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国立公文書館等の利用に関するまとめ(公文書管理法) [2011年公文書管理問題]

この4月から、待望の公文書管理法が施行されます。
その準備のため、公文書管理委員会で次々と色々な規則が決まっています。

委員会の第5回(2010年12月14日)では、国立公文書館、外務省外交史料館、宮内庁書陵部宮内公文書館の利用等規則、第6回(2011年1月19日)では独法に設置される国立公文書館等(日本銀行、東北大、名古屋大、京都大、神戸大、広島大、九州大)の利用等規則が審議されました。
これで、公文書管理法上の「国立公文書館等」になる館の規則が出そろいましたので、ここで「利用する側にとって、4月から何が変わるのか」について、まとめておこうかと思います。

なお、基本的には、ほぼすべてが「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン案」に沿って作られていますので、各館ごとにそれほど変化はありません。
よって、国立公文書館の規則をベースにして解説をしたいと思います。

以下、繁雑になるので、国立公文書館は「NA」(National Archives)、外交史料館は「外交」、宮内公文書館は「宮内」と略します。
規則案は、NA・外交・宮内はこちらの18から20を、独法についてはこちらの1から7を参照してください。

・利用までの手続きの仕方(独立行政法人国立公文書館利用等規則案(以後「NA規則案」)第11、16-18、27条)

館に直接行って、その場で申請して見ることについては、それほど変化は無いものと思われる。
変化があるのは、「審査がある場合」(NAの「要審査」文書、宮内のすべての文書など)について。

これまでは、口頭で「○○の簿冊を見たい」と申請し、見られるようになったときに館の側から電話があるといったようなことだったはず(宮内はそうだった。NAもそうだと聞いた記憶が)。
この手続きが、かなり厳密なものになる。

まず、利用者の側が閲覧申請を行う場合には、必ず「文書」にて申請を行わなければならない。
館に直接行くか、郵送するかが基本。外交はネット上でも可能。ネットからの申請は、行う館と行わない館と分かれているので注意が必要。

次に、館は申請書を受け取ってから、30日以内に開示決定を行わなければならない。
ただし、量が多いなどの理由があった場合、+30日延長が可能。
これでも日程が厳しい場合(例えば開示文書が1万ページ以上あるとか)は、遅れる理由と開示される予定日を利用者に書面で通知する義務がある。

このやり方は、情報公開法と同様の対応となる。
よって、申請してから数ヶ月待たされるような状況は大幅に改善されるだろう(ただ、施行直後は、情報公開法の時と同じように、延長が連発される可能性がありそうだが)。

開示された際には、必ず「文書」にて通知が届く。
なお宮内だけは、郵送で通知する場合は料金を「利用請求者が負担する」としている(第16条第3項)。正直、繁雑なだけ(80円切手でも送らせるのか?)だと思うんだが。→訂正(2/1)外交もそうでした。すみません。

通知書が届いた後、利用者は30日以内に「利用の方法申出書」を館に送らなければならない。
この「申出書」は、情報公開法に準じたものだとすると、「閲覧するか、閲覧せずに複写するか」「閲覧日はいつか」といったようなことを書くことになると思われる。
送付の仕方は、館に持って行くか郵送。NAはFAXも可、外交はネットで可能になる。
ただ、宮内などは、閲覧日の調整(閲覧スペースが少ないから)が必要だろうから、結果的には電話でのやりとりもすることになるのかなと思う。

このように、閲覧までの手続きがすべて「書面」でなされるようになる。
手続きが厳密になるので、利用者がいきなり館に行って、「審査が必要なものをすぐに見せろ」というような無茶は通用しなくなる可能性が高いだろう。

なお、事前のレファレンスも受けられるので、申請する際には、きちんと各館に相談をした方が良いかと思う。
開示されてみたけど、ほしいものと違ったというようなケースは、お互いにとってもムダな労力になるので。

・不開示規定(NA規則案第12条)

NAに移管された文書が、すべて自由に見れるということでもない。
個人情報などには、30年経ったからといって見せられないものはたくさん存在する(例えば犯罪情報など)。

NA規則案には、公文書管理法が引き写してあるだけなので、詳しくは「審査基準案」が出ているのでそちらを参照のこと。

NA / 外交 / 宮内

なお、宮内は、他の2館と調整しないで作ったように見える。
本来3館が同じ基準にならなければならないものなのに、なぜ文面の調整しなかったのか理解に苦しむところ。

この「審査基準案」はパブリックコメントにかかるとのことなので、詳しくは募集がかかったときに再度解説する予定。なので、今回は略。

・部分開示(NA規則案第13条)

不開示情報が文書に入っているときの対応。
NAは、基本が墨塗り(コピーした上で、不開示部分を墨塗りする)公開。
なお、文面では、墨塗りか被覆(袋とじする)かを利用者に選ばせない(外交、宮内は選べる)ことになっているが、審議の際に、被覆は全面不開示の時にしか使わないと説明があった。

