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「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(中) 第3、4 [2010年公文書管理問題]

「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(上) 第1、2
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「行政透明化検討チームとりまとめ」解説(下) 第5~9

前回の続き。

8月24日に行政透明化検討チームの会合の最終回がありました。
そこで出された大臣案「行政透明化検討チームとりまとめ(案)」についての解説をしてみたいと思います。

赤字の部分が、「とりまとめ」からの引用部分です。
一応、一番最初の枝野大臣案が出たときの解説はこちら。間違っている箇所もあるけど、おおよその解説は合っていると思う。

今回は、第3、4の部分。

第3 開示請求から実施までの手続に関する改正
 迅速かつ安価な開示手続が実現できるようにするため、手続面での改正を行う。また、不開示や部分開示となった場合にも、その理由がより明確になるような改正等を行う。具体的には以下のとおり。

1 不開示決定の通知内容(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)
 行政機関の長・独立行政法人等は、不開示決定をするときは、当該決定の根拠となる条項及び当該条項に該当すると判断した具体的理由を書面により示さなければならない。


これは、これまで不開示決定の理由の説明が不足していて意味がわからないということから入れられたものである。

私もよく不開示決定を受けるのでこの点についてはよくわかる。
例えば、宮内庁では、個人情報で不開示の場合、「特定個人を識別することができる情報が記録されている部分があり、情報公開法第5条第1号に該当するので、当該部分を不開示にした」という文面が付いてくる。
これは、「1号が適用されたよ」ということを説明しているだけで、「なぜ1号が適用されたのか」という説明には全くなっていないことがわかる。

ただ、これは具体的にどのようなところまで書くのかは「運用」次第ということになろう。
できれば国会審議などで、「どのような情報まで書くつもりなのか」は詰めておいた方が良いと思う。


2 内閣総理大臣による措置要求(行政機関情報公開法関係《新設》)
(1)行政機関の長は、開示決定等に対する不服申立てがあった場合において、情報公開・個人情報保護審査会に諮問した事案について、情報公開・個人情報保護審査会の答申後、開示請求に係る行政文書の全部又は一部を開示しない旨の裁決又は決定をしようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣に協議して、その同意を得なければならない。
(2)内閣総理大臣は、特に必要があると認めるときは、当該行政機関の長に対し、行政機関情報公開法第7条に定める裁量的開示その他の必要な措置をとるように求めることができる。


これは、チームの議論でも意見が割れたところ。
主旨としては、現在の情報公開法第7条の「公益裁量開示」を実効性のあるものにするということ。いわゆる「政治主導」の一つの表れということになるかと思う。
現在は、「行政機関の長」に情報公開法上は「不開示」になる情報を公益性の観点から「開示」にする決定権があるので、当然、自分たちが「不開示」にしたものを大臣がひっくり返すというような事態はあまり起きなかった。
珍しいケースとしては、先日外務省で公開されたいわゆる「密約」関係の文書の開示が、大臣による「公益裁量開示」にあたるだろう。

この決定権を「内閣総理大臣」に置くことによって、高位の政治的な判断から「それは開示にしてOK」と決定できるということになる。これが(2)の部分。
これは情報公開請求の有無に拘わらず、開示命令を出せるという話。

(1)は、実際に情報公開請求をして「不開示」と決定が出た場合に、「公益裁量開示」の適用をどのような手続きでするのかという話。
最終案としては、「全面不開示」「部分開示」の決定があり、情報公開・個人情報保護審査会に「不服申立」が行われ、審査会の「答申」が出た後に、最終的に公開しないことを行政機関側が決めた場合、その決定に「内閣総理大臣の同意」が必要となった。
つまり、審査会で戦ってもまだ「不開示」だった場合、内閣総理大臣にある意味「泣きつく」ことが可能だということになるのだろう。

ただ、このあたりも、三木委員が述べているように、どうも手続き的にわかりにくいところがある。
例えば、審査会の答申後に、どのような手続きで内閣総理大臣に「泣きつく」ことが可能であるのかが全く見えない。
各行政機関がただ単に内閣総理大臣に「同意」を求めるだけであったら、基本的には審査会の答申に逆らっていない限り、自動的に「同意」という話になるだろう。
つまり、審査会の答申に行政機関が逆らった場合(これはほとんど起きない)ぐらいにしか、適用の可能性がないように思う。

具体的な部分は「施行令で」という話になりかねない部分なので、この点は国会の議論できちんと詰めてほしいと思う。


3 開示決定等の期限(行政機関情報公開法第10条第1項、独立行政法人等情報公開法第10条第1項関係)
 開示決定等は、開示請求があった日から、行政機関の休日(行政機関の休日に関する法律(昭和63年法律第91号)第1条第1項各号に定める日をいう。以下同じ。)を除き14日以内にしなければならない。


