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【連載】情報公開法改正案解説 第3回 第9条~第16条 [2011年公文書管理問題]

【連載】情報公開法改正案解説
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震災の影響で延期されていた情報公開法の改正案が4月22日に閣議決定され、国会に提出されました。
今国会でどこまで議論が進むかは未知数ですが、論点はきちんと提示しておいた方が良いかと思いますので、数回かけて法律案に沿って解説を行いたいと思います。

法律本文の青字にした部分が変更した部分。追加のケースと変更のケースがあります。
強調や下線は重要な部分を強調した部分です。

詳しくは、新旧対照表が一番見やすいと思います。

改正案全文は内閣官房のページ
http://www.cas.go.jp/jp/houan/index.html
から見れます。

第3回 第9条~第16条

(開示請求に対する措置)
第九条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の全部又は一部を開示するときは、その旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨及び開示の実施に関し政令で定める事項を書面により通知しなければならない。
2 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の全部を開示しないとき(前条の規定により開示請求を拒否するとき及び開示請求に係る行政文書を保有していないときを含む。)は、開示をしない旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない。
3 前二項の規定による通知(開示請求に係る行政文書の全部を開示するときを除く。)には、当該決定の根拠となるこの法律の条項及び当該条項に該当すると判断した理由(第五条各号に該当することを当該決定の根拠とする場合にあっては不開示情報が記録されている部分ごとに当該決定の根拠となる条項及び当該条項に該当すると判断した理由、開示請求に係る行政文書を保有していないことを当該決定の根拠とする場合にあっては当該行政文書の作成又は取得及び廃棄の有無その他の行政文書の保有の有無に関する理由)をできる限り具体的に記載しなければならない。

第9条は情報公開請求に対する返事の仕方を定めたもの。
改正案では第3項が新たに追加された。
これは、これまで不開示決定の理由の説明が不足していて意味がわからないということから入れられたものである。

私もよく不開示決定を受けるのでこの点についてはよくわかる。
例えば、宮内庁では、個人情報で不開示の場合、「特定個人を識別することができる情報が記録されている部分があり、情報公開法第5条第1号に該当するので、当該部分を不開示にした」という文面が付いてくる。
これは、「1号が適用されたよ」ということを説明しているだけで、「なぜ1号が適用されたのか」という説明には全くなっていないことがわかる。
また、1号と4号が一緒に適用されていた場合、どの墨塗り部分が1号で、どの墨塗り部分が4号なのかということについては、特に記載されることはない(聞けば教えてもらえるが・・・)。

今回の改正で、行政機関側は不開示部分毎に理由を説明をすることとなり、さらに、「不存在」を理由とした不開示の場合、「なぜ存在しないのか」を説明しなくてはならなくなった。
そもそも作ってないのか、作ったけど廃棄したのか、などなど。

この項目を入れたことによって、安易な不開示・不存在といった回答が減るものと思われる。
一つ一つの情報に説明責任が問われるということになるからである。

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(開示決定等の期限)
第十条 前条第一項及び第二項の決定(以下「開示決定等」という。)は、開示請求があった日から十四日(行政機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第九十一号)第一条第一項各号に掲げる日の日数は、算入しない。)以内にしなければならない。ただし、第四条第二項の規定により補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、当該期間に算入しない。
2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、同項に規定する期間を三十日以内に限り延長することができる。この場合において、行政機関の長は、開示請求者に対し、遅滞なく、延長後の期間及び延長の理由を書面により通知しなければならない。
3 開示請求者は、第一項に規定する期間内に開示決定等がされない場合であって前項の規定による通知がないとき、又は同項に規定する延長後の期間内に開示決定等がされない場合には、次条第一項後段の規定による通知を受けた場合を除き、行政機関の長が開示請求に係る行政文書について前条第二項の決定をしたものとみなすことができる。

第10条は開示決定の期限について。
これまでは、30日+延長30日だったものが、14日(土休日除く)+延長30日に変更になった(第1、2項)。
速度が上がるのは歓迎。

第3項は新設された。
これは、行政機関側が「この日までに出しますよ」と通知した期限を破った場合、「全て不開示にされた」とみなして訴訟などの対応が取れるということである。

