「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書へのパブコメ [2012年公文書管理問題]
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書に対するパブリックコメントが16日まで募集されていました。
これに対して意見を送ったので、下記に貼っておきます(レイアウトはいじってます)。
これまでのブログ記事の
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-11-04
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む その2
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-12-17
で批判的に書いたことを、そのまま文章にまとめたものです。
特に解説はしません。上記記事を参照して下さい。
閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について
1.「議事録の作成義務 (1)議事録の記載事項」について
「議事録には、閣議等における発言者名及び発言内容を記載する」ことに賛成する。ただし「発言内容」が具体的に書かれる担保が必要である。公文書管理法改正案作成の際には、「発言内容」は公文書管理法第4条にあるように「経緯も含めた意思決定に至る過程」がわかるものであることに留意した法文にするべきである。
2.「一定期間経過後の国立公文書館への移管義務 (1)移管までの期間」について
原則30年で国立公文書館へ移管するが、「特に必要な場合にはこの期間を延長することができる仕組みについて検討する」とある。この延長を行うことについて反対する。公文書管理法第8条第3項には、国立公文書館等に移管する際に、利用制限を行うことが適切であると認める文書には移管元から意見書を付けることができる仕組みになっている。これを利用すべきである。
内閣官房が独自に判断を行う場合、必要以上に公開を制限しようというバイアスがかかるおそれがある。よって、第三者機関である国立公文書館が最終判断を行うべきである。またもし延長を認める場合、延長する際には理由を公文書管理委員会に報告をさせることや、延長の上限をつけるなどの一定の歯止めが必要である。
3.「移管までの期間の非公開」について
「案」の段階であったA案にすべきであると考える。これまで閣議等で議事録が作成されてこなかった以上、法改正が行われてもきちんと作成されているのかは疑問符が残る。30年後に公開された際に全く意味をなさない議事録が出てくるおそれもあり、監視できるようなしくみは必要である。また、情報公開法の理念は国民に対する説明責任を果たすことである(第1条)。よって、閣議等の議事録であっても情報公開請求を受けつけることにし、その情報の内容に応じて公開非公開を決めるべきである。また、国民にとって必要な情報であれば、公益裁量開示もできる余地を残すべきである。
閣僚会議等の議事録等の作成・公開について
1.「法的措置を講ずるべき会議の有無」について
副大臣会議や国の安全にかかわる会議であっても、閣議等と同等に扱わないという主旨に賛同する。また、国の安全に関わる会議であっても記録を作るべきだという主旨にも賛同する(秘密保全法には賛同しないが)。
2.「運用上講ずるべき措置の方向性 (1)議事録・議事概要の作成」について
「発言者名及び発言内容を記載した「議事録又は議事概要」を作成すること」の「議事概要」は外すべきであると考える。そもそも、もし「情報漏洩のおそれ」が理由で「議事概要」でも構わないとした場合、「発言者名及び発言内容を記載した議事概要」が作られるとも思えず、実質的には骨抜きになるだろう。また、この書き方であると、「議事録」「議事概要」のいずれかを作成すれば良いと取られかねず、これまで「議事録」を作成してきた閣僚会議等でも「議事概要」しか作らなくなるおそれもある。よって、「議事録」の作成を義務づけるべきである。秘密漏洩へのおそれなどは、情報の管理をきちんと行えばよいだけの話であり、それを理由に議事録を作らないというのは本末転倒ではないか。
3.「運用上講ずるべき措置の方向性 (3)移管までの期間の取扱い」について
「能動的な公開の有無、公開までの期間等については、会議の性格に応じ、それぞれの会議の運営要領等において定めることとする」とあるが、ガイドライン改定の際には「原則として能動的に公開することが望ましい」という方向性を示すべきだと考える。政策過程を公開することは、その政策への関心を喚起することにもつながり、国民の意見表明の機会を与えることにもつながるだろう。
これに対して意見を送ったので、下記に貼っておきます(レイアウトはいじってます)。
これまでのブログ記事の
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-11-04
「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム」の報告書を読む その2
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-12-17
で批判的に書いたことを、そのまま文章にまとめたものです。
特に解説はしません。上記記事を参照して下さい。
閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について
1.「議事録の作成義務 (1)議事録の記載事項」について
「議事録には、閣議等における発言者名及び発言内容を記載する」ことに賛成する。ただし「発言内容」が具体的に書かれる担保が必要である。公文書管理法改正案作成の際には、「発言内容」は公文書管理法第4条にあるように「経緯も含めた意思決定に至る過程」がわかるものであることに留意した法文にするべきである。
