4月。
きっかけは百年史の編纂が2010年3月に終了し、その資料をどうするかという所から始まった。
また、その際に公文書管理法が制定されていたということもあり、この対応も一緒に考えた結果、史料館の附属図書館での設置が決まり、さらに国立公文書館等の指定を目指すという合意も得たという。

私は公文書管理法についてブログでずっと書き続けているが、法施行の初めの段階で国立公文書館等に神戸大学が手を挙げたことにびっくりした覚えがある。
他の京大や広島大などは、元々大学アーカイブズを整備していた所であった。神戸大はそういう話を全く聞いていなかった。
今回話をうかがって、たまたま百年史編纂終了と公文書管理法が重なって、それが結びついて国立公文書館等の指定という話になったということを知って合点がいった。

スペースは243平方メートル(書庫は102平方メートル)。
展示スペースは常設されている(誓子文庫と半々)。
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書庫については、百年記念館がデザイン重視で作られていることもあり、円形になっている。
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なので、移動書架なども入れにくく、スペースはすでに限界まで来ている。
担当者の話だと、何とか他の場所にスペースが取れれば・・・ということだったが、かなり深刻な問題となっているようである。

書庫には消火設備としてイナージェンガス(不活性ガス)が整備されている。
たまたま別の場所に導入される際に、余った予算で設置してもらったとのこと。

害虫駆除施設の問題については、「箒で払って、一つ一つエタノール消毒します!」でOKだったらしい。
これにはびっくりしたが、冷凍庫すら必要なくて大丈夫だったとのこと。
きちんと防虫やカビに対する対策が取れる状態にあることを説明することが重要だということだ。

国立公文書館等への指定は史料室として受けており、大学史の他の資料も特定歴史公文書等として一括して扱っている。
分けようと思わなかったのかという質問に対しては、分けた場合、目録も二つないといけないなど、かえって面倒なことも多いと考えたということだった。
また、排架が受入1年以内というのも、「原則」だから「○年計画で処理します」と目標を設定してやっていけば大丈夫だということだった。

職員数は、室長(兼任教員=図書館副館長)1、専任職員(任期付)1、事務補佐員(非常勤)2
去年まで専任職員の方は専任講師だったが、任期が切れた際に教員ポストを取られてしまったらしい。
ここは図書館の一部局であることのデメリットが働いた可能性はあるかもと私には見えた。

感想としては、予算規模も小さく、職員数も少ないが、足りないところは工夫するということが徹底されているという印象を受けた。
例えば、マイクロフィルムの閲覧機器は、隣の誓子文庫のものを使っている。こういうことでも、内閣府はOKだったらしい。
また、この規模でも国立公文書館等として機能しているというのは、他大学にとっては参考になる事例だと思われる。

ただ、ここも阪大同様、不安定な雇用の元で職員の方が頑張っておられる。
これはどこのアーカイブズでも見られるところだが、特にこの二つのアーカイブズは、担当の教職員の方の力がかなり大きいなという印象をもった。

少人数で運営せざるをえない現在のアーカイブズの状況から考えれば、得がたい人材を確保できている。
ただ、そういった人材を機械的に雇い止めにするようなことになってしまった場合、果たしてその後もきちんと運営がなされるのか。そこは心許ない部分がある。

大学史を整備することは、決して懐古趣味ということではなく、現在の大学のアイデンティティを見つめ直す際に必要不可欠なはず。
そのためにアーカイブズは重要な意味を持つはずだ。

是非ともスタッフを大事にしてほしいと願う次第だ。


(おまけ)
■附属図書館震災文庫
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神戸大学に行った際に、史料室と合わせて、震災文庫も見学させていただいた。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/eqb/

この震災文庫は、1995年の阪神・淡路大震災の直後に神戸大学附属図書館(社会科学系図書館)に作られたものである。
震災から3ヵ月後に活動を開始し、避難所で掲示・配布されていたビラや看板、新聞の号外などのたぐいも含めた大量の資料を集めた文庫である。

詳しい経緯は、担当の図書館員だった稲葉洋子さんが書かれた『阪神・淡路大震災と図書館活動 : 神戸大学「震災文庫」の挑戦』(人と情報を結ぶWEプロデュース、2005年)を参照(震災文庫のウェブサイトで無料公開されている)。

