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特定秘密保護法関連のパブコメについて(6)内部通報制度 [2014年公文書管理問題]

特定秘密保護法の施行令案などについてのパブコメが現在行われている。
今回が6回目。7回目はパブコメ本文なので、解説はこれがラスト。

特定秘密保護法関連のパブコメについて(1)募集内容〔修正版)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-07-28
特定秘密保護法関連のパブコメについて(2)施行令案、特定秘密廃棄問題
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-03
特定秘密保護法関連のパブコメについて(3)運用基準案
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-05
特定秘密保護法関連のパブコメについて(4)特定秘密指定管理簿
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-07
特定秘密保護法関連のパブコメについて(5)監視機関
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-13

最後に解説をするのは内部通報制度について。
資料はこちら。引用はページ数のみ記載する。

特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000115916

特定秘密保護法の適正な運用を確保するためには、内部から告発する制度が必要不可欠である。
当たり前だが、特定秘密は適性評価を受けた限られた人しか見ることはできない。
よって、不適切な情報を特定秘密に指定していることなどは、実際にその文書を見ている内部の人しか不正を告発することはできない。

よって、この内部通報制度をどのように充実させるかが、適正運用のキーポイントになる。

なお、この通報制度は各行政機関を叩くために存在するのではない。
むしろ、適正に運用されているということを国民にアピールすることこそ、制度の信用を担保することに繋がるのだ。
もし、特定秘密制度を安定的に運用したいと政府が考えているなら、内部通報制度が「機能するように」整備することが、制度の信用に直結することを意識すべきである。

さて、今回提案された内部通報制度。果たして機能しうるものなのだろうか。
はっきり言おう。これは機能しない。

仕組みを紹介しながら解説してみる。

もし、特定秘密を扱っている人が、「特定秘密の指定及びその解除又は特定行政文書ファイル等の管理が特定秘密保護法等に従って行われていないと思料する場合」に訴えることができる(30頁)。
なお、法令違反のみが対象であり、かなり幅が狭い。

情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は、会員向けニュース(7月18日)において、「失敗を隠ぺいしたり、能力不足を隠すためなど、秘密とすることにより特定秘密を保有するものが得る可能性のある不当な利益の想定は、もっと広く想定すべき」と主張されているが、私も同感である。
法令違反以外にも、たとえ特定秘密に指定可能な情報であったとしても、特定秘密に指定することで官僚達が不当に利益になるような情報については、訴えることを可能にすべきではないか。

訴えることができる窓口は2つある。
1つは、自分の機関の通報窓口
もう1つは、独立公文書管理監に設置された通報窓口

ただし、基本は自分の機関の窓口に連絡しなければならない。
管理監に通報するためには、次のいずれかの条件をクリアする必要がある(30-31頁)。

・自分の機関の長が、通報者に「調査を行わない」通知をした後
・自分の機関の長が、調査結果を通報者に報告した後(つまり通報を却下された時)。
・自分の機関の窓口に通報すると、「不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合」
・自分の機関の窓口に通報すると、「当該通報に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当な理由がある場合」
「個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合」


相当にハードルが高い。
「信ずるに足りる相当な理由」なのだから、漠然と不安ではダメである。
訴えたら自分が危ないということを通報者が証明する必要があるのだ。

さらに、訴える時の方法は、「特定秘密である情報を特定秘密として取り扱うことを要しないよう要約して通報するなどし、特定秘密を漏らしてはならない」とある(同30頁)。
特定秘密の内容を伝えずに特定秘密の指定に問題があるって、どうやれば伝えられるのか私には想像もつかない。

さて、その通報によって、行政機関の長が調査を行い、問題があれば解除することになる。
「処理」した時には独立公文書管理監に報告する必要がある(「受理」ではないので、結果だけの報告か)。

独立公文書管理監に訴えることができた時は、管理監が当該行政機関への実地調査などが可能である。
しかし、やはり前回解説したのと同様に、「安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」を理由に、特定秘密の提供を拒否できる。

つまり、管理監に訴えても十全に調査をできる可能性は閉ざされている。
もし不当に指定をされていたとしても、拒否すれば調査されない。

なお、通報窓口の職員は、通報者の特定に繋がる情報を漏らした場合は処分の対象になる。
ただ、そもそも特定秘密を扱える人は相当に限定されるはずなので、訴えた場合の人物特定は容易である可能性がある。
また、特定が容易である部局の職員が通報するのはかなり難しい。

また、通報したことを理由とした不利益な取扱いを行った者も処分の対象となる。
これについては、一般企業では「能力が無い」とか別の理由を付けて左遷するなどは良くある話なので、歯止めになるかは疑問である。

つまり、この仕組みを見ると「自分の行政機関内でもみ消せ」と言わんばかりである。
これで機能するとはとてもではないが思えない。

なお、内部の通報窓口を第一に報告する理由だが、私がある方を経由して聞いた話だと、「通報者が勘違いをして、適正なものを管理監に通報してしまった場合、不当に特定秘密を漏えいさせたことになって処分の対象になりうる。よって、内部でまずは適正な訴えかどうかを確認するのが筋であるということだそうだ。

そんなアホな、である。
管理監は何のために存在しているのか。
管理監は適性評価も受けている。そこに特定秘密を伝えて何が問題があるのか。
管理監やその下の情報保全監察室での情報取り扱いを厳密にすれば良いのではないのか。

結局は自分たちの機関内でもみ消そうとしているだけじゃないのか。
内部通報を内部で抑え込み、管理監には結果だけ報告する。
管理監に万一訴えられたとしても、文書を見せることを拒否する。

これで、どうやって内部通報者は安心して通報できるというのか。

内部通報制度を設けたこと自体は評価はする。
だが、これでは「アリバイ」に作ったとしか言えないしろものであり、機能するとは思えない。

少なくともこれを機能させるのであれば、

独立公文書管理監への通報をどのような状況でも可能にする。
通報された対象文書を独立公文書管理監は原則閲覧可能とする(※)。
・通報する際には特定秘密の内容を含めて窓口担当者に伝えることを可能にする。たとえ勘違いでも処分の対象にしない。
・通報できる条件は、法令違反だけではなく、指定によって不当な利益を得ようとしているようなものまで広く取る。


(※)余りにも重大な情報で見せられないというのであれば、例えば官房副長官が閲覧して首相に判断をあおぐなど、政治責任を明確にすべきでは。
(米国では、情報保全監督局(ISOO)の監査を行政機関が拒否しようとする場合、国家安全保障問題担当大統領補佐官を通して大統領が判断する→内閣官房作成資料参照)。

といったようなことは必要なのではないか。
もちろん、前回書いたように、独立公文書管理監がどこまできちんと機能するのかが問われるわけだが・・・


冒頭にも書いたように、適正な運用のためには、内部通報制度は重要な意味を持つ。

これが機能しなければ、特定秘密は無尽蔵に増えていく可能性が高くなる。
それは、国民の知る権利への侵害に繋がるだけでなく、秘密が多くなりすぎて、現在の米国のように秘密が過剰になって、かえって本当に重要な情報がわからなくなるという事態になりかねない。

この制度の充実化は、今回の運用基準案の最も問題とされるべきところである。
是非ともこの点の改善は強く主張したいと思う。

施行令案や運用基準案の解説はここまで。
次回は私の作ったパブコメを公表して最後にします。
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特定秘密保護法関連のパブコメについて(5)監視機関 [2014年公文書管理問題]

特定秘密保護法の施行令案などについてのパブコメが現在行われている。
今回が5回目。

特定秘密保護法関連のパブコメについて(1)募集内容〔修正版)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-07-28
特定秘密保護法関連のパブコメについて(2)施行令案、特定秘密廃棄問題
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-03
特定秘密保護法関連のパブコメについて(3)運用基準案
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-05
特定秘密保護法関連のパブコメについて(4)特定秘密指定管理簿
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-07

特定秘密保護法が「適正」に機能するためには、監視機関がどれだけ有効に機能するかが重要である。
基準の厳密化などは、いくら規則を決めても限界がある。
だからこそ、濫用されないような仕組みを制度の中に組み込む必要がある。

では、今回の特定秘密保護法における監視機関は、有効に機能するであろうか。

これは多くの人が批判していると思うが、「どうも有効に機能しなさそう」である。
監視機関の話は、特定秘密保護法案の審議の最後の最後で突然現れて、首相答弁などで形が決まってしまったものである。
そのため、その首相の発言に縛られていることもあり、なんとも微妙な組織が提案されている。