今まで開示までの期日が30日だったのを、休日を除いた14日以内にするもの。
速度が上がるのは歓迎。
そのための予算・人員措置を取らないと、行政機関側が大変になるので、そのあたりは政治の側でフォローを入れてほしいところ。

ただ、第10条第2号の「延長」の部分は+30日以内のままに据え置かれた。この点は、特例延長(次項で記載)も含めて、大臣案から後退した数少ない部分。
各行政機関がこぞって反対した部分であり、実際に大量請求があった場合にはやむを得ないという流れにチームの中でもなっていたのでやむを得ない。
それでも、14日+30日なので、前の30+30よりは短くなっている。


4 みなし規定(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)及び開示決定等の期限の特例(行政機関情報公開法第11条、独立行政法人等情報公開法第11条関係)
(1)開示請求者は、行政機関の長・独立行政法人等が法定の期間内に開示決定等をしないときは、行政機関の長・独立行政法人等が当該行政文書・法人文書について不開示決定をしたものとみなすことができる。
(2)開示決定等の期限の特例が適用された場合において、行政機関の長・独立行政法人等が、開示請求に係る行政文書・法人文書のうち相当の部分につき開示決定等をした日から一定の期限を経過したときも、(1)と同様とする。


これは、行政機関側が「この日までに出しますよ」と通知した期限を破った場合、「全て不開示にされた」とみなして訴訟などの対応が取れるということである。
また、(2)の部分は、情報公開法第11条第2項の規程を使った場合(「相当の部分」を60日以内に開示すれば、それ以外の部分は60日を超える期日を設定できるという規程)、「相当の部分」を決定した日から一定の期限が経過した後に、同様の「全て不開示」とみなすことができるという規程。

この規程は、私がこのブログを作るきっかけになった宮内庁との裁判をやったときに問題になったところである。
私の事例は、特例期限を宮内庁が破ってから3年以上経過した文書がいつまでも開示されないので、行政事件訴訟法の「不作為」(仕事をさぼっているんじゃないか?)の規程を使って裁判を起こした。
ただ、このような訴訟の方法だと、判決が出る前に相手が頑張って開示してしまえば、裁判自体の意味が消滅して続けられなくなる。
また、この場合、無理矢理相手が「不開示部分」を多くした状態で開示されてきた場合でも、裁判は終わってしまう。
つまり、裁判を起こしても、結局相手を「急がせる」だけの効果しかない。

これが、「みなし不開示規程」を入れると、「不作為」で裁判をするのではなく、「不開示」に対する「開示要求」として裁判を起こせることになる。
そうすると、その後、文書開示が進んだとしても、裁判を起こした当時に行政機関が「不開示」を決定したのだと「みなす」ことができるので、そのまま「不開示」の可否について裁判を続けることが可能となるのだ。
もしこの規程があったならば、私の裁判もかなり様相が変わったことだろうと思う。

ただ、この規程はあくまでも「みなしても良いよ」という規程なので、行政機関側が期日に間に合わなかったからといっても「違法」になるわけではない。
理由に納得して「待ちましょう」となればそのまま待っても良い。
ただ、裁判や審査会で「戦いたい人はどうぞ」という話である。

この項目についても、各行政機関から相当の反発が来ていた。
しかし、延長期限の部分だけは後退したが、本質的な部分では大臣案は後退しなかった。


5 手数料(行政機関情報公開法第16条、独立行政法人等情報公開法第17条関係)
(1)開示請求に係る手数料を原則として廃止するとともに、開示の実施に係る手数料を引き下げる。
(2)(1)の開示請求手数料及び開示実施手数料の廃止・引下げを実施することに伴い、適正な開示請求及び開示情報の適正利用の観点を明記する。


手数料はこれまで請求に1件300円(ウェブでの請求だと200円)がかかっていた。
また、開示に関する手数料も、閲覧の場合100枚ごとに100円、複写は1枚10円かかっていた。
この請求を無料にし、開示に関する手数料も値下げをするというのが(1)の部分。

また(2)の「適正な」という部分は、細かい説明を見ると次のようになる。

・商業的開示請求に対しては探索・審査等にかかる手数料を徴収。
・開示手数料の減免規程は、これまで経済的困難の方のみの適用であったが、これを学術的利用、報道機関の代表による利用、非商業目的の調査研究などへ拡大する。
・開示決定をしたのに、それを全く利用しなかった人(開示方法を申し出る書類を返送しなかった人)には、開示に係る手数料を取る。(不真面目な請求に対しては経費を取る。)
・大量請求として特例延長を適用する場合、一定の実施手数料を予納する。


