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「天皇陛下御即位二十年をお祝いする国民祭典」参加記 前編 [天皇関係雑感]

11月12日に皇居前広場で行われた「天皇陛下御即位二十年をお祝いする国民祭典」に参加してきた。
この式典は、日本会議や奉祝議員連盟が行っているもので、国の行事ではない。
だが、各省が後援をしており、首相も参列をしているので、かなり公的な色彩の強い行事であるとは言えるだろう。

私は10年前の即位十年の式典に参加している。その時はまだ学部の4年生で卒論を書いていた時期だった。
この式典に参加した時に受けた印象が、私なりの天皇制研究の原点になっている。

まず前編として、第1部からの感想を、天皇陛下御即位二十年奉祝委員会のウェブサイトにあったプログラムを貼り付けた上で、細かい感想を先に書いておきたいと思います。
後編では全体の分析を加えてみたいと思います。

青字は奉祝委員会のプログラム。黒字は私のコメントです。敬称略です。
書いていたらものすごく長くなって分割しようかと思ったのですが、それもおかしいなと思ってそのままにしてあります。申し訳ないです。

第一部 奉祝まつり
祝賀パレード 14:15(出発式)~16:30
奉祝渡御(お神輿の練り歩き)14:10(出発式)~16:30 


祝賀パレードは10年前に引き続きの開催。ただ前回よりも明らかに参加団体が減少している。
10年前の公式記録集である『天皇陛下御即位10年奉祝の祭典 全国奉祝運動の記録』(天皇陛下御即位十年奉祝委員会編・発行、2000年)によれば、参加団体の数は以下の通りだった(38頁)。

・音楽隊などの出演団体 9 →今回3
・郷土芸能の出演団体 26 →今回13(ただし、前回2つだった東京都内の神輿渡御が、パレードから独立して18参加。前回パレード参加の鬼太鼓座は第2部へ)

特に音楽隊の減少が著しい。前回は祝賀パレードにもいた陸海空自衛隊音楽隊は第2部のみに。前回いた警視庁騎馬隊や在日米軍の軍楽隊は不参加になっていた。
やはり当日を祝日にできなかったのはかなり手痛かったのではないかと思われる。

また、前回の記録集によれば沿道に3万人いたとのこと(39頁)で、今回も3万と主催者は発表しているが、明らかに今回は前回よりかなり少なかったのではないかと思われる。
パレードの出発地点にはかなり大勢の観衆がいたが、中間地点はかなりまばらか1重ぐらいしか人がいなかった。10年前の熱気から比べるとやはり少ないのではと思う。

またパレードの出発式も見たが、来賓あいさつが奉祝委員会の運営委員長と千代田区長という何とも地味な組み合わせだった。
ちなみに前回は、奉祝委員会だけでなく奉祝議員連盟の実行委員長も挨拶していたし、「参加者代表挨拶」ということで歌手の橋幸夫が挨拶していた。
神輿の出発式も別にあったようなのでそっちで議員連盟の実行委員長は挨拶していた可能性はあるが、いずれにしろ「関係者」挨拶しかなかったのは確かだ。
それに10年前にはテープカットもしていて、そこにはサッカーの井原正巳とか漫画家の松本零士とかいて、それなりに盛り上げようという意図があったように思う。全体的に前回よりパワーが落ちている印象。

お国自慢の全国郷土展

前回もあった。でも気になるのは、「全国46都道府県」って書いてあったこと。

「46」?
一つ足りないではないか。
出店を見ていたらわかった。ここには名指ししませんが(ここを見つけて右翼が抗議とかいったら困るし)。
私個人を知っている人にだけわかるように言うと私の実家のある県です。

でも近くで配布していたビラのあおり文句が「このように各都道府県が一同に会す郷土展は恐らく十年に一度、滅多にありません」っていうのはどうなのか。
この祭典しかありえないよということなんだろうけど。何か客を集めるのに必死みたいな感じがにじみ出ていた。
そして、各ブースはやる気のあるなしがかなり明確に分かれていた。
一番目立っていたのが、奈良県の「せんとくん」の着ぐるみだったように思うんだが。何も買わなかったけど、思わず写真だけ撮ってしまった(苦笑)。

第二部 祝賀式典

写真撮影・録音禁止だったのにはびっくりした。10年前はそんなことなかったのに。
理由はなぜですかと聞いたら「テロ対策」!と。
でもその場で警官立会の下でデジカメのシャッターを一回押していたので、そこまで確認するならテロもくそもないだろうと思うんだが。(だがこれが別の目的であった可能性もあるという話は後編にて。)

