SSブログ
2009年公文書管理法問題 ブログトップ
- | 次の10件

占領・戦後史研究会で公文書について話します [2009年公文書管理法問題]

占領・戦後史研究会で公文書管理問題について話をすることになりました。
年末に同じ研究会で天皇関係でコメンテーターをしたばかりなので、またの登場ということになりましたが、今回はサブです。メインは笹川さんです。

→追記4/19 と書いていたら、笹川さんから「メインでお願いします」と依頼されましたので、私が中心に話すことになりました。しかも1時間話せと(苦笑)。頑張ります。。。

どなたでも来場可能ですので、ご興味のある方はおこし下さい。

占領・戦後史研究会 2009年第2回研究会

「公文書管理法案をどう見るか」

報告 瀬畑 源(一橋大学大学院博士課程)
    笹川 隆太郎氏(尚美学園大学)
    
日時 2009年5月2日(土)午後2時~5時

場所 拓殖大学文京キャンパス C館6階601教室
    (東京メトロ丸ノ内線茗荷谷駅徒歩5分)

 本年3月、公文書管理法案が国会に提出されましたが、この法案では、価値ある文書が大量に廃棄されてしまうと憂慮する声が出ています。今回の研究会では、この法案がもつ数々の問題点について検討していただきます。

参考文献 瀬畑源のブログ「源清流清」(このブログです)
参加費 無料(会員以外でも参加できます。)

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

公文書市民ネットのブログ開設 [2009年公文書管理法問題]

公文書管理法関係で私も参加している「市民のための公文書管理法制定を求める市民ネットワーク」のブログが開設されました。
前回のフォーラム(3月17日)のレジュメなども公開されています。
公文書市民ネットの情報はそちらから配信されていく予定です。
私のブログでも主要なものは紹介するつもりです。

http://kobunsyo.exblog.jp/

どうぞよろしくお願いします。(左のリンク集にも入れてあります。)なお第2回のフォーラムは現在準備中です。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

週刊ダイヤモンドに載ってます [2009年公文書管理法問題]

今週(2009年4月11日号)の『週刊ダイヤモンド』に、前回も紹介した、公文書市民ネットで一緒に活動しているまさのあつこさんによる「官僚による隠蔽、改ざんが横行! 知られざる日本の恥部 「公文書管理」が危ない」という記事が掲載されています。
題名はえらいおどろおどろしいですが、中身では今回の公文書管理法案の問題をわかりやすく説明されています。
私がフォーラムで話したことも少し載ってます。この前の日経の話とダブるので、詳細は省略します。

私のブログの記事ではようわからん、という方は是非とも目を通していただければと思います。
『週刊ダイヤモンド』は公共図書館でも入っているところは多いですし、売店などでもよく売ってますので手に入りやすいと思います。

週刊 ダイヤモンド 2009年 4/11号 [雑誌]

週刊 ダイヤモンド 2009年 4/11号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2009/04/06
  • メディア: 雑誌


追記 4/9
今月の岩波の雑誌『世界』(2009年5月号)に、逢坂誠二議員による「問題だらけの公文書管理法案」という記事があります。これもこの公文書管理問題についてわかりやすく書かれているのでお勧めです。

世界 2009年 05月号 [雑誌]

世界 2009年 05月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/04/08
  • メディア: 雑誌


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

行政文書の保存期間のおかしさ [2009年公文書管理法問題]

公文書市民ネットで一緒に活動しているジャーナリストのまさのあつこさんのブログに、「2008年国会審議で明らかになった行政文書の保存期間」という記事が掲載されている。
この記事は非常に興味深かった。

まさのさんのブログには、「行政文書の保存期間」に関する国会審議の一覧表がアップされているのだが、それを見ると色々と唖然とすることが多い。
特に、高速道路の建設などの公共事業の調査記録(原データ)が3年やそこらで「文書管理規則」に則って廃棄されていて、追跡調査できないという事例については、「何で?」と思わざるをえない。
どうも官僚側の認識としては「すでに契約して着工してるんだから、なんでそれを作ったのかなんてどうでもいいじゃない」という感覚のようなのだ。
詳しくはまさのさんのブログを参照してほしいが、「文書保存期間が切れました」として、大量の重要資料が廃棄されているという実態が非常に生々しくあらわれている。

