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【連載】法人文書と公文書管理法 第5回 国立大学法人における研究文書の扱い [2011年公文書管理問題]

【連載】法人文書と公文書管理法
第1回 行政文書と法人文書の管理の違い
第1回補遺 内閣総理大臣と独法との関係
第2回 国立大学法人における文書移管問題(前)
第3回 国立大学法人における文書移管問題(中)
第4回 国立大学法人における文書移管問題(下)

連載の続き。
第5回では、公文書管理法の下での国立大学法人における研究文書(教員が研究で使う文書)について考えてみたい。

第5回 国立大学法人における研究文書の扱い

まずはおさらい。公文書管理法における「法人文書」の定義を確認してみる。

5  この法律において「法人文書」とは、独立行政法人等の役員又は職員職務上作成し、又は取得した文書であって、当該独立行政法人等の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該独立行政法人等が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
 一  官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
 二  特定歴史公文書等
 三  政令で定める博物館その他の施設において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの(前号に掲げるものを除く。)
四  略


まず、この定義から、「法人文書」として公文書管理法の対象になるには、(1)「役員/職員」、(2)「職務上作成/取得」、(3)「組織的に用いる」の3点が条件となることがわかる。

さて、国立大学法人の教員は当然「職員」に当たるので、(1)の条件は満たす。

その上で、日頃から研究している際に作っている文書(論文の原稿や資料メモ)はどうなるだろうか。
これは(3)に当てはまらないので、「法人文書」にはならない。

では、共同研究をしている場合はどうだろう。これは「組織的」に用いている。
そうなると、(2)の「職務上作成」したものと言えるかどうかがカギになる。

大学教員の研究は「職務」であると言えるだろう。
そうなると、共同研究で研究しているデータなどは「法人文書」となるのだろうか。

おそらく「ならない」というのが今のところの状況だと思われる。

まず、共同研究をしていても、それぞれ個人の研究者がデータを保持していれば、これは3には当てはまらないだろう。
ただ、問題となるのは、データベースとして情報を共有しているケースだろう。

これを考える際には、この部分と同様の主旨が書かれている情報公開法を参考にしたほうが良いだろう。
情報公開法解釈の権威と言ってよい宇賀克也氏によれば、「組織的にもちいるもの」とは「組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織において業務上の必要性から利用・保存している状態にあるもの」とのことである(『新・情報公開法の逐条解説[第5版]』有斐閣、2010年、50-51ページ

この解説から、「国立大学法人の業務=運営」と考えれば、研究に関する文書はやはり入らないという解釈なのではないかと思う。
また、公文書管理法の上記の第3項に「歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの」という例外規定があることからしても、学術研究に関する文書は基本的には「法人文書外」であり、公文書管理法から外れる博物館などの施設で保管・公開される類の文書であると思われる。

ただ、共同研究の予算執行に関する文書は「職務上作成」したものと見なされる可能性が高い。
研究内容に関する文書については外れるが、研究費に関する文書は対象となると思われる。

また、「大学行政」に関与している教員が作った文書は、当然「法人文書」となる。
例えば、○○委員といった職務において作成した文書がこれにあたる。
なので、研究者でもあり事務員でもある教員が作った文書は、その使用目的に応じて、「法人文書」となるケースとならないケースがあるということになる。

まとめてみると

研究文書→法人文書の対象外
大学行政文書(+予算関係文書)→法人文書


と考えて良いと思う。
なので、今回の公文書管理法で新たに適用になるのは後者だけということになる。


ここまで読んできて、「それなら前となにも変わらないよ」と思ってませんか?

第2回で少し触れたが、公文書管理法の第4条において、政策決定のわかる文書をきちんと作成する義務が課せられることになった。
よって、国立大学法人の教員で、大学行政に携わっている方は、自分の業務が後から検証できるように文書を作成する「義務」が発生するのだ。

私の推測だが、おそらく大学教員はこれまで「大学行政文書の作成方法」について研修を受けたことはほとんど無いのではないかと思う。
公文書管理法の第32条には、職員に対する「研修」を行うことが書かれている。
よって、「大学で役職についている教員に対する「文書の作成方法」の指導」をきちんと行うべきだと思う。

この研修は是非とも積極的に行ってほしいと思う。
研修によって文書がきちんと作成されるということだけではなく、教員に公文書管理法の意義を理解させるための絶好の機会であると思うからだ。
教員の側も、「なんで研究者である自分が、事務員みたいな研修を受けねばならんのだ」と思わず、きちんと研修を受けてほしい。
職員の側も積極的に教員に研修参加を呼びかけてほしいと思う。

法人文書に関する解説は以上です。
また付け足すことがあれば続きを書きます。
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