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東アジア近代史学会で話します [2009年公文書管理法問題]

東アジア近代史学会の大会で報告をすることになりました。
東アジア近代史学会は、大会でほぼ毎年「歴史資料セッション」を設けていて、歴史研究者だけでなくアーカイブズ関係者やその他の学会の方達を呼んでシンポジウムを開いています。

今回は、「歴史研究の立場から公文書を歴史史料として利活用してきた立場から見た法制度やその運用上の問題点は何か?」という点から話してくれとの依頼を受けましたので引き受けました。
後藤氏など行政法の方がおられるので、今回は法律解釈の話をメインにしなくて済みそうです。その分、色々と今までの経験知から不満に思っていることなどをきちんと話してこようかなと思っています。

第14回東アジア近代史学会研究大会

・日 時:6月21日(日)13時30分~17時30分
・場 所:東京大学駒場キャンパス18号館1階ホール
・大会参加費:会員1000円、非会員1500円

歴史資料セッション
「日本における公文書の管理と公開の現状と問題点―法制度とその運用を中心に―」


司会:井口和起 氏(京都府立総合資料館長)

公文書の管理と公開―法制化過程での論点―
 後藤 仁 氏(神奈川大学法学部)

公文書の管理と法―情報公開・個人情報保護・公文書館制度との関係で―
 早川和宏 氏(大宮法科大学院大学)

地方自治体公文書館における公文書の保存・公開―法制度から見た現状と課題―
 岡田昭二 氏(群馬県立文書館補佐)

公文書の公開の現状と問題点―利用者の立場からの問題提起―
 瀬畑 源 氏(一橋大学大学院博士後期課程)

韓国における国家記録資料の保存・公開・利用の現状と問題点―韓国国家記録院の歩みが語っているもの―
 金 慶南 氏(韓国国家記録院研究員)

(一部の報告テーマは仮題の場合があります)

追記 6/14
事務局の話によると、加藤陽子氏(東京大学、公文書の在り方等に関する有識者会議委員)がコメンテーターとして登壇するとのことです。

学会自体は土日にまたがってありますので、興味のある方は下記のアドレスを参考にしてください。歴史資料セッションの趣旨文も掲載されています。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jameah/14taikai.htm

公文書管理法審議第2回(衆院内閣委) [2009年公文書管理法問題]

第1回→こちら

本日5月29日、衆議院内閣委員会で公文書管理法案の第2回審議が行われました。また衆議院TVで議論を全て見ました。
今回は参考人質疑です。呼ばれた人は以下の通り。

尾崎護氏(公文書管理の在り方等に関する有識者会議座長)
三宅弘氏(弁護士・獨協大学法科大学院特任教授)
福井秀夫氏(政策研究大学院大学教授 日本計画行政学会常務理事兼行政手続研究専門部会長)
菊池光興氏(独立行政法人国立公文書館長)

メンツを見ると、三宅氏と福井氏は先日の公文書市民ネットの第1回フォーラムで私の横に並んで話をされていた人なので、色々と感慨深い。三宅氏が私が報告で話していたことを少し使われていたので、ちょっと嬉しかった。
残りの尾崎氏と菊池氏は呼ばれて当然という人。今回の法案を作る際に関わった当事者である。

おおよその話を聞いていると、尾崎氏と菊池氏が政府案に沿った答えをしており、三宅氏と福井氏がもっと改革を迫る内容であった。

尾崎氏と菊池氏の話で最も強調されていた点は、「結局この制度の実効性を高めるには、現場の官僚達の意識改革が必要だ」ということである。
これは至極もっともなことである。現場の一人一人の仕事まで監視できるわけがないわけだから、彼らが実際に意思形成がわかる文書をきちんと作成させなければ結局実効性を持たない。
そのための研修制度の充実化や、この制度を担える人材の育成は急務であると思われる。

三宅氏と福井氏の意見は、お二方の所属する団体の意見書を元にした話であった。
詳しくは
三宅氏・・・日弁連の意見書
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/090424.html
福井氏・・・日本計画行政学会の意見書
http://japa.agbi.tsukuba.ac.jp/pdf/ikensyo_081016.pdf
を見てください。

この中で最も強く賛同したいのは、三宅氏が述べていた「30年経ったら基本的に公文書館に移管して開示すべき」という点である。
これは、公文書館の国際組織であるICA(国際公文書館会議)が1968年に決議した「マドリッド原則」と呼ばれるものであり、30年経った公文書は基本的に開示すべきと言うルールである。
これは多くの国の公文書館で適用されている原則でもあり、今回の有識者会議の最終報告でもこの30年原則は記載されていた(11頁)。→詳しくは私の以前のブログの記事

そして、現在の情報公開法では、文書の保存年限を30年と決めたにもかかわらず、保存期間の延長を行うことで事実上の永久保存文書になっているものが各省庁に散見される。
別に情報公開で見れば良いではないかと思う人もいるかもしれないが、情報公開法では「現用」と「非現用」で不開示にできる情報の基準が大きく異なっているのだ。また国立公文書館では「時の経過」を考慮した開示を現在でも行っているので、移管されれば不開示になる部分が大幅に減るのである。