ビラのような一枚資料はプラスティックのケースに入れられてキャビネットに入れられている。新聞は縮刷版ではなく、地方版や号外、特集号などもきちんと保管されている。
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短時間の滞在であったが、収集する大変さがしのばれる資料であった。

東日本大震災でも各県立図書館などが同様の試みは行っているようだ。
また国立国会図書館で東日本大震災アーカイブが公開された。
私は事情には詳しくないので良くはわからないが、震災文庫のように図書や雑誌以外の資料も収集できているといいのだがと思う。

なお、震災資料の利用については、以下の本が興味深い論点を示しているので参考にされたい。


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大阪大学アーカイブズ [2013年公文書管理問題]

2013年3月7日から8日にかけて、所属大学のプロジェクトの一環で、大阪大学アーカイブズと神戸大学附属図書館大学文書史料室を訪問してきました。
せっかくなので、簡単な見学記を。

なお、ここでの記述は、私が見聞きしたことを私の解釈で書いているものです。よってその施設の公式見解では無いことはあらかじめお断りしておきます。

大阪大学アーカイブズ
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/academics/ed_support/archives_room

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■概要

大阪大学アーカイブズは2012年10月1日に設置された。一般公開は2013年4月1日予定。
場所は箕面キャンパス(旧大阪外国語大学)の管理棟(事務があった所)にある。

大阪大学は2006年に文書館設置準備室が作られたが、その後、なかなか文書館の設置が決まらない状態が続いた。
特に「場所」の問題が大きかったようだ。

だが、合併した外語大の管理棟が空き、そこに入ることができたことで、文書館設置へと大きく舵を切ることになったそうだ。
現在公文書管理法に基づく「国立公文書館等」への申請を行っており、4月1日には認定される予定である。
よって、大学の法人文書の受入が可能な施設となる。

なお、「文書館」と名前を付けようとしたところ、諸事情で反対があったため、それなら「アーカイブズ」でということになったそうである。

現在のスペースは798平方メートル(うち書庫は464平方メートル(書架延長2.09km)。担当者の話だと、1300平方メートルまで増える予定があるとのことである。
書庫の中はまだ何も入っておらず、移管はこれから受けるとのこと。
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ただ、建物の強度の関係で移動書架を置けなかったため、固定書架のみの設置となっている。

閲覧室はかなり広い。
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スタッフは

○アーカイブズ―室長1(教授併任)、専任教員1(准教授(任期付))、兼任教員12名
○総務課文書管理室―室長1(総務課長併任)、室長代行(再雇用の非常勤)1、室長補佐(常勤)1、事務補佐員(非常勤)2

という体制となっている。
アーカイブズの事務を総務課文書管理室が引き受けており(情報公開請求や現金出納への対応も担当)、アーカイブズに4名の職員が常駐している。
なお、室長代行に元情報推進部長だった方を再雇用で雇っているとのこと。そのため、他部局の事務職員とも連絡が取りやすくなっているとのことである。

学内的な位置づけは「管理運営組織」
他大学は「教育研究組織」に位置づけられているが、阪大は異なるそうである(つまり図書館や博物館とは別系統の組織)。
そのため、独立組織のようなものになっているようだ。
大阪大学アーカイブズ規程に基づいて設置されている。
ただ、管理運営組織であっても、特にやることは変わらないとの話だった。

■「国立公文書館等」指定問題

「国立公文書館等」の指定を受けなければ、法人文書を移管することができない。
ただ、多くの大学では、管理運営のための基準である「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」の要件がきついということで尻込みをしているところがある。
特に受入後1年以内の排架を原則とすることや、永久保存するための施設要件(くん蒸施設など)が厳しいということが言われている。

阪大アーカイブズは「国立公文書館等」への指定を受けることになっている。
ただ、「大阪大学アーカイブズ」全体が指定を受けるが、「特定歴史公文書等」を扱うのは「法人文書資料部門」に限り、それ以外の資料を扱う「大学史資料部門」については「歴史資料等保有施設」の指定を受けるとのことである。
つまり、ガイドラインに従うのは「法人文書資料部門」のみに限るということのようだ。