まず、政府案の仕組みを紹介してみる。
内閣官房が作った図と運用基準案を見ていただきたい。

特定秘密保護法 適正確保の仕組み(案) 説明資料
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000115918
特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000115916

まず、内閣に「内閣保全監視委員会」が作られる。
設置は閣議決定による。
メンバーは官房長官をヘッドにして、事務次官級で構成される。

機能としては、法第18条第4項で書かれているように、内閣総理大臣が行政各部を「指揮監督」することを補佐する機関である。
年一回の報告があった時に、その精査などを行う。

この「適正確保」の「適正」は、要するに行政内部にとっての「適正」である。
ある機関で特定秘密にされているのに、別の機関ではされていないのをチェックするなどといった、管理の徹底化が目的としては考えられる。
また、ある省が特定秘密に指定してしまったために、情報の共有化がやりにくくなって仕事に支障が出る時に、それを外す協議をするといったことも想定されているかもしれない。

こういった組織自体は必要ではある。
ただ、これは国民の側が想定している「監視機関」ではない。
恣意的な指定を止めるようなことは難しいだろう。

そもそも集まっているのが事務次官であり、特定秘密を各行政機関で指定するのは、形式的ではあるが大臣である。
事務次官が大臣の決定したことに異議を唱えるということが、官僚組織で果たしてできうるものなのか。
かなり厳しいのではと思わざるをえない。


次に、内閣府に「独立公文書管理監」とその事務を担う「情報保全監察室」が置かれる。
秘密保護法の附則第9条の「独立した公正な立場において検証し、及び監察することのできる新たな機関」がこれにあたる。

このために内閣府の訓令の改正が行われる。
ちなみにこのパブコメも募集されている(これについてはそれほど突っ込むところもないが)。

運用基準案から、その仕事を見てみると、

・法律や運用基準に則って行われているかを検証・監察
・必要がある時は資料の提出・説明・実地調査が可能
・適正に行われていないと認定した場合、強制的な特定秘密の指定もしくは解除(各行政機関の長へ是正を要請することも可能)
・各行政機関の長は、管理監に特定秘密指定管理簿が更新された時に、情報の写しを提出する義務。また1年1回は保存場所などの報告義務も。


内部通報者制度は次の記事で論じるのでここでは記載しない。

ここで問題となるのは

・果たしてまともに監視機能が働くのか
・監視機能を働かせようとしても、その条件があるのか。


である。

まず、こういった監視機関を官僚組織ではない所に置くというのは、なかなか難しいだろう。
米国の制度を見ても、こういった監視機関自体は官僚組織の一部ではある。
ただ、米国は大統領直轄の国立公文書館の一部局(情報保全監督局(ISOO))であり、人事の独立性も高い(関係機関から出向してくるが、元の機関に戻らない)。

日本の場合はどうなるだろうか。
まず置かれているのが内閣府である。
よって、独立性は高いとは言えない。

また、秘密保護法制定時の話だと、事務を担う情報保全監察室には各機関の課長未満級が出向してくるということだった。
これだと、出向元に戻ることが前提になるので、厳しい審査は行わなくなるだろう。

ただ、各機関の文書構造や情報類型などは、働いた経験が無いとなかなかわかりにくい。
となると、出向元に戻らない職員を配置することが必要となるだろう。
例えば、定年が近い職員を連れてくるとか。

また、民間から弁護士などを職員として雇用して配置するなども、適正な運用のためには考えても良いだろう。
こういった人事慣行が、監視が機能するためにはかなり重要な意味を持つと思われる。

このあたりは運用基準案には入っていない。
また人事の問題は入れるのも難しいかもしれないとは思う。

仕事の内容を見ると、特定秘密の強制解除権(運用基準案28頁、Ⅴ3(1)ウ)があるのはいい。
問題がある時の実地調査の権限があることも良い。

問題は「安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」がある場合は、各行政機関が管理監への文書提供を拒否できることである(同29頁、(2)ウ)。

つまり、国会だけではなく監視機関に対してすら、文書提出の拒否権が行政機関に存在しているのだ。

これは話にならない。
もし、管理監が頑張って国民からの期待に応えようとしても、それを機能させる前提条件が確保されていない。
監視をする以上、当然すべての文書へのアクセス権を管理監には保証するべきである。


監視委員会と管理監を見ていると、米国を参考にしつつも、重要なものが欠落していることに気づく。

例えば、監視委員会は米国の省庁間上訴委員会(ISCAP)を参考にした形跡があるが、米国には存在する国民からの秘密指定解除の訴えを受けつけることはしない。
8月初めにやっていたNHKスペシャル「特定秘密保護法を問う~"施行"まで4か月~」で、米国の情報保全監督局(ISOO)の局長は、自分たちが報告書を出すと、国民からガンガンと問い合わせが来るということを述べており、国民が秘密指定への異議申立てができるといったような監視機関自体を国民が監視するしくみがあることが、彼らへのプレッシャーになっていることがうかがえる。

こういった国民との回路が存在しないのも、日本の監視機関の特徴でもある。
この点はパブリックコメントで問題にしなければならないと思う。

全体の評価としては、機能する可能性は運用次第でゼロとは言わないが、全く機能しない可能性も極めて濃厚という、なんとも言い難いものができあがったとしか言いようがない。

次回は残った内部通報者制度について。むしろ一番問題なのはこちらである。


追記

ちなみに内閣官房は、今回の運用基準案のパブコメのページに、米国の監視機関の紹介を付けている。
なのに、米国と日本の違いがどこにあるのかの説明が一切無い。
他の部分には、他国との違いを説明して「他国にも同じ制度はありますよ!」というアピールをしているのに。

意図的に比較していないようにしてるとしか思えないのだが・・・


追記2

すでに存在している有識者会議である情報保全諮問会議であるが、運用基準案を見ると、年1回の報告のまとめたものを首相から報告されて意見を述べる、ということ以外の権限は存在しない(運用基準案33頁、(2))。

結局、運用基準を作った後は有名無実になりそうである。

参考
法案成立直後に書いた記事も合わせて参照のこと。

「第三者機関」について改めて考える(特定秘密保護法)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
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特定秘密保護法関連のパブコメについて(4)特定秘密指定管理簿 [2014年公文書管理問題]

特定秘密保護法の施行令案などについてのパブコメが現在行われている。
今回が4回目。

特定秘密保護法関連のパブコメについて(1)募集内容〔修正版)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-07-28
特定秘密保護法関連のパブコメについて(2)施行令案、特定秘密廃棄問題
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-03
特定秘密保護法関連のパブコメについて(3)運用基準案
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-05

今回の話は「特定秘密指定管理簿」について。
公文書管理に興味が無い方にはマニアックな話ではあるので大変かもしれないが、結構重大な話だと思うので御覧いただければ(これまでも十分マニアックと言えばそうなんだが)。

特定秘密を管理するためには、当然ではあるが「帳簿」は必要である。
現在パブコメが行われている施行令案の第4条において、この帳簿=「特定秘密指定管理簿」を作成する義務が課されている。
この管理簿には、指定をした年月日や有効期限、中身の概要、どの要件を満たすのか(別表の中のどの項目に当てはまるのか)、などを記載する必要がある。
つまり、「特定秘密」に関する情報は管理簿にきちんと登載しなければならないのだ。

私が気になるのは、特定秘密が満了などによって解除された時の仕組み。

満了や途中での解除などの時には、そのことを管理簿に書く必要がある(施行令案第8条第1項第3号など)。
もちろんこれは必要不可欠なことである。

ところが、運用基準案などを見ても、この記載がいつまで残るのかについて全く触れられていない。
解除された後も永久に帳簿上に記録が残り続けるのか、それとも一定年度が経過すると情報が削除されるのかが、これではよくわからない。
意図的に触れていないのか、気づいていないのかは何とも言えないが。

ちなみに、公文書管理法において、文書の保存期限が満了して国立公文書館等へ移管or廃棄になった際は、行政文書ファイル管理簿からすぐに抹消され、「移管・廃棄簿」というものに記載が移される。
(公文書管理法施行前は5年間残すということになっていた。)
このあたりは以前にブログを書いたことがある。

