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公文書管理委員会第1回資料を読む(下の3)ガイドライン解説(整理) [公文書管理委員会]

公文書管理委員会第1回資料を読む
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前回の続き。資料はこちら。
資料4 行政文書の管理に関するガイドラインの検討素案
 資料4 別表1 行政文書の保存期間基準
 資料4 別表2 保存期間満了時の措置の認定基準

今回は「4 整理」「6 行政文書ファイル管理簿」について。ただし、6は4と関係があるところだけをピックアップするだけです。

第4 整理
1 職員の整理義務
 職員は、下記2及び3に従い、次に掲げる整理を行わなければならない。
(1) 作成又は取得した行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定すること。
(2) 相互に密接な関連を有する行政文書を一の集合物(行政文書ファイル)にまとめること。 (3) (2)の行政文書ファイルについて分類し、名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定すること。
2 分類・名称
 行政文書ファイル等(行政文書ファイル及び単独で管理している行政文書)は、当該行政機関の事務及び事業の性質、内容等に応じて系統的(三段階の階層構造)に分類(別表第1に掲げられた業務については、同表を参酌して分類)し、分かりやすい名称を付さなければならない。
3 保存期間
(1) 文書管理者は、別表第1に基づき、標準文書保存期間基準を定めなければならない。
(2) 1-(1)及び1-(3)の保存期間の設定については、(1)の標準文書保存期間基準に従い、行うものとする。
(3) (1)の基準及び(2)の保存期間の設定においては、歴史公文書等に該当するとされたものにあっては、1年以上の保存期間を定めるものとする。
(4) 保存期間の起算日は、1-(1)の作成・取得を行った日又は1-(2)の行政文書をまとめた日の属する年度の翌年度の4月1日とする。ただし、当該日以外の特定の日を起算日とすることが行政文書ファイル等の適切な管理に資すると文書管理者が認める場合にあっては、当該特定の日とする。この場合において、当該特定の日は、1-(1)の作成・取得を行った日又は1-(2)の行政文書をまとめた日から1年以内の日とする。
(5) 1-(1)及び1-(3)の保存期間の満了する日は、(4)の保存期間の起算日から起算して(2)の保存期間の満了する日とする。


これが規則の例文。
細かい解説は「留意事項」の方で。

<職員の整理義務>
○ 行政機関の各々の職員は、日々作成・取得した行政文書について、相互に密接な関連を有するものを一の集合物(行政文書ファイル)にまとめるとともに、行政文書ファイル等の適切な管理を行うため、一定の基準に従い、分類し名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。


この「相互に密接な関連を有するものを一の集合物」をどう解釈するかがカギになる。
情報公開法との関係があるので、これについては後日、行政透明化検討チームの話を書くときにまとめてみたい。

<分類の意義・方法について>
○ 行政文書を適切に分類することは、必要な文書を迅速に取り出し、事務効率を高めるために重要である。すなわち、検索の手段として行政文書を分類することは、職員の思考の整理と事務の整理に資する。適正な分類なくして、事務の効率化や情報の活用を図ることはできず、最適な意思決定は望めない。このように、行政文書の分類は、事務執行管理の中心に位置づけられるものであり、全職員がこれらの意義を踏まえ、適切に分類に取り組む必要がある。
○ 具体的な分類の方法としては、各々の職員は、自ら現物の行政文書を確認しながら三段階の階層構造の分類を行うものとする。すなわち、①まず、相互に密接な関連を有する行政文書を一の集合物(行政文書ファイル)にまとめて小分類とし、②次にその小分類をまとめて中分類とし、③さらにその中分類をまとめて大分類としていくものとする。
○ 規則別表第1に掲げられた業務については、同表を参酌(併せて、文書管理者が作成する標準文書保存期間基準を参酌)して分類する。