この規定は、私がこのブログを作るきっかけになった宮内庁との裁判をやったときに問題になったところである。
私の事例は、特例期限を宮内庁が破ってから3年以上経過した文書がいつまでも開示されないので、行政事件訴訟法の「不作為」(仕事をさぼっているんじゃないか?)の規定を使って裁判を起こした。
ただ、このような訴訟の方法だと、判決が出る前に相手が頑張って開示してしまえば、その「不作為」自体が消滅するので、裁判自体が続けられなくなる。
また、この場合、無理矢理相手が「不開示部分」を多くした状態で開示してきた場合でも、裁判は終わってしまう。
つまり、裁判を起こしても、結局相手を「急がせる」だけの効果しかない。

これが、「みなし不開示」を入れると、「不作為」で裁判をするのではなく、「不開示」に対する「開示要求」として裁判を起こせることになる。
そうすると、その後、文書開示が進んだとしても、裁判を起こした当時に行政機関が「不開示」を決定したのだと「みなす」ことができるので、そのまま「不開示」の可否について裁判を続けることが可能となるのだ。
もしこの規定があったならば、私の裁判もかなり様相が変わったことだろうと思う。

ただ、この規定はあくまでも「みなしても良いよ」という規定なので、行政機関側が期日に間に合わなかったからといっても「違法」になるわけではない。
理由に納得して「待ちましょう」となればそのまま待っても良い。
ただ、いつでも裁判や審査会に訴えることが可能になるので、期限を守ることに対する行政への心理的な圧力になるだろうと思われる。

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(開示決定等の期限の特例)
第十一条 開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため、前条第一項に規定する期間に三十日を加えた期間内にその全てについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、同項及び同条第二項の規定にかかわらず、行政機関の長は、開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき当該期間内に開示決定等をし、残りの行政文書については第十六条第五項の規定による予納があった後相当の期間内に開示決定等をすれば足りる。この場合において、行政機関の長は、前条第一項に規定する期間内に、開示請求者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
 一 この項を適用する旨及びその理由
 二 残りの行政文書について第十六条第五項の規定による予納があった日から開示決定等をする日までに要すると認められる期間
2 前項の規定により行政機関の長が開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき開示決定等をした場合における第九条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項中「その旨及び」とあるのは「その旨及び第十六条第五項に規定する見込額その他」と、同条第二項中「その旨」とあるのは「その旨及び第十六条第五項に規定する見込額」とする。
3 開示請求者は、第一項第二号の期間内に開示決定等がされない場合には、行政機関の長が同項の残りの行政文書(第十六条において単に「残りの行政文書」という。)について第九条第二項の決定をしたものとみなすことができる。


第11条は、第10条の日数でも開示が不可能な場合に関する規定。
第1項は、第11条適用の際、第10条に定められた14+30日の間に一部を公開した上で、全部の処理が終わる期日を通知しなければならないことを決めたもの。後述する「予納制度」が新たに加えられた。
第2項は、一部を公開した際に、見込額も通知しろということ。
第3項は、第1項で決めた開示日を破った場合、「みなし不開示」と見なしてよいということ。第9条第3項と同じ内容。

これまでと大幅に異なるのは、「予納制度」ができたことにある。
「予納」とは、請求している資料の開示の際に必要な手数料(複写代など)をあらかじめ納入させる制度である。
詳しくは第16条第5項から第7項に規定されている。
ついでなので、先に紹介しておく。

5 第十一条第一項の規定により行政機関の長が開示請求に係る行政文書のうちの相当の部分につき開示決定等をした場合には、開示請求者は、政令で定めるところにより、第九条第一項又は第二項の規定による当該開示決定等の通知があった日から三十日以内に、残りの行政文書の全部を開示するとした場合の開示実施手数料の額の範囲内で政令で定める額(次項及び第七項において「見込額」という。)を予納しなければならない。
6 前項の規定により見込額を予納した者は、当該見込額が残りの行政文書について納付すべき開示実施手数料の額(次項において「要納付額」という。)に足りないときは、政令で定めるところにより、その不足額を納めなければならない。
7 第五項の規定により予納した見込額が要納付額を超える場合には、その超える額について、政令で定めるところにより、還付する。ただし、残りの行政文書についての開示決定に基づき行政文書の開示を受けることができることとなった者が第十四条第三項に規定する期間内に同条第二項の規定による申出をしない場合において、行政機関の長が当該期間を経過した日から三十日以内に当該申出をすべき旨を催告したにもかかわらず、正当な理由がなくこれに応じないときは、この限りでない。