移管・廃棄簿について考える
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2011-12-01

特定秘密指定管理簿においては、その記載が「文書の移管・廃棄が確定するまで」は確実に残すことは必要不可欠だろう。
つまり、特定秘密が例えば3年とかで解除されたとしても、その文書の最終的な保存年限が来た時に、その文書が特定秘密であったのかどうかの照会ができるようにしておく必要があるからだ。
それができないと、一体どの情報が特定秘密であったのかがわからなくなってしまう。

これは、最終的に文書を国立公文書館等に移管して公開するか、それとも廃棄するかを判断する際に、非常に重要な情報となる。
行政文書を廃棄する際には、内閣総理大臣の同意が必要となっており、実質的には内閣府公文書管理課や国立公文書館の職員がチェックを行っている。
ただ、基本はリストが回ってくる形(必要があれば原本確認)なので、どれが特定秘密であったのかどうかがわかるような状態でチェックが行われる必要がある。

そうしなければ、特定秘密であった文書が、こっそりと闇に葬られる可能性が高まるのだ。
最後に公開されて検証される必要があるはずなのに。

またこれに関連して気になるのは、公文書管理法において作成義務がある「行政文書ファイル管理簿」との関係である。
特定秘密文書も公文書管理法の適用を受けるので、当然ではあるが行政文書ファイル管理簿にも情報が登載されることになる(ただし一般へは非公開になるはず)。
そうなると、行政文書ファイル管理簿と特定秘密指定管理簿の二重帳簿のような形になるわけだ。

今の仕組みをみると、特定秘密に関する情報は特定秘密指定管理簿に掲載され、行政文書ファイル管理簿には特定秘密関係の情報は載らないしくみになっているように見える。
ただ、その文書を移管するか廃棄するかは、おそらく行政文書ファイル管理簿に基づいていると思われるので、もしそうであるならば、行政文書ファイル管理簿にも特定秘密であった文書なのか否かがわかるような仕組みが必要だろう。
また、この記載があれば、特定秘密は解除されたがまだ行政文書として各行政機関内に残されている時に、それを集中的に情報公開請求して検証するということも可能なはずだ。

今回書いた話は、いわゆる「検証」する際の必要事項についてである。

「特定秘密」に指定されている間は、一般の人がそれを見ることは不可能である。
だからこそ、それが解除された後に検証をする必要がある。
その検証をきちんと機能させるには、文書が勝手に捨てられずに、最終的には国立公文書館等に移管されて公開される必要があるのだ。
ここが機能しないと、次から次へと闇に葬られてしまう。

この部分の仕組みはもっと慎重に構築する必要があるように思う。

次回は監視機関の話。
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特定秘密保護法関連のパブコメについて(3)運用基準案 [2014年公文書管理問題]

特定秘密保護法の施行令案などについてのパブコメが現在行われている。
今回が3回目。

特定秘密保護法関連のパブコメについて(1)募集内容〔修正版)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-07-28
特定秘密保護法関連のパブコメについて(2)施行令案、特定秘密廃棄問題
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-08-03

今回は運用基準案についての概要を。

「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」に対する意見募集の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072402&Mode=0

特定秘密保護法の運用基準は、法第18条第2項において、有識者会議である情報保全諮問会議で審議され、最終的には閣議決定が必要とされている。
この運用基準に基づいて、各行政機関のそれぞれの規程が決まることになる。

つまり、この運用基準に書かれていることが、特定秘密保護法が施行されたのちに、そのまま行われることになる。
よって、この基準がものすごく重要な意味を持つ。

今回はザックリと注目すべき点を説明したい。
特に重要な部分の解説は次回以降で。

運用基準案はこちら
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000115916
特定秘密保護法の本文はこちら
http://law.e-gov.go.jp/announce/H25HO108.html

運用基準案の文自体も、施行令案ほど読みにくいものでもないので、目を通していただきたい(特に適性評価に関わる可能性のある医師の方は)。

目次を見てみると

Ⅰ 基本的な考え方
Ⅱ 特定秘密の指定等
Ⅲ 特定秘密の指定の有効期間の満了、延長、解除等
Ⅳ 適性評価の実施
Ⅴ 特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の適正を確保するための措置等
Ⅵ 本運用基準の見直し
【別添様式】


となっている。

Ⅰ 基本的な考え方(1~3頁)

ここでは、拡張解釈の禁止や基本的人権や報道の自由尊重、公文書管理法や情報公開法の適正な運用などが掲げられている。
要するに、特定秘密保護法案の審議の中でもっとも問題視された拡大解釈への戒めが書かれている。

この部分は「書いてあることに意味がある」というもの。もし何か問題があった時に、ここを根拠に反論ができる。
もっと良い文面があるかもしれないが、ここの改善に労力をかけるのはあまり生産的では無いかもしれない。
そもそもの法律自体の問題が大きいので・・・

Ⅱ 特定秘密の指定等(3~11頁)

まず、第3条第1項にある「特定秘密の指定方法」について細かく解説している。
特定秘密に指定するためには、「別表該当性」「非公知性」「特段の秘匿の必要性」の3つが必要である。

「別表該当性」は、法の最後についている別表に列挙されている情報しか特定秘密にできない。
そのため、管理簿にどれに当てはまっているのかを書かなければならない。

この運用基準案では、法律にあった23の項目を55項目まで細分化している。
内容を見てみると、確かに細かくなった部分があることは否定しないが、結局曖昧な部分は残っている。
特に特定有害活動(スパイ活動)やテロリズムにあたる第3号と第4号は、ただ単に元の文章を別の書き方をしているだけに見えるものが散見される。

もちろん厳密に書ける限りは書いた方が良いが、残念ではあるが未来が予知できない以上、幅を持たせて書く部分が残ってしまうのはやむを得ない部分もある。
だからこそ、監視機関の質が問われるわけだが・・・

「非公知性」とは、不特定多数の人が知った情報は、特定秘密にできないということ。
外国政府から公表された情報は「公知」とみなすと書かれているので、米国との「密約」が先方で公表されている場合は「特定秘密」にはならない。
ただ、情報公開法の不開示規定を使って「公表しない」かもしれないが。

「特段の秘匿の必要性」は、漏えいが安全保障に関わる等に限定するという書き方。
ここも結局は別表と同様の話で、官僚側の恣意が働く余地は何を書いても残ってしまうだろう。

他には、指定の手続きの仕方や有効期間の設定などについて書かれている。
管理簿にきちんと書くとか、特定秘密とそれ以外の情報をできる限り分けるなどが書かれている。

原発の情報隠しについてずいぶん言われたからか、次のことが書かれている。

特定秘密に指定しようとする情報が、災害時の住民の避難等国民の生命及び身体を保護する観点からの公表の必要性、外国の政府等との交渉の終了その他の一定の条件が生じた場合に指定を解除すべき情報である場合には、当該条件を指定の理由の中で明らかにするものとする(10頁)

有効期間の設定については、プロジェクトに関わるものならその期限とか外国政府の政策に関するなら指導者の任期とか、むやみに長期間指定しようとしないということが書かれている。

Ⅲ 特定秘密の指定の有効期間の満了、延長、解除等(11~14頁)

有効期限が来た時の対応について書かれている。
むやみに延長されることが懸念されていたので、色々と配慮は見られる。

30年を超えて特定秘密にする情報は60年以上でも良いとされている事項(第4条第4項)に基本的に限定するとも書かれている。
また、いくつか情報の例を挙げて、これを延長することは「慎重に判断」(あまり望ましくない)と書かれている。

ア 見積り又は計画のうち、対象期間が定められているもの
 当該対象期間が満了したとき
イ 情報収集活動の方法又は能力
 これらのものを活用しなくなったとき
ウ 暗号
 当該暗号を使用しなくなったとき
エ 防衛の用に供する物、通信網若しくは通信の方法又は施設
 これらのものを使用しなくなったとき
オ 外国の政府等との交渉が困難となるおそれのある情報
 当該交渉が終了したとき


ただ、イなどはおそらく「活用しなくなる」とは警察は言わないだろうとは思うけど。
捜査手法などは、「すべて過去の蓄積から現在の手法が生まれている」と言えばどうとでもなるだろうし。