この中で重要なのは「三段階の階層構造」の部分。
この具体例は、第6の行政文書ファイル管理簿の部分に書かれている(25頁)。

この例を一つ挙げると、

大分類・・・「○年度行政文書管理状況報告」
中文類・・・「各省報告」
小分類・・・「内閣官房報告」

となる。

現在、行政文書ファイル管理簿が使えない原因となっているものとして、「ファイル名が曖昧で何が入っているかわからない」ということが挙げられている。
だが、実はこの問題は、「大分類」しか公表されていないということに、大きな理由を負っている。
つまり、元々大分類レベルで書かれるタイトルは、おおざっぱなものになりがちであるから、それを見ても内容がすぐにわかるものではないのだ。(それであっても、おおざっぱにも程がある名前が多すぎるのだが・・・)

今回のガイドラインでは、これを「三段階の階層構造」にすることを明言している。
ということは、内容が表題に出やすい「小分類」も、きちんと管理簿に記載されるということになる。

これはもちろん大歓迎なのだが、懸念すべき点がいくつかある。

一つめは、小分類まで公開されるのかという点。
もちろん管理簿に登載されるということは、一般公開されることが前提になるはず。ただ、どのレベルまでを公開するかはこの文書では必ずしも明言されていないように思う。
公文書管理委員会の議事録がまだ公開されていないからわからないが、きちんと小分類まで公開するという言質は取っておいた方が良いように思う。

二つめは、小分類まで曖昧なタイトルを付けてごまかそうとする動きが出る可能性である。
国民から情報を隠したい場合に、この分類にまで曖昧なタイトルを付けようとするだろう。
情報公開法が制定された際に、国民に見せたくないが故に文書を作らなくなったという話が伝えられている以上、管理簿を機能させるための監視は必要不可欠だと思われる。

なお、先に引用するが、「4 整理」の「留意事項」には次のような記載がある。

<名称の設定について>
○ 第4-1-(1)(法第5条第1項)に基づく、「行政文書」の名称の設定については、当該行政文書の内容を端的に示すような、分かりやすい名称とする。
○ 第4-1-(3)(法第5条第3項)に基づく、「行政文書ファイル」の名称(小分類)の設定については、以下の点に留意する。
① 「行政文書ファイル」や「当該行政文書ファイルに含まれる行政文書」を容易に検索することができるよう、行政文書ファイルの内容を端的に示す(複数の)キーワード(例:「配付資料」(※大分類は「公文書管理有識者会議」、中分類は「第○回会議」)を記載する。
② 特定の担当者しか分からない表現・用語(例:「Yプロジェクト関係文書」「○月○日に電話連絡があった件」「OSP会議の配付資料」)は使用せず、他の職員や一般の国民も容易に理解できる表現・用語とする。
あまり意味をもたない用語(例:「~文書」、「~書類」、「~ファイル」、「~綴り」、「~雑件」、「~関係資料」、「その他~」)はできる限り用いない。


タイトルにわかりやすい用語を使うこと、一般国民も容易に理解できる用語を使うこと、意味のない用語を使わないこと、といったあたりは、私を初めとして、多くの人がずっと口を酸っぱくして言い続けていたことだ。

今回の公文書管理法が機能するかどうかは、この「行政文書ファイル管理簿」がどこまでまともなものになるかということにかかっている。

そもそも情報公開とは、行政の透明性を高めるためのものであり、それは、国民が行政の行ったことを検証するために必要不可欠な制度である。

そして、公文書管理法は、その情報公開のための文書をきちんと管理するための法律である。
「検証」を行うためには、該当文書が「探せない」と意味がない。

今までは管理簿が全く機能していなかったので、行政側がニーズに合わせて「選んで」公開していた。
これではダメなのである。

もっと簡単に文書を見つけることができるようにしなければならない。
そして、それは内部の公務員にとっても、検索にかける時間の短縮になるはずなのだ。


この管理簿の改革の方向性は、ガイドラインを見る限り悪くないと思う。
問題は繰り返すようだが「実効性」である。予算と人員をきちんと配備してほしいと心から思う。

話を戻し、4の「留意事項」の続き。

○ 分類に当たっては、行政文書の枚数や分類の項目数の目途を示すことも考えられる。例えば、紙フォルダを用いる場合は、①小分類は行政文書の枚数にして100枚±50枚程度、②中分類は小分類の項目数にして10項目±5項目程度、③大分類は中分類の項目数にして5項目±3項目程度とするなどである。