まさのさんは、この問題を各省庁が独自に「文書管理規則」を決めていることに原因を見ている。つまり、重要な資料なのに、各省庁が短い保存期間を付けて捨てているということだ。
もちろん、この点が最も問題があることは疑いない。
今回の公文書管理法案では、その文書管理規則の制定には内閣総理大臣の同意が必要となっている(第10条)。だが、これで果たしてこの状況が改善されるのか。
まさのさんは、内閣府も同じ官僚組織なのだから、期待できないと主張されている。私もその点については全く同意見である。

ただ、私の視点から見ると、もう2点ほど、話を広げて考えることができるのではないかと思う。

まず一つめは、「中間書庫の重要性」である。
まさのさんがまとめた答弁の中で気になったのは、4月23日の舛添要一厚労相の答弁にある年金関係の書類は「膨大な量」になるから全部保存は無理という言葉だ。

これは他の答弁には出てはいないが、各省庁が原データなどを大量に処分する原因は、「保存スペース」に起因しているように思う。
高速道路などを作る場合には、おそらく大量のデータを作っているはずで、そのデータ量は各部署が持つには膨大すぎる。だから、短い保存期間を付けられ、着工したら捨ててしまうというようなことが行われているのではないか。
(もちろん悪意を持ってデータを隠蔽して捨てている可能性は否定できないが、それが全てに共通する原因とはちょっと考えにくい。)

だからこそ、「中間書庫」は必要なのだ。
「中間書庫」は、保存年限が来ていないが、実質的にはほとんど使用していない文書を移管する「倉庫」である。そしてその倉庫は公文書館が管理する(文書の保有者は各省庁のまま)。
ここに移管するメリットは、各部署にある大量の文書を整理整頓できること、公文書館の職員が整理に携わることで保管期限切れの後の公文書館への移管がスムーズに行えること、などが挙げられる。
つまり、現在スペースの問題で廃棄されている文書は、中間書庫のシステムを使えば、適切な保存期間を設定でき、かつ重要な資料をその事業終了まできちんと保存することが可能になるのだ。

二つめは、これは繰り返し私が述べていることだが、「移管廃棄の権限を各省庁が持っていることの問題性」である。
私が以前、広島大学文書館の文書管理の話を書いたときに述べたのだが、

「保存年限の長さと文書の重要性はイコールではない」

のである。
つまり、行政機関にとって重要である資料と、それを検証しようとする側にとって重要である資料にはズレがあるのである。
行政機関にとっては、あくまでも業務の遂行が第一。だから、業務が予定通り進んでいれば、終わった書類は必要なくなる。
でも、その業務を後から検証しようとしている人達にとっては、その書類こそが重要になるのだ。

だから、各省庁が文書の移管廃棄の権限を持っている今回の法案は問題があるのだ。
文書の重要性は、現用の時と非現用の時では、その重要性の「考え方」そのものが根本的に異なるのである。
だからこそ、「非現用」の立場から移管廃棄を考える公文書館側の方に、その権限があることが絶対に必要なのである。

今回のまさのさんの調査を拝見して、特に「中間書庫の重要性」については改めて考えるところがあった。
ただ、逢坂議員がちらっと話しておられたのだが、「行政改革のため、あらたに中間書庫のようなものを作るのはダメだと政府は言っている」らしい。
私からすれば、この「中間書庫」をきちんと作ることこそ、行政の効率化につながるのだと思う。

行革とは「削る」だけではないはずだ。効率性を上げるためにはどのようにすればよいのか。そのための投資は惜しむべきではないと思う。そこは政治判断で何とかするべきではないだろうか。

追記
まさのさんのブログに、この記事を見た感想が出ました。紹介しておきます。→こちら
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:学問

消費者庁問題のゆくえが気になる。 [2009年公文書管理法問題]

昨日の読売新聞より。

消費者庁の監視機関、独立の位置づけへ…与党修正案

4月4日3時9分配信 読売新聞

 政府が国会に提出した消費者行政一元化のための消費者庁設置関連法案に関し、与党がまとめた修正案の原案が3日、明らかになった。

 内閣府の外局として新設する消費者庁の下部組織としていた有識者による監視機関「消費者政策委員会」を、独立させて内閣府に置き、消費者庁と対等と位置づけることなどが柱だ。与党は週明けから民主党など野党との修正協議を本格化させる。