30年原則を法文に書くのは難しいとは思うが、基本的に30年経ったら公文書館に移管するというレコードスケジュールの設定をきちんと行えるような政令が必要となるだろう。

その後の議員との質疑で気になった点は、前回の審議でも話題になった第1条に「国民の共有財産」という言葉を入れるかどうかである。
有識者会議の最終報告では入っていた文面が、法文でなくなったことについて尾崎氏が度重なる質問を受けていた。
それに対して尾崎氏は、法律用語に置き換えればそのままは使えないが、意図は入っているのではないかという答弁だった。立場的にも法案を批判できないと思われるので、かなり苦しい答え方だったかなと思う。

あとは、やはり「行政文書の定義」は論点が分かれた。
尾崎氏や菊池氏は個人的なメモは当然ありうるので、組織として作られたものを行政文書と考えるべきという官僚達と同じ立場からの発言だったが、三宅氏や福井氏は個人のメモを含めるべき(特に福井氏は執務時間中に作ったものは全て行政文書と考えるべきと主張)としていた。
ただ、尾崎氏も菊池氏も結局は作る側の意識改革次第という言い方をしており、現状が良いとは思っていないことは確かだったと思われる。

ここについては、私はその官僚の意識改革のためにも、情報公開法と同じままの定義ではダメで、「意思決定過程」を作成保存するべきという文言はきちんと入れないとダメだと改めて感じている。

その逆にかなり主張が一致していたのは、「中間書庫の整備」という点である。
これについては4者ともその重要性を強く主張し、そのための予算措置などを求めるなど意見が一致していた。
前回の審議でも上川陽子元公文書管理担当大臣も強く主張していたが、どうもこの中間書庫の設置については付帯決議などを付けて早急な整備を求めるようなことは可能なのかなという感じがした。

議事録公開
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000217120090529013.htm

次回の審議はおそらく6月3日ではと思われます。またその際に更新します。
→どうやら3日には無いようです。水金開催のはずだから次は5日でしょうか。
→5日にも無いようです。逢坂議員のメルマガを読んでいると、現在内閣委員会の理事懇談会などで公式の修正協議が行われているそうです。週末までには完成→来週水曜修正案提出という流れでしょうか。

公文書管理法審議第1回(衆院内閣委) [2009年公文書管理法問題]

本日5月27日、衆議院内閣委員会で公文書管理法案が審議入りした。
そこで、衆議院TVにて審議を全て見た。
4時間も国会中継を見続けたのは初めてだ・・・

今日の内閣委で質問に立ったのは、西村智奈美議員(民主)、逢坂誠二議員(民主)、吉井英勝議員(共産)、重野安正議員(社民)、上川陽子議員(自民)の5名。上川議員を除く4名は、先日の公文書市民ネットの第2回フォーラムに参加してくださった人である。質問も市民ネットの主張をかなり取り入れたものをしてくださったように思う。

さて、審議の全てを紹介するのは無理なので、気になったところだけピックアップします。

・第1条の「目的」に関わる問題
多くの議員が、有識者会議の最終報告では入っていた「国民の共有財産」という文言が法案に入らなかったことについて発言をしていた。
これをなぜ入れなければという点については、逢坂議員の主張がわかりやすい。

現在の第1条の文言は、「国民への説明責任」という点が前面に出ている。だが、公文書とは「国民の側が主体的に利活用できる」という点も重要である。つまり、国民の側に「知る権利」があるという主張でもある。
これに対する政府答弁は、「財産」という言葉は金銭的な権利のあるものに使われるため、そこに分割請求権が云々というもので、まあ要するに内閣法制局がその用語はダメだと言っているようだ。
ただ、他の言葉を使えばよいという意見にも難色を示し続けていたので、「知る権利」に関わるような文言は入れたくないということなんだろう。


・第2条行政文書の「定義」について
これも第1条と並んでもっとも問題になったテーマ。
色々な議員があの手この手でこの定義をどう拡大させるかという点についての質疑を行った。

この中で一番興味深かったのは、西村議員と増原義剛内閣府副大臣(自民)とのやりとり。
増原副大臣は大蔵官僚を26年間やった筋金入りの官僚である。

西村議員が行政文書の定義を広げるべきだと主張したのに対し、増原副大臣は定義が難しいという話の例として大蔵時代の話を混ぜた。

大蔵省の課長時代に、予算を作成するときに下から文書が上がってきて、それに赤を入れ、さらに上に回して赤を入れてもらった。これもどこまでが行政文書か判断がつかないと。

いやいやいや。
それを「意思形成過程」って言うんじゃないんかい!

そういうのを全部残してくれって言うのが、「意思形成過程を残せ」という意味だよ!