私もよく仕組みがわかっていないのだが、公文書管理委員会で審議される「利用等規則」の適用を、移管された法人文書のみに限るという方法を採っているようである(広島大学文書館がモデル)。
そのため、「特定歴史公文書等利用等規程」という形を取り、それ以外の資料にも別の利用規程を作るという二本立ての形を取っている。

国立大学法人で「国立公文書館等」の指定を受けている館は、

・「全体で受けて、中で分ける」ケース・・・広島大、阪大
・「組織自体を2つに分けて、片方だけ指定を受ける」ケース・・・東北大
・「法人文書以外のものも全部一括して指定を受ける」ケース・・・残りすべて


という3つのタイプに分かれているようだ。

「全体で受けて、中で分ける」というのは、内閣府も容認しているようである。
東北大方式を取る場合、両部門に専門の担当職員を置く必要があるが、広島大方式を取ると、全体を担当する職員がいればよいということになる。
このように分けると、法人文書以外の資料(教職員からの寄贈資料など)を原則1年以内に配架するという義務がなくなる。

ただ、内閣府からは、特定歴史公文書等とそれ以外との「書庫を分けろ」ということを強く言われるそうである。
「この書棚からこの書棚まで」とかいう分け方ではダメらしい。

あと、施設要件である害虫駆除用の「くん蒸」などの施設だが、阪大では「冷凍庫」を買ったことでOKになったそうだ(型落ちで30万だったらしい)。
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除湿器は家庭用のもの、空調機は備え付けのもの(元々事務室だった)、窓は遮光カーテン(ただし脇から光が漏れるのでマジックテープを付けている)で問題なかったそうだ。
内閣府が要求する施設要件については、かなり緩くなっているという印象を受けた。

なお、学内での移管廃棄の規則については、現在改訂作業中とのこと。

お話しをうかがい、施設を見学させていただいたが、先行した大学の経験を生かした制度設計をされているということを強く感じた。
スペースはかなり多く確保できていることも重要だと思われる。

公文書管理法が施行されて以後、国立公文書館等の新規の申請は阪大が初である。
阪大の経験をのちに続く大学が活かしていくことが重要なのではないか。

なお、阪大アーカイブズのスタッフは任期付の教員1名(+総務課の事務職員)しかいない。
労働契約法改正の関係で、阪大は任期付は5年以内に雇い止めにする方針とのことなので、今後運営がきちんとできるのかが不安が残る。
きちんと必要なスタッフは常勤化する必要があるのではないかと思う。

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次回は神戸大学
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「平成23年度における公文書等の管理等の状況について」を読む 第3回(終) [2013年公文書管理問題]

2013年2月25日の公文書管理委員会で、「平成23年度における公文書等の管理等の状況について」が公開されました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20130215/20130215haifu1-1.pdf

要約版
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20130215/20130215haifu1-2.pdf

公文書管理法第9条(行政機関)、第12条(独立行政法人)、第26条(国立公文書館等)において、毎年管理状況を内閣総理大臣に報告する義務が各機関に課せられており、それをまとめたのが今回の報告書ということになります。
2011年4月1日から2012年3月31日までが今回の対象時期です。

この報告書の解説をします。
第1回はこちら
第2回はこちら

では第3回。

⑥研修・点検・処分(14-18頁)

研修の回数は11,710件となっている。
しかしデータを見ると、防衛省が6294件ということで突出している。
その次は法務省、国税庁という順番であり、この3つで70%近くを占めている。
警察庁も上位に入っており、秘密順守に関する研修が中心であるように読める。

よって、公文書管理法ができたから増えたというよりも、日頃からこれらの省庁はこういった研修を行っていたのではないかという印象。
ただ、研修内容に法制度の目的・概要も説明しているとあるので、以前からの研修に公文書管理法に関する内容が付加されていると見ることができるかなとも思う。

点検については、半年に1回と年1回で9割以上。
これについてはむしろ点検のやり方がどうなっているかの方が気になるところ。データでは見えないが。

点検などで発見された紛失等の件数は181件。
うち国税庁が131件と突出している。
情報公開請求をかけられる件数が突出していることもあるので、発見されやすいということもあるように思われる。

このうち懲戒までいったのは6名。
新聞報道によると懲戒免職になった者も1名いるようだ。ただ、データからはどういう事例で厳しい処分が下ったのかがわからない。
また、防衛省で「焼失」という事例が出ているが、これも処分されていないのも気にかかる。