 民主党は、行政から独立した第三者機関「消費者権利院」を設置する対案を提出し、第三者による消費者行政の監視機能強化を重視している。与党は消費者庁の位置づけは変えないものの、消費者保護行政を監視する「消費者政策委員会」の独立性を高め、「食品安全委員会」などと同様、内閣府に置くことで、民主党との接点を探る方針だ。
(以下略)

この消費者庁問題の行方は、公文書管理法と大きな関係があると思っている。
そもそも、福田内閣時の「骨太の方針08」(経済財政改革の基本方針2008)の中において、公文書管理改革問題は「第4章 国民本位の行財政改革」の「(2)生活者重視の行政システム(消費者行政、規制改革)」の中に位置づけられた。
つまり、消費者庁の設立などと並列されており、この二つが同種の問題から来ているという認識が政府の側にあると思われる。

また問題構造も非常に似ているところが多い。
特に、現在自民党と民主党の間で一番問題になっている、消費者庁そのもののあり方については、論点が非常に似通っている。

政府案は、消費者庁を内閣府の下に置いて、そこに消費者行政を一元化させる。さらに、監視機関の「消費者政策委員会」を消費者庁の下に置いている。
これに対し民主党は、人事院や会計検査院のような独立した機関として「消費者権利院」として置くべきであると主張している。
そして、最近では、自民も民主も修正協議へと歩み寄りを始めているようであり、その一つの案として、「消費者政策委員会」の内閣府直属への格上げが出されているということのようである。

公文書管理法でも、似たような論点が出されている。
政府案は、公文書管理を内閣府の大臣官房の公文書管理課に一元化させる。そして監視機関の「公文書管理委員会」は内閣府直属になっている。
これに対し、民主党の主張は明らかではないが、逢坂議員などは独立機関としての「公文書管理院」を置くべきだという主張だと思われる。

この二つを見ると、民主党の主張は内閣府からも独立した機関でないと、実行力のある行政機関にはならないという主張である。
それに対し、政府・自民党の主張は、内閣府に一元化させるというのが絶対条件である。消費者庁関係での妥協案でも、そこは動かさないという点はぶれていないようである。

この消費者庁の決着の付きどころによって、公文書管理法問題でどのような妥協が成り立ちうるのか推測可能になるのではと思っている。
今後も注視していきたいと思う。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

日本経済新聞に名前が出た! [2009年公文書管理法問題]

昨日、友人や妹から、私の名前が「日経に載ってる」というメールが飛んできた。

『日本経済新聞』2009年3月28日夕刊の最終面に載っている「芸文余話」で、松岡資明編集委員が、先日行われた公文書管理フォーラムのことを紹介してくれていた。→詳しくは私の記事にて
松岡氏は長年この公文書管理問題に関心を持たれていて、継続的に日経で記事にして下さっている。

では、私のことが書かれている部分を少し紹介します。

松岡氏は、17日に衆議院第二議員会館で行われた公文書管理フォーラムに出席されており、その内容について簡単に紹介をされている。
その上で次のように書かれている。

 不安定な政局のなかで、公文書管理をないがしろにしてきた明治以来の”慣行”を打破する法律が成立するのか。法律が制定されたとしても運用がきちんとなされるのか、大いに気になるところだ。
 世界から大きく後れた今の状況を変えるためにも何とか今国会での成立を期したいところだが、歴史研究者の立場から法案の問題点を指摘した瀬畑源氏が語った言葉が心に残った。いわく、「(情報公開の進んだ)アメリカに行かないと日本の近現代史が研究できないという情けない状態を何とか改めたい」。
 他国が残した記録資料(アーカイブズ)に頼って自国の歴史を語るようなことを、いつまでも研究者に続けさせていて良いのだろうか。国民全体の問題である。


私としては、「自分の言葉が届いていた」ということに感動した。
せっかくなので、色々と上記の話について追記します。

日本では明治期以降の歴史(特に政治史)を描く際に、公文書を頼りにしていないのが現状です。
明治初期は江戸幕府の文書管理が生き残っているのか残存状況は悪くないようですが、中期以降は決裁文書の山で、「何をしたか」はわかっても「なぜしたか」はほとんど公文書ではわかりません。
その理由は、当時の公務員が国民に対する説明責任を有しておらず、公文書はあくまでも「業務参照」のためにだけ残されていたためです。そしてそれは日本国憲法施行後も、官僚文化として残存しています。