その次に、西村議員が2人以上で回覧した文書は個人的なメモもすべて行政文書とすべきと聞いたところ、増原副大臣は「外交や各省折衝、議員からの調査依頼とか色々と個人でメモは作るのでどこまで行政文書だか。意思形成に関わるならメモも行政文書に入ると思うが」といった答弁を返した。
これは西村議員が「それは全て行政文書だと思います」と答えたとおり。
それを「私文書」と今まで称しているから、全く意思形成過程がわからないということが問題となってるんだと。

この増原副大臣の答弁を見ていると、いわゆる官僚が考えている「意思形成過程」というものが、「最終決定がされた時の文書」という意識しかないということがつくづくわかる。
このような認識で「意思形成過程」と称するものが残されたら、結局この法律は意味をなさなくなる。
増原副大臣が自分の経験を披瀝しながら話をしてくれたことで、かえって官僚の考え方の問題性を浮き彫りにさせてくれたと思う。その意味では「良い」返答だったように思う。


・第4条「作成義務」、第5条「保存」について
逢坂議員や吉井議員が、具体的に行政文書が「メモ」と称して作られなかった(作っても「私文書」として廃棄された)事例を紹介して、このようなことが断じてあってはならないと集中的に追及していた。
これに対し、内閣府の山崎日出男審議官は、今後は統一的な管理ルールが政令で作成され(第10条)、それに従って各省庁の文書管理規則ができるためそういうことは起きないと答弁をしていた。
また最も強調されていたのが、第5条第5項で「レコードスケジュール」がきちんと各文書ごとに決められるから大丈夫だという点だ。

この「政令に縛られる各省庁」という答弁は、他の所でも何度も繰り返されていたのが印象的だった。つまり、内閣府で作る政令に基づいて行われるわけだから、作成や廃棄も各省庁が恣意的にできるものではないと言うのだ。
これに対し、政令の具体的な内容についていくら質問しても、官僚側はまともに答えなかったので、内閣府が官僚寄りの政令を作ったらそれでお終いになるという印象しか持てなかった。

また、レコードスケジュールについてであるが、正直いまの内閣府や国立公文書館の体制で果たしてどこまで有効なものを作ることができるのか極めて疑問がある。
あまりにもレコードスケジュールがあるから大丈夫という考え方は安易なように思う。

吉井議員が特に言っていたことで全く同感なのだが、要するにすぐに出せない文書はある。でも証拠としてきちんと作成しておいて、30年とか経ってきちんと公開することが重要なのだ。
見せたくないからそもそも「作らない」という考え方は、説明責任とはほど遠い。これを「作らせる」ようにするには、相当の意識改革が必要だと思う。
内閣府も官僚の一部である以上、やはりもう少し法文に作成範囲の拡大や廃棄権限に他の機関を噛ませるようなものを入れないと話にならないなという感じはした。


・公文書管理担当機関について
これについてはちょっと引っかかる点があった。
西村議員が公文書管理担当機関は司令塔たるべきもので、現在の体制では全然規模が小さすぎといった質問をしたときに、増原副大臣が、「担当機関は内閣府、国立公文書館、公文書管理委員会だけでなく、各省庁も含めて政府全体だ」みたいなことを口走っていたのだ。

これに対し、事前に用意した質問だったのかわからないが、逢坂議員が質問の冒頭に「公文書管理担当機関」の定義を山崎審議官に聞いていた。
そこで、「内閣府、国立公文書館、公文書管理委員会」までは言ったのだが、それを中核としてうんぬんみたいに、語尾がかなりあいまいな感じになっていたのだ。

答弁の食い違いや私の印象違いであればよいのだが、各省庁の文書管理課を「公文書管理担当機関」に入れてないだろうな?という疑いが出てきた。本当に大丈夫かなと、やや気にならなくはなかった。

ただ、いずれにしろ、民主党もあまり強く公文書管理庁を作れとは言わない感じだった。今回の法律の実効性の面で、これは痛い話だと思わざるをえない。結局人がいなければ、いかに良い法律を作っても機能しないというのに・・・


・第6条「中間書庫」について
最後に、上川議員(元公文書管理担当大臣)の質問で気になった点。

与党の質問だから波風立つようなことは言わないのだが、上川議員が結構しつこく集中管理システムとしての「中間書庫」の導入を強調していたのが目に付いた。
山崎審議官が「お金がかかるので、こういった腰の引けた法文(第6条)になった」と率直に語っていたのに対しても、こういったことは本来行革につながって、お金を掛けた以上の利益が返ってくると強く主張していたのは印象的であった。

与党としても、金と人がないとこの制度はまわらないということは重々わかっているようである。
でも、「あんたたち与党だろう!お金をぶんどって来いよ!」とかちょっと言いたいんだが・・・。族議員が公文書館にはいないからなあ・・・

とりあえず以上です。
色々気になる人は、審議のアーカイブが衆議院TVにあるから見てみたらどうでしょうか。
また数日したら議事録もネットで公開されるのではと思う。

議事録公開
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000217120090527012.htm

次回は29日の予定。何とか時間を見つけて、29日内でのブログ更新を目指します。
第2回→こちら

追記 6/2
市民ネットでも一緒に活動している、情報公開クリアリングハウスの三木由希子さんが、上川元大臣の講演を聞いた話をブログに書かれている。
http://johokokai.exblog.jp/11661272/
やはり上川氏は相当に中間書庫にはこだわっている様子がうかがえる。
また、三木さんも注目しておられたが、「行政文書廃棄の凍結の件」についての話は私も初耳だった。このあたりの話は是非とも基準を知りたいところだ。