満了後の措置については、30年以上特定秘密だと国立公文書館等に移管することは明記され、25年を超える場合は廃棄するかは「慎重に判断」をと書かれている。

この25という数字の根拠がまったくもって不明。
なぜこれを10年にしなかったのか理解に苦しむ。

行政文書の保存年限は30,10,5,3,1年という区切り方をしており、各行政機関の文書管理規程を見ていると、10年以上の文書の多くは国立公文書館等へ移管対象となっている。
特定秘密を10年かけるということは、その元になっている文書も10年保存以上の指定をされている可能性は高いわけであり、少なくとも廃棄するかを「慎重に判断」という文言を使うのであれば、10年という数字が妥当な線だろう。
25という数字を出して配慮しているように見せたのかもしれないが、正直、意図が不徹底な規定である。

Ⅳ 適性評価の実施(14~27頁、別添様式(35~91頁)も)

運用基準案で最も量が多い部分。
最後に付いている別添様式に、その具体的な書類の様式が入っている。
適性評価を受ける可能性のある人は、むしろその「別添様式」を見た方がイメージはつかみやすいと思う。

まず、適性評価の際に、思想信条や適法な政治活動、労組での活動について調査をしてはならないということが書かれている。
適性評価はすべて「本人の同意=自発的に情報を提供しているから思想信条の自由は侵害していない」という構造になっている。
「同意が取れていれば何をしてもいいのか」という問題は、以前に記事で書いたことがある。

適性評価と医療への影響(特定秘密保護法)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-07-13

適性評価のやり方は、受けさせたい人の名簿を上司が作る→本人に文書で告知→本人が同意書に署名→本人が質問票記入・本人以外(上司・友人、警察・病院など)への質問調査→OKかどうか決定、という流れ。
もしNoだった場合、苦情の申立ては可能だが、行政機関内での申立てのみなので簡単ではないと思われる。

適性評価で収集した情報は10年保存、最初から評価に同意しなかった場合は3年保存で「廃棄等」と言っているので、廃棄処分するということだろう。
これは個人情報の塊なので、残すというわけにも行かないだろうとは思う。ただこの年数で良いのかというのは議論があっても良いかも。

気になるのは、民間業者に特定秘密を扱わせる際に、契約前に名簿を作成させること。適性評価を行うのは契約後だが。
おそらく、特定秘密を取り扱える人がどれだけいるのかも、契約する際に考慮するということなんだろう。
筋は通っていると言えなくもないが、もし契約に考慮するなら、名簿の段階でこっそり裏で調査しそうでもあり、果たして「契約後に調査します」が徹底されるかは疑問。

巻末の「別添様式」で注目は「別添5」の「質問票(適性評価)」だろう(49~75頁)。
とにかく細かいのが特徴。内容を見ると「踏み絵だな」という印象。

例えば、特定有害活動を聞く部分で「こういった活動を支援したことがありますか」という質問項目がある。
「はい」を選ぶ人はどう見てもいるわけないが、ここに「いいえ」と書かせておいて、あとで警察が調査してなんらかの活動に過去に関わっていたことが発覚した場合、調査書にウソを書いたということで何らかの不利が働く可能性が高い。
(質問票にウソを書いた場合の対処については、運用基準案には記載されていない。ただ、同意書に「正確かつ誠実に答え」との文があり、それに署名した上で調査書を書いている以上、なんらかの不利な対応をされる可能性は十分にありうるだろう。)

Ⅴ 特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の適正を確保するための措置等(27~34頁)

適正な運用のための監察機関や内部通報者保護についての規程。
大きな問題なので、別の記事を立てて詳しく分析したい。ここが今回の運用基準案の一番の論点。

Ⅵ 本運用基準の見直し(34頁)

何かあれば見直すという一文が入っている。定型文。


全体を通して思うのは、とにかく記述が細かい。
政府の側からすれば「誤解を解く」という意味合いがある以上、かなり具体的に記述したということは言えるだろう。
その点はまだ不十分ではあるが、一定の評価はしても良いと思う。

ただ、残念ではあるが、元々の法律の不備や首相の不十分な答弁に縛られていることもあり、誠意をいくら尽くそうとしても、所詮は限界がある。
特に、監視機関や内部通報者保護の問題は、法律にはない部分であるので、もっと強力なものを作れるはずだが、首相のダメな答弁に縛られて中途半端なものを作ってしまっている。
もちろんその答弁から逸脱するのは理論上おかしいわけであり、作った時の進め方がいかにまずかったかということに尽きる。

この運用基準が「本当に守られる」のであれば、それなりの抑止力にはなるはず。
だが、適正な運用を担保する監視機関や内部通報者保護が不十分である以上、いくら「俺達を信用してくれ!」とか言われてもねえという感じである。

次回から個別の部分を論じていくが、管理簿、監視機関、内部通報者保護の3本ぐらいにわける予定である。
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特定秘密保護法関連のパブコメについて(2)施行令案、特定秘密廃棄問題 [2014年公文書管理問題]

特定秘密保護法の施行令案などについてのパブコメが現在行われている。
前回の記事でその募集の概要について説明した。

特定秘密保護法関連のパブコメについて(1)募集内容〔修正版)
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-07-28

今回から募集内容について解説をしていきたい。
まずは、特定秘密保護法施行令案から。

①「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」に対する意見募集の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072401&Mode=0

施行令とは法律を動かすための細則のことである。
法律は国会を通さなければ変えることができないので、変わる可能性のある細則部分は、法律に基づいた政令に基づいて定められることになっている。
これは、特定秘密保護法にかかわらず、多くの法律で行われている。

今回のパブコメ募集では、この施行令案が対象となっている。

私注を付けたので、これを参考にしていただきたい。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/secret_order.pdf
(法学者ではないので読み間違えがあるかもしれません。その際は御指摘いただければと思います。)

法律を曖昧にしておいて施行令に重要なことを一杯書き込むことは、官僚によくあるテクニックではあるのだが、さすがにあれだけ問題になった法律であったこともあり、多くの部分はそれほど違和感はない。

例えば、特定秘密を満了・解除された際に、それぞれの文書の「特定秘密」の表示を消すだけでなく、「満了」や「解除」の表示をすることになっている。
その文書が特定秘密であったことがわからないようにはしないということだ。
当たり前といえば当たり前のことだが、こういったことすらごまかそうとしてきてもおかしくはなかったので・・・

内閣官房が作った説明資料によれば、売りは「指定を行う行政機関の長の限定」ということになるだろうか。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000115912

施行令の第3条によれば、特定秘密の「指定」をできない機関が列挙されている。
ここに列挙されていない機関は残り19。

国家安全保障会議、内閣官房、内閣府、国家公安委員会、金融庁、総務省、消防庁、法務省、公安審査委員会、公安調査庁、外務省、財務省、厚生労働省、経済産業省、資源エネルギー庁、海上保安庁、原子力規制委員会、防衛省、警察庁。

ざっくりと分類してみると

総合・・・内閣官房、内閣府、財務(運営予算の統括)
防衛・外交系・・・安保会議、外務、海保、防衛
公安警察系・・・公安委、金融(スパイ?)、総務(サイバー攻撃)、消防(テロが起きた時の対応)、法務、公安審査委、公調、厚労(細菌兵器テロ?)、経産(防衛産業スパイ)、資エネ(原発へのテロ)、原子力規制委(原発へのテロ)、警察


という感じだろうか。

こういった限定の仕方をしたのは、審議の最中に「TPPは特定秘密なのか?」みたいな疑問が出たので、防衛・公安系以外の機関を外すことで、「誤解」を解こうとしたと見れるだろう。

入っていない機関であれっと思うのは検察庁ぐらいなものなので、限定されたといっても、そもそもこれらの機関ぐらいしか「指定」はしないものと思われる。
ちなみに、あくまでも「指定ができない」だけなので、他の42の機関は他の機関が特定秘密に指定した情報を扱うことは可能である。
なので、ここで指定機関が限定されたからといって、特定秘密の数が減るということではないだろう。

なお、この施行令案で気になったのは、「特定秘密」のまま廃棄できる規定についてである。
(他にも細かくはあるが、「運用基準」案の解説にまわす。)

施行令案の第12条第1項には、各行政機関の長が、運用基準に合わせて規程を作ることが定められている。
この中の10番目に、次の条文が紛れ込んでいる。

特定秘密文書等の奪取その他特定秘密の漏えいのおそれがある緊急の事態に際し、その漏えいを防止するため他に適当な手段がないと認められる場合における焼却、破砕その他の方法による特定秘密文書等の廃棄

