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【連載】情報公開法改正案解説 第4回 第18条~第21条、第26~28条 [2011年公文書管理問題]

【連載】情報公開法改正案解説
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震災の影響で延期されていた情報公開法の改正案が4月22日に閣議決定され、国会に提出されました。
今国会でどこまで議論が進むかは未知数ですが、論点はきちんと提示しておいた方が良いかと思いますので、数回かけて法律案に沿って解説を行いたいと思います。

法律本文の青字にした部分が変更した部分。追加のケースと変更のケースがあります。
強調や下線は重要な部分を強調した部分です。

詳しくは、新旧対照表が一番見やすいと思います。

改正案全文は内閣官房のページ
http://www.cas.go.jp/jp/houan/index.html
から見れます。

第4回 第18条~第21条、第27、28条

今回は内閣総理大臣関係の条文をまとめて。
なお第19条は技術的な変更のみなので略。

まず、第18条と第21条を理解するために、簡単に不服申立制度について説明。

請求者が情報公開請求し、その結果に納得がいかない場合、不服申立を行うことができる。
申立以後は簡単に述べると次のような流れになる。(その決定をした行政機関をAとする)

①請求者が行政機関Aへ不服申立
②Aは情報公開・個人情報保護審査会へ諮問
③審査会が審議をし、答申
④Aが答申に基づいて最終決定
⑤請求者に通知

これが前提の知識。

(審査会への諮問)
第18条→不服申立に対する諮問義務

2 前項の規定により諮問をした行政機関の長は、当該諮問に係る不服申立てがあった日から当該諮問をした日までの期間(行政不服審査法第二十一条(同法第四十八条において準用する場合を含む。)の規定により補正を命じた場合にあっては、当該補正に要した期間は、算入しない。以下この項において「諮問までの期間」という。)が九十日を超えた場合には、第二十七条第一項の報告において、諮問までの期間及び諮問までの期間が九十日を超えた理由を記載しなければならない。

新設された条文。
不服申立を行った際、上記②の「諮問」までの日数を90日以内とし、これを超える場合には内閣総理大臣への理由説明を義務づけるとしたもの。

すでに「情報公開に関する公務員の氏名・不服申立て事案の事務処理に関する取扱方針」(情報公開に関する連絡会議申合せ、2005年8月3日)によって、諮問までの期日は、改めて調査する必要のないものは30日、調査をしても90日を超えないようにし、90日を超える場合、総務大臣への施行状況調査の際に報告することとなっていた。
要するに、この申し合わせの内容が、法的な根拠を手に入れたということになる。

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(内閣総理大臣の勧告)
第二十一条 第十八条第一項の規定により諮問をした行政機関(会計検査院を除く。次項及び第二十八条において同じ。)の長は、当該諮問に係る不服申立てに対する裁決又は決定をしようとするときは、当該不服申立てに係る行政文書の全部を開示することとするときを除き、あらかじめ、その内容を内閣総理大臣に通知しなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による通知に係る諮問に対する情報公開・個人情報保護審査会の答申の内容及び第七条の規定の趣旨に照らして必要があると認めるときは、当該行政機関の長に対し、当該答申の内容に沿った裁決又は決定、同条の規定による開示その他の必要な措置を講ずべき旨の勧告をし、当該勧告の結果とられた措置について報告を求めることができる。


情報公開・個人情報保護審査会の答申に関する内閣総理大臣の権限について書かれた条文。
上記の④の最終決定を行う際、各行政機関は答申に対して従う「義務」はない。あくまでも参考にすれば良いだけである。
しかし、答申が公表される以上、これに従わないケースはよほどのことがない限りあり得ない。
そして、各行政機関が最終的に決定を下した判断に対しては、訴訟を起こす以外にはひっくり返す可能性はほぼ無いと言ってよかった。