地方公文書館の現状と課題 [2009年公文書管理法問題]

予定通り、5月22日に公文書管理法が衆院内閣委員会で審議入りしました。
内閣委員会は水金開催なので、その時の議論はできるかぎり早くブログで紹介したいとと思います。

ですが今回は地方公文書館の話を。

先日の第2回公文書管理フォーラムで、栃木県芳賀町総合情報館の富田健司さんに地方公文書館のことについて話してもらった。私も感想の中で少し触れさせてもらった。
その富田さんから、当日話した内容についてまとめたPDFファイルをいただいたので、公文書市民ネットのブログで公開してます。

この内容については、地方公文書館に関係のある人はよくご存じのことではあるけれども、一般的にはあまり知られていない。
そこで概略をここで紹介したいと思う。

まず富田さんは、今回の公文書管理法が成立した場合、公文書管理に関する問題が全国各地で噴出するだろうと指摘している。
なぜなら、公文書管理法案の第32条に「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」とあるためである。

現在、公文書館を有する地方自治体は53(都道府県30、政令指定都市7、市区町村16)しかない。これは1800ある自治体の約3%にすぎない。
そして、箱モノとしての公文書館がない自治体のうち約60%が、保存年限に従って文書が廃棄されているようである。

つまり、地方自治体における公文書の保存状態は、国のレベルよりもさらに厳しい状況に立たされている。
また、公文書館があったとしても、プレゼンスが低いために、予算人員をカットされたりして、機能を維持することですら不可能になっているところも存在している。
今回の法案が成立した場合、それまでなあなあでやり過ごしてきたこの公文書管理問題に地方自治体は何らかの対応をせざるを得なくなることは疑いない。

富田さんはこの課題の解決のために、大きく分けて二つの点を主張している。

一つめは、「お金」である。
自治体内部で現在使用されている現用文書の管理をすることも必要だし、未整理の非現用文書も大量に放置されている。
これを整理したり、管理システムをくみ上げる必要がある。
また、最終的には文書の長期保存ができる設備をもった公文書館が必要となる。
これらのためには、大量の予算が必要になるのだ。

二つめは、「人材育成」についてである。
お金がいくらあっても、公文書管理の専門家がいなければ、有効に使うことができない。そのためには、専門的な知識を有する人材を大量養成する必要がある。

そして、これらを行うためには「国による支援」が不可欠である。
地方自治体が個別に上記の二つを行うことは予算的に困難が大きい。
そのために、国が地方に予算措置をきちんと行うことが重要である。

そして、公文書管理政策を統轄する国側の窓口も必要となる。
各地方自治体を指導し、この政策が現場レベルに浸透するような司令塔の存在は不可欠である。
また人材の育成のための研修制度や資格制度なども整備することも必要となるだろう。
よって、内閣府の公文書管理担当機関と国立公文書館の拡充は必ず行われなければならない。

最後に富田さんは次のようなことを主張している。

「国家として公文書管理及び公文書館政策についてのグランドデザインを考えるならば、国だけが充実しても全体の底上げにはなりません。やはり、地方公文書館をはじめとする国以外の記録管理とアーカイブズの在りようにもウイングを拡げた国の政策展開を、この法案議論を契機に強く希望します。」

私もこの富田さんの意見には大いに賛同する。
今回の法案はおそらく成立するだろう。でも、それはあくまでも「うつわ」に過ぎない。そこにどう「魂」を入れて実体化していくかが問われることになる。

富田さんの話は、法案成立がまだスタートラインだということを改めて感じさせてくれる。
「金と人」がなければ、この制度は有名無実になってしまう。是非ともそこは忘れてはならないと思う。

公文書管理法修正協議のゆくえ [2009年公文書管理法問題]

本日の朝日新聞及び産経新聞の記事。引用します。

公文書法、今国会成立へ 首相の権限強化で自・民合意
2009年5月21日3時2分 朝日新聞

 公文書の保存・公開のルールを定める公文書管理法案が今国会で成立する見通しとなった。保存期間が過ぎた公文書を廃棄するか国立公文書館に移管して保存を続けるかを誰が判断するかで対立していた自民、民主両党が20日、首相権限を強化する修正を行うことで大筋合意したためだ。

 政府提出の同法案は、これまで各省の判断に委ねられてきた公文書の管理について、省庁横断の統一ルールを定めるもの。近年、薬害肝炎患者リストの放置やインド洋で給油活動を行う補給艦の航泊日誌の破棄など、ずさんな公文書管理が相次いで問題となったが、ルールの明確化で政策決定過程の透明度が増すことなどが期待されている。

 文書廃棄の判断は、政府案では「行政機関の長」が行うとされた。役所が不都合な情報を廃棄する恐れもあり、民主党は「首相の同意」を義務づけるように求めていた。修正協議では、自民党が首相の権限を強化することで折り合い、具体案は今後、詰めることになった。

 公文書の範囲をめぐっては、民主党が「職員の個人的なメモ」も含めるよう求めたが、法案に見直し条項を盛り込むことで合意する方向。民主党が求めた公文書管理庁の設置は見送られる見通しだ。