第16条第5項は、請求者が、第11条第2項で算出した見込額を30日以内に払わないと、請求そのものが取り消しになるという内容。
第6項は最終的に足りなかった場合には追加料金を取ること、第7項は逆に余ったら返すということが決められている。

この「予納」制度は、明らかに「大量請求」への対策という意味を持っている。
検討チームで話題になっていたのだが、大量請求して開示決定を受けても、それならば要らないとばかりにそのまま決定を放置する人がいるらしい。
なので、大量請求をする人から「担保」を押さえておくというのがこの制度の主旨である。
そのため、第7項では、開示決定後に返事をよこさない人には「担保に取った金を還付しなくてもよい」という項目が加えられている。

ただし、あくまでも「返事をするかどうか」で還付が決まるので、「全部見ない」という返事をしても一応還付は受けられる。しかし、それこそただの「嫌がらせ」であり、これは「権利の濫用」と言われても仕方がないだろう。
部分的に先に開示されるわけだから、それを見た上で、請求者側は続けるか否かを判断するべきだと思われる。

なお、この第11条の適用について、検討チームの「とりまとめ」では次のように書かれている。

 なお、現行法の運用上、当該特例規定の適用要件である「開示請求に係る行政文書が著しく大量」か否かにつき、解釈上、「一件の開示請求に係る行政文書の物理的な量とその審査等に要する業務量だけによるわけでなく、行政機関の事務体制、他の開示請求事案の処理に要する事務量、その他事務の繁忙、勤務日等の状況をも考慮した上で判断される」とされており、行政機関等においては、大量開示請求に対応する体制の整備をすることなく、事務体制や繁忙等をも理由として当該特例規定を適用することまで正当化されている。そこで、当該特例規定の解釈上、「開示請求に係る行政文書が著しく大量」かどうかは、「一件の開示請求に係る行政文書の物理的な量とその審査等に要する業務量だけによる」ものとして、限定する。(8ページ)

これまで、この第11条による延長措置を取る場合、請求された文書量が多いか否かだけで決められていたわけではなく、「他の事務が忙しいから」ということも理由とできた。
なぜなら、情報公開法の施行時に総務省が作ったマニュアルにそのように書かれていたからである。そのために、そもそもバックアップ体制が不十分なために請求を捌けていないのに関わらず、遅延の不利益を請求者側に押しつけることが行われていた。

検討チームは、あくまでも、請求された文書の「物理的な量」や「審査等に要する業務量」だけで開示までの期日を決めろと主張している。
これを強く主張することは、各省庁に対して、情報公開への体制を整えさせる理由となるので、国会において首相や行政刷新相あたりの言質を取っておいた方が良いと思う。

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第12条の2→略。独法への事案移送のことなのだが、何が変わったのか良くわからない。あまり重要な所ではないので説明を省く(というかできない)。

第13条→略。技術的に条文を書き換えただけ。内容変化なし。

第14条→略。大量請求対策との関わりで、微妙に表現が変わっているが、これまでの説明以上に加えるような内容はないので、説明は省く。

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(手数料)
第十六条 次に掲げる者が開示請求をするときは、政令で定めるところにより、実費の範囲内において政令で定める額の開示請求に係る手数料(第八項において「開示請求手数料」という。)を納めなければならない。
 一 会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第一号に規定する会社、同条第二号に規定する外国会社その他これらに類するものとして政令で定める法人(第三号において「会社等」という。)又はその代理人
 二 営利を目的とする事業として若しくは当該事業のために開示請求をする当該事業を営む個人(次号において「個人事業者」という。)又はその代理人
 三 会社等若しくは個人事業者の事業として又は当該事業のために開示請求をする当該会社等の役員若しくは従業員又は当該個人事業者の従業員
2 行政文書の開示を受ける者は、政令で定めるところにより、実費の範囲内において政令で定める額の開示の実施に係る手数料(以下この条において「開示実施手数料」という。)を納めなければならない。
3  開示実施手数料
の額を定めるに当たっては、できる限り利用しやすい額とするよう配慮しなければならない。
 行政機関の長は、経済的困難その他特別の理由があると認めるときは、政令で定めるところにより、開示実施手数料を減額し、又は免除することができる。
5~7 前述
8  開示請求をする者又は行政文書の開示を受ける者は、政令で定めるところにより、それぞれ、開示請求手数料又は開示実施手数料のほか、送付に要する費用を納付して、第九条第一項若しくは第二項の規定による通知に係る書面又は行政文書の写しの送付を求めることができる。