紛失の責任が問われなかったケースがほとんどであったようだが、具体的にどのようなことだったのか。
これは、今後の改善に必要なデータであろうから、1件ごとに紛失理由とその対処を書いた一覧表を公表するべきではないかと思う。

⑦法人文書管理(35-72頁)

独法の文書管理については、今回初めてデータが出てきた。
比較対象が無いのでなかなか分析しにくいが、保存期間満了時の措置については気になったのでコメントをします。

ファイル数969,678のうち、移管6,252(0.7%)、廃棄736,246(75.9%)、延長227,180(23.4%)。
行政文書と比較すると、延長の多さが際立っている(行政文書では延長6.8%)。
移管の多くは、日銀や国立大学法人の国立公文書館等の指定を受けたアーカイブズへのものであり、国立公文書館への移管数は9に留まる(ただし、9のファイルに13,818冊の簿冊があるようだが・・・)。

このことから、独法から国立公文書館への移管はほとんど行われていないこと、独自の国立公文書館等を持たない独法では必要なものは延長して保管しているということではないだろうか。

なお、資料5(58-61頁)に独法毎のデータがあるが、これを見ると延長が0で全部廃棄している機関が非常に多いことがわかる。
こういった機関では、果たしてきちんと選別をして廃棄をしているのか極めて怪しい。
公文書管理法によって逆に廃棄が進んだ可能性が高いように思える。

独法での文書管理は相当に頭の痛い問題として今後も残りそうだということが、このデータをみるだけでもよくわかる。
あと3年後になる法律見直しの時までに、独法での公文書管理の問題点はきちんと洗い出しておく必要はあるように思う。

⑧国立公文書館等の概要(73-100頁)

これも前年度のデータが揃っていないのでコメントしにくい。また、それほど大きな問題があるようにもデータを見る限りは思えない。

表3(78頁)の移管受入数を見ると、国立公文書館で52,089件となっている。
これは第1回で述べた移管数と相当のズレがある。
おそらく、行政文書ファイルでは1件だが、その中に複数の簿冊が入っているケースがかなりあるということだろう。
これは拙著でも書いたことがあるが、私は1ファイルに1000冊以上の簿冊が入っていた経験を宮内庁でしているので、こういったことはどこの省庁でもあるのだろう。

表7(83頁)の利用決定までの期間を見ると、9割が30日以内で開示決定がされている。
比率的には外交史料館では30日を超えてかかっているケースが多いようだが、それでも審査は順調に行われていると言えよう。
特に私的な感想としては、宮内公文書館での開示決定までの期間が短くなったのは大きい。
以前の統計が無いのでわからないが、おそらく相当のスピードアップがなされているはずである。

理想は、すべてを30日以内で出せることであろう。
もちろん量があるものは仕方が無いが、半年以上待たせているものも少しはあるようなので、改善がなされればよいと思う。
まだ昨年度は1年目で、請求が集中した可能性も高いだろうから、今後はもっと待ち時間が短くなるものと期待したい。

以上がこの文書を読んだ分析になります。
細かい部分は省略しているので、「この部分について意見を聞きたい!」ということがあれば、コメントを書き込んでもらえれば対応します。
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「平成23年度における公文書等の管理等の状況について」を読む 第2回 [2013年公文書管理問題]

2013年2月25日の公文書管理委員会で、「平成23年度における公文書等の管理等の状況について」が公開されました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20130215/20130215haifu1-1.pdf

要約版
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20130215/20130215haifu1-2.pdf

公文書管理法第9条(行政機関)、第12条(独立行政法人)、第26条(国立公文書館等)において、毎年管理状況を内閣総理大臣に報告する義務が各機関に課せられており、それをまとめたのが今回の報告書ということになります。
2011年4月1日から2012年3月31日までが今回の対象時期です。

この報告書の解説をします。
第1回はこちら

では第2回。

③移管・廃棄の概況(9~11頁)