そのため、研究者は私文書の発掘にその活路を見出してきました。国立国会図書館の憲政資料室には伊藤博文から社会党の石橋政嗣まで、多くの私文書が大量に保管されており、そこにある日記や書簡などを用いて研究を続けてきました。
しかし、電話が普及し、現在では電子メールが普及してくる中で、私文書の残存状況は日に日に悪化しています。
特に戦後史においてはその傾向が顕著です。

そこで、多くの戦後史研究者はアメリカの国立公文書館を初めとした文書館巡りをしています。
特に、在日米国大使館や国務省の公文書や、駐日大使を務めた要人などの私文書を探す方が多いようです。
「戦後史の新発見」などと言われる資料は、こういったところから見つかるのがほとんどです。

また、最近では中国や韓国で公文書の公開が大きく進んでいます。特に韓国では、民主化運動の正当化を意図したということもあり(弾圧資料が出てくる)、金大中、盧武鉉政権の間に大きく資料公開が進みました。
そのため、今後の日韓関係史は、おそらく韓国の資料に基づいて書かれることになるでしょう。

「別に資料があるならいいじゃないか」という考えなら、それは大きな間違いです。
あくまでも、その資料は「外国の視点」から作られたものに過ぎません。そこに記載された日本像はあくまでも「外国から見た日本」なのです。偏見(バイアス)がかかっていることからは、決して自由にはなりません。

これは、日本に「不利」な資料だけを用いて、歴史を描くことにつながるのです。
本来ならば、日本側、外国側両方の資料を突き合わせて描くことで、歴史は描かれるべきです。
それが日本側の資料の非公開と、資料の残存状況の悪さのため、片側だけで歴史を書かざるをえなくなっています。
歴史研究者の多くは、そのことに対して不満を抱いています。

そして、この話は歴史学だけの話ではありません。
公文書がきちんと管理されていないということ、そしてきちんと公開されていないということは、同時に国益にも反することにつながります。
最近、沖縄返還の際の密約文書がアメリカから公開されたにも関わらず、日本政府はその密約は無かったと主張しています。
でも、突き合わせができない以上、アメリカの「公文書」に描かれている事実が「真実」になってしまいます。(これをウソだというなら、アメリカは「偽の公文書を作成している」と抗議すべきです。)
アメリカはむしろこういう文書を公開することで、自国の利益を主張しています。アーカイブズ自体が国家戦略の中にきちんと位置づいているのです。
(ちなみにこういうことを書くと、「自国に有利なものだけ公開すれば」という発想が出てくるのですが、むしろそれは逆に自らの公文書館(アーカイブズ)の信用を低下させるだけです。失敗した歴史も含めて公開することで、今後の教訓もまた出てくるのです。)

それに対し、日本では官僚達が自分たちの恣意によって公文書が隠され、廃棄されたりしています。そこに国家戦略的なものはありません。ただ責任を問われたくないからという理由だけです。
ただ、そもそも官僚の考え方はそういったものかもしれません。だからこそ公文書管理法は必要なのです。

公文書管理法は、公文書をきちんと作成させ、移管廃棄も自動的に公文書館が責任を持って行います。そこに恣意の入る余地はありません。それは同時に官僚達にとっても、公文書管理について自分たちの責任を問われなくて済むわけですから、気持ちも楽になるはずなのです。

ですが、今回国会に提出された公文書管理法案はすでに指摘したように、その移管廃棄の権限が各省庁に残っており、官僚達が勝手に文書を廃棄できるという現状を固定化するものになっています。
この点をきちんと修正した上で、公文書管理法の制定を是非とも今国会で行ってほしい。それを望んでいます。

参考
上記の話をわかりやすく書かれたものとして、中国史の川島真氏が書いた以下の文章が参考になります。

川島真「「歴史」の再構成とアーカイブズ」(『論座』2008年2月号、朝日新聞社、所収)

また、日経の松岡氏の文章としては、次の二つが現在のアーカイブズ問題について非常にわかりやすく述べていると思います。日経の縮刷版は、市立図書館レベルでも入っているところは多いはずですので、興味のある方は是非ともご覧頂ければと思います。