・複写(NA規則案第20条)

複写については次のようになった。

○原本から直接電子コピーは不可。マイクロフィルム化やスキャンして電子コピーするのは可(業者委託)。ただし、部分開示のためにすでに紙のコピー作られているものは可。
外交・宮内では、原本保護のために複写物を作っているものについても、同じく可(NAはなぜかこの点が入っていない)。
なお、他の国立公文書館等にあたる施設(日銀など)では、ほとんどが原本コピーが可になっている。

○マイクロフィルムはネガからも、紙にコピーしたものからもコピー可。

○スキャナで読んだデータは、ディスクに複写したものや紙にコピーしたものからコピー可(ディスクからディスクへも可)
スキャナから読みこんだ一次データは直接複写させない(一次データのセキュリティーが保証できないため(外部からの改変をされるおそれがあるからかと))。つまり、「スキャンデータ→データをDVDに焼く→それを閲覧・コピー」という流れ。

○電磁的記録(初めから電子データであるもの)は、ディスクに複写したものや紙にコピーしたものからコピー可。
ディスクに複写の説明はスキャナと同じ。

○規則には明文化されていないが、中央3館とも利用者持ち込みのデジタルカメラでの撮影が可。他の館でもほぼ可能という回答だった。無料。

・複写手数料(第21条)

各館によって大幅に変わる。委託業者の価格設定によって異なるため。
各機関の利用規則の最後のページに複写料金一覧表があるのでそちらを参照。
委員会で問題にはなったが、結局はそのまま。

ただ、この表には「裏メニュー」みたいなものがある。
ここに書かれているのは、あくまでも「業者を使った場合」である。
つまり、利用者がセルフコピーをする際の価格が別に存在するのだ。

なお、この手数料についての中央3館のコメントがあるのだが、例えば宮内では、コイン式のマイクロフィルム用複写機や電子コピー機を閲覧室に置いて、セルフコピーをできるようにするとのこと。
よって、基本的にこの表にある手数料を使うのは、来館せずに遠隔地からコピーを取り寄せようとする人に適用されるものだと考えられるだろう。

他には、この料金表はネット上で公開される。
そもそも、これまで公開されていない時点で、何か間違っていると思うんけど。

手数料の納付方法は各館によってかなり異なる。
来館して現金払いが基本だが、その他は現金書留、収入印紙、銀行振込など、各館によって対応がバラバラなので注意したい。

・異議申立(NA規則案第22条)

これは公文書管理法にあるとおり。
4月以降、開示方法に不服がある場合、公文書管理委員会に異議申立ができることになった。
現在は、NAであってもNA館長にしかできないわけだから、かなり大きいと思う。
これまで不開示になって見れなかったものがあった場合、4月以降再チャレンジをしてみて、ダメなら異議申立をするというのもありかと思われる。

・開館時間(NA規則案第29条)

9:15-17:00。注記がないので、現在の11:45-13:00の出納停止がなくなるものと推測。
外交は10:00-17:30。

なお、宮内は規則案の段階で、9:15-12:00、13:00-17:00と昼休みがある形で書かれていたが、委員会の場で加藤陽子氏に指摘を受けて、結局、昼の出納は停止するが、閲覧時間は9:15-17:00書き換えられた。
現在の開館時間は9:30-12:00、13:00-16:30なので、かなり閲覧時間は延びることになる。

なお、ガイドラインにあった土日開館の検討は、結局見送られた。
さしあたり、各館の人員がかなり増員されないと厳しいかなと思うので、仕方がないかなと思う。


以上が、利用者の視点から見た公文書管理法施行後の変化です。

最後に1点だけ気になる点を。

デジカメでの撮影が可能になる点についてだが、原本を撮影することが多くなるので、利用者の「原本保護」の姿勢が問われることになる。
つまり、カメラで撮影するために資料を無理に押しつけたりして、原本を傷めてしまうようなことがあり得るということだ。

ただ、資料の扱い方を学ぶ場が、いまのところどれだけあるのだろうか。
私は史学科出身ではないので、資料の扱い方に関する訓練を一度も受けたことがない。
気をつけて扱うようにはしているが、正直、自分の資料の閲覧の仕方が大丈夫なのか不安になることはある。

もちろんデジカメで撮影できるのはありがたい。なのでそれは是非とも推進してほしい。
その一方で、原本が壊れてしまったら元も子もない。
なので、利用者への教育をどうするのかを、アーカイブズ側も、史学科などでも考えた方が良いと思う。

なお各アーカイブズは、「利用者のための資料ハンドリング講座」のようなものを企画してみたらどうだろうか。
資料の扱い方に不安を覚えている人は、私だけでなく、それなりにいるように思うんだけども。
修復現場とか書庫の見学コースなども入れれば、それなりに需要があると思うんだが・・・

以上です。
もし上記の説明でわからないことがあれば、コメント欄に書き込んでください。ご返答いたします。
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