 同法案は22日にも衆院内閣委員会で審議入りする。両党は他党にも協力を呼びかけ、全会一致での早期成立を目指す。(伊東和貴)


公文書管理法案 自・民、修正で合意
5月21日7時57分配信 産経新聞

 公文書の管理・保管のあり方を定める公文書管理法案をめぐる自民、民主両党の修正方針が20日、明らかになった。「公文書管理の最低限の枠組みは揺るぎのないよう骨太のフレームを構築した上で新たな制度を発足させ、段階的な見直しを行う」と規定、民主側が求めた法施行後5年後の見直し規定などを盛り込んだ。法案は22日に衆院内閣委員会で審議入りし、修正された上で今国会中に成立する可能性が高まった。

 両党がまとめた修正方針は、法案の目的に公文書が「国民共有の知的資源」であることを明記し、公文書を「主権者である国民が主体的に利用すべきもの」と位置付けた。作成、保管の対象となる「行政文書」は、行政の意思形成過程が明確になるようなもので、「参考資料、打ち合わせメモ、覚書なども極力保存」することとした。

 また、首相を「公文書管理に関する政府全体の司令塔」と位置づけ、首相に実地調査や勧告の権限に加え、「文書の移管・廃棄に関する権限」も強化すべきだとした。

 一方、民主党が求めていた「公文書管理庁の設置」は見送られ、公文書管理に関する施策を総合的、一体的に推進するための公文書管理担当機関のあり方を、法施行後に検討すべき事項として盛り込んだ。国会や裁判所の文書の管理も今後の検討課題に入れた。

 自民、民主両党は他党に基本方針を説明して修正を呼びかけ、早ければ27日の衆院内閣委で修正案を採決する方針だ。

(引用終)

それで、どういうことなのか、関係者に確認を取ったところ、「修正協議が合意」という点は誤報であるとのことです。
どうやらまだ修正協議中なのに、合意できたようなニュアンスの発言を自民側がしてしまい、それで記事になってしまったようです。自民側から民主側に謝罪があったとのこと。
どうやら、正式協議は来週明けで、そこまでに修正案を作り、調整を行うということだそうです。

今のところの国会の審議日程は、

22日 法案読み上げ
27日 政府案質疑
29日 参考人質疑
6月3日 修正案提出とそれに対する質疑の後、採決


と予定されているようです。
どうやら、急速に展開していることは間違いないようです。

ただ、朝日や産経で漏れてきた記事を見ると、どこまで修正がなされているのかやや不安が残ります。
朝日と産経でややニュアンスが違うのだが、「文書廃棄については首相の同意が必要となること」は入るようです。
ただ、行政文書の定義の拡大は、解釈の中だけで何とかする(条文を変えない?)ように読めます。
また、公文書管理庁は設置されないことは確定みたいなので、公文書管理の執行機関が弱いままで法が施行される可能性が高まったかもしれません。

いずれにしろ、修正協議は公開されるようなので、ゆくえを見守りたいと思います。

第2回公文書管理フォーラムの感想 [2009年公文書管理法問題]

本日、衆議院議員会館で公文書市民ネットの第2回フォーラムが行われた。
基本的には、各党の議員からの法案に対する取り組みという話がメインであった。
自民党からの出席者がいなかったことが残念であったが、公明党の山口那津男議員、民主党の西村智奈美議員、社民党の重野安正議員、共産党の吉井英勝議員などがスピーカとして話してくださった。
(参加者には、川田龍平議員、福田昭夫議員、福島瑞穂議員、逢坂誠二議員が来られていた。福田前首相の秘書の方も前回と同様に来られていた。)

基本的に各党共にこの法案は重要であり、修正に積極的に関わっていくという感触であった。
是非とも、よりよい法案を作ってほしいと思う。

ただ、最後に「こんな法案ならできない方がマシだ」という意見がさまざまな人から出て、そのまま散会したことについては、そんなことは思っていない関係者の立場として一言述べておきたい。

今回の法案が原案通り可決された場合、もちろんそれは非常に問題が大きいことは私も理解している。
特に、「合法的に各行政機関が文書を廃棄できる」ことになってしまうので、その点については「できない方がマシ」とは言える。

だが、「こんな法案ならできない方がマシだ」という意見が、「きちんとした」「完璧な」法案を作るために、今回は修正もせずに廃案に追い込み、根本からやり直せという主張だったのであれば、この点には全く首肯できない。
それは、現在の最悪な状況を維持することに手を貸すということになるのだ。
そうなって一番喜ぶのは誰か。官僚達であるに外ならない。
民主党に政権が代わればというが、それも確実ではないし、さらに実際に政権を取ったときに果たしてまともな法案を作るかなんて、誰も保証していない。

私は以前に、この法案は最低2項目が変われば、「絶対にできた方が良い」法律であると述べた。

1点目は、行政文書の範囲の拡大。
2点目は、公文書の移管廃棄権限を行政機関から公文書管理担当機関に移す。


この点については、今でも考え方は変わらない。
その後に得た知見から追加すると、その実行を可能にするために公文書管理庁を作ること&国立公文書館を特別な法人にすること。