ゲートは3つ。詳しくは後編にて解説。私はCゲート。
入場者には式典の式次第と紙製の日の丸、奉祝提灯が配られる。
大規模なコンサートで行われるように、入場者をブロックごとに分けて整理しやすいようにしていた。

私はたまたまCブロックの一番右端の席に座れた。ちょうど全体を見渡せるからいいやと思ったのだが、これが誤算が。

寒い。

式典の途中で12度とアナウンサーが言っていたが、体感気温はそれ以下。
とにかく風が冷たい。しかも端なので人の壁もなく、完全に風が直撃する場所。
10年前は雨で寒かった記憶があったので防寒具はそれなりに持ってきていたのに、全然足りてなかった。まわりでも無料で配られたレインコートを雨が降っていないのに被っていた人がかなりの数いた。

16:52 振れ太鼓 演奏 鬼太鼓座

舞台は死角になっていて見えず。もちろん二重橋も見えない。オーロラビジョンを見るというのが基本的な視聴スタイルなのは前と変わっていない。
司会者は元NHKのアナウンサーの宮本隆治と久保純子。人選としては非常に無難。

17:00
開会宣言 平沼赳夫(奉祝議連実行委員長)
開会ファンファーレ 演奏 陸海空自衛隊合同音楽隊「雅の鐘」
国歌独唱 佐藤しのぶ(声楽家)


平沼赳夫はえらく健康を害しているような声の出し方をしていたのが気になった。
国家独唱の時は起立脱帽。

お祝いメッセージとご紹介(以下はマイクを持って話した人のみ抽出)

1) 天皇陛下の海外ご訪問国から
ヤドヴィガ・ロドヴィッチ(ポーランド共和国駐日大使)
2) 経済界から
豊田章一郎(日本経団連名誉会長)
3) 被災自治体から
平野祐康(三宅村長)
→久保アナが話を聞くという形式。次の星出氏も同様。
4) 学界・学術研究から
小柴昌俊(ノーベル賞受賞者)、星出彰彦(宇宙飛行士)、松山優治(東京海洋大学学長)
+学生代表がちょっと話していた。

まあ挨拶はこんなもんなもんでしょう。大使は前回は米国大使が来ていたので格落ちか。
(一応、サイパンには行っているから米国も訪問国ではあるんだろうが、さすがに相手の招待がなかった旅行だからしょうがないのか。)

奉祝演奏
1) 陸海空自衛隊合同音楽隊「祝典行進曲」「威風堂々」
2) 鬼太鼓座「屋台囃子」
(「打八丈」もやっていた)

今回は祝典行進曲を何度も聞いた気がする。天皇皇后の「御成婚」の時に團伊玖磨が作った曲。運動会とかでも普通に流れているから聞いたことがある人は多いのでは。
前回はあまり聞いた記憶がなかったがやはり結婚50年だからかなあ。
http://www.youtube.com/watch?v=bLY4FHqsdoM
↑You Tube上にとりあえずあったもの。

お祝いメッセージとご紹介
1) 芸能界より
森光子(女優)
2) スポーツ界より
荒川静香(トリノ五輪金メダリスト)、高橋尚子(シドニー五輪金メダリスト)
3) 野球界より
原辰徳(WBC代表監督)


スポーツの方が芸能より前に紹介されていた。
荒川静香と高橋尚子はスピーチが抜群にうまい。紙も持たずに前を向き、自分のアピールをうまく混ぜながら天皇を称えるというなかなか簡単にはできないスピーチをしていた。
この二人が数年後に自民党か民主党から参院選に出ていても全く驚かない。
なぜかWBC関係者でわが愛するベイスターズから村田と内川が出ていた。残り一人が西武の中島で、どういう人選なんだと思った。投手が一人もいないし。どういう基準で選んでいるんだろうか気になる。
ちなみに10年前の現役の野球選手代表は野茂と松坂。こう考えると松坂は10年もトップ選手なんだなとあらためてすごさを思う。

森光子は「皇太子さまお生まれになった」という現天皇が生まれた後に作られた奉祝歌をそらんじていた。
http://www.youtube.com/watch?v=xgDz0yhBNDc
↑You Tubeに原曲が上がっていた。

歌詞も微妙に間違っていたし、時系列がややおかしくなっていたが、音程は取れていた。すごい記憶力だなと思う。
ただ、私の祖母も数年前に天皇のことを聞いた時に、この曲を歌えたんだよなあ。ちょうどその時に小学校の先生だったらしく、学校で生徒と歌ったらしい。
奉祝歌は別にこれが公式のものではなく、民間でたくさん作られたのだが、この曲が歌いやすかったのか、一番記憶に残っているみたいだ。

18:00
奉祝演奏
1) 千代田区立和泉小学校ビッグバンドクラブIZUMI NOTES「ウッドチョッパーズボール」「ロックアラウンドザクロック」
2) 劇団こころ・疾風乱舞合同チーム「ハマコイ踊り」
3) 佐藤しのぶ(声楽家)「ねむの木の子守唄」
←演奏されず。時間が押していた?