第1項では、④を行うとき、該当する文書に不開示部分が少しでも残っていた場合、内閣総理大臣へ内容を通知する義務が定められた。
ここで注目は、答申が異議申立を認めず、情報の不開示を維持した場合でも、内閣総理大臣への内容通知義務があるということである。

第2項は、第1項で受けた通知に対して、内閣総理大臣が積極的に介入ができるというものである。
つまり、不開示部分が残っていて、かつ第7条に定められた公益上開示した方が望ましい情報に適合する場合、内閣総理大臣が各行政機関の長に対して開示などの勧告を出すことができる。
例えば、答申に反した決定を下そうとした場合に、これに従うように勧告すること、あるいは、答申も含めておかしいと判断し、開示へと判断をひっくり返すことが想定される。

内閣総理大臣の勧告に、その部下である各行政機関の長が逆らうことは考えられないので、事実上この勧告は強制力を持ったものになるだろう。
この内閣総理大臣によって「判断をひっくり返す」というのは、かなり強力な権限なので、不服申立の答申への決定に対してしか行うことができないようになっている。

これまでは、行政機関の長が最終的な決定権を独占していたが、これによって内閣総理大臣の勧告によってその決定権に介入が可能になったことになる。

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(開示請求をしようとする者に対する情報の提供等)
第二十六条(略)
2 内閣総理大臣は、この法律の円滑な運用を確保するため、開示請求に関する総合的な案内所を整備するものとする。

(施行状況の報告等)
第二十七条 行政機関の長は、この法律の施行の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない。
2 内閣総理大臣は、毎年度、前項の報告を取りまとめ、その概要(第十八条第二項に規定する九十日を超えた場合における報告については、諮問ごとに、同項の規定により記載しなければならないとされる事項)を公表しなければならない。


第26条と第27条は、元々総務大臣が管轄していたもの。第27条は新設されたことになっているが、旧第23条にあたる。
今回の法改正で、情報公開法を管轄する機関が、総務省から内閣府へと変更になった。
これは、この法律が各行政機関全体に対するものであること、さらに内閣府管轄の公文書管理法との一体的な運用をすること、また内閣総理大臣の勧告権などが加えられたということといった理由があるためである。
このために、内閣府設置法や総務省設置法の改正が盛り込まれた(管轄を変更)。

そこで、これまで総務大臣が行っていた総合的な案内所の整備や各行政機関から法律の施行状況について報告を内閣総理大臣が受けることになった。

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(内閣総理大臣の勧告)
第二十八条 内閣総理大臣は、この法律を実施するため特に必要があると認める場合には、行政機関の長に対し、情報の公開について改善すべき旨の勧告をし、当該勧告の結果とられた措置について報告を求めることができる。


新設された条文。公文書管理法第31条とほぼ同文。
情報公開法においても、内閣総理大臣による勧告権を作った。
もし情報公開法の運用で問題が生じた場合、内閣総理大臣から各行政機関の長に勧告を行えるようになった。


行政透明化検討チームの議論を見ると、これらの内閣総理大臣の権限の強化の目指す先には、情報公開法第7条の「公益裁量開示」を実効性のあるものにするということというところがあるようである。
「公益裁量開示」は、各行政機関の長が、第5条の不開示規定に適用のある情報であったとしても、公益に資すると判断した場合、これを開示させることができるという制度である。
しかし、自分たちが「不開示」にしたものを大臣がひっくり返すというような事態はあまり起きなかった。
珍しいケースとしては、先日外務省で公開されたいわゆる「密約」関係の文書の開示が、大臣による「公益裁量開示」にあたるだろう。

そして、今回の改正案では、審査会答申への決定に対する勧告には限定しているが、第7条を利用する形で内閣総理大臣が行政機関の長の決定に介入することができるようにした。
また、情報公開法の運用上問題が起きた場合の勧告権も内閣総理大臣に付与した。

ただ、これがどこまで機能するかはよくわからない。
このあたりは、国会できちんと話を詰めないと、形だけはあるけど実効性は無いということになりかねないかなと思う。

次回へ続く。
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