この3点が最低限変われば、運用で変えられる部分も増えていくはずなのだ。だから、「このような法案ならできない方がマシ」というのは、私は絶対に言いたくないし、それを言うつもりもない。(もちろん「最低限」にすぎない。もっと改善された方が良いことは言うまでもない。)

それは、今回のフォーラムで話をしてくれた富田健司氏(栃木県芳賀町総合情報館)が話してくれたこととも重なってくる。
公文書館がある地方自治体は全体の3%でしかない。しかも、どこも予算も人も削られて四苦八苦している。
この法案はこういったアーカイブズの状況を変える追い風になるはずなのだ。
法案が先送りされれば、どんどんアーカイブズは弱っていく。早急に作らなければならない法律なのだ。

だから、私は「修正して成立させてほしい」と言い続ける。
不十分なものであっても、無いよりはあった方が絶対に良いのである。

是非とも、よりよい修正案を作ってほしいと切に願っている。

追記
上記のことに関連して、司会者をしていたまさのあつこさんがブログで似たような見解を書かれています。
そちらも御参考にしてください。→こちら

さらに追記
同じく市民ネットのメンバーである三木由希子さんもこの点につきコメントをしています。三木さんも現在の状況を放置する方が問題との認識を示しておられます。
そちらも参照してください。→こちら

公文書管理法案の修正協議本格化 [2009年公文書管理法問題]

5月8日の産経新聞の記事。引用します。

公文書管理法案の修正協議本格化 自民・民主

2009.5.8 19:31

 自民、民主両党は8日、公文書の管理・保管のあり方を定める政府提出の公文書管理法案の修正協議を本格化させ、「行政文書」の範囲を拡大させることで一致した。民主党が今国会での成立に前向きの姿勢を見せたことで、3月3日の国会提出以降たなざらしとなっていた法案は一気に成立の可能性が出てきた。

 民主党は4月、政府案に対し、法律の目的に「国民の知る権利」の保障を明記する▽行政文書の範囲を拡大する▽文書の管理基準を法律で定める▽保存期間を経た文書の廃棄時に首相の同意を義務付ける-などの修正点をまとめ、自民側に打診していた。

 法案は今月22日にも衆院内閣委員会で審議入りする予定で、自民党は審議入りまでに修正協議を終えたい考えだ。
(引用終)

すでに3日のブログでも紹介したように、すでに修正協議には入っているようだ。
この記事によれば22日の審議入り前の修正も目指されているとのこと。

明日、前の記事にも書いたとおり、公文書市民ネットの第2回フォーラムがあります。
民主党の公文書管理作業チーム事務局長の西村智奈美衆院議員を初めとして複数の議員が登壇予定です。
修正協議がどうなっているのかも含めて、色々と話があるかと思います。

興味がある方は是非ともご参加をお待ちしております。

公文書管理フォーラム第2回を行います。 [2009年公文書管理法問題]

私も関わっている公文書市民ネットで、下記のようなフォーラムを開きます。
各党の議員に公文書管理法案への対応を話してもらうという予定でおります。
関心のある方は是非ご参加ください。


第2回 公文書管理フォーラムを以下のように開催いたします。

□テーマ(仮):市民のための公文書管理 -国会審議に向けて

 市民の知る権利を確保し、国の機関や地方公共団体等の透明性を実現するためには、情報公開法が機能する上での前提となる公文書管理法の制定が必要不可欠であると考えています。そして、国等から市民への説明責任を保障し、情報公開を実質的に促進することから、民主主義の基盤となるものです。年金記録の紛失やC型肝炎感染被害者リストの放置、海上自衛艦航泊日誌の廃棄など公文書の杜撰な管理実態を踏まえ、政府は「公文書管理法案」を3月3日に閣議決定し、国会に提出しました。
 まもなく、衆参内閣委員会での審議がなされる予定ですが、その前に今一度実際に機能する制度に向けて、その課題等を整理・共有化したく、本フォーラムを開催します。
 ぜひ多くの方々にご参加いただければと思います。


□日 時:5月14日(木)12:30~14:00

□会 場:衆議院第2議員会館第1会議室

□プログラム:①政府案の課題整理

       ②各党(・懇談会)等の主張

       ③参加者からの意見


□参加費:無料

□主 催:市民のための公文書管理法の制定を求めるネットワーク(公文書市民ネット)


□連絡・申込先:情報公開クリアリングハウス(担当:三木)
メール kobunsyo_net@yahoo.co.jp
〒160-0005 東京都新宿区愛住町3 貴雲閣ビル108 
TEL:03-5269-1846 FAX:03-5269-0944
上記不在の場合は、TEL:03-5226-8843
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公文書管理法案修正協議へ [2009年公文書管理法問題]

昨日の占領戦後史研究会の感想は、まだうまくまとまらないので次回以降に。

それよりも、昨日(2009年5月2日)『朝日新聞』の朝刊に「公文書法案修正協議へ 連休明けにも」という記事が掲載されています。
ネットには上がっていないようなので、引用はできませんが、この法案についての民主党側の対応について書かれていますので、興味がある方は是非ご覧ください。