保存期間満了時の移管や廃棄の状況を、それ以前の「行政文書の管理状況調査について」のデータと並べてみる。
   総数  移管 廃棄  延長 
 2011年度  2,339,901
(100%)
17,140
(0.7%) 
2,164,048
(92.5%) 
 158,713
(6.8%)
 2010年度  1,475,761
(100%)
 18,303
(1.2%)
 1,306,582
(88.6%)
 150,976
(10.1%)
 2009年度  1,272,071
(100%)
 13,062
(1.0%)
 1,131,259
(88.9%)
 127,755
(10.0%)

今回のものとそれ以前との数が大きく異なるのは、「行政文書の管理状況調査について」は「಴各省庁から国立公文書館に申出のあったファイル数をもとに算出」していたため。
一昨年度までのデータは「申出があった」数を元にしており、すべてでは無かったことに、今回いまさらながら気づいた。

なお、移管数や延長数を見ると、パーセンテージは下がったが数はそれほど変わっていない。
このことから、いままで国立公文書館に知らせずに廃棄していた省庁の報告が加わったので、廃棄数が増えたということになるだろう。
よって、あまりパーセンテージを見ても仕方がないかもしれない。

まず移管数であるが、対象データが100万件増えたにも関わらず、1000件減っている。
さらに移管数を細かく見ると、国立公文書館へは6087、宮内公文書館304、外交史料館4138となっている(10529しかないのは、移管事務が年度内に終わらなかったため)。
2010年度のデータが国立公文書館のデータのみであることを考えると、実質的には国立公文書館への移管数は大幅に減ったと見るべきだろう。

情報公開法が施行された時にも直後の数年は移管数が減少した。公文書管理法に対する警戒なのかわからないが、思ったよりも移管数が増えてこないなというのが率直な感想。
公文書管理法によって移管対象文書は増えると私は考えていたので、増えるどころか減ったのは問題があるように思う。

なお詳しいデータが資料4(24頁)にあるが、ファイル数との比率で考えると、内閣官房、警察庁、公安調査庁、検察庁、国税庁、防衛省あたりの移管数の少なさは気になる。
というより、移管に積極的な機関とそうでない機関との差が激しいのが特徴といえるだろう。

④廃棄へのチェック(11~12頁)

公文書管理法によって、行政文書を廃棄するためには内閣総理大臣の同意が必要となった。
これによって、各機関が廃棄指定した文書を内閣府や国立公文書館がチェックできることになった。
このチェック機能が働くかは、恣意的な廃棄を止めるためには重要なことである。

データを見ると、廃棄協議数2,125,146のうち、廃棄同意は507,823(23.9%)、不同意は243(0.01%)、協議中1,617,080(76.1%)となった。

まず4分の3が協議中ということから、処理が明らかに滞っていることがわかる。
これは当たり前のことで、今の内閣府公文書管理課や国立公文書館の職員数で200万件の文書のチェックをするというのがそもそも無理である。
これが毎年積み重なっていけば、どんどん処理できない文書が溜まっていくことになる。

もちろん、毎年やっていれば経験値が上がるので次第に廃棄の判断は速くなるとは思うが、それにしても件数が多すぎる。
早急に人数を増やすなどの対策が必要となるだろう。

また、不同意=廃棄文書から永久保存へと変わったものは243件に留まった。
しかも細かく見ると、外交史料館が187件を占めており、実質的には外務省内でのチェックで見つかったものがほとんどである。
つまり、国立公文書館や内閣府の所では、廃棄から保存に変わったものはほとんど無いということである。

好意的に取れば事前にきちんと廃棄と保存の分類ができていたということになろうが、今までの経緯から考えると、チェックが機能していないというように思える。
前述したが、これは公文書管理課や国立公文書館の問題というよりは、物理的に人員が足りていないということから来るものだと思われる。

私は以前からずっと主張しているが、こういったチェック体制は「気合い」でどうなるものではない。
適切な人員と予算が必要だと強く思う。

⑤延長の内容(12-14頁)

延長措置についても、その内容が公開された。
表8を見ると、保存期間を30年以上延長したものは4316件(2.8%)、通算の保存期間が60年以上になるもの7173件(4.7%)ある。
林野庁や国土交通省といった土地や林野などの権利関係の書類を持っている省庁は、長期の延長をかける傾向があるようだ。

