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公文書管理法審議第2回(衆院内閣委) [2009年公文書管理法問題]

第1回→こちら

本日5月29日、衆議院内閣委員会で公文書管理法案の第2回審議が行われました。また衆議院TVで議論を全て見ました。
今回は参考人質疑です。呼ばれた人は以下の通り。

尾崎護氏(公文書管理の在り方等に関する有識者会議座長)
三宅弘氏(弁護士・獨協大学法科大学院特任教授)
福井秀夫氏(政策研究大学院大学教授 日本計画行政学会常務理事兼行政手続研究専門部会長)
菊池光興氏(独立行政法人国立公文書館長)

メンツを見ると、三宅氏と福井氏は先日の公文書市民ネットの第1回フォーラムで私の横に並んで話をされていた人なので、色々と感慨深い。三宅氏が私が報告で話していたことを少し使われていたので、ちょっと嬉しかった。
残りの尾崎氏と菊池氏は呼ばれて当然という人。今回の法案を作る際に関わった当事者である。

おおよその話を聞いていると、尾崎氏と菊池氏が政府案に沿った答えをしており、三宅氏と福井氏がもっと改革を迫る内容であった。

尾崎氏と菊池氏の話で最も強調されていた点は、「結局この制度の実効性を高めるには、現場の官僚達の意識改革が必要だ」ということである。
これは至極もっともなことである。現場の一人一人の仕事まで監視できるわけがないわけだから、彼らが実際に意思形成がわかる文書をきちんと作成させなければ結局実効性を持たない。
そのための研修制度の充実化や、この制度を担える人材の育成は急務であると思われる。

三宅氏と福井氏の意見は、お二方の所属する団体の意見書を元にした話であった。
詳しくは
三宅氏・・・日弁連の意見書
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/090424.html
福井氏・・・日本計画行政学会の意見書
http://japa.agbi.tsukuba.ac.jp/pdf/ikensyo_081016.pdf
を見てください。

この中で最も強く賛同したいのは、三宅氏が述べていた「30年経ったら基本的に公文書館に移管して開示すべき」という点である。
これは、公文書館の国際組織であるICA(国際公文書館会議)が1968年に決議した「マドリッド原則」と呼ばれるものであり、30年経った公文書は基本的に開示すべきと言うルールである。
これは多くの国の公文書館で適用されている原則でもあり、今回の有識者会議の最終報告でもこの30年原則は記載されていた(11頁)。→詳しくは私の以前のブログの記事

そして、現在の情報公開法では、文書の保存年限を30年と決めたにもかかわらず、保存期間の延長を行うことで事実上の永久保存文書になっているものが各省庁に散見される。
別に情報公開で見れば良いではないかと思う人もいるかもしれないが、情報公開法では「現用」と「非現用」で不開示にできる情報の基準が大きく異なっているのだ。また国立公文書館では「時の経過」を考慮した開示を現在でも行っているので、移管されれば不開示になる部分が大幅に減るのである。

30年原則を法文に書くのは難しいとは思うが、基本的に30年経ったら公文書館に移管するというレコードスケジュールの設定をきちんと行えるような政令が必要となるだろう。

その後の議員との質疑で気になった点は、前回の審議でも話題になった第1条に「国民の共有財産」という言葉を入れるかどうかである。
有識者会議の最終報告では入っていた文面が、法文でなくなったことについて尾崎氏が度重なる質問を受けていた。
それに対して尾崎氏は、法律用語に置き換えればそのままは使えないが、意図は入っているのではないかという答弁だった。立場的にも法案を批判できないと思われるので、かなり苦しい答え方だったかなと思う。

あとは、やはり「行政文書の定義」は論点が分かれた。
尾崎氏や菊池氏は個人的なメモは当然ありうるので、組織として作られたものを行政文書と考えるべきという官僚達と同じ立場からの発言だったが、三宅氏や福井氏は個人のメモを含めるべき(特に福井氏は執務時間中に作ったものは全て行政文書と考えるべきと主張)としていた。
ただ、尾崎氏も菊池氏も結局は作る側の意識改革次第という言い方をしており、現状が良いとは思っていないことは確かだったと思われる。

ここについては、私はその官僚の意識改革のためにも、情報公開法と同じままの定義ではダメで、「意思決定過程」を作成保存するべきという文言はきちんと入れないとダメだと改めて感じている。

その逆にかなり主張が一致していたのは、「中間書庫の整備」という点である。
これについては4者ともその重要性を強く主張し、そのための予算措置などを求めるなど意見が一致していた。
前回の審議でも上川陽子元公文書管理担当大臣も強く主張していたが、どうもこの中間書庫の設置については付帯決議などを付けて早急な整備を求めるようなことは可能なのかなという感じがした。