似たような記事が『北海道新聞』に載っていますので、そちらを引用しておきます。

公文書法案、修正協議へ 対象、廃棄手続き焦点
(05/03 10:40)

 国の文書の保存・管理の統一ルールを定めた公文書管理法案が五月中旬にも衆院で審議入りする。民主党は各省庁の職員が作成したメモなども公文書とする修正案をまとめており、保存対象とする文書の範囲や廃棄手続きなどが修正協議の焦点となる。

 同法案は消えた年金記録問題など、ずさんな文書管理の反省を踏まえたもの。以前から公文書保存の問題に熱心だった福田康夫前首相が在任中に設置した有識者会議は、昨年十一月の最終報告で法制化を提言。福田氏は法案の国会提出から九日後の今年三月十二日、民主党の修正案を作っていた逢坂誠二衆院議員を議員会館の自室に招き、「少しでもいいものにしたい。何とか成立させられないだろうか」と与野党修正の上での今国会成立を促す熱の入れようだ。

 政府案は各省庁に保存状況の定期調査を義務づけ、改善が必要なら首相が勧告する。独立行政法人国立公文書館に立ち入り調査権を与えるなど保存の体制は強化した。また、情報公開の手段も強め、同館で保存する文書開示に不服があれば行政訴訟を起こせる。

 ただ、肝心の公文書の定義については「行政職員が職務上作り、組織が保有する」としており、職員の備忘録や会議録のメモなどは除かれる可能性が高い。民主党の修正案は個人的なメモでも政策決定過程にかかわる書類は公文書として保存対象とした。さらに、行政に不都合な文書が廃棄されない歯止め措置として、各省庁が廃棄を決める際は首相の同意を得るよう義務づけた。将来の検討課題として、文書管理を専門に行う公文書管理庁の新設も求めている。

 NPO法人情報公開クリアリングハウス(東京)の三木由希子理事は「公文書館に移管されるのは決裁文書が中心で、政策の決定過程が分かる文書が少ない。米国のように役所の文書保存の仕方から専門家がかかわる仕組みが必要だ」と与野党協議に注文を付ける。

(引用終)

朝日の記事も混ぜながら追記すると、民主党は4月22日のネクストキャビネットの閣議で、公文書管理法案については対案を作るのではなく、修正協議でより良いものを作るという方針に決定し、その方針を確認したようです。
その中には、上記したような内容が含まれており、多くは私も関わっている「公文書市民ネット」が主張していることとも重なっているようです。

朝日の記事では、自民党側も歩み寄る姿勢を見せているというようなので、少しでも良い方向に行ってくれればと思っています。

公文書市民ネット・10の提案(意見) [2009年公文書管理法問題]

この記事で200本目の記事となります。
100本目からはほとんど公文書管理問題一色のブログになりました。その間に、なぜか「眞子様萌え」が話題になってアクセス数が激増したりと、色々予測の付かないこともありました。
本当に多くの方に読まれていることが励みになっております。本当にどうもありがとうございます。

今後とも、このブログをよろしくお願いいたします。


さて、その200本目の記事ですが、私も参加している「市民のための公文書管理法制定を求めるネットワーク」で、今回の公文書管理法案に対する意見書をつくりましたので紹介したいと思います。

この意見書は、メンバーが顔を突き合わせて長い時間議論をして、お互いが一致できる点をまとめたものです。
私にとっては、この議論そのものが、自分とは全く異なる角度からの意見を聞ける機会となって、本当に勉強になりました。(その成果が先の「公文書管理法案を読む」補遺につながってます。)

下に本文とそれに補足した資料を引用しておきます。→公文書市民ネットのブログに本文あり
なおこれらは、公文書管理法案を審議する内閣委員会に所属する議員などに配布されています。

私としては、補足資料の中では、特に情報公開クリアリングハウスの意見書は是非とも読んでほしいと思います。非常に具体的にかつ的確に今法案の問題点を指摘した上で、代替案も示しています。

あと、私が自分のHPに上げている「公文書管理法案とコメント対照表」も内容を4月25日に更新しています。前とはいくつかの点で大きな書き換えを行っています。よろしければご覧ください。


公文書市民ネット・10の提案(意見)

1.公文書は「公共財」、市民には「知る権利」が(第1条関係)
 政府案では、“現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすること”を目的としている。そのことは評価できるが、公文書は“公共財”であり、市民にはそれを“知る権利”があることが示されていない。
 目的に、公文書は“公共財(国民の共有財産)”であり、市民にはそれを“知る権利”がある、との記述を明記することを求める。

2.公文書等を広義に捉える(第2条関係など)
 政府案では、①行政文書、②法人文書、③特定歴史公文書等を「公文書等」とし、「行政文書」とは“行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。”とされている。この定義は、行政機関情報公開法と同様の定めになっている。
 「公文書等」を広義に捉え、立法、司法、行政における政策立案・形成、業務等に関する資料、文書、記録等を位置づけることを求める。また、独立行政法人や特殊法人、認可法人など公的機関が民営化された場合においては、民営化される以前の政策立案・形成、業務等に関する資料、文書、記録等を位置づけることを求める。さらに、個人的なメモ(2人以上で回覧・閲覧したもの等)なども含めることも求める。