ただこの数字は昨年度満了になった文書に関するデータでしかない。
例えば宮内庁などでは、すでに情報公開法施行時に長期の延長を行っており、こういったデータは今回の調査では出てこないと思われる。
なので、7173件は氷山の一角でしか無いだろう。

第3回へ続く。

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「平成23年度における公文書等の管理等の状況について」を読む 第1回 [2013年公文書管理問題]

2013年2月25日の公文書管理委員会で、「平成23年度における公文書等の管理等の状況について」が公開されました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20130215/20130215haifu1-1.pdf

要約版
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20130215/20130215haifu1-2.pdf

公文書管理法第9条(行政機関)、第12条(独立行政法人)、第26条(国立公文書館等)において、毎年管理状況を内閣総理大臣に報告する義務が各機関に課せられており、それをまとめたのが今回の報告書ということになります。
2011年4月1日から2012年3月31日までが今回の対象時期です。

公文書管理法がきちんと機能しているかどうかをチェックすることは重要なことですので、毎年出される報告書を精査することが最低限必要でしょう。

そこで、今回の報告書を読んだ感想をざっくり書いてみようと思います。
そのために、昨年度の「行政文書の管理状況調査について」(2011年3月31日時点の状況)を適時見ながら比較したいと思います。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gyouseibunshou/chosa/22.pdf
なお、公文書管理法施行前の調査なので、調査項目や内容にズレがあるので、データを見る際には注意が必要です。(独法については調査がない、など)

長くなりそうなので数回に分けます。

①行政文書ファイル等の保有数について(5頁)

3年間で数字がかなり変わっている。

  総数  本省庁   施設等機関 特別の機関   地方支分部局
 2012年度  14,672,757
(100.0%)
1,339,572
(9.1%) 
 676,974
(4.6%)
 2,556,460
(17.4%)
 10,099,751
(68.9%)
 (うち新規)  2,159,446
(100.0%)
149,638
(6.9%)
 121,594
(5.6%)
655,481
(30.4%)
 1,232,733
(57.1%)
 2011年度  16,349,007
(100.0%)
 1,104,795
(6.8%)
 1,022,319
(6.2%)
 2,731,772
(16.7%)
 11,490,121
(70.3%)
 2010年度  17,137,986
(100.0%)
 1,084,625
(6.3%)
 662,726
(3.9%)
 2,785,645
(16.3%)
 12,604,981
(73.5%)

なお、「施設等機関」というのは各省庁の附属の研究所など(迎賓館や人口問題研究所など)を、「特別の機関」は各省庁に附属する専門機関(自衛隊、日本学術会議など)を指す。

これを見ると、昨年度からファイル数が160万件減っていることが分かる。
ちなみに、廃棄量は220万弱。
新規作成が220万なので、本来ならばプラスマイナスゼロぐらいにならなければならないはず。

まず「施設等機関」が昨年度のみ35万件多くなって、その前後の年度がほぼ同じ数字になっている。
ここについては、昨年度に数え間違えたか、あるいは1年だけ「施設等機関」に該当する機関が増えていたかということだろう。
本省庁が増えているのは、復興庁が設立されただけでなく、その他の東日本大震災関係の書類が増えたためだと思われる。
一方、地方支分部局や特別の機関ではかなり書類が減少している。

理由はこのデータだけではよくつかめない。
こっそりファイルを捨てているのか。それともこれまでがずさんで管理簿から廃棄したファイルを削除していなかったのか。機関自体が減っているのか。

ここは誤差というには数字が大きいので、きちんと説明を聞きたいところだ。

②レコードスケジュールの設定状況(8~9頁)

公文書管理法第5条第5項に、行政文書にはあらかじめレコードスケジュール(保存期間満了後に廃棄するか移管して永久保存するかを設定する)を決めておかなければならなくなった。

今回の調査によれば、設定済は59.6%、未設定が40.4%
なお、新規は89.3%で設定済とのことなので、遡及が間に合っていないということなのだろう。

ではどの省庁でできていないのか。
23頁の資料3に一覧表が載っている。
これを見ると、やはり各省庁で遡及が間に合っていないことがよくわかる。
あまり言ってはなんだが、1年間で全部間に合うとは正直思っていなかったので、妥当な結果ではあるだろう。