これも細かいようだが重要な指摘。
これまで、1つのファイルの中に、簿冊が何百冊あったりするような事例が報告されている。
そういったことは許さないということである。

以下、「留意事項」には具体的なファイリングのやり方が書かれているが、それは省略。

次に「6 行政文書ファイル管理簿」を簡単に。

第6 行政文書ファイル管理簿
1 行政文書ファイル管理簿の調製及び公表
(1) 総括文書管理者は、○○省の行政文書ファイル管理簿について、施行令第11に基づき、文書管理システムをもって調製するものとする。
(2) 行政文書ファイル管理簿は、あらかじめ定めた事務所に備えて一般の閲覧に供するとともに、インターネットで公表しなければならない。
(3) 行政文書ファイル管理簿を一般の閲覧に供する事務所を定め、又は変更した場合には、当該事務所の場所を官報で公示しなければならない。
2 行政文書ファイル管理簿への記載
(1) 文書管理者は、少なくとも毎年度一回、管理する行政文書ファイル等(保存期間が1年以上のものに限る。)の現況について、行政文書ファイル管理簿に記載しなければならない。
(2) (1)の記載に当たっては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)第5条各号に規定する不開示情報に該当する場合には、当該不開示情報を明示しないようにしなければならない。
(3) 文書管理者は、保存期間が満了した行政文書ファイル等について、国立公文書館等に移管し、又は廃棄した場合は、当該行政文書ファイル等に関する行政文書ファイル管理簿の記載を削除するとともに、その名称、移管日又は廃棄日等について、総括文書管理者が調製した移管・廃棄簿に記載しなければならない。


この「毎年度1回」現況を記載という部分であるが、現在はhirajimukannさんによると、どうやら年度末に一気にデータを打ち込むという状況であるらしい。
つまり、行政文書ファイル管理簿には、リアルタイムで情報が反映されないということが前提となっているということである。
リアルタイムでの反映は、かなりセンシティブな問題が色々とおきそうなので難しいとは思うが、「仮記載」を認めている(17頁)以上、1年1回というのはどうかなと思う。

なお、この「現況について」という部分の解釈はよくわからないので、現在hirajimukannさんに問い合わせ中(→御覧になっていたら、コメント欄への質問にお答えを!)。

この6の「留意事項」については、1カ所だけ取り上げておきます。

○ 「行政文書ファイル管理簿」の主な機能は次のとおりである。
・ 国民と行政機関との情報共有化ツール
・ 行政文書の作成・取得から移管・廃棄までの現況の管理ツール
・ 意思決定の判断材料である情報の検索データベース
・ 行政文書の管理状況の監査及び実地調査等における検証ツール
・ 国立公文書館等への移管予定又は廃棄予定に関するデータベース


この通りに機能する管理簿になってほしいと心から願う。

さて、そのほかに気になることを少しだけ追記。

それは、「大分類」の名称をつける時に、さかのぼってファイル名を直してほしいということである。

行政の継続性というものを考えたときに、例え曖昧なファイル名であったとしても、それが何十年もわたって使われていたケースもあるだろう。
その場合、継続性を優先して「大分類」にその曖昧な名称を使い続けようとする機関が出てくるだろう。

この時に、過去の名称も含めて名称をわかりやすいものに変更することをためらわないでほしいと思う。
また、それを可能にすることを総務省や内閣府は認めてほしい。

本来なら、一度登載したデータの情報を変えることは、改ざんにつながることもあるのでいけないとは思うのだが、変更履歴がわかるようにすれば大丈夫ではないか。
個人的には、現在の曖昧になっているファイル名を全て遡って検証して書き換えを行ってほしいのだが、それをできる労力は各行政機関に残っているとは思えないのでそこまでは要求しない。

だが、できる限り、管理簿を機能させるための手段を尽くしてほしい。
2011年以降に登載された情報しか使えない管理簿であってはやはり困るのだ。
少しずつでも過去にさかのぼって名称の改善ができる余地は作ってほしいと思う。