特定秘密保護法の審議の際に民主党の長妻昭議員が出した「特定秘密保護法案及び防衛省の秘密解除後の文書公開と破棄に関する質問主意書」(2013年11月28日提出)に対する首相の答弁書(同12月6日)において、次のようなことを首相は述べていた。

特定秘密の保護に関し必要な措置を定める政令等において、秘密の保全上真にやむを得ない場合の措置として保存期間前の廃棄を定めることは否定されない。

関連して長妻議員は、2014年1月31日の衆院予算委員会で質問をしている。
これに対して安倍首相は

 真にやむを得ないときはいつかと私も聞いたんですが、なるほどそうだと思ったんですが、例えば、有事などの際に航空機が不時着をしまして、運搬中の特定秘密が記録された文書が奪取されるおそれがある場合など、そういう場合は、これはその場で奪取されないように破棄をしなければいけない、そういう場合も生じる、これは極めて例外的な状況であります。
 いずれにせよ、このような、緊急やむを得ない、極めて例外的な場合の取り扱いについては、特別な定めとして政令等を定めるかについては、その要否も含め、今後検討していくこととしたい。


と答弁を行っている。
これに対して、長妻議員は興味深いことを述べている。

 私が懸念するのは、仮に、例えばマスコミがスクープをしそうになっている、こういう情報を政府が持っているんじゃないのかと。これは捨ててしまえばないわけですから、そういうことでまさか捨てるということはないようにしなければならないし、あるいは、野党に何かそういう書類の存在を嗅ぎつけられそうになって、これは捨てちゃえばないということだから、捨てちゃおうと。
 安倍総理、お笑いになりますけれども、やはり我々政治家は、そういうことはないように真摯に議論して法律をつくって、政令も、政令は役所、まあ閣議決定ですけれども、つくるわけでありますが、例えば、総理がかわって何年かしてまた別の内閣になったり、時がたつとその法律がひとり歩きして、官僚システムというのは、別に官僚の方個々が悪いわけではありませんが、拡大、拡大、拡大解釈になる傾向があるので、できるだけ抑制的に考えなきゃいけないというのが、特にこの秘密保護法案だと思います。


ここでは、安倍首相は「特定秘密」が廃棄できるのは「緊急事態」に際してのみだと述べているが、長妻議員はそれを疑っているということである。

さて、ではこの施行令案は、長妻議員の疑念を払拭できたのだろうか。
私は「微妙」だと思っている。

まず、すでに引用した施行令案の文章を見ると、確かに「漏えいのおそれがある緊急の事態」で「他に適当な手段がない」時にのみ、廃棄が認められている。
これは問題ないように見える。

ところが、この「緊急の事態」がどういうものであるのか、「運用基準」案に全く書かれていないのだ。

次回以降で説明するが、「運用基準」案は全般的に非常に細かい説明が多く、解けているかは別としても、国民からの「誤解を解こう」という意思を感じさせる文章である。
にもかかわらず、この「緊急の事態」については、次の説明があるだけである。

特に、施行令第12条第1項第10号に掲げる緊急の事態に際する特定秘密文書等の廃棄について、危機管理に万全を期すため、その実施手続その他必要な事項を定めるものとする。(11頁)

つまり、「緊急の事態」が何であるかは、各行政機関の定める規程に完全に丸投げなのである。
というより、おそらく「緊急の事態」は「緊急の事態」のままにしておいて、拡大解釈が可能な状態に置こうという意思を強く感じるのだ。

もちろん、「緊急の事態」のすべてを想像することは不可能である。
だが、ある程度の情報類型は提示し、それ以外の恣意的な運用を妨げるようなことは書かれるべきではないのか。

そして、ここに関連して気になるのは、「運用基準」案の内閣総理大臣への毎年の報告事項の中に「(カ) 過去1年に廃棄した特定行政文書ファイル等の件数」(32頁)という、「特定秘密」の廃棄件数を記載する欄が存在しているのだ。

もちろん、この件数を示すことは必要である。
緊急の事態が起きていなければ、すべての行政機関がここに「ゼロ」を並べるはずなのだから。
この「ゼロ」を並べさせることは重要なことである。

でも、深読みすると、毎年捨てることを想定しているとは読めないだろうか。

特定秘密保護法では、特定秘密の間に文書を廃棄することに対する制限は書かれていない。

「特定秘密」が廃棄されないストッパーは、実は公文書管理法の第8条第2項の、行政文書を廃棄する際には「内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならない」という部分にしか存在していないのだ。
「特定秘密」も行政文書であり、公文書管理法の適用を受けることは、首相も森雅子担当相も国会で明言している。

では、こっそり捨てられずに済むだろうか。

みなさん、秘密保護法案の審議を思い出してほしい。
公文書管理法が2011年4月に施行されたにもかかわらず、その後も重要な文書を勝手に捨てていた行政機関があったことを。
防衛省が「防衛秘密」を捨てていたことを。

この時に防衛省が出した論理は、公文書管理法第3条の「公文書等の管理については、他の法律又はこれに基づく命令に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる」を悪用したものであり、自衛隊法などに文書管理の特別な定めがあると主張して、公文書管理法の適用逃れをしていたのだ。

これとおなじことが、今回の特定秘密保護法でも十分可能ではないのか。
各行政機関が、特定秘密の運用規程に文書管理について混ぜこんで、防衛省と同じような公文書管理法の適用逃れをする可能性は本当に無いのだろうか。

特定秘密保護法の施行令案の「緊急の事態」が規定されている2つ後の条文(第12条第1項第12号)に、次の文章が入っている。

前各号に掲げるもののほか、特定秘密の保護に関し必要なものとして運用基準で定める措置

こういった「その他」の部分が施行令案に入るのは当たり前であるが、この部分を利用すれば、特定秘密の廃棄を各行政機関の規程に入れることは可能なのではないのか?
そして、それを元に公文書管理法の適用逃れが可能なのでは無いのか?
各行政機関の規程、運用基準に合わせて作成する必要はあるが、この規程の案は内閣総理大臣に「通知」する必要はある(運用基準案11頁)が、公表する義務はないのだ。

もちろん、これが深読みで杞憂であったなら、それに越したことはない。

もし、政府の側に、私の考えたような懸念が無いというのであれば、運用基準に緊急事態の定義をある程度書き込むことや、この緊急事態以外の廃棄の禁止を書き込むこと、各行政機関が作成した規程は公表することなどが行われるべきではないかと思う。
または首相からきちんと国会答弁で言質を取っておくべきだと思う。

特定秘密保護法を「適正」に動かすと政府がいうのであれば、疑念はすべて潰すべきである。
もともと疑念を持たれる制度である以上、こういった穴は塞いでほしいと強く願っている。

次回からは、運用基準案の解説に行きます。
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特定秘密保護法関連のパブコメについて(1)募集内容〔修正版) [2014年公文書管理問題]

※本記事は7月28日1時半ごろに上げた記事を大幅に修正したものです。
以前の記事では、パブコメ募集が3つに分かれていたことに気づいていなかったため、内閣官房には不当な批判を行ってしまいました。ここにお詫びします。
あらためて書き直した上で上げ直しました。



特定秘密保護法の施行に向けた動きが活発化してきている。

この法律を動かすための政令(施行令)や統一基準を作るために、特定秘密保護法第18条第2項に基づいて「情報保全諮問会議」が1月に設置され、政令案などが検討されてきた。
この会議の権限などについては、すでに以前ブログで書いているので細かくは述べない。

この会議は、運営のほとんどが裏で行われているため、何を議論していたのかがさっぱり見えてこなかった。
第1回の会議を今年の1月17日に行っているが、第2回が行われたのが半年後の7月17日である。

その間、何をやってきたかというと、個別の委員に官僚がおうかがいを立てて意見を聞いて案を作っていたのである。
詳しい経緯は、第2回資料1に記載されているが、7月2日の「予備会合」のように、委員を集めて会議をやっているにもかかわらず正式な会議としていないことなど、途中経過を見せないことを徹底している。

そして第2回の会議と同時に、数百ページにわたる資料をアップロードして「途中経過を見せましたよ?」とのアリバイを作り、1ヵ月後にパブコメの締切を設定してくるという、パブコメを出す側の事情を相変わらず考えない運営の仕方が取られている。