議事録公開
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000217120090529013.htm

次回の審議はおそらく6月3日ではと思われます。またその際に更新します。
→どうやら3日には無いようです。水金開催のはずだから次は5日でしょうか。
→5日にも無いようです。逢坂議員のメルマガを読んでいると、現在内閣委員会の理事懇談会などで公式の修正協議が行われているそうです。週末までには完成→来週水曜修正案提出という流れでしょうか。
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コメント 4

hirajimukann

某省出先のヒラ職員です。
公文書管理関係の記事を拝見し参考にさせていただいております。
公文書管理の実効性を高めるには、意識改革が重要という点はその通りだと思います。
しかし、数十万人の組織で文書管理を確実に行うには、意識がどうであろうと確実に文書管理ができるようなシステム(いわゆるシステムのみでなく仕事の進め方といったものも含む)を構築することだと思います。
拙ブログでも公文書管理について取り上げております。
よろしければ是非一度ご笑覧下さい。
by hirajimukann (2009-06-06 16:01) 

h-sebata

> hirajimukann さん

書き込みありがとうございます。実はhirajimukannさんのブログは最近拝見させていただいています。
特にhirajimukannさんの↓の記事に書かれていることは重要だと思っておりまして、法案が成立したときに「これからの課題」として引用させてもらおうと思っておりました。
http://blogs.yahoo.co.jp/hirajimukann/57786922.html
http://blogs.yahoo.co.jp/hirajimukann/57797782.html

本来、公文書管理法というものは、文書を残すだけでなく、現場の職員の文書作成や管理にかかる手間を整理して、仕事の能率を上げるということも意識されて作られるものだと思います。
ですので、この法が制定されるのを良い機会として、仕事のやり方そのものの見直しを行ってほしいと望んでいます。

私も最終的にはシステムが重要になると思っております。
結局、この制度に「魂」を入れるのは現場の公務員の方にかかっています。
その方達が、仕事をしていて自然と必要な文書が残るようなシステムが作られることが必要不可欠だと考えています。

ただ、私は公務員として働いた経験がありませんので、どのようなシステムを導入すればよいのかという点については具体的に述べることができません。
総務省の電子文書のシステムについても、読んではみたのですが、説明書だけでパソコンの使い方を理解するみたいな話で、さっぱりわかりませんでした。

しかし、電子決済システムが導入されても、結局ろくに使われていないという現状から考えても、システムにプラスして意識改革(つまり今までの文書の作り方を根本から変えてもらう)がなければ、システムを入れても宝の持ち腐れになるのは間違いないと思います。
そのために研修制度の充実化は必ず不可欠になると思っています。その意味で条文に研修制度について入ったことは重要だと思います。

いずれにしろ、これを可能にするには、「予算」が必要になります(システムを導入するにしても)。
法を作って終わりというのではなく、その先にまで国会議員のみなさんが注意を払ってくれることを望んでいます。

今後もまたよろしくお願いいたします。
by h-sebata (2009-06-06 18:15) 

hirajimukann

 拙ブログ拝見頂いていた様で恐縮です。
 制度実施上の課題についてはこれからも断続的にアップしていこうと考えておりますが、システムという点では、システムの利用を強制するような仕事のすすめかたのデザインが必要だと思っています。
 最後に、拙ブログはろくに推敲もせずにアップしておりますので、法案が成立するまでにちゃんと直しておきますね。
by hirajimukann (2009-06-07 11:51) 

h-sebata

> hirajimukann さん

どうもありがとうございました。
最新で書かれた
http://blogs.yahoo.co.jp/hirajimukann/57811722.html
の記事もなるほどなと思わされます。

その話とは少しずれますが、同じ業務をしていても、省庁が変わると文書形式が変わるということもあります。
情報公開法を使って色々な省庁に文書請求をしたことがありますが、省庁によって回答書の形式が違っているんですよね。書かれている情報も違っていたりします。
省庁の中での文書の作成の仕方だけでなく、全省庁共通に作成する文書の作成方法も統一化する必要があるような気もします。
アメリカではそのあたりで、国立公文書記録管理院(NARA)が強制力を働かせている(文書の作成方式の統一化を図っている)と聞いています。統一化しないと、移管・廃棄するときにも手間がかかって大変だからという理由もあるようですが。

それでは今後ともよろしくお願いします。
by h-sebata (2009-06-07 18:25) 

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