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公文書管理委員会第1回資料を読む(下の2)ガイドライン解説(作成) [公文書管理委員会]

公文書管理委員会第1回資料を読む
(上)資料概説
(中)施行令素案
(下の1)ガイドライン素案解説
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(下の3)ガイドライン解説(整理)

前回の続き。資料はこちら。
資料4 行政文書の管理に関するガイドラインの検討素案
 資料4 別表1 行政文書の保存期間基準
 資料4 別表2 保存期間満了時の措置の認定基準

前回解説しなかった、「3 作成」「4 整理」「6 行政文書ファイル管理簿」を細かく分析します。
3つとも一気にやるつもりだったのですが、書いてみたら「作成」だけでえらい長さになったので、さらに分割します。引用文が長すぎるんだよなあ・・・

第3 作成
1 文書主義の原則
 職員は、文書管理者の指示に従い、法第1条の目的の達成に資するため、○○省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに○○省の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない。
2 別表第1の業務に係る文書作成
 別表第1に掲げられた業務については、当該業務の経緯に応じ、同表の行政文書の類型を参酌して、文書を作成するものとする。
3 適切・効率的な文書作成
(1) 文書の作成に当たって反復利用が可能な様式、資料等の情報については、電子掲示板等を活用し職員の利用に供するものとする。
(2) 文書の作成に当たっては、常用漢字表(昭和56年内閣告示第1号)、現代仮名遣い(昭和61年内閣告示第1号)、送り仮名の付け方(昭和48年内閣告示第2号)及び外来語の表記(平成3年内閣告示第2号)により、分かりやすい用字用語で的確かつ簡潔に記載しなければならない。


引用した部分は各行政機関の規則のための例文。「文書主義」を徹底し、意思決定過程もきちんと残すということが明記されている。
さて注目するのは、各行政機関向けに書かれている「留意事項」の部分。
引用が長くなるけど、一つ一つ行きます。

<文書主義の原則>
○ 行政機関の意思決定及び事務事業の実績に関する文書主義については、行政機関の諸活動における正確性の確保、責任の明確化等の観点から重要であり、行政の適正かつ効率的な運営にとって必要である。このため、法第4条に基づき、第3-1において、行政機関の意思決定及び事務事業の実績に関する文書主義の原則を明確にしている。これに基づき作成された文書は「行政文書」となる。
○ 「意思決定に関する文書作成」については、①法第4条に基づき必要な意思決定に至る経緯・過程に関する文書が作成されるとともに、②最終的には行政機関の意思決定の権限を有する者が文書に押印、署名又はこれに類する行為を行うことにより、その内容を当該行政機関の意思として決定することが必要である。このように行政機関の意思決定に当たっては文書を作成して行うことが原則であるが、当該意思決定と同時に文書を作成することが困難であるときは、事後に文書を作成することが必要である。


まず、文書主義がなぜ必要なのかが書かれている。
「効率的な運営」というところもきちんと書かれており、公務員にとっても利益があるという書き方がされている。

気になるのは2番目の部分。
この①②を見ると、読み方によっては、「決裁された文書に関する意思形成過程だけを残せばよい」というように解釈できるように思う。
つまり、これでは「失敗した歴史」は残らないということにならないだろうか。

もちろん、一番下っ端の公務員があれこれと案を出した全てを残さなければならないということはない。
ただ、一定の権限を持つ役職者の所で検討されたものは、例えうまくいかなかったとしても、その文書自体は残す必要があると思うのだ。

例えば、こういうことで気になるのは、ある大規模な公共工事が計画されたが、それが結局地元の反対などで中止になった場合。
もちろん、最初の計画の段階で決裁は受けているはずだから、文書は残ると言えるだろうが、ダメになった瞬間に全部廃棄という話にならんだろううか。
また、外交とかの場においては、内部で検討したけれども、結局交渉が上手くいかなかったということもあると思うのだが、そういったものもきちんと残るのだろうか。
失敗した事例というものを残すのは恥だと思うかもしれないが、そういったミスを記録することもまた将来の行政の効率化には必要なのだと思う。

ただ、この部分の私の読みはやや偏っているかもしれない。失敗していても、計画を遂行する際には決裁を受けていると考えれば、文書はきちんと残るのかもしれない。
ただ、「不安」があるということで指摘した次第。

なお、「事後に文書を作成することが必要」というのは良いとは思うけど、「後からちょっとした説明を残しておけば途中をきちんと残さなくていいんだ」みたいな解釈に取られると困るかなという感じはする。

○ 例えば、法令の制定や閣議案件については、最終的には行政機関の長が決定するが、その立案経緯・過程に応じ、最終的な決定内容のみならず、主管局長や主管課長における経緯・過程について、文書を作成することが必要である。また、法第4条第3号で「複数の行政機関による申合せ・・・及びその経緯」の作成義務が定められているが、各行政機関に事務を分担管理させている我が国の行政システムにおいて、行政機関間でなされた協議を外部から事後的に検証できるようにすることが必要であることから、当該申合せに関し、実際に協議を行った職員の役職にかかわらず、文書の作成が必要である。
○ 「事務及び事業の実績に関する文書作成」については、行政機関の諸活動の成果である事務及び事業の実績を適当と認める段階で文書化することが必要である。例えば、同一日に同一人から断続的に行われた相談への対応について、最後の相談が終了した後に文書を作成することなどが考えられる。