ただ気になるのはむしろ「新規作成」に設定をしていない省庁の方。
これを見ると、「設定済み0件」の省庁が4つ(農水、林野、水産、環境)あることがわかる。
また、未設定の割合が多い省庁としては、総務や文科、資エネあたりも挙げられよう。

遡及は確かに大変だろうが、新規作成の文書にレコードスケジュールを付けるのは、それほど困難だとは思えない。
素直にデータを読めば、この7つの省庁では、レコードスケジュールを付与するということが徹底されていない可能性が高い。
これは大きな問題だろう。

なお、このデータを読む際に気をつけたいのは、レコードスケジュールを「設定」さえすれば良いので、その内容がずさんであっても表面的には「OK」ということになってしまうことだ。
よって、未設定がゼロだからその省庁はきちんと管理できているとは断言できない。

データ分析からは限界があるのでどうしようもないが、内閣府などが査察に入るなどして、きちんと確認をした方が良いのではないかと思う。

次回へ続く。
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アーカイブズ資料の閲覧資格制限? [2013年公文書管理問題]

香川県で公文書管理条例を策定する動きが進んでいる。
これ自体は非常に良いことだと思うのだが、その内容に大きな問題があることがわかった。
それは、香川県文書館で「特定歴史公文書等」を閲覧できる権利を持つ人を事実上「県民関係者」に限定するということである。

まず、その案文の関係する所を。
「香川県の公文書等の管理に関する条例(仮称)案の骨子」
http://www.pref.kagawa.lg.jp/kgwpub/pub/cms/upfiles/jyoureiannno%20gaiyou_15360_1.pdf

この12には、文書館での利用請求を行える者として、次の様に書かれている。

次に掲げるものは、館長に対し、特定歴史公文書等の利用を請求することができる。
(1) 県の区域内に住所を有する個人
(2) 県の区域内に事務所又は事業所を有する個人及び法人等
(3) 県の区域内の事務所又は事業所に勤務する者
(4) 県の区域内の学校に在学する者
(5) (1)から(4)までに掲げるもののほか、県の機関が行う事務又は事業に関し利害関係を有するもの


(1)から(4)までは県民関係者ということになる。
(5)は「利害関係」がないと認められない。
よって、県民以外はその申請する文書に対する「利害関係」がないと、閲覧を請求することができない。

ただし、25の「特定歴史公文書等の任意的な利用」の(1)に次の記述がある。

館長は、12 の(1)から(5)までに掲げるもの以外のものから、特定歴史公文書等の利用の申出があったときは、これに応ずるように努めるものとする。

つまり、県民以外でも「任意的」に利用を認めるということになっている。
ということで、一応は県民以外でも特定歴史公文書等を文書館で利用できる。

また、この条例は「特定歴史公文書等」を

① 実施機関から文書館に移管されたもの
② 議会の議長(以下「議長」という。)から文書館に移管されたもの
③ 法人等又は個人から文書館に寄贈され、又は寄託されたもののうち、行政文書に類するものとして知事が指定するもの


と定義している。

この③は古文書などの寄贈された文書を、特定歴史公文書等から外して公文書管理条例の適用外にしようという考え方だろう。(ただし、知事が行政文書に類すると「指定」すれば、特定歴史公文書等になる。)
適用外にする理由は必ずしも明確ではないが、閲覧の資格が制限される特定歴史公文書等から古文書などを外すことで、これらの閲覧の自由を残したということなのかもしれない。

なおこれは、公文書館に収蔵されている資料を私文書、古文書を問わず「特定歴史公文書等」としている国の公文書管理法とは異なる基準である。

まとめてみよう。
a)文書館の収蔵資料のうち、古文書・私文書は公文書管理条例から外す(ただし知事が指定したら組み込まれる)
b)文書館の収蔵資料のうち、行政文書(特定歴史公文書等)の閲覧は県民関係者(利害関係者含む)に限られる。ただし、任意でそれ以外の人に見せるように努力する。


「結局は見れるんならいいじゃないか」と思う方もおられるだろう。
だが、県民以外に「任意」で見せるということは、県にとって都合の悪い閲覧者(他県との紛争になっている事件など)の閲覧を拒否できるということだ。

また、個人情報等で非公開になった文書に対し、「任意」で請求している人は不服を申し立てることができない。つまり泣き寝入りをせざるを得ない。
さらに、閲覧を求める際には、毎回「理由」を説明して「許して」もらわなければならない。