私は先述した記事において、国民の不安を払拭するためにも「議論をオープンにすること」を主張したが、そもそも正式な会議自体が開かれなかったわけであり、途中経過がオープンにされなかったことは非常に残念でならない。

さて、この第2回の会議を受けて、次のパブリックコメントの募集が始まった。
期限は8月24日までである。

募集しているパブコメは合計3つ。

①「特定秘密の保護に関する法律施行令(案)」に対する意見募集の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072401&Mode=0

②「内閣府本府組織令の一部を改正する政令(案)」に対する意見募集の実施について(特定秘密保護法関連)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072403&Mode=0

③「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(仮称)(案)」に対する意見募集の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060072402&Mode=0

少しかみくだくと

①特定秘密保護法の「施行令」案
②内閣府に独立公文書管理監を置くための組織改正
③統一運用のための基準案


の3つについて聞いている。

関係する資料は各パブコメのページに載っているが、内閣官房が作った特定秘密保護法の法文の読み方マニュアルである「特定秘密保護法の逐条解説(未定稿) ※平成26年7月16日現在」は、これらの資料を読む際に参考になると思われる。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jyouhouhozen/dai2/sankou4.pdf

なお最も重要なのは③である。
特定秘密保護法を運用する時のマニュアルであり、適性評価のやり方や監視機関の機能など、様々な具体的な記述がなされている。

この統一基準は特定秘密保護法第18条第2項で閣議決定が必要とされており、これに基づいて各行政機関での個別の規則が作成されるはずである。
よって、③の内容が非常に重要な意味を持つことになるだろう。



特定秘密保護法は、良かれ悪しかれ、この国のあり方を変えてしまう力があります。
賛成であろうと反対であろうと、是非とも資料に目を通していただいて、パブリックコメントを送ってほしいと思っています。

次回は、まず①についての解説を行う予定。
引き続き、③の解説(②はその一環として解説)、私の作ったパブコメ案などを紹介していきます。
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適性評価と医療への影響(特定秘密保護法) [2014年公文書管理問題]

ある医師の団体から、特定秘密保護法と医療との関係について講演を頼まれて話をしてきた。
そのために、秘密保護法の適性評価と医療について調べてみると、思ったよりもきちんと問題点が書かれていないように感じたので、少しまとめておきたい。

特定秘密保護法において、いわゆる「特定秘密」は「適性評価」をパスしないと扱うことはできない(大臣などは除く)。

「適性評価」を受けられる対象者であるが、国家公務員、地方警察、関係する民間事業者の社員に絞られる。
よって、地方公務員や独立行政法人の職員(国立大学法人も含む)はその対象にならない。
地方においては、警察官や各地の駐屯地にいる自衛官が主な対象にあたるだろう。

適性評価の内容は次のものが含まれる(第12条第2項)。

一  特定有害活動及びテロリズムとの関係に関する事項
二  犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
三  情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
四  薬物の濫用及び影響に関する事項
五  精神疾患に関する事項
六  飲酒についての節度に関する事項
七  信用状態その他の経済的な状況に関する事項


これらを調べるためには、「調査対象者(=本人)の同意」が必要である(第12条第3項)。
また、調べるためには、本人や知人などに質問したりできるだけでなく、「公務所若しくは公私の団体」=警察や病院などに聞くことが可能となっている(第12条第4項)。

さて、病院が対象になっている以上、上記の四~七あたりは、確実に担当医に情報提供の要請が来ることは間違いないだろう(七は診察料をきちんと払っているか否かということ)。
とくに四~六は医師、特に精神科の医師にしかわからないことも多くあるだろう。

そうなると、医師の「守秘義務」(患者の情報は他人に漏らさない)との関係はどうなるのだろうか。

まず、国会において政府がどういう答弁をしているかというと(鈴木良之内閣官房内閣審議官、衆議院国家安全保障に関する特別委員会、2013年12月2日)

 十二条四項におきまして照会権限が国の行政機関に認められておりますので、照会を受けました団体におきましては回答する義務があると考えております。

と述べており、病院側が問い合わせを受けたら、答える「義務」があるとされている。

また、この問題をもう少し具体的に述べた答弁では(原徳壽厚生労働省医政局長、参議院厚生労働委員会、2014年3月13日)、

 この場合に、例えば医療機関に照会されるということがあるわけでありますが、その場合に、必要な事項は報告を求めることができるというふうになっておりまして、原則として医療機関は報告すべき義務を負うというふうに考えております。その際に、精神疾患に関する事項について調査すること、あるいは必要な範囲内において照会を行うことがあることについて対象者の同意を得ることとされておりますので、医療機関にも本人の同意を得た上で照会するということになると思います。
 このため、医療機関が本人の同意を前提にこの行政機関の長に対する回答を行うことになるということになりますので、そういう意味では医師の守秘義務の違反には当たらないというふうに考えております。


とのことであり、つまり、「本人の同意があるんだから守秘義務違反にはならない」ということが、政府の方針であることは間違いないだろう。

さて、ここで問題になるのは、「①その政府答弁に従って問題ないのか」ということ、もう一つは「②答えた場合になにが起きるか」ということだろう。

まず①については、医師の最大の業界団体である日本医師会が反対していないことから、日医はこれで問題ないと考えている可能性が高い。

しかし、そもそもその「同意」は、拒否すれば出世への道は断たれるし(重要な「特定秘密」を使う仕事ができない)、理由を勘ぐられる可能性も高いので、事実上「強制」に近いだろう。
そういった「同意」を「自発的」と見なせるのかという問題はあるだろう。

日本精神神経学会は、「特定秘密保護法における適性評価制度に反対する見解」(2014年3月15日)において、この「同意」のあり方を勘案した上で、「対象者の権利を損なわず、治療関係にも影響を及ぼさない対応が求められる」とし、

この法に基づく情報提供の要請は、患者自身のためのものではなく、政府が秘密裏に規定する特定秘密への忠誠心に関して実施する公安上の目的によるものである。従って、医師に科せられた守秘義務を解除する理由には到底なるとは思われない。

として、情報提供を拒否することができると述べている。

この論理で情報提供要請を拒否できるのかは、医学に素人の私にはわからないが、少なくとも「同意」があれば守秘義務違反にならないということは簡単には言いきれないということは良くわかる。

また、①がOKだったとして、実際にもし医師が情報提供要請に従うことが当たり前になった場合、これによってなにが起きうるのだろうか(②)。

まずは、患者が正確な病状を医師に話さなくなる可能性がありうるだろう。
特に精神疾患や飲酒癖については、情報を提供されてしまうのだから、将来的な出世などのことを考えれば、医者に黙ってた方が良いかもしれないと考える人が出てもおかしくはないだろう。

また、場合によっては、「不利になることを書かないでくれ」と医師に頼んでくる患者もいるかもしれない。
もし適性評価にパスしなかった際に、医師が逆恨みをされる可能性だってなくはないだろう。

なお、国会で民主党の足立信也参議院議員(医師出身)が質問をしていたが(参議院厚生労働委員会、2014年3月13日)、適性評価を通った人が病気になり、精神的な副作用のある薬物で治療を行うようになった時にどうするのか。
いちいち、薬を飲んでいることを上司に報告するのか(外されるかもと考えれば申告しない可能性もありえよう)、医師の側が自主申告するのか。

さらに、この適性評価は、上記の一~三あたりは警察が調べることになる可能性が高く、さらに適性評価自体を警察に丸投げする機関が出ることもも十分にありうる中で、果たしてこういった精神病患者の情報を警察に集中させる可能性への警戒はないのだろうか。

これについては、日本医師会の特区対策委員会が「特区の現状と課題および対応について」(2014年3月18日)で、

 さらに適性評価と称して遺伝子情報を含むIT化されたあらゆる情報が、特定秘密保護法の名の下に、国民のまったく知らぬ間に収集され利用され、優生思想に基づく生命の選別までもが実行され、それらの事実すら明らかにされない社会になることも懸念される。

という指摘を行っている。
やや焦点がずれているような気もしなくもないが、医療関係の情報を、国などが集中的に収集することの危うさへの警戒心があるということだろう。
この適性評価のために集められた情報は、目的外使用はしないということにはなっている(第16条第1項)。
しかし、それがどこまで守られるのかはなんとも言いがたい。

