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特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン解説 第2回 A:総則とB:保存 [公文書管理委員会]

公文書管理委員会において、「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン」についてのパブリックコメントの募集が始まりました。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2.html

そこで、ガイドラインの解説をしてみたいとおもいます。自分の備忘録も兼ねて。

特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(検討素案)
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/oshirase/goiken2/guideline2.pdf

第2回はA:総則とB:保存について。
取り上げる項目は第1回を参照

A-2 定義
 この規則において「特定歴史公文書等」とは、法第2条第7項に規定する特定歴史公文書等のうち、館に移管され、又は寄贈され、若しくは寄託されたもの及び法の施行の際、現に館が保存する歴史公文書等(現用のものを除く。)をいう。


法第2条第7項で規定されているものは、行政機関・独立行政法人・国の機関(立法、司法)から移管された公文書と、その他からの寄贈を受けた文書のこと。
寄託された私文書であっても、この規則は関係があることに注意。

宮内庁書陵部では、この項目がある故に、中近世文書を「図書寮文庫」、公文書を「宮内公文書館」に分けた。
おそらく、近現代に関する個人からの寄託文書などがあったとしても、「図書寮文庫」に入れているのではないかと推測。このあたりは、来年4月以降に確認してみたい。
国立公文書館の内閣文庫の扱いがどうなるのかは少し気になるところ。


B-1 行政機関又は独立行政法人等からの受入れ
(1) 館は、△△省(△△法人)で保存する歴史公文書等(法第2条第6項に定める歴史公文書等をいう。以下同じ。)として、保存期間が満了したときに館に移管する措置が設定されたものについて、保存期間が満了した日から可能な限り早い時期に受入れの日を設定し、当該歴史公文書等を受け入れるものとする。
(2) 館は、(1)の規定に基づき受け入れた特定歴史公文書等について、次の各号に掲げる措置を施した上で、原則として受入れから1年以内に排架を行うものする。
 ① くん蒸その他の保存に必要な措置
 ② B-4(4)に定める識別番号の付与
 ③ C-2(1)①に掲げる事由(以下「利用制限事由」という。)の該当性に関する事前審査
 ④ B-7(1)に定める目録の作成
(3) 館は、特定歴史公文書等の利用が円滑に行われるようにするため、(2)③に規定する事前審査の方針を定めるものとする。


途中のB-4とかの表記は気にせずに読んでもらっても大勢に影響ないです。

注目は、受け入れてから「1年以内に排架」というところ。
もちろん、ただ棚に並べるという話ではない。
具体的な説明を見ると、「目録を作成して排架」と書かれている。
つまり、目録登載も1年以内ということである。

これは、かなり重要。
移管されたのに目録に載らなければ、その文書は情報公開の対象にもならず、公文書館でも見れずという「利用不可能な文書」になってしまう。
昔の国立公文書館では良く起きていた現象。菊池前館長の時に、「要審査」制度(審査を請求後にして目録登載を先にする)を入れて、やっと登載が進んだのだが。

ちなみに、全国公文書館長会議で配布された今年の資料によると、宮内公文書館では所蔵公文書の約83%しか目録で公開されていないとのこと。
このデータは最近知ったのだが、かなり問題ありすぎる。
情報公開法施行からもう10年にもなろうとしているのに、いまだに100%にならんとはどういうことなのか。

あと、引用はしないが、6頁に「排架」の「基本的な考え方」というのが載っているのだが、これはアーカイブズ学的に問題がないのかは気になる。私にはちょっとわかりにくいので。

次に気になるのは(3)の事前審査について。
具体的な説明を見てみると、利用頻度が高い資料は事前に審査を終わらせておくべき(請求したらその場ですぐに見せられるように)で、その審査計画を作れという話だ。
これは、おそらく国立公文書館は今でもおこなっていると思われるので良いのだが、審査済のものしか公開していないと思われる外交史料館や、毎回審査を行ってから公開する宮内公文書館ではどうなるのかは気になるところ。

この事前審査の「方針」はF-1の内閣総理大臣への報告事項に含まれているので、何もしないという訳にはいかないだろう。
どのように対応するのか注目してみたい。(それともこの項目を規則から落としてくるか?)


