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公文書管理委員会第1回資料を読む(下の1)ガイドライン素案概説 [公文書管理委員会]

公文書管理委員会第1回資料を読む
(上)資料概説
(中)施行令素案
(下の1)ガイドライン素案解説←ここ
(下の2)ガイドライン解説(作成)
(下の3)ガイドライン解説(整理)

公文書管理委員会の第1回会合が7月15日に行われました。
その資料が公開されたので、この内容について検討してみたいと思います。

今回取り上げるのは、
資料4 行政文書の管理に関するガイドラインの検討素案
 資料4 別表1 行政文書の保存期間基準
 資料4 別表2 保存期間満了時の措置の認定基準
の資料。
これは施行令に基づいて各行政機関で作成される「行政文書管理規則」の指針として作られたものです。文案が提示され、その理念が説明されています。

このガイドラインについては、すでに「お役所最適化計画」のhirajimukannさんが、現場の公務員の立場から詳細なコメントを付けておられますので、そちらもご参考に。→入口

hirajimukannさんがおっしゃっていることを簡単にまとめると

・施行令素案と同時にガイドラインの素案も検討に上げていることは重要。
・ガイドラインの内容は基本的には良いが、その実効性に不安。
→不安要素・・・行政文書の定義がまだ曖昧、システムの不備、人員予算不足、などなど。
・実効性を担保するなら、研修の充実化が必須。


ということである。
これは私も前から述べていることだが、公文書管理は気合いと根性では何もできない。それに見合う予算、人員を投入しない限り、絶対に上手くいかない。
例えば、廃棄や延長をする際に内閣府がチェックすると言っているが、内閣府の公文書管理課の人員は10人。この10人で、中央官庁だけでなく、地方事務所や独法からも流れてくる文書の全てをチェックできるわけがない。

hirajimukannさんは、現場からの声として、今の予算・人員の一律削減を課されている状況では、政治主導でここに資源を投入するというリーダーシップが取られないと、公文書管理法は機能しないのではないかという懸念を表されており、私もこの点は同感である。

さて、以下ではこの資料の解説をします。
ただ、長くなったので、2分割します。

今回はガイドラインの章立てから簡単に述べられる部分を処理し、次回、管理法で最も重要な部分である「作成」と「整理(管理簿)」だけ別に取り上げて述べていこうかと思います。


行政文書の管理に関するガイドラインの検討素案

○ 「行政文書の管理に関するガイドライン」は、各行政機関が適切に行政文書管理規則を制定できるよう、内閣府が各行政機関に対し、指針として示すものです。
○ 各行政機関における行政文書管理規則の制定に当たっては、内閣府への協議とその同意が義務付けられており(公文書管理法第10条)、内閣府の同意に際しては、公文書管理委員会への諮問が必要とされています(同第29条)。
○ このため、委員会における行政文書管理規則の審査を円滑に進めるために、あらかじめ規則の作成指針であるガイドラインについて御審議いただくものです。


これは、資料4の冒頭部に掲げられたものである。
公文書管理法では、施行令だけでなく、各行政機関の「行政文書管理規則」も公文書管理委員会の同意が必要となっている。
そのため、内閣府がその指針として示したのが、このガイドラインということになる。
もちろん、各行政機関がこれに従わずに独自の基準を作るという可能性はあるだろうが、公文書管理委員会を通すことを考えた場合、ほとんどの機関がこのガイドラインに沿って作ることになるだろう。

ということは、このガイドラインは非常に重要な位置を占めることになる。
ここにまずいことが書かれていた場合、これが各行政機関の文書管理の基準になってしまうということだ。
なので、施行令だけでなく、ガイドラインも非常に重要な意味を持つことになる。

それでは目次を見てみよう。

○○省行政文書管理規則
目次
第1 総則
第2 管理体制
第3 作成
第4 整理
第5 保存
第6 行政文書ファイル管理簿
第7 移管、廃棄又は保存期間の延長
第8 点検・監査、管理状況の報告及び研修等
第9 補則


このうち、3、4、6は次回に回し、残りだけさらっと解説します。

第1 総則

行政文書の定義などがなされている。
「組織的に用いるものとして」「保有しているもの」という点は情報公開法と変わっていない。
この点については、情報公開法改正の話に絡めて別の機会に。

hirajimukannさんによれば、導入することと書いてある「文書管理システム」はまだ開発中らしい。
公文書管理法施行によって事務負担が増えれば、重要な文書の作成などが滞るような事態も想定されるので、負担軽減が図れるシステムが導入されることを望みたい。

第2 管理体制

文書管理の責任者をしっかりと置くこと、その権限を明記することを意図した部分。
hirajimukannさんも主張されているが、管理者のことしか書いていないので、せめて「留意事項」の部分に実行部隊をきちんと配置するといったようなことは書かれてよいと思う。

第3 作成
第4 整理
→次回

第5 保存

保存場所、方法、引き継ぎなどについて書かれた部分。
「個人的な執務の参考資料は、共用のファイリングキャビネットや書棚等には置かず、職員各自の机の周辺のみに置くことを徹底する必要がある」(19頁)という記述があるのは、「行政文書」とそうでない「私的文書」を明確に分けろということであろう。

また、これもhirajimukannさんが指摘していることだが、電子文書の保存の長期保存フォーマットについては、内閣府が主導でなんらかの手段を考えるべきである。
細かくは書かないが、要するに今使っているソフトは20年後も有効かはわからない。そのため、ソフトの更新とともにデータのフォーマットも変えていく必要があるということである。

第6 行政文書ファイル管理簿
→次回

第7 移管、廃棄又は保存期間の延長

これは重要なのだが、前回の施行令素案(第9)の解説で書いてしまったことの繰り返しになるので、詳しくはそちらを。

簡単にだけ述べておくと

移管→国立公文書館等へ。
廃棄→内閣府と協議して「同意」を得なければならない。
延長→内閣府へ「報告」しなければならない。

ということになる。「延長」の部分に「報告」義務が発生したので、移管が進むかもしれない。

あと、「国立公文書館の専門的技術的助言を求めることができる」という文章も入ったので、正規のルートで国立公文書館も関与できる余地を残した(ただし「求められないと」できないけど)。

第8 点検・監査、管理状況の報告及び研修等

年1回の点検、監査の義務づけなどである。
これもhirajimukannさんがおっしゃっている通りなのだが、点検や監査をやる担当者の能力(文書管理だけでなく実務にも通じている)とその権限が重要だと思う。
つまり、実効性のあるものでなければ点検・監査は意味がない。

また研修についても、積極的に職員を参加させることを奨励している。
いままであまり文書管理や作成についての明確な指導を受けていない公務員が多い状況の中で、繰り返し研修を行うことは必要不可欠である。
分担管理原則の壁があるので、各行政機関に研修費用を大量に回すためには首相のイニシアティブが不可欠となるだろう。ここの部分は蓮舫行政刷新相の力だけではどうしようもないと思われる。

第9 補則

その他。各行政機関が付け足す部分。

次回は、残った3、4、6を解説します。
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