決裁文書だけを残すのではダメだと言うことをかなり強く強調した部分。
局長、課長クラスより下の場合は残さなくても良いと取られそうで気になる。
政策が作られるときは、課長代理クラスが中心なんじゃなかったか?それとも「主管課長」という言い方でそのあたりもカバーできてるのかな?
もうちょっと幅の広げた書き方をした方が良い気もする。

複数の行政機関と協議したものは、職員の役職に関わらず文書を残せというのは良いと思う。こうしておかないと、行政機関によって残る文書が変わってくる可能性がある。

行政機関の職員は、当該職員に割り当てられた事務を遂行する立場で、本条の作成義務を果たす。本作成義務を果たすに際しては、①法第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるようにすること、②処理に係る事案が軽微なものである場合を除くことについて、適切に判断する必要がある。
各職員が、文書作成に関し上記の判断を適切に行うことができるよう、日常的な文書管理の実施についての実質的な責任者である「文書管理者の指示に従い」、行うこととしている。文書管理者は、法第1条の目的が達成できるよう、個々の文書の作成について、職員に日常的に指示する必要がある。


上の段は繰り返しのように見えるが、「職員は」ということを主語として、現場の職員全てが意識を持つことが重要だと指摘している。
さらに下の段で、文書をきちんと作るように職員を指導せよと書かれている。

これは重要ではあるが、結局ここの実効性がどう担保されるかが重要
今までと仕事のやり方を変えるという意思がないと上手くいかないように思う。
結局は研修の徹底化以外にはないう。地道に改革を進めていくしかないということになるだろう。

○ 「処理に係る事案が軽微なものである場合」は、法第1条の目的を踏まえ、厳格かつ限定的に解される必要がある。すなわち、事後に確認が必要とされるものではなく、文書を作成しなくとも職務上支障が生じず、かつ当該事案が歴史的価値を有さないような場合であり、例えば、所掌事務に関する単なる照会・問い合わせに対する応答、行政機関内部における日常的業務の連絡・打合せなどが考えられる。当該事案が政策判断や国民の権利義務に影響を及ぼすような場合は含まれない。

「軽微」の部分の解釈は公文書管理法を制定される際に大きく問題になっていた。
つまり「軽微」という名でもって、重要な文書をそこに混ぜて捨てるのではないかということだ。
この部分の書き方は、そういった考えを持つ余地を与えないという意味で評価できる。

<別表第1の業務に係る文書作成>
○ 公文書等の管理に関する法律施行令(平成22年政令第○号。以下「施行令」という。)別表においては、一連の業務プロセスに係る文書が同一の保存期間で保存されるよう、法第4条各号により作成が義務付けられている文書など各府省に共通する業務等に関し、当該業務プロセスに係る文書を類型化(ガイドライン別表第1において具体例を記載)した上で、その保存期間基準を定めている。各行政機関においては、ガイドライン別表第1に、各行政機関の事務及び事業の性質、内容等に応じた当該行政機関を通じた保存期間基準を加えて、規則の別表第1とするものとするとされており(15頁参照)、第3-2では、規則別表第1に掲げられた業務については、当該業務の経緯に応じ、同表の行政文書の類型を参酌(併せて、文書管理者が作成する標準文書保存期間基準を参酌。当該業務の経緯に応じて、同表に列挙された行政文書の類型が当てはまらない場合もあり得ることから「参酌」としている。)して、文書を作成することを明確にしている。


長くて()が多いわかりにくい文章だが、ようするに別表第1で、文書の類型化がなされているので、それに合わせて保存期間を定めよという話。
詳しくは別表第1を参照のこと。
私自身はそれほど違和感はないが、作成から数年内の文書を使うような活動をされているかたは、この表はきちんと読み込んだ方が良いかと思う。

<適切・効率的な文書作成>
→省略。

<取得>
○ 文書の取得については、各行政機関の実情に応じ、適宜定めるものとするが、以下のことに留意する必要がある。
「行政文書」の要件である「取得」の時点は、行政機関の職員が実質的に取得した時点で判断されるものであり、必ずしも、受領印の押印や文書管理システムへの登録などの手続的な要件を満たした段階ではない。しかしながら、その一方で、適正な文書管理を確保する観点や、文書が申請である場合、これらを遅滞なく処理する観点(行政手続法(平成5年法律第88号)第7条)から、受領印の押印や文書管理システムへの登録などの受付手続きについては、適切に行う必要がある。
 〔中略〕
委託事業に関し、説明責務を果たすために必要な文書(例:報告書に記載された推計に使用されたデータ)については、委託元の行政機関において適切に取得し、行政文書として適切に管理することが必要である。


「取得」というのは、行政機関が他の民間企業に調査などを委託した際に、その元データを受け取ることを指す。
これまで、高速道路工事などでは、環境アセスなどを業者に委託した場合、結果は行政機関で持っていても、その根拠となるデータは民間業者が持っているために情報公開の対象外となっていた。

今回のこの部分は、その元データも「取得」せよと書いている。
ただ、ここについては、もっと具体例を挙げて述べた方が良いのではないか。これだけだと、やはり結果さえきちんと管理していればOKという解釈の余地を残しているように思う。元データをきちんと取得するとの文面を入れておくべきではないか。

<決裁・進達・施行>
→省略
(以上)

このガイドラインは、「留意事項」をどう読むかに注意をした方が良いと思う。
かなり出来は良いと思うのだが、まだまだ自由な解釈の余地を残しており、厳密に練り上げる必要があるのではないかなと思う。

長くなったので、「整理」の話は次回に。
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