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特定秘密保護法案私注を作りました [特定秘密保護法案]

2013年10月25日に特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法案)が閣議決定されました。
安倍政権は11月上旬に審議に入り、成立を目指す方針です。

この法律は、私がこれまで取り上げてきた公文書管理制度に関して大きな変更を促すものです。
具体的にどうなのかは次の記事で書くとして、記事を書くために自分用として「特定秘密保護法案」の逐条解釈(私注)を作ってみたので、アップロードしておきます。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/secret_law.pdf

あらかじめ申し上げますが、私は法学者ではないので、解釈が完璧かと言われると微妙だと思いますので、そのあたりは差し引いて参考程度に見てください。
また、もし解釈がおかしい部分などありましたら、コメントをいただけると助かります。
データには日付を入れてあるので、改定されれば日付が新しくなります。

ご参考になれば幸いです。

ちなみに、特定秘密保護法案の条文自体はこちらを参考のこと。
http://www.cas.go.jp/jp/houan/185.html
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特定秘密保護法案について考える(9月27日現在) [特定秘密保護法案]

安倍内閣の下で、着々と特定秘密保護法案(秘密保全法案)の作成が進んでいる。
昨日(2013年9月26日)には自民党の会合に法案の原案が提示されたとのことであり、各社で「報道の自由が明記される」一方で「知る権利は書かれていない」(翌日に森担当相は書くことも検討と述べた)などとの報道がなされている。

昨日某所から取材を受けて話しているうちに頭の中が少し整理されたきたので、あらためて法案に対する考え方をまとめておきたい。また後期の授業が始まったこともあり、まとめて書ける余裕が無くなる可能性が高いですし。
ただし、日々状況が変わっているようなので、2013年9月27日の段階での考えということで。

すでに前回のブログで書いたように、特定秘密保護法案と公文書管理法はバッティングする可能性が極めて高い。
ブログを書いた後で、情報クリアリングハウスの三木由希子さんがこの法案の問題点をまとめられたスライドを公開し、さらにさまざまな関連報道がなされて情報が集まってきたので、あらためて公文書管理法との関係を整理する必要が出てきたと考える。

今回の法案の概要を改めてまとめると

・漏えいすると安全保障上問題となるような重要な文書は、行政機関の長の判断で「特定秘密」指定ができる
・「特定秘密」の有効期間は5年だが、行政機関の長の判断で更新可能(回数制限は付いていない)
・職員・外部(業者など)の担当者が「特定秘密」を扱うには、事前に「適性評価」をパスする必要がある。
・「適性評価」は過去の経歴や飲酒時の状態などもチェック対象。家族や同居人も対象となる。
・漏えいした場合、した側だけでなくさせた側も処罰の対象となる。最高刑は懲役10年。


となる。

公文書管理との関係で最も問題となるのは、「特定秘密」の指定を「行政機関の長」のみの判断で可能であるということ。
つまり、指定が適切であるかどうかのチェックが、外部から一切入らないということである。
また、「特定秘密」を受けた文書については、『毎日新聞』9月23日朝刊の記事によると、

内閣官房内閣情報調査室の能化(のうけ)正樹次長は、特定秘密の文書保存・廃棄について「情報が秘密指定中は公文書管理(のルール)に移行することはない」と説明。特定秘密情報が公文書管理法の適用を受けず、省庁の判断で廃棄できる可能性を示唆した。

とのことである。

公文書管理法はそもそも行政文書の管理(作成から移管・廃棄まで)を透明化するために作られた法律である。
管理法の適用を受けていれば、毎年管理状況について内閣総理大臣に報告義務があり、さらに問題があれば内閣総理大臣の命によって実地調査も可能となっている。
つまり、当該行政機関以外からのチェック機能が働くということである。

では、管理法に従わないという論理はどこから出てくるのか。

公文書管理法第3条には次のような条文が入っている。

 公文書等の管理については、他の法律又はこれに基づく命令に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

つまり、他の法律で公文書管理について特別の定めがあれば、公文書管理法の適用外にできるということである。

私自身、今回の法案の関係で、はじめてこの条文の真の存在理由がわかった。
こんな抜け道を作るための条文だったとは・・・
内閣府の説明では、刑事訴訟記録を例にしていたので全く気づかなかった。

そして実はこの条文はすでにある文書を隠すためにすでに使われている。
それは、自衛隊法に基づく「防衛秘密」である。

自衛隊法第96条の2には

防衛大臣は、自衛隊についての別表第四に掲げる事項であつて、公になつていないもののうち、我が国の防衛上特に秘匿することが必要であるもの(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法 (昭和二十九年法律第百六十六号)第一条第三項 に規定する特別防衛秘密に該当するものを除く。)を防衛秘密として指定するものとする。