・「「現代」を歴史に刻む―アーカイブズの今」2005年6月6日~7月1日(夕刊、平日のみ)、全20回。
・「現代を歴史に刻む―アーカイブズ 新しい芽」2007年11月26日~12月21日(夕刊、平日のみ)全20回。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

広島大学文書館の文書管理 [2009年公文書管理法問題]

先日の公文書管理フォーラムの前日、たまたま一橋で行われた研究会に小池聖一広島大学文書館長が招かれていて、大学アーカイブズについての報告をされた。
大学でアーカイブズを持っているのは、京都大学など数えるほどしかない。またあったとしても、歴史的に重要な文書だけを管理しているところが圧倒的に多い。

その中で、広島大学文書館は、大学の行政文書も管理する機関として設置されている。
このような制度ができた背景には、かつて外務省外交史料館に勤務経験のある小池氏の存在が非常に大きいと思われる。
今回、色々とお話しをうかがう中で、公文書管理法を考える上でも参考になる点がいくつかあったので紹介しておきたい。

○意思決定過程をどのように残させるか

「公文書管理法を読む」の第3回で取り上げたが、今回の公文書管理法案は、行政文書を「組織共用文書」に限っているため、政策を決定する「過程」が残らない可能性が高いことを指摘した。
しかし、小池氏によれば、広島大学ではきちんと意思決定過程を残させることに成功しているという。
そのための条件として小池氏は現役の文書から歴史文書に至るまでの全ての文書管理の統一の重要性について指摘していた。

まず文書館が文書管理のルールを作成し、それを各部署で徹底させた。
例えば、現在使っている文書、保存年限内でもほぼ利用していない文書などの保管場所などを明確にし、文書の移管・廃棄までの流れを文書館がきちんと把握した。

この徹底のために、小池氏はいくつか強引とも言えることを行っている。
一つめは、文書館が各部署にあったファイルを全て確認して、ファイル管理簿の整備を徹底化したことがある。
小池氏によれば、部署に乗り込んでいって、強引に棚を調べるなどの行為を行ったらしい。ものすごく嫌がられたと言っていたが・・・。これはもちろん小池氏が広大の教員であった=事務職員からすると断りづらい、という構図があったとは思う。

二つめは、事務職員に公文書管理をきちんと行うことがいかに重要なことかを時間をかけて説得したことが挙げられる。
小池氏は、事務職員が自発的に政策過程文書を残そうとしなければ、いくら制度ができていても実体を伴わないと考えており、文書管理のマニュアルを作成し、研修を徹底的に行ったようである(説得に2年かかったと話していた)。
結局この説得によって事務職員を味方につけることに成功し、学内の文書館に理解のない教授陣の反対を押し切って文書館を設立できたそうである。

小池氏が言っていた言葉の中で特に印象の深かったものに、

「保存年限の長さと文書の重要性はイコールではない」

ということがある。
現在の情報公開法における最長の保存年限は30年であるが、これに該当する文書はほとんどが決済文書か帳簿であることは、すでに「公文書管理法案を読む」の連載の中で指摘した。
つまり、「長く保存する=何を決定したか」というのが現在の文書管理の基本となっている。
でも、意思決定過程は決裁文書だけを残しても全く何もわからない。それはむしろ短期の保存期限で捨てられてしまう方に重要なものが入っていることが多いのだ。

つまり、「保存年限」という考え方は、そもそも職員の「業務参照」のために付けられた年限なのである。
だけれども、職員にとって参考になる資料と歴史的に重要な資料にはかなりずれがあるのである。

この事例を聞いていて思ったことは

1.文書館が現用文書作成から廃棄に至るまで、全ての管理に関わっている。
2.職員研修の徹底化を図る。


という2点の重要性である。
特に、1については納得できる点が大きい。そして今回の公文書管理法が、全くその点について不十分であるということも比較すると良くわかる。
ファイル管理簿の問題も連載の中で指摘したが、その点の解決法として文書館が部署に乗り込んでいってファイルを把握するという具体策が必要なのだということもわかる。

ただ、これは広島大学といった小規模の機関だからこそできたということはあるだろう。
しかし、国の公文書管理を考える上でも、広大方式のように、文書館側が現有文書への介入権を持たせるような法文は入れておく必要があるのではないかと思う。


○文書廃棄の方法

小池氏が話していた中でもう一点参考になったのは、文書廃棄の方法についてである。
今回の公文書管理法案は、文書廃棄の権限を全て自省庁が把握したままであることの問題は既に指摘した。
ではどのようにすれば機能するのか。その方法は二通りあるという。