2.「一定期間経過後の国立公文書館への移管義務 (1)移管までの期間」について
原則30年で国立公文書館へ移管するが、「特に必要な場合にはこの期間を延長することができる仕組みについて検討する」とある。この延長を行うことについて反対する。公文書管理法第8条第3項には、国立公文書館等に移管する際に、利用制限を行うことが適切であると認める文書には移管元から意見書を付けることができる仕組みになっている。これを利用すべきである。
内閣官房が独自に判断を行う場合、必要以上に公開を制限しようというバイアスがかかるおそれがある。よって、第三者機関である国立公文書館が最終判断を行うべきである。またもし延長を認める場合、延長する際には理由を公文書管理委員会に報告をさせることや、延長の上限をつけるなどの一定の歯止めが必要である。
3.「移管までの期間の非公開」について
「案」の段階であったA案にすべきであると考える。これまで閣議等で議事録が作成されてこなかった以上、法改正が行われてもきちんと作成されているのかは疑問符が残る。30年後に公開された際に全く意味をなさない議事録が出てくるおそれもあり、監視できるようなしくみは必要である。また、情報公開法の理念は国民に対する説明責任を果たすことである(第1条)。よって、閣議等の議事録であっても情報公開請求を受けつけることにし、その情報の内容に応じて公開非公開を決めるべきである。また、国民にとって必要な情報であれば、公益裁量開示もできる余地を残すべきである。
閣僚会議等の議事録等の作成・公開について
1.「法的措置を講ずるべき会議の有無」について
副大臣会議や国の安全にかかわる会議であっても、閣議等と同等に扱わないという主旨に賛同する。また、国の安全に関わる会議であっても記録を作るべきだという主旨にも賛同する(秘密保全法には賛同しないが)。
2.「運用上講ずるべき措置の方向性 (1)議事録・議事概要の作成」について
「発言者名及び発言内容を記載した「議事録又は議事概要」を作成すること」の「議事概要」は外すべきであると考える。そもそも、もし「情報漏洩のおそれ」が理由で「議事概要」でも構わないとした場合、「発言者名及び発言内容を記載した議事概要」が作られるとも思えず、実質的には骨抜きになるだろう。また、この書き方であると、「議事録」「議事概要」のいずれかを作成すれば良いと取られかねず、これまで「議事録」を作成してきた閣僚会議等でも「議事概要」しか作らなくなるおそれもある。よって、「議事録」の作成を義務づけるべきである。秘密漏洩へのおそれなどは、情報の管理をきちんと行えばよいだけの話であり、それを理由に議事録を作らないというのは本末転倒ではないか。
3.「運用上講ずるべき措置の方向性 (3)移管までの期間の取扱い」について
「能動的な公開の有無、公開までの期間等については、会議の性格に応じ、それぞれの会議の運営要領等において定めることとする」とあるが、ガイドライン改定の際には「原則として能動的に公開することが望ましい」という方向性を示すべきだと考える。政策過程を公開することは、その政策への関心を喚起することにもつながり、国民の意見表明の機会を与えることにもつながるだろう。
このたび、廣田先生が理事長を務める行政文書管理改善機構(ADMiC)の懸賞論文(エッセイ部門)にて優秀賞をいただきました。
↓
http://www.admic-akf.jp/news/2012/11/3admic.html
エッセイでは、文書管理上の根本問題である文書の私物化容認意
識の原因について、自分の中央省庁における経験から論じました。
「文書の私物化」とは、業務に関する情報を特定の職員が独占して
いる状態を指します。震災関連会議の議事録が作成されていなかっ
た問題を例に挙げると、議事録未作成が発覚した後、関係者のメモを
頼りに議事概要を作成されたとのことです。すなわち、議事概要が完
成するまでの間、一部の関係者が議事内容を独占していたと言えま
す。文書を私物化していても何とも思わないのが文書の私物化容認意
識です。
先生は、「今の文書管理は官僚のための文書管理であり、そのため
過去の意思決定過程に関する文書が適切に保存されない」という趣旨のご意見をお持ちかと思われます。しかしながら、過去の意思決定過
程に関する文書が保存されていないのは役所にとっても困ることです。将来、原発事故やその他の震災対応に関する検証をする際も議事録
が残っていなければ役所も困るはずです。
このようなデメリットがあるにもかかわらず、職員が文書の私物化容
認意識を持つのは、中央省庁における業務体制が原因だと思います。具体的には、特定の業務を担当するのは特定の職員のみであり、他の業務に関する文書を取り出すことはほとんどありません。したがって、
担当者として文書を組織的に共有する必要性を感じていない可能性
があると思われます。中央省庁の文書管理は、担当者間の引き継ぎに過度に依存しており、組織的に共有されないため、重要な文書であ
っても引き継がれないおそれが高いということです。
エッセイについて、感想等を伺えると幸いです。
by 行官士 (2012-12-24 10:51)
>行官士さま
拝読しました。優秀賞おめでとうございます。
率直に感想を述べさせていただきます。
業務の細分化が私物化の原因であるという分析については、私も同意します。
そこからの解決策を廣田さんのシステムに託すという論文に見えます。
システムの変革は重要なことではあると思いますが、それだけでは解決策にはならないのではとも思います。
業務の細分化は、官僚制が発達すれば必ず起きることで、ある意味やむをえないことです。
ただ、その細分化をしても文書が共有されるという状況を作るには、システムを積極的に取り入れるための意識改革の面がやはり大きな意味を占めるのではないでしょうか。(そのシステムを「採用する」というモチベーションが必要。)