ここまでを考えてみると、「本人の同意」があるから「守秘義務違反にならない」というような簡単な話ではいかないのではないか。
もっと、この点については、きちんと詰めて議論されるべき問題だと思う。

また、現場の医師や業界団体は、秘密保護法施行後のさまざまな状況を想定して、対策を考えておく必要があるのではないだろうか。

医学関係は素人なので(普段は公文書管理制度から論じている)、もしなにか誤解している点があれば御指摘願えればと思う。
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日本歴史学協会史料保存利用問題シンポジウムで話します [2014年公文書管理問題]

日本歴史学協会の史料保存利用特別委員会の企画によるシンポジウムで話します。
ご興味のある方は是非お越し下さいませ。

史料保存利用問題シンポジウム

  アーキビスト認定制度をめぐる現状と公文書管理制度

  主催:日本歴史学協会・日本学術会議史学委員会主催
  後援:全国歴史資料保存利用機関連絡評議会・日本アーカイブズ学会

日時:2014(平成26)年6月28日(土) 13:30~17:30

場所:駒澤大学 駒澤キャンパス1号館1―204教場
http://www.komazawa-u.ac.jp/cms/campus/c_komazawa/

《開会挨拶》 木村茂光(日本学術会議会員 帝京大学教授)

《報告》
石原一則(日本アーカイブズ学会会長)
  「学会登録アーキビスト制度について」

富田健司(栃木県芳賀町総合情報館)
  「地方自治体における公文書館政策の動向―条例制定、公文書館機能、専門職―」

瀬畑 源(長野県短期大学助教)
  「特定秘密保護法と公文書管理制度」

全体コメント
高埜利彦(日本学術会議会員 学習院大学教授)

《閉会挨拶》 廣瀬良弘(日本歴史学協会会長 駒澤大学学長)

ビラ
http://www.nichirekikyo.sakura.ne.jp/sinpo2014-6.pdf

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「議事の記録」と「議事録」は同じではない [2014年公文書管理問題]

日経新聞の記事。引用します。

閣僚会議の議事録作成義務化へ 公文書管理委が指針改正案
2014/5/29 20:38
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2902E_Z20C14A5PP8000/

 政府の公文書管理委員会(委員長・御厨貴東大名誉教授)は29日、行政文書の管理に関する指針の改正案をまとめた。政策テーマごとに開く閣僚会議の議事録作成を義務付けることを明記。議事録には開催日時や場所、発言者名や内容など6項目を盛り込むよう求めた。公開の可否は各府省庁に委ね、7月1日から施行する。閣僚会議は現在、172ある。
(引用終)

この問題は、2012年の原子力災害対策本部議事録未作成問題に端を発し、閣僚が参加している会議の内容をどのように記録するのかが焦点となった。
これまでは、会議によって議事録を作っていたり、概要は作っていたり、両方作っていなかったりとバラバラであり、公文書管理法第4条における、政策の意思決定を跡づける文書をきちんと作成するという義務、を果たしていないという批判があった。
民主党から自民党に政権が代わって放置されていたが、秘密保護法のバーターで公明党が閣議の議事録の作成を求め、あわせて閣僚が参加する他の会議の記録についても検討が続いていたものである。

4月から閣議とそれと同時に行われる閣僚懇談会の議事録が公表された。
これについては、すでに以前に記事を書いている。

閣議議事録公開と閣僚会議の議事録問題
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22

さて、「閣僚会議の議事録作成」が決まったと各紙で報じられたが、その問題となる「行政文書の管理に関するガイドライン」の改訂案をよくよく見てみると、どうも違和感がある。

「行政文書の管理に関するガイドライン」は公文書管理法の施行規則のようなものであり、これに基づいて各行政機関の公文書を管理する規則が定められている。

今回の改正の主な部分を見ると、

 なお、審議会等や懇談会等については、法第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成するものとする。

となっている(赤字が修正部分)。

では修正前がどうなっていたかというと

 なお、審議会等や懇談会等の議事録については、法第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、発言者名を記載した議事録を作成する必要がある。

比較してみると、

1.「発言者名」→「開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容」と具体的になった。
2.「議事録」→「議事の記録」となった。
3.「必要がある」→「ものとする」として、義務的な表現へと変わった。


1と3は問題ないだろう。

問題は2である。
なぜ「議事録」が「議事の記録」に置き換えられているのだろうか。

そもそも「議事の記録」という言い方が出てくるのは、閣議等の議事録公開の時である。
この時の「閣議等の議事の記録の作成及び公表について」(2014年3月28日閣議決定)の中で、「閣議及び閣議後の閣僚懇談会(以下「閣議等」という。)の議事の記録(以下単に「記録」という。)の作成及び公表・・・」として使われたのが最初である。

さて、この「議事の記録」。メディアでは「議事録」だと思われている。
ただ、すでに情報公開クリアリングハウスが指摘をしているように、閣議等の「議事の記録」では、「公表時点で情報公開法第5条の定める不開示事由に該当する内容については記録しない」こととなっている。
つまり、すぐに公表できない情報については「記録しない=文書に書かない」となっているのだ。

(なお、情報公開クリアリングハウスの会員向けのメルマガ(2014年6月2日付)では、「閣議等の議事録の記録の作成手順」という内閣官房の内部文書にこの点が記載されており、内閣官房は「情報公開請求されると非公開該当性について争われる可能性が出てくるため〔引用者注:墨塗りにして隠してある部分が、本当に隠すべき情報なのかを裁判で争われるということ〕、それを回避するための対応である」と認めているとのことである。)

つまり、「議事の記録」と官僚達が呼んでいるものは、実は「逐語ですべてを記録した議事録ではない」のである。
よって、恣意的に情報を落とすことが担保されている。

またもう一つ気になるのは、上記の部分のもう少し後に、「議事概要又は議事録」と書いてあった部分を「議事の記録」と書き換えている部分があるのだ。

こうなってくると、「発言者名及び発言内容」を記した「議事概要」も「議事の記録」に入る可能性があるという疑いが生じてくる。
つまり、「○○さんは××のような発言を述べていた」という形で、細かいニュアンスや具体的な内容を避ける形での「議事の記録」が作られる可能性も排除されていないのである。

よって、報道機関が報じた「これで議事録がきちんと作られます」というのは、本質を見れてないのではという気がしてならないのだ。

なお、すべての会議で議事録を作成した場合、当然現場の仕事負担は増えるはずである。
また、これまで意図的に議事録を作ることを避けてきた防衛関係の会議でも記録を作る必要が出てくる。

それなのに、なぜ全く抵抗された気配もなく、この「議事の記録」の話がサックリ出てくるのか。
これは、官僚側が、このガイドラインの改定を「逐語の議事録の作成義務」であるとみなしていない証拠なのではないか。

彼らが「議事録」を「議事の記録」と置き換えたのは、当然ながら「ただの語句の訂正」というレベルの話ではないだろう。

なお、このガイドラインの改定については、パブリックコメントが募集中である。
期日は6月11日(水)まで。

私が書こうとするのは以下の点である。
この3つをガイドラインに追加することを求めたい。

①閣僚会議のすべてにおいて録音を義務づけること。
②録音データは行政文書として取り扱い、保存期間は議事録と同じ期間に設定し、期間満了後の移管処置も同様に行うこと。
③議事録については、出席者への回覧をできる限り省略し、「担当官による文字起こし」という記載を明示すること。


まず①について。
録音をきちんと行い、それを残しておけば、何か議事録をごまかそうとしてもバレる。
これは正確な議事録を取らせる抑止力になるだろう。
また、文字では伝わらないニュアンスも記録されることになり、のちの検証にも役立つはずである。

もし、流出すると国民を危険にさらすような国家機密に関わる重要な録音については、首相官邸で集中管理するような仕組みを作るなど、対策をきちんと講じれば良いと思われる。
また、データの改竄の可能性もありうるので、閣僚会議のデータの集中管理の徹底化(セキュリティー強化と元データの保存)を図ることが必要だと思われる。

②について。
録音は現在では「私的メモ」と称して、行政文書扱いせずに「担当官個人がメモ代わりに録音したので行政文書ではない」という形で、情報公開対象から外すことがなされている。
議事録の正確性を期するためにも、録音データも情報公開請求の対象とするべきである(もちろん公開するか否かは、情報公開法に基づいて適切に判断すればよい)。