1.期限の切れた文書を全て国立公文書館に移管して、専門員が廃棄するかを判断する。

この場合、誤廃棄ということはおきにくくなる。廃棄するか否かは全ての責任を公文書館側が負うことになり、省庁側にとっても情報隠しとの批判を受けずに済むメリットがある。
問題点としては、これを行うためには、「文書を整理するためのスペース」(具体的には巨大な中間書庫)、「整理のできる大量の専門家」が必要となる。現在の国立公文書館の体制では、1年分の移管文書を整理するのに数年かかるという状況が生まれる可能性は高いと思われる。

2.期限の切れた文書の廃棄簿を各省庁に作らせて、それに基づいて専門員がチェックをしに行って最終的な移管・廃棄の判断をする。

ルーティンに発生する文書の廃棄を行う場合、わざわざ専門員が決めるまでもないこともあるので、手間は省ける。また移管する必要のある文書だけを動かせば済むというメリットもある。
問題点としては、各省庁による恣意的な廃棄を専門員がどこまで見破れるかということがある。そのため誤廃棄の可能性は上がる。

小池氏によれば、前者を取っているのが京都大学文書館、後者が広島大学文書館だそうである。そして、少人数で公文書館を運営するのであれば、後者の方が効率的であるという話であった。
私も、1の方が理想的だと思うが、現状の国立公文書館の規模では2を選ぶ方が現実的ではあると思う。

小池氏のアーカイブズ論は、現場でどのように使えるかということに重点を置いたものであるので、理想主義的アーカイブズ論からはかなり遠いところにある。そのために、小池氏の主張に違和感を感じる人も多いのではないかと思う。
ただ、実際に広島大学という場所で実践をしているという経験は、何よりも得難いものであると思う。
下記に紹介する本に、その主張の多くは載っているので、是非とも興味のある方はお手に取っていただけたらと思う。ご本人曰く「売れねえんだよなあ・・・」とおっしゃってましたけど。

小池聖一『近代日本文書学研究序説』現代史料出版、2008年
A5判/上製/380頁/本体価格5,800円/ISBN978-4-87785-184-2
http://business3.plala.or.jp/gendaisi/xml_files/4-bunsyogaku.xml
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32130949

せめてAmazonぐらい登録しようよ、現代史料出版さま・・・
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

公文書管理フォーラムの感想 [2009年公文書管理法問題]

昨日、公文書管理フォーラムが衆議院第二議員会館で行われました。
私もスピーカーの一人として話をしてきました。

内容についてなのですが、NPOWEBで詳細なレポートが載っておりますので、そちらに譲ります。
非常にコンパクトに話をまとめていただいてますので、是非ともこちらをご覧下さい。→こちら

衆議院の本会議と重なってしまったので、議員ご本人の出席者は民主党の逢坂誠二議員と泉健太議員の2名だけでしたが、秘書で参加された方が結構おられました。特に福田康夫前首相の秘書の方が最後まで出席されていたとのことです。

私個人としては、一番言いたいことはきちんと話ができたかなと思っています。
少しでも御参考になっていればと願います。

まだまだ公文書市民ネットの活動は続きます。是非とも多くの方にこの問題に興味を持っていただき、積極的に声を上げていただけたらと思います。

あと、一つだけ気になった記事を。

福田前首相“悲願”「消費者庁」「公文書管理」置き土産2法案 成立に民主の壁

3月16日7時56分配信 産経新聞

 民主党のマルチ商法疑惑のあおりを受け、宙づりにされてきた消費者庁設置法案が17日、衆院本会議で趣旨説明が行われ、ようやく審議する。行政機関の適切な公文書管理を定める公文書管理法案と並び、福田康夫前首相が肝いりで麻生太郎首相に託した「置き土産」だが、民主党は次期衆院選をにらみ非協力姿勢を貫いており、成立のメドは立っていない。「話せば分かる」と繰り返した福田氏が議会制民主主義に寄せる期待と信頼はまたも裏切られつつある。(福島香織、今村義丈)
(中略)
 一方、3日に閣議決定した公文書管理法案も福田氏が強いこだわりを持つ法案だ。「外交族」である福田氏は、海外に比べ日本の公文書管理のずさんさをかねて問題視し、ライフワークとして取り組んできたからだ。年金記録紛失や薬害肝炎症例リスト放置など一連の省庁の不祥事も根底に公文書管理のずさんさがあるとの見方もある。