同じ閲覧が可能な規程であっても、「閲覧の権利」を認められているか否かで状況は全く異なる。
つまり、この条例案は「県民関係者以外の閲覧者を差別します」と言っているに等しいのだ。

では、なぜこのような条例案が出てきたのだろうか。
これは簡単な話で、香川県情報公開条例が情報公開請求の申請資格に上記のような制限を定めているからである。
香川県情報公開条例では、第5条で上記の公文書管理条例案の12と同じ制限をかけている。
そして、県民以外で利害関係者でもない人に対しては、「応ずるように努める」との努力規定を設けている(第20条(1))

つまり、この情報公開条例の規定をそのまま公文書管理条例案に当てはめたのである。

ちなみに、このような情報公開請求の申請資格を制限している条例は、都道府県レベルではレアケースである。
日弁連の「自治体の情報公開条例の改正を求める意見書」(2010年4月16日)によれば、国の情報公開法を初めとして、多くの自治体では、情報公開請求の申請資格を「何人も」、つまり誰でも可能にしてある。
これは、県を超えて発生する問題(例えば環境問題)などに対して、誰でもアクセスできる状態を用意しておくことが望ましいという考え方などが理由となっている。

都道府県レベルで現在申請資格に制限があるのは6都県。(引用した日弁連の報告書に一覧があるが、その後、島根県と広島県で資格制限が無くなった。)
分類すると2つのパターンになる。

A:「公文書の開示を必要とする理由を明示」すれば、県民以外にも申請資格を認める。
埼玉県、千葉県、東京都

B:「利害関係」がある場合に申請資格を認める。それ以外の人には「応じる努力をする」。
栃木県、石川県、香川県

日弁連はこれを「何人も」にするべきだと主張している。

香川県はこのBにあたっており、この規程をそのまま公文書管理条例案に引き写したことで、これまで閲覧資格に制限が無かった文書館に問題が飛び火することになった。

この条例案の冒頭には「本条例案については、検討途中であり、今後変更することがある。」とのただし書きがある。
是非とも条例案が議会に出されるときには、この点は改善をしていただければと思う。


なお、今回の条例案、実はパブリックコメントが募集されていた
私は気づかなかったし、こういったことを良く調べている友人すらも気づいていなかった。
なぜ、文書館の側が、こういった問題のある条例案のパブコメが募集されている時に、関係者に連絡をしなかったのだろうか。

文書館が県庁の中で立場が弱いことは良くわかっている。
古文書や私文書だけでもなんとか閲覧資格制限から救おうとしたのかなと思える文面なので、努力はされていたのではないかと思う。

だが、なぜこのパブコメが出たときに、アーカイブズ関係者や歴史研究者に助けを求めなかったのだろうか。
それが中立義務に違反するというのであれば、「パブコメを募集していますのでよろしく」と言うだけでも良かったではないか。(時折私に対してそういう情報の提供をして下さる方もおられる。)

気づいて読めば、そのまずさは絶対に関係者ならわかる。
そういった呼びかけだけでもなぜできなかったのだろうか。
アーカイブズの横の連携が薄れているということなのだろうか?(全史料協から脱退する公文書館も相次いでいると聞いているし。)
歴史研究者(特に近現代史)とつながりがなかったのだろうか(知らせたけど動かなかったのか、動いていたが私が知らないだけか)。

もちろんパブコメは形式的なものでしかないと言う人もいるだろう。
でも、批判的な意見が集まれば、県議会で議論する際に意見を反映させようとする議員が現れるかもしれない。
諦めてしまってはなにも変わらないのだ。

今回の問題はもちろん香川県に固有の問題という側面もあるが、アーキビスト間の横の連携が機能していれば・・・、という感想が最も強い。
アーキビストの資格制度がやっと立ち上がった今、アーカイブズへの無理解から降り注ぐ理不尽な状況を跳ね返すための横断的なつながりというのは必要不可欠なのではと改めて感じた次第だ。

追記4/1
条例案はそのまま可決されて成立しました。
これをどう反面教師にできるかが問われるような気がします。
http://www.pref.kagawa.lg.jp/kgwpub/pub/cms/detail.php?id=16892

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