B-2 寄贈・寄託された文書の受入れ
(1) 館は、法人その他の団体(国及び独立行政法人等を除く。以下「法人等」という。)又は個人から特定の文書を寄贈又は寄託する旨の申出があった場合、当該文書が歴史公文書等に該当すると判断する場合には、当該文書を受け入れるものとする。
(2) 館は、(1)に基づき受け入れた特定歴史公文書等について、寄贈又は寄託をした者の希望に応じ、利用の制限を行う範囲及びこれが適用される期間を定めた上で、次に掲げる措置を施し、原則として受入れから1年以内に排架を行うものとする。
 ① くん蒸その他の保存に必要な措置
 ② B-4(4)に定める識別番号の付与
 ③ B-7(1)に定める目録の作成


寄贈・寄託文書であっても「1年以内」の排架が義務づけられた。
これは分量にもよるし、個人資料である可能性もあることを考えると「1年」と期限を区切ることが果たして良いのかという気がしなくもない。
昔、公的機関だったところからの「元公文書」の寄贈というならわからなくもないが、雑多な個人資料が寄贈されたときに、期限が1年というのは結構しんどいかもしれない。

もちろん、目録のない資料は無いことと同じなので、寄託された以上早く出てくるにこしたことはない。
これについては、実際に個人資料の整理などをされた方などが、どう考えるのか聞いてみたいところ。アーカイブズ関係の方はどう思うのだろうか?


B-3 館は、B-1及びB-2に基づき受け入れた特定歴史公文書等に著作物(著作権法第2条第1項第1号に規定する著作物をいう。)が含まれている場合は、当該著作物について、必要に応じて、著作者(同法同条同項第2号に規定する著作者をいう。)と著作権(同法第17条第1項に規定する著作権をいう。)の調整を行うこと等により、当該著作物の円滑な利用に備えるものとする。

なぜかこの項目だけに「見出し」がないんだが・・・。

著作権法第2条第1項第1号は、「著作物」の定義で、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」。

第17条第1項に規定の「著作権」とは、具体的には複製権や上映権、公衆送信権、展示権などが入ってくる。
つまり、手書きの資料などの著作権をどう処理するのか、きちんと決めておけよということ。
いちいち見たり引用する際に、著作権者の承諾をえないといけない資料は結構面倒。
国会図書館の憲政資料室の寄託文書に、複写の際には許可が寄託者の必要な資料があった記憶があるが、当日複写不可とかの縛りはあった(いまでもそうかはわからないが、関屋貞三郎文書とかがそうだった)。

もちろん寄託者の意思が入るのは、寄託文書の場合は仕方ないところもあるが、できるかぎり制限無く見れるように事前調整をしっかりしてほしいのは確か。
そういったことが書かれている部分にあたる。


B-7 目録の作成及び公表
(1) 館は、特定歴史公文書等に関して、次の各号に掲げる事項について1つの集合物ごとに記載した目録を作成する。
 ① 分類及び名称
 ② 移管又は寄贈若しくは寄託をした者の名称又は氏名
 ③ 移管又は寄贈若しくは寄託を受けた時期
 ④ 保存場所
 ⑤ 媒体の種別
 ⑥ 識別番号
 ⑦ 利用することができる複製物の存否
 ⑧ 利用制限の区分(全部利用、一部利用、利用不可又は要審査のいずれかを記載のこと)
 ⑨ その他適切な保存及び利用に資する情報
(2) 館は、(1)に規定する目録の記載に当たり、法第16条第1項第1号から第4号までに規定する事由に該当すると解される情報がある場合には、当該情報を明示しないようにしなければならない。
(3) 館は、(1)に規定する目録を閲覧室に備えて付けておくとともに、インターネットの利用等により公表する。


目録の作成・公表の義務化。
これは、解説はいらないと思うのだが、個人的に重要なものが「足りてないな」という気がしたのであえて取り上げた。パブコメでも書く予定。
それは、目録の記載項目に、不開示等の「審査日」を入れるべきだということ。
この情報は、全面開示の文書の場合はそれほど重要ではないが、不開示箇所がある場合にはかなり重要な情報となる。

情報は基本的に「劣化」する。
例えば、個人情報などは、本人が死去した後にはかなりの情報が不開示にする必要のないものになったりする。
また、外交に関わる情報でも、例えば現在は北朝鮮との外交関係の文書は出しにくいかもしれないが、将来的に北朝鮮との関係が変わった場合、それが出せるようになるかもしれない。

だからこそ、「○年○月に行った審査ではダメだった」ということを明記しておく必要がある。
しかも、できれば審査官の名前も必要(あとでなぜその判断をしたのかを調査しやすい)。
審査官の名前まで目録に載せるかは微妙としても、内部では必ず残さなければならない情報だろう。

米国の国立公文書館の資料を見ていて感心したのは、不開示の情報がある場合、メモ用紙が入っていて、「いつ、誰が審査をして、再審査はいつから受け付ける」ということが明記されていることだ。
日本の国立公文書館でも、前述した「要審査」制度があるので、受け入れた時期と審査の時期がずれる資料は、不開示部分が含まれるほど多くなる可能性が高い。

もし、審査日を目録に載せないとしても、資料そのものを見ればわかるようにしておいてほしいと思う。

以上、AとBについてはここまで。次回はC:利用について。
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