 法案は、(1)各省庁ごとにバラバラだった公文書の作成・管理の統一ルールの策定(2)外部識者による公文書管理委員会の設置(3)一定期間を経た重要な公文書の独立行政法人「国立公文書館」への移管(4)国民への情報公開ルール-などを定める。

 21年度予算案でも公文書管理の要員育成などに3400万円を計上し、小渕優子担当相は「公文書管理が首相のもとで統一化して運用され、公文書館への移管もスムーズに進んでいくと思う」と法案成立に期待をにじませる。

 しかし、民主党は2月9日に公文書管理の作業チーム(枝野幸男座長)を設置したばかり。作業チームの西村智奈美事務局長は「公務員制度改革に匹敵する重要法案だが、政府案は急いで作成された感があり、100時間の審議は必要だ」とにべもない。西松建設の違法献金事件で小沢一郎代表の公設秘書が逮捕され、党内の動揺が続いていることもあり、福田氏の「思い」に応える懐の深さは持ち合わせていないらしい。
(引用終)

この産経の記事に対して、逢坂議員はかなりキレ気味であったが、それもわからないでもない。
民主党はこの法案を「重要法案」として認識しているのは確かである。おざなりな対応をしようとしているわけではないことは私にもわかる。
それに対し、産経のこの記事は、公文書管理法案の問題点について全く指摘がない。

すくなくとも、産経は「公文書管理法の重要性」は認識しているんだろう。
そして、それを「政争の具」として民主党が使おうとしているという危惧を示しているという事なのだと思う。
この「政争の具」として使われることには私も反対であり、この点についてのみは同意できる。

ただ、法案が出てからの各紙の新聞記事を見ていると、その多くはこの法案を評価するものが圧倒的に多い。
(例えば、3月8日の読売の社説3月16日の日経の社説

確かに、この法案は私は一歩前進だと思っている。「無いよりはあるほうが良い」というのは、すでに連載の最終回でも記載した。
だが、やはりもう少ししっかりと法案の内容を検討してもらわないといかんのではないか。
公文書管理法がきちんとできれば新聞記者の人達にとっても、情報が格段に手に入りやすくなるというメリットがあるのだから、もうちょっと時間をかけてしっかり検討してほしいと思う。

また続報が入れば記載します。本日の衆議院内閣委員会で民主党の佐々木隆博議員が公文書関係の質問をされていたようですので、それについても議事録があがったら書きます。


追記3/19
公文書市民ネットで一緒に活動しているジャーナリストのまさのあつこさんのブログでも、フォーラムのことについてふれていますので、こちらも是非御参考下さい。→こちら
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

公文書管理フォーラムで話します [2009年公文書管理法問題]

以前にも書きましたが、「公文書市民ネット」が発足します。
それに関係して、フォーラムを議員会館の中で行います。私も話します。
国会議員や新聞記者の方に案内状は出しています。
一般の方も参加可能です。もしご興味ある方はご参加下さい。


「公文書管理フォーラム」開催のご案内

□テーマ:政府案の検証とその修正を求めて

 市民の知る権利を確保し、国の機関や地方公共団体等の透明性を実現するためには、情報公開法が機能する上での前提となる公文書管理法の制定が必要不可欠であると考えています。このように公文書管理法は、国等から市民への説明責任を保障し、情報公開を実質的に促進することから、民主主義の基盤となるものです。
 年金記録の紛失やC型肝炎感染被害者リストの放置、海上自衛艦航泊日誌の廃棄など公文書の杜撰な管理実態を踏まえ、政府は公文書管理法案を3月3日に閣議決定し、国会に提出しました。
 そこで、公文書管理法・政府案の検証と、実際に機能する制度に向けて、その課題等を整理・共有化するため、本フォーラムを開催します。
 ぜひ多くの方々にご参加いただければと思います。

□日 時:3月17日(火)14:00~15:30

□会 場:衆議院第2議員会館第4会議室
→地下鉄永田町駅or国会議事堂前駅徒歩3分

□内 容:①研究者による政府案の検証
●発言者
○日弁連関係者から:三宅 弘さん
○記録管理学会関係者から:西川 康男さん
○アーカイブズ学会関係者から:調整中
○歴史学研究会関係者から:瀬畑 源さん
○日本計画行政学会関係者から:福井秀夫さん
②ディスカッション