3.公文書管理機関を3条委員会に(第5章関係など)
 政府案では、内閣府に「公文書管理委員会」を置き政令事項などについて諮問しなければならない、としている。これは、内閣府設置法第37条の3項にもとづく機関(審議会と同等)であり、役割や権限について不十分であると思われる。
 公文書管理機関は、今後また将来の公文書管理のしくみを構築するうえで重要な組織であり、規則制定権等一定の権限のある“国家行政組織法第3条に基づく組織”とし、別の法律で定めることを求める。なお、その業務の遂行にあたっては、国立公文書館と連携協力(牽制も含む)のもとに進めることはいうまでもない。

4.作成義務は広範に(第4条関係など)
 政府案では、当該行政機関の“意思の決定”、“事務・事業の実績”について、文書を作成しなければならないものとしている。
 「作成義務」の範囲を、意思の決定、事務・事業の実績はもとより、事務・事業等における“意思の形成(政策形成)”などに関する資料、文書、記録等も含むよう求める。

5.取得義務の明記を
 政府案では、4のとおり作成の義務規定はあるが、「取得」についてはなんら示されていない。
 各機関の委託等による事業報告書等や、業務遂行において必要なものについては、その元となるデータ資料等についても取得の義務を法律で定めることを求める。

6.「政令事項」、「行政文書管理規則」へのチェック機能を(第4条から第10条関係など)
 政府案では、「第2章行政文書の管理」で、作成、保存、保存期間・延長、移管・廃棄などに関する内容(統一的なルールなど)については、公文書管理委員会に諮問し政令で定めることとしている。また、「行政文書管理規則」については、内閣総理大臣との協議、同意のもとに各行政機関の長が定める、こととしている。
 円滑な公文書の管理には統一的なルールが必要であり、その基本(基準)となる事項を法律で定め、それに基づき公文書管理機関の長が政令(規則)等で詳細な事項を定めるといった規定にすることを求める。また、各行政機関における「行政文書管理規則」については、(公文書管理機関の長の承認など)その作成過程で当該行政機関以外のチェック機能を定めることとするよう求める。

7.移管・廃棄権限を行政機関以外に(第5条、第8条関係など)
 政府案では、行政機関の長が、保存期間が満了した行政文書ファイル等を移管又は廃棄しなければならない、としている。
 移管・廃棄の決定に際しては、規則等で統一的なルールを定めることともに、公文書管理機関の長の承認のもとに行うなど、行政機関の長のみの権限ではないこととするよう求める。

8.保存期間の判断を行政機関以外に(第5条関係など)
 政府案では、行政機関の長が保存期間とその延長などを定めることとしている。
 保存期間や延長の決定については、規則等で統一的なルールを定めることともに、公文書管理機関の長の承認のもとに行うなど、行政機関の長のみの権限ではないこととするよう求める。

9.中間書庫の設置、機能を明確に(第6条関係など)
 政府案では、行政機関の長が適切な保存及び利用を確保するために“必要な場所”において、保存しなければならない、としており、「中間書庫」に関する明確な記述はなく、機能が不明確である。
 「中間書庫」に関する規定を明確にし、その設置、機能等を法文上明記することを求める。

10.国立公文書館を「特別の法人」に(第15条関係など)
 政府案では、特定歴史公文書等については「国立公文書館等」が管理、保存、利用等を行うこととしており、その役割は重要であるが、独立行政法人ではその任務を果たすことは困難ではないかと思われる。
 国立公文書館は、現在の独立行政法人ではなく、“特別の法律により設立された法人(特別の法人)”とし、その役割や権限などを明確にするよう求める。また、特定歴史公文書の利用制限や利用料なども明確にし、その策定段階での情報公開、市民参加等を明記することを求める。

11.その他の重要事項として(検討事項など)
○「法律の見直し」に関する規定を求める。
○立法、司法などにおける文書管理のしくみを検討し、立法上の措置を講じることを求める。
○「公文書館法 附則の2」を削除し、専門の職員の人材養成等に関する規定を求める。
○必要な罰則に関する規定を求める。


PDF版
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/koubunsyo/shiminnet.pdf

○関連団体による意見書等
特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス「公文書等の管理に関する法律案に関する意見書」
http://homepage3.nifty.com/johokokai/kobunsyo_ikensyo.pdf

川村一之(呼びかけ人)「政府の公文書管理法案に対する修正意見」
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/koubunsyo/kawamura.pdf

まさのあつこ(呼びかけ人)「公文書管理・政府法案への意見」
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/koubunsyo/masano.pdf

歴史学研究会「公文書等の管理に関する法律(公文書管理法) 政府案に対する要望書」
http://wwwsoc.nii.ac.jp/rekiken/appeals/appeal_090402.html

瀬畑 源(呼びかけ人)「公文書市民ネット・11の提案(意見)に関する補足意見」
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/koubunsyo/sebata.pdf
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