その意味では、最後のパラグラフで軽く流して書かれてしまっている意識改革の面について、ただ単に成功例の自治体を見ればということだけではなく、もっと業務のあり方を踏まえた意識変革のありかたを展開していただけたらなと思いました。
せっかく現場におられた経験から前半部分が書かれていたので、現場で行官士さんがお考えなったことを後半部分でも展開していただけるとよかったかなとの感想を持ちました。
ざっくりとした感想でなんだか申し訳ありませんが、一読した感想です。
またよろしく御願いします。
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2012-12-25 09:49)
職員が文書の私物化容認意識を持つ原因は、業務が細分化されているというより、細分化された業務が職員に細かく分担されていることだと
思われます。
先生は、「今の文書管理は役所のため」というご趣旨のご意見をお持ち
と思われますが、「役所の担当者のため」というべきなのです。この点を
ご理解くださるとありがたいです。
したがって、ご質問の「意識改革のための業務はどうあるべきか」と
いう点に対しては、業務分担が細かく分かれている体制を変えること
とお答えさせていただきます。すなわち、現状はA係の職員は、A係が
所管する業務のみ行っていますが、必要に応じてB係、C係の業務も
行うということです。この体制に変えても業務が円滑に進むには、課
室の職員であれば、誰でも文書が検索できるシステムを導入しなけれ
ばなりません。このシステムこそ、廣田先生らが推進し、ガイドラインの
モデルともなっているフォルダ式整理法なのです。
職員が、自分の係だけではなく、課室内の業務を担当することは、
職員自身にとってもメリットがあります。ご存知の通り、中央省庁で
は超長時間労働が問題になっています。今の体制ですと、休暇中は
自分の業務が滞ってしまうので、休暇を取ることはなかなかできま
せん。お互い、他の係の業務をこなす体制に変えれば、休暇を取っ
ても業務を進めることが可能になるため、休暇が取りやすくなると思
われます。私は、自分の職場でこの点を職員にアピールしたいと思
っています。
by 行官士 (2012-12-25 21:18)
> 行官士さま
ご返信ありがとうございます。
「役所の担当者のため」という御趣旨は了解しました。
ただ、私がそこまであえて書かずに「役所のため」と書いているのは、私自身が現場で働いたことがない、つまり「確証がそこまで持てない」ためでもあります。
(文書を見ていれば「役所のため」である所までは読み取れますので。)
ただ、本を書いていて気になっていたのは「分担管理」の善し悪しの問題です。
つまり、「分担管理=ある仕事の責任を任せる」という意味合いとしては重要だとは思いますが、同時に「他の人に手を出されたくない」という意識も強く出るところがあると思うのです。
それが末端にまで行き着いているということなのだと思いますが、果たしてその業務分担が細かく分かれている体制は変えることができるのでしょうか。
また、業務における排他意識は他の仕事を見通せる「文書管理システム」を入れれば、克服できるものなのでしょうか。
仕事を抱え込むというのが非効率であることは間違いないし、行官士さんがおっしゃっていることは私も同意します。
しかし、その「抱え込む」という行為自体が「自分の仕事に対するプライド」(他の人にはできまいという意識=他の人ができたら自分がいなくてもよくなってしまうという意識)とつながっていた場合、それはどう克服できるんだろうかと。
そういったことが、今まで文書管理の妨げになっていたのではないかと。
なので、ただ単に「他の仕事もできると良いよね?」で果たして変わるのか。「メリット」があるのは間違いないのだが、同時に自分のよりどころも失うという「デメリット」とはどう折り合いをつけるのだろうかと。
現場で働いたことのない私には、そういった細かい感情の機微みたいなところがよくわからないところがあるのです。
それともそういった悩みはないものなのでしょうか?
もっと「メリットがあればどんどん導入しまっせ!」というものなのでしょうか。
なので、現場の方の考え方を展開してほしいなと個人的に思ったわけです。
別に行官士さんの御意見を否定しているわけではありません。むしろそうなってほしいと願っています。
ただ、人間は「効率性」というメリットを提示するだけで動くのかなという懐疑がぬぐえないのです。
それで動くなら、もっとこれまでに各機関はうまく文書管理システムを運用できていたように思うので・・・
歴史研究者に固有の発想なのかもしれませんが・・・
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2012-12-26 22:05)
ご指摘の「自分の仕事に対するプライド」(他の人にはできまいという意識)が働いて、業務を分担しようとしない職員もいると思われます。また、
フォルダ式整理法を導入しようとしても、慣れ親しんだ簿冊を捨て去れない職員もいるでしょう。
ただ、このような職員は、おそらくフォルダ式整理法を導入済みの自治体でもいらっしゃったでしょうが、それでもうまく運用できている自治体も
あります。ある一定程度ご指摘の職員がいても、それ以上に業務分担
やフォルダ式整理法の導入に賛同してくれる職員がいればいいのでは、と思っています。先生はご不満かもしれませんが・・・。
by 行官士 (2012-12-26 23:59)
> 行官士さま
いえいえ。不満ではないのです。
というより、むしろ成功例がガンガン増えていってほしいと願ってます。
色々とまた教えていただければと思います。
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2012-12-27 23:21)