③について。
現在、議事録を作成したがらない理由の大きなものとしては、議事録作成の面倒くささというものがある。
逐語訳をした上で、出席者に回覧してそのOKを取る必要があるのだ(各審議会などでの議事録の公表が1ヵ月とかかかるのはそういった理由)。

これの省略を積極的に提唱して、仕事量増加への対処とするべきである。
録音が残っている以上、「私はそんなことを言ってない!」みたいな人が出たら、録音を聞かせれば(公開すれば)いいだけの話である。


今回の議事録作成の目的が、「検証」のためであることを決して忘れてはならない。
「議事の記録」としてしまったことで、現在議事録をきちんと作成しているところすら、不都合な部分の削除や議事概要への変更となりかねないことを危惧している。

おそらくパブコメは形式的なものにすぎないだろうから、このままガイドラインの改定は通るだろう。
その後、実際に「議事の記録」がどのような形で作られているのか、情報公開請求などを用いて監視する必要があるかもしれないと思う次第だ。
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国立公文書館新館建設に向けて [2014年公文書管理問題]

2014年5月16日に、「国立公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議」が発足して初の会合が開かれた。
国立公文書館は歴史的に重要な公文書を保存して公開する施設であるが、すでに書架は満杯になりかかっており、2016年度までしかもたないと言われている。

国立公文書館は歴史研究にも重要な施設ではあるが、国民に対する説明責任を果たすという意味でも重要な意味を持つ。
昨年末の秘密保護法をめぐる議論でも、「特定秘密」はいずれは国立公文書館に移管されて公開されるということが大きな焦点となっていたことを記憶されている方もおられるだろう。

だが、なかなかに存在が地味で、予算を回してもらえなかったり、人員が増えなかったりと、軽く扱われている傾向がある。
しょっちゅう言われることであるが、人員数だけを見ても、米国の2720人に対して日本は47人。隣の韓国は340人と考えると、いかに日本で国立公文書館が軽く見られているかというのが良くわかる(資料3)。

ただ、自民党の福田康夫元首相が国立公文書館にはずっと関心を持っており、その意図を汲んで上川陽子衆議院議員が色々と尽力されている。
民主党にもこの問題に関心のある議員は何名かいたが、そのほとんどが先日の選挙で落選してしまったのは残念であるが・・・(ちなみに上川議員も前の民主圧勝の際に落選していた)。

上川議員を中心として、国立公文書館の新館建設に向けた動きが自民・公明の議員の間から起き、昨年6月に「国会・霞ヶ関周辺への新たな公文書館建設に関する要請書」が安倍首相に提出された。
この件についてはすでに以前にブログで記事を書いているのでそちらを参照していただきたい。

国立公文書館の新館建設問題
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-08-19
公文書管理推進議員懇話会
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2013-08-30

また、今年2月には「世界に誇る国民本位の新たな国立公文書館の建設を実現する議員連盟」という、ネーミングセンスは「?」と思われるが、自公議員を中心とした議員連盟が作られている。

その後、調査検討費として今年度3400万円の予算が付いた。
今回設置された調査検討会議は、この予算を用いて、本年度に今後の国立公文書館のあり方も含めた検討を行って、新館建設への道筋を付けるということのようである。

2017年度初めに開館したいと考えれば、少なくとも今年度中には建設地を決め、来年度には建設を始めるぐらいのペースで無いと間に合わないように思える。
ただ、予算の原案を作っているのは今頃のはずなので、さすがにそのペースでは無理だろうか。

この会議の基本的検討事項として取り上げられているのは以下の通り(資料4)。

① 国立公文書館が果たすべき機能は何か
⇒例:研究者や一般国民等それぞれの利用者が、公文書館に対してどのような機能を求めているか
② ①の機能を公文書館が現在どの程度果たしているか、十分に果たし得ていない部分がある場合には、どのようにして当該機能を補うか
③ ①の機能と各施設(地域)との関係をどう設定するか
⇒例:歴史公文書の保存、閲覧、展示等の機能は、それぞれ東京都心や地方など、どのような場所においてどのように果たすことが適切か


その上で、検討課題として、17にわたってさまざまな項目が挙げられている(詳しくは資料4の2頁目参照)。

やや気にかかるのは、「利用」の点が前面に出すぎているということ。

もちろん、どうやって利用するかという面を検討するのは悪くない。
ただ、展示機能や教育機能、デジタルアーカイブズの方に余りにも目が行きすぎてしまうと、保存・保管や整理などの内部できちんとやらなければならないこと(特に専門職の養成、採用)が疎かにされてしまわないかが気になる。

そしてなぜこの点を殊更に言うのかというと、国立公文書館が資料として掲げている2013年度の行政事業レビューの中身が気になるからだ。
資料3の⑩(6頁目)に、そのレビューの「外部有識者のコメント」が紹介がされているのだが、例えば

(デジタルアーカイブ閲覧の)サービス提供について、有料化(利用者負担)が合理的なものを識別する必要があるのではないか。
とか
文書利用の有料化について再度前向きに検討すべき
とか
本来、アウトカム指標としては閲覧者数、デジタルアーカイブアクセス数が成果目標として掲げられるべきであり、現在の活動指標はアウトプット指標に過ぎず、評価方法の改善が必要である。閲覧によるデジカメ利用についても手数料を取って事業収入を得ることが出来る様、働きかけをしてゆくべきである。閲覧回数の多い資料を選択して東京におき、他の資料は他の地域へ移転することが全体のコストを圧縮することができる。事業そのものを否定するわけではないが、コスト圧縮努力は必要である。

といったようなことが書かれていることが、ものすごく気になるのだ。
つまり、「閲覧者を増やすのが第一」であり、少しでも「儲けろ」と、今の国立公文書館は言われているのではということだ。

これははっきり言ってお門違いな要求としか私には思えない。
利用者が「歴史研究者」だけだから「利用料を取れ」みたいな発想になってないか。
また、図書館や美術館を想定して、閲覧者数を増やすことが施設の価値であると考えていないか(本来はその二つも、そういった発想で運営するのは間違っていると思うけど)。
また「デジタルアーカイブズは便利」だから、その費用を閲覧者が払えということにならないか。

国立公文書館の機能は、最初にも書いたが、あくまでも国民に対する「説明責任」が第一である。
なので、閲覧者の数自体は二次的な意味合いでしかない。
また、その閲覧に利用料をかけるとかいう発想自体がそもそもとしておかしいのだ。

もちろん、これは国立公文書館のことをあまり理解していない「外部有識者」の一部のコメントにすぎないとは思う。
ただ、複数出ているということは、一人がひたすらこういった意見を述べたということとは違うだろう。

だが、利用の便を良くすることだけに重点が置かれたり、「それに見合う人員や予算が配分されない=その分の費用を利用者から徴収すれば良い」みたいな発想にならないかが不安である。
委員のメンツを見ても、そういう流れになれば止めてくれる方がいると思うので、さすがにそうはならないとは思うが。

国立公文書館でまずは必要なのは、きちんと重要な公文書が遺漏なく移管されること、それを早急に整理して公開すること、それが大事である。
そこの強化を疎かにして、見せることだけに重点を置いてしまえば本末転倒になりかねない。

いずれにしろ、国立公文書館の充実化のためには、権限自体を強めたり、予算や人員を今のせめて倍は増やすとかいったきちんとしたバックアップが必要である。
いまの安倍政権はしばらく続きそうである以上、この調査検討会議で示された方向性へ向けて、自公の政治家が決断すれば前に進むはずである。

ただ単に新しい建物ができたというだけではなく、国立公文書館の「機能」を充実化させる方向へ向かうことを期待したい。

附記
なお、この書類の中にこっそりと「※別途、公文書管理法施行後5年(平成27年度末)を目途とした見直しに向けた公文書管理制度の在り方についての調査検討を実施(平成26年度予算額:13百万円)。」という記述がある(資料4の1頁目)。
ついに、公文書管理法施行5年での再検討が始まるわけである。

どのように改善をする必要があるのか、各団体でしっかり検討して、公文書管理委員会や内閣府公文書管理課にきちんと伝える必要があるのではないか。
私も時間がある時に、あらためてこの点についてはまとめて記事を書きたいと思う。

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