以上で解説は終わり。

最後に、(下)で取り上げたガイドラインはまだ「素案」である。つまり決定稿ではない。
パブコメも行われるようなので、このガイドラインについても、意見のある人はきちんと表明した方がよいと思う。

結局全5回もかかった。これなら、上中下という名前の付け方をするのではなかったなあ・・・

相変わらず長くなってしまいましたが、今回については引用が多かったのでやむを得ないかなと思っております(^^;)
お読みいただきありがとうございました。
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コメント 3

行官士

 hirajimukannさんではありませんが、私の解釈を申し上げさせてい
ただきます。

 留意事項 「行政文書ファイル管理簿の記載について」において、
年度末時点の現況を管理簿に記載する必要があることから、
少なくとも毎年度一回は、管理簿に記載しなければならないとされ
ております。具体的には、行政文書ファイルをまとめた際、分類等を行
政文書ファイル管理簿に仮記載し、文書管理者は年度末時点で保有し
ている行政文書ファイル等が正確に管理簿に記載しているかを確認し、
確定します。

 このように「現況について」とは、行政文書ファイル等の保管・保存状
況のことだと思います。

 一方で、行政文書ファイル管理簿の機能の一つとして、新しいガイド
ライン案では、「行政文書の作成・取得から移管・廃棄までの現況の管
理ツール」が挙げられています。すなわち、保管・保存状況だけでな
く、移管・廃棄まで含めて管理するのですから、もう少し言葉を追加した
ほうがいいかもしれませんね。

 

by 行官士 (2010-07-29 00:35) 

hirajimukann

 照会の件遅くなりましたが回答しておきました。

 分類の部分について
 現在でも大分類、中分類、小分類が、行政文書ファイル名とともに公表はされています。ただ問題なのは、大分類や中分類は部署名や「法令」「予算」等の抽象的な内容で、ご指摘の通り行政文書ファイル名が大分類程度のくくりとなっている点です。
 実務担当者の感覚として、1の行政文書とは、1件の決裁文書くらいの感覚で、それを構成する伺い文、施行文書案、その裏付けとなる下部機関・関係機関や委託先の報告・データ、文書提出依頼の文書等をまとめたものが1の行政文書であり、行政文書ファイルとはそれをさらに相互に密接な関連のあるもの(たとえば同種の文書1年分等)でまとめているので、今のような取り扱いとなっています。
 過去の文書の再分類ですか・・・
 こんなことを言っては怒られるがあまりやりたくない・・・・
by hirajimukann (2010-07-29 23:28) 

瀬畑 源(せばた はじめ)

> 行官士さま

どうもご回答ありがとうございました。
私の質問は「毎年度一回」「現況について、行政文書管理簿に記載しなければならない」という意味が、年1回年度末に登載されていればOKという意味なのかという趣旨でした。
わかりにくくてすみません。

いずれにしろやや説明が足りていないように感じるのは同感です。

> hirajimukannさま

急かしてしまってすみません。ありがとうございました。

やはりいまのガイドラインの文面だと、管理簿のリアルタイム更新という感じにはならないということですね。そうなると1年1回という読み方のできる今の文面はやや不安がありますね。

中分類、小分類の今の分け方は「その部署にあります」ということぐらいしか知らせてませんからねえ・・・
ただ、今の電子政府の検索を使うと、ファイル名よりも大中小分類が上に記載されているんですよね。
要するにこの作りだと、そりゃ部署名とか付けたくなるよなという感じはします。
なので総務省自体がそういった部署の名前をつけるレベルでよいと認識しているのだなと思ってます。

この部分が、hirajimukannさんのおっしゃるように1件の決裁文書あたりのまとまりぐらいでやってくださると、利用する側はやりやすいなと思うのですが(内部の人もその方が探しやすいのでは?)。

過去の文書の再分類は、まあ現場の人はそうおっしゃるでしょうね(苦笑)
ただ、継続性を理由に過去の曖昧な文書ファイル名を引き継ぐのではなく、わかりやすく直した上でそのファイル名だけは過去に遡って一括で直すみたいなことぐらいは最低限やってほしいなあというのはあります。
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2010-07-30 00:10) 

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