結構、重要なことが書かれている。

まず気になるのは、「目的」をどのように判断するかということだ。
これまで、情報公開請求には「理由」は問われなかった。
これは、目的がはっきりした場合、それに合わせて開示情報を操作する可能性があったからだ(例えば不正を追及しようとする請求であった場合など)。
だが、商業利用にはお金を請求し、学術利用などには減免するということになると、実質的にはある程度「目的」を聞かざるをえなくなるように思う。
特に、「商業利用」の場合、馬鹿正直に企業名を名乗ってこればわかるが、社員個人が請求してきた場合などに、それをどのように見破るのか。
このあたりをどうするかを明確にしておかないと、実際に各行政機関の窓口で混乱を生じる可能性が高い。

請求の際に「目的を聞く」ことは上記の通り、絶対にやるべきではないと思うので、その点はどのようにするのかを国会の議論できちんと詰めてほしい。

また、開示手数料の無料化については、各行政機関から反対の声が大きかった。
つまり、この手数料が「不真面目な大量請求」を食い止める効果があったというのである。
ただ、本当に300円という金額が食い止める効果があったのかは、正直疑問であり、この点についてはあまり説得力がないなあという感じがした。

少なくとも、情報公開にかかる予算は「民主主義にとって不可欠なコスト」だと思う。
これは、濫用請求のようなものも含めての「コスト」だと思うのだ(リスクも含めたという意味)。
もちろん、いきなり1万件の請求をしてきたというような気合いの入った嫌がらせをするような人が出てくる可能性はあるが、そういう例外的な人には「例外的な対応」をすればよいのであって、その可能性をもとに、一般の誠意ある請求者を妨げるべきではないと思う。

今回の規程はどのように運用するのかが不安な点はある。
それに、最終会合で三木委員が釘を刺していたが、この手数料の部分は「施行令」で決まるところになる。そのため、国会に「法律改正案」としては出てこない。
なので、国会できちんと政府から説明をさせることが必要不可欠。いったいいくらになるのかはきちんと詰めてほしい。これは野党側にも期待したいところ。

私としては、「学術目的利用」が減免されるのが結構大きい。
昔、まだコピーが1枚20円だった時は、宮内庁に通い詰めて手で写していたりしたので・・・。
院生はお金がないのだ・・・


第4 審査会への諮問等に関する改正(行政機関情報公開法第18条、独立行政法人等情報公開法第18条関係)
 開示決定等について不服申立てがあった日から、情報公開・個人情報保護審査会に対する諮問がなされるまでの一定の期限を設け、当該期限を超過した事案については、諮問までに要した期間、その理由等について公表する等の措置を定める。
 なお、政府は、情報公開・個人情報保護審査会を裁決機関とすることの可否につき、行政不服審査制度・行政事件訴訟制度を含む行政救済システムの全体像の見直しと同時に、引き続き検討する。


前半部分は、不服申立手続にまつわる話。先に制度の説明を。
現在の不開示に対する不服申立制度は、まず該当する行政機関に対して「不服申立」を行うことから始まる。
そして、それを受け取った行政機関は、その申立への反論を作成した上で、審査会に「諮問」することになっている。

だが、この「諮問」までの期日に関する規程が情報公開法には存在しない。そのため、せっかく不服申立を行ったのに、「諮問」されるまでに長期間かかる事例がかなりの数存在していた。
私も最長で11ヶ月という事例を経験したことがある。
これでは、例えば、差し迫った情報を請求している人にとって、これだけ諮問を長引かせられたら、そもそも申立を行った意味すら無くなる可能性がある。

そのため、この「諮問」までの日数に「期限」を付けることが組み込まれることになった。
その「期限」は、「情報公開に関する公務員の氏名・不服申立て事案の事務処理に関する取扱方針」(平成17年8月3日)の規程に沿ったものになるだろう。
これによれば、通常は30日、長くても90日程度と記載されているので、おそらくこのあたりの期限が書かれることになると思われる。

ただ、この「取扱方針」には、審査会の答申後に各行政機関側が最終決定をするまでの期日(原則30、最長60日)も書いてあるのだが、こちらは今回の「とりまとめ」に組み込まれなかったのは残念。
第3の2(1)あたりと混ぜて国会で議論してくれるとうれしいのだが。

後半部分は、審査会を「裁決機関」にするかどうかの話。
今のところはあくまでも審査会は「答申」を出すだけで、最終的にその答申に従うかは各行政機関に任されている。
それを、審査会の「裁決」を最終決定のものとするということである。
これはどうやら、他の法律との兼ね合いもあり(裁判所での行政訴訟との関係など)、持ち越しになった。

以下、下編に続く。
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