第16条は手数料に関する条文。
まず第1項は大きな変更。
開示請求のための手数料は、これまで300円(ネット申請は200円)だったが、基本的に0円になる。ただし、①会社、②営利目的の個人事業者、③①②の事業として開示請求する社員、についてはこれまで通り手数料が必要となる。
情報公開は国民の権利であるのだから、請求するのにお金を必要とするのはおかしいということで無料となった。
しかし、営利目的で情報公開を使う人たちのコストまでを行政が負担するのは問題があるということで、これについては手数料を徴収することになった。

ただし、前述したように、情報公開法は目的を問わないというのが大原則であるので、会社からの請求はすべて有料などといった一律での料金徴収となった。
会社については、送付先が会社であればすぐにわかるので問題ないが、②が個人名で自宅を事業所兼としていた場合などは簡単ではないだろうなとは思う。
ただ、実際にこの手数料は複写代として使うことができる(300円手数料を払っていた場合、複写代300円まではこの手数料から支払われる)ので、実際にはそれほど混乱は起きないかなという気もする(無理に個人を装わなくても、それほど実害がない)。

第2項は開示実施手数料を定めている。
請求にはお金がかからないが、見るにはお金がかかるということ。
この費用は政令で定まる(閲覧代や複写代など)。
これまでは、閲覧する場合も100枚毎に100円取られており、この値段がどう変わるかが気になる。
複写代の自己負担は仕方がないとは思うが(紙代のコストは請求者が負担しないと、他の請求しない人との公平性が著しく偏る)、閲覧だけなら無料でしても良いのではないかと思うのだが。

第3項は前と同じ。
第4項も前と同じなのだが、検討チームの「とりまとめ」では、「経済的困難その他特別の理由」の「その他特別」に、学術的利用、報道機関の代表による利用等を含めるべきではないかという主張がなされている(9ページ)。
これが導入されるかは、自分にとっては結構切実な問題ではある。

第5項から第7項は第11条のところを参照。

第8項はちょっと問題あると思う条文。
まず、そもそも日本語としてどこで切れるのかがさっぱりわからない。
「のほか」の次か「納付して」の次かとは思うんだが・・・

ただ、少なくとも分かるのは、第9条第1項、第2項の通知を受けるための送料を請求者側が負担しなければならないというのはわかる。
第9条第1項と第2項は、開示(不開示)決定の際に、書面で通知する義務を各省庁に課している。
それなのに、その書面を送付する送料を、請求者の側に課している。
これは、第9条第1項、第2項の主旨に明らかに反していないだろうか。

もし、請求者が送料を送付してこなかった場合、第9条第1項、第2項の各省庁側の義務はどのようにして果たすつもりなのだろうか。
請求者に不備があるとして、請求そのものを却下するつもりなのだろうか。
請求者側だけでなく、各省庁も80円切手を貼られた封筒を1枚1枚保管しなければならない。
しかも書類がちょっと重くなったら80円で足らないかもしれない。その場合あと10円送れとでも言うのか?
いずれにしろ、手間だけかかって全く実益があるとは思えない。

この第9条第1項、第2項にかかる部分は必ず削除するべき。
これは双方にとっても絶対に利益になるはずだと思う。

全体として、この第16条に関する事項は、政令で定めるものが多い。
政令(施行令)は国会で審議されないが、手数料については重要な問題をいくつもはらんでいるので、是非とも国会で内閣府からきちんと内容について説明させた方がよいと思う。

次回へ続く。
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