との規定がある。
先述の『毎日新聞』の記事によると、2001年の改正で入った条文とのことであり、情報公開法の施行と同時に作られたものと推測される。
ちなみに、今回の特定秘密保護法案は、この自衛隊法の条文を明らかに参照した跡がある。

そして、この「防衛秘密」は現在公文書管理法の適用を受けていない。
三木さんの調査によれば、適用外であると防衛省の担当者は明言しているとのこと。
また、『毎日新聞』の先述の記事でも

防衛省の訓令では、秘密指定文書は保存期間が満了すると官房長や局長らの承認を経て廃棄される。「秘密」の必要がなくなっても国民は目にすることはできない。

とのことであり、行政機関内部の判断で文書が廃棄できる以上、公文書管理法の適用外であることは明らかだろう。

法的な根拠は、おそらく自衛隊法施行令の第113条の2~14に、防衛秘密文書の管理規定が書いてあるので、これが公文書管理法第3条の「他の法律又はこれに基づく命令に特別の定めがある場合」に該当しているのではないか。

「防衛秘密」がすでにこういった防衛省内で独自に管理されているという状況である以上、「特定秘密」も同様の扱いを受ける可能性は高いだろう。

なお特に、「防衛秘密」に指定した文書を、最終的には国立公文書館に移管せずに廃棄しているという現状は極めて憂慮すべき問題である。
米国では、こういった秘密指定文書でも、必ず国立公文書館に送られ、一定期間の後に公開されて検証の対象となっている。
というのは情報は劣化するものであり、一定の年限が経過すれば、ほとんどの情報は隠す必要の無い文書となるからだ。

三木さんも述べているが、秘密指定は「知る権利の保障の放棄」や「アカウンタビリティーの放棄」を意味しないのだ。
すぐには見せられなくても、いずれは検証のためにきちんと公開をするということは必要不可欠である。
今の法案概要を見る限り、「特定秘密」の指定は行政機関内で永久に更新可能なので、重要な文書は行政機関内で隠し持ち、それ以外は秘密裏に廃棄して、国民に対する説明責任を放棄するということになるだろう。

よって、「特定秘密の指定に第3者が関与できる仕組み」と「公文書管理法に基づく文書管理の運用」の2つは、知る権利との関係で焦点となるのではなかろうか。

「報道の自由」を認めるか否かみたいな所のみで議論が終結しないことを願っている。
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秘密保全法案(特定秘密保護法案)と公文書管理法(仮説) [特定秘密保護法案]

安倍内閣は、2013年9月3日から「特定秘密の保護に関する法律案(秘密保全法案、特定秘密保護法案)の概要」(以下「概要」と略す)に対するパブリックコメントを始めた。
「概要」に対するパブコメということで、いまいち意図がつかめないところではある。
だが、公文書管理の視点からすると気になることがかなりあるので、とりあえず現状の考え方をまとめてみたい。
法案の具体的な内容などが出てくれば、意見が変わるかもしれません。

まずは「概要」の説明から。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000103648

秘密保全法案は、機密情報の保全を目的とするもの。
簡単に説明すると、重要な機密文書は「特定秘密」の指定をし、扱う人は適性評価(自分や家族の個人情報を調査される)をクリアした人のみとし、情報の漏洩に対しては漏洩した側だけでなくさせた側も厳罰(懲役刑もある)に処するというもの。

この法案の元となったのは、民主党政権下で行われていた「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」最終報告書(2011年8月8日)。
この報告書が出た当初から、適性評価が人権侵害である、特定秘密を広範囲にかけて国民から情報を隠蔽するために利用される、などといった激しい批判にさらされ、民主党は法案化を断念していた。

ではなぜこのタイミングで自民党が法案を出してきたのか。
これは、前記の最終報告書と今回の概要の違いから推測できる。

最終報告では「秘密とすべき事項の範囲」を「国の安全」「外交」「公共の安全及び秩序の維持」として3つ掲げていた。
このうちの「公共・・・」の部分が強烈な批判を浴びたことは言うまでもない。

今回の「概要」を見ると「国の安全」に絞っており、「外交」の部分についても、安全保障関係の情報にのみ網がかけられているだけである。
これから推測すれば、これが日本版NSC(国家安全保障会議)の設置や集団的自衛権の容認のためであることは想像がつくだろう。
米軍との共同作戦などを行うために必要不可欠という判断だと思われる。
またその観点から見れば、米国から法制化を要請されているのではないか。

この「概要」については、今後多くの新聞や有識者が憲法や人権などの問題から批判をするだろう。
なので、そういったことはそちらをお読みいただくことにして、このブログでは公文書管理法との関係についてのみを書いてみたい。

この「概要」は法案ではないので、細かい部分が分からない。
ただ、もし秘密保全法がこの「概要」の通りに制定されれば、セットで公文書管理法の改正が行われる可能性が高いだろう。
公文書管理法では管理のプロセスを透明化することが重視されているため、秘密保全法にとって邪魔になる条項が出てくるためである。

