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地方公文書館の現状と課題 [2009年公文書管理法問題]

予定通り、5月22日に公文書管理法が衆院内閣委員会で審議入りしました。
内閣委員会は水金開催なので、その時の議論はできるかぎり早くブログで紹介したいとと思います。

ですが今回は地方公文書館の話を。

先日の第2回公文書管理フォーラムで、栃木県芳賀町総合情報館の富田健司さんに地方公文書館のことについて話してもらった。私も感想の中で少し触れさせてもらった。
その富田さんから、当日話した内容についてまとめたPDFファイルをいただいたので、公文書市民ネットのブログで公開してます。

この内容については、地方公文書館に関係のある人はよくご存じのことではあるけれども、一般的にはあまり知られていない。
そこで概略をここで紹介したいと思う。

まず富田さんは、今回の公文書管理法が成立した場合、公文書管理に関する問題が全国各地で噴出するだろうと指摘している。
なぜなら、公文書管理法案の第32条に「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」とあるためである。

現在、公文書館を有する地方自治体は53(都道府県30、政令指定都市7、市区町村16)しかない。これは1800ある自治体の約3%にすぎない。
そして、箱モノとしての公文書館がない自治体のうち約60%が、保存年限に従って文書が廃棄されているようである。

つまり、地方自治体における公文書の保存状態は、国のレベルよりもさらに厳しい状況に立たされている。
また、公文書館があったとしても、プレゼンスが低いために、予算人員をカットされたりして、機能を維持することですら不可能になっているところも存在している。
今回の法案が成立した場合、それまでなあなあでやり過ごしてきたこの公文書管理問題に地方自治体は何らかの対応をせざるを得なくなることは疑いない。

富田さんはこの課題の解決のために、大きく分けて二つの点を主張している。

一つめは、「お金」である。
自治体内部で現在使用されている現用文書の管理をすることも必要だし、未整理の非現用文書も大量に放置されている。
これを整理したり、管理システムをくみ上げる必要がある。
また、最終的には文書の長期保存ができる設備をもった公文書館が必要となる。
これらのためには、大量の予算が必要になるのだ。

二つめは、「人材育成」についてである。
お金がいくらあっても、公文書管理の専門家がいなければ、有効に使うことができない。そのためには、専門的な知識を有する人材を大量養成する必要がある。

そして、これらを行うためには「国による支援」が不可欠である。
地方自治体が個別に上記の二つを行うことは予算的に困難が大きい。
そのために、国が地方に予算措置をきちんと行うことが重要である。

そして、公文書管理政策を統轄する国側の窓口も必要となる。
各地方自治体を指導し、この政策が現場レベルに浸透するような司令塔の存在は不可欠である。
また人材の育成のための研修制度や資格制度なども整備することも必要となるだろう。
よって、内閣府の公文書管理担当機関と国立公文書館の拡充は必ず行われなければならない。

最後に富田さんは次のようなことを主張している。

「国家として公文書管理及び公文書館政策についてのグランドデザインを考えるならば、国だけが充実しても全体の底上げにはなりません。やはり、地方公文書館をはじめとする国以外の記録管理とアーカイブズの在りようにもウイングを拡げた国の政策展開を、この法案議論を契機に強く希望します。」

私もこの富田さんの意見には大いに賛同する。
今回の法案はおそらく成立するだろう。でも、それはあくまでも「うつわ」に過ぎない。そこにどう「魂」を入れて実体化していくかが問われることになる。

富田さんの話は、法案成立がまだスタートラインだということを改めて感じさせてくれる。
「金と人」がなければ、この制度は有名無実になってしまう。是非ともそこは忘れてはならないと思う。
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