□参加費:無料

□主 催:市民のための公文書管理法の制定を求めるネットワーク(公文書市民ネット)

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

公文書管理法の閣議決定 [2009年公文書管理法問題]

本日の毎日新聞の記事。引用します。

<公文書管理>省庁に年1回の報告義務 法案を閣議決定

3月3日10時35分配信 毎日新聞

 政府は3日午前の閣議で、府省庁でバラバラだった公文書の作成、管理、保存、廃棄に関する統一基準となる公文書管理法案を決定した。総務省と内閣府に分かれている公文書の管理事務を内閣府に一元化し、公文書の管理状況を年1回首相に報告することを義務付ける。

 法案では、公文書の適正な管理を「現在および将来の国民に説明する義務」と位置づけた歴史資料として価値がある公文書は保存期間終了後、国立公文書館などに移管することも明記した。文書管理のチェック機能として、内閣府に有識者による「公文書管理委員会」を設置する。11年4月の施行を目指している。

 公文書の管理をめぐっては、海上自衛隊が航海日誌を誤って破棄したり、厚生労働省が血液製剤によるC型肝炎感染者リストを放置していたことなどが発覚して問題化した。福田康夫前首相が設置した有識者懇談会で文書のあり方が審議され、法案は懇談会の最終報告を受けて作成された。【木下訓明】
(引用終)

ということで、予定通り3月3日に閣議決定がなされた。
まだ法文を手に入れていないのでコメントはその後にしたいが、手に入れた人の話だと、公文書の定義は情報公開法の時からあまり変わっていないらしく、また各行政機関が移管権限をもったままだと読めるみたい。結構問題ある法案が出てきた可能性があるように思う。

また、これに関連して、下記のようなネットワークが立ち上がります。先日コメンテーターを務めた日本計画行政学会の方から誘われて呼びかけ人に名前が入っています。
3月17日に議員会館でシンポのようなものをやる予定です。私も話す予定です。
詳しくはまたブログで連絡します。
法案の審議自体は5月ぐらいではということなので、それまでにどれだけ動けるかが鍵になるかもしれません。

多くの方に関心を持ってもらえるとありがたいです。よろしくお願いします。

追記 内閣府のHPで法案が公表されました。
3月3日付けの「公文書等の管理に関する法律」をご覧下さい。
http://www.cao.go.jp/houan/171/index.html


市民のための公文書管理法の制定を求めるネットワーク (略称「公文書市民ネット」)

設立趣意書(案)

 私たちは、市民の知る権利を確保し、国の機関や地方公共団体等の透明性を実現するためには、情報公開法が機能する上での前提となる公文書管理法の制定が必要不可欠であると考えています。このように公文書管理法は、国等から市民への説明責任を保障し、情報公開を実質的に促進することから、民主主義の基盤となるものです。
 年金記録の紛失やC型肝炎感染被害者リストの放置、海上自衛艦航泊日誌の廃棄など公文書の杜撰な管理実態を踏まえ、政府は公文書管理法案を3月3日に閣議決定し、国会に提出しました。
 私たちは政府が公文書管理法案を提出するに至ったことを歓迎するものの、提出法案に公文書が公共財であり、市民の共有財産であるとの記述がなく、「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」(座長・尾崎護元大蔵事務次官)における当初の方針から大きく後退したと指摘せざるを得ません。
 私たちは「政府のための公文書管理法」ではなく、「市民のための公文書管理法」を制定するべく、多くの市民の参加により、提案書をまとめ、全国会議員と各政党に理解を求めるため「市民のための公文書管理法の制定を求めるネットワーク」を設立するものです。


2009年3月17日 

川村一之(戦争被害調査会法を実現する市民会議事務局長)
小林幸治(市民がつくる政策調査会事務局長)
瀬畑 源(歴史研究者)
西村啓聡(弁護士・日弁連情報問題対策委員会幹事)
檜皮瑞樹(早稲田大学大学史資料センター助手)
まさのあつこ(ジャーナリスト)
三木由希子(情報公開クリアリングハウス理事)
*50音順:3月3日現在

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問
- | 次の10件 2009年公文書管理法問題 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。