まず気になるのは、公文書管理法第7条の「行政文書ファイル管理簿」の作成について。
行政文書はすべて管理簿に記載する義務がある。
そうすると、特定秘密を指定された文書も載せる必要が出てくる。

もちろん、表題自体が不開示情報である場合には、一般の利用者に対しては表題自体を隠すことは可能。
しかし、管理簿に載せていないわけではなく、「載せているけれど機関外には見せない」という意味である。
つまり、管理簿自体には「載せる」必要はあるのだ。

もし特定秘密文書の存在自体を、適性評価を通った人にしか教えないということであれば、機関内の職員が誰でも見れる管理簿に情報を載せないということになる。
そうなると、この第7条は秘密保全法とバッティングすることになるだろう。

また、第8条の「移管・廃棄」についても問題が残る。
「概要」によれば、特定秘密の指定は「上限5年で更新可能」(更新制限が無い)となっている。
その指定は「行政機関の長」が行うので、事実上機関内の論理でいくらでも更新可能となる。

その場合、レコードスケジュールとの関係が問題となる。
例えば、公文書管理法第5条(整理)では、文書作成時に保存期間の設定や期間経過後に移管するか廃棄するかを指定(レコードスケジュール)しなければならない。

最長で30年しか保存期間は設定できないが、特定秘密は更新し続ければ、この上限を上回ることができる。つまり、事実上、保存期間の自動延長ということになる。
しかも、「特定秘密」に指定してしまえば、機関内の少数の職員しか見れないわけであり、その判断の客観性は担保されない。
よって、移管されるべき文書が機関内に留められ続けることになりかねない。

また、移管・廃棄の判断はどうするのか。
第8条では廃棄の際には「内閣総理大臣の同意」が必要とされている。
事実上は内閣府の公文書管理課と国立公文書館がそのチェックに関わっている。

もし特定秘密の指定を解除せずに「廃棄」を求められた場合、このチェックは不可能になりかねない。
もちろん本来移管・廃棄ということになれば、機関で不要になった以上、特定秘密を解除してからその判断をあおぐということになると思うが。

特に気になるのは、特定秘密の移管・廃棄については行政機関の長のみの判断で可能になるという法改正が行われる危険性があるかなということ。
今現在でも防衛省からは機密文書であった文書が、国立公文書館に移管されずに廃棄されている(「重要だから破棄する」という理由)とも聞く。
この状況が追認される法改正がなされる可能性には注意を払う必要があるだろう。

機密文書であろうとも、将来的には国民への説明責任を果たすために公開されるべき文書のはず。
実際に米国ではそのようにしているわけだし。
また特定秘密指定を受けていた文書の移管後の保管方法については、法改正とはまた別問題で国立公文書館の側がどのように管理するのかを想定する必要が出てくるだろう。

また、公文書管理法第9条の「管理状況の報告」も関わってくる。
公文書の管理状況の報告が各機関には義務づけられているわけだが、特定秘密指定を受けた文書はどう扱うのか。

ノーチェックにする方向での法改正は極めて危険。
公文書管理制度の歴史的経緯から考えて、チェックする者がいない状況での公文書管理はずさんになる可能性が高い。

特定秘密という重要な文書だからといって、きちんと扱われるとは限らないのが公文書管理の世界だ。
作成から長期間経過後の「特定秘密」文書を、のちの時代の職員が丁寧に扱ってくれるとは限らない。

そうなると何らかの文書管理のチェックは必要なはずだが、それをどうやって担保するのか。
「行政文書の管理に関するガイドライン」の改定で済む問題なのかはわからないところだ。


さしあたり思いついたところだけでも、秘密保全法案を実際に策定した場合、公文書管理法とのバッティングは相当に起きる可能性は高いだろう。
よって、法案化されたときにどういうものが出てくるのかは注視する必要があるだろう。
また場合によっては、情報公開法の請求権の制限(特定秘密文書への請求を制限する)といった改正も付いてくる可能性すらもありうるので。

なにぶん「概要」を元に書いているので、推測を重ねざるをえない。
法案化がされたときに、あらためて内容を精査する必要がある。
その際には上記の内容を踏まえて、再度考え方を整理してみたい。

追記9/22

情報公開クリアリングハウスの三木由希子さんによると、すでに防衛省の「防衛秘密」文書には公文書管理法が適用されていないそうです。

「いちからわかる特定秘密保護法案~特定秘密保護法案は秘密のブラックホール?」
http://clearinghouse.main.jp/wp/?p=785

つまり、上記したような問題は、「特定秘密」でも当然起きることは間違いないということでしょう。
やはい大きな問題を抱えた法案だと思わざるをえません。
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