子どもを使うというのは、こういう行事では良くある、というかむしろ戦前などではそれが標準か。
だが、前回の式典にはそういった趣向はなかった。こういったところにも若者になんとかアピールをという強い意志を感じる。
特に2のダンスパフォーマンスは流れ的に大きかったのかなと後から考えると思う。EXILEのダンスパフォーマンスの前座みたいな位置づけになったからだ。これを見ているがゆえに、EXILEへの違和感が薄れたのは確かだと思う。

奉祝曲に関するインタビュー←これも流されず。この時点で時間が10分以上押している感じだった。
秋元 康(作詞家)
岩代太郎(作曲家)


ここで受付で渡された提灯に火入れ。スタッフが着火用のライターを回していた。
このロウソクの火が暖かくて・・・。本当に寒さが厳しかった。

天皇皇后両陛下のお出まし
奉迎演奏 陸海空自衛隊合同音楽隊「平成の秋」
※両陛下は二重橋上にお出ましの予定


ここからは起立脱帽。

主催者祝辞 岡村 正(奉祝委員会会長)
内閣総理大臣祝辞 鳩山由紀夫(内閣総理大臣)(予定)


「予定」だったみたいだが、オバマ大統領がこの日に来日しなかったからか、ちゃんと来れたようだ。

天皇陛下御即位二十年奉祝曲 歌 EXILE(14名)

曲は「組曲「太陽の国」」。演奏はオーケストラっぽかった?(管弦以外の楽器もあったので正確にはオケではないと思う。)
第1部が「太陽の種」で演奏のみ。
第2部が「太陽の芽」でEXILEの12名によるダンス。
第3部が「太陽の花」で残りのメンバー2名による歌。

以前にも書いたが「なんでEXILE」という疑問はあった。
でも、正直、この構成をパンフで見た時に「なるほどこういう手があるのか」と感心した。

実際に見て思ったが、「上手なダンスパフォーマンス」を見て「上手な歌」を聞いたという感じなのだ。
つまり、ダンスと歌を分けたことによって、EXILEの持っている「軽さ」のようなものが薄くなったように思う。
その意味では、年輩の方が置いていかれるというようなこともなく、パフォーマンスとしては全年齢楽しめるようなものになっていたのではないかと思う。
あえてEXILEの本来の特徴(歌とダンスの融合)を消すことによって、受容されやすいパフォーマンスを作ったのだ。(これはサングラスやピアスを外し、髪のそり込みを止めたということともつながりがある。)

これはやるなあと思わざるをえなかった。
前日の朝日新聞に、EXILEを呼んだのは昨年レコード大賞を取ったからという主催関係者の談話が載っていたが、まさしくこれが本音なんだろう。
つまり、「EXILE」というパフォーマンサーでなければならない理由はなかった。
「有名」(特に若者に)であり、「華」があり、しかも芸能界の「お墨付きもある」人であれば良かったのだ。
だれが来ようと、それをある一定の型にはめてしまえば、逸脱することもない。そういうことだったのだ。
その意味では、見た目はあまり天皇制と親和性のないEXILEを型にはめたというのは、主催者側がどこまで狙ったのかはわからないが実にうまいなあと感心したのだ。(それにEXILEの側もその型にはまることに違和感のないグループでもあったということでもあるだろう。)

なお、この曲の「太陽」は「天皇」のことである。
歌詞はまだネットにはあまり上がっていないみたいだが、途中を少しだけ紹介すると

太陽は変わることなく輝いて 青い空 両手を広げ そのぬくもりを平等に与えてくれる
光の花 降り注ぐ 生まれた国 いつまでも忘れない


歌詞と主旋律が載っている楽譜が会場では配布されていた。歌詞を見ると、直接に「天皇」とは出さず、それを「太陽」と置き換えることで、かなり歌いやすい曲にしていると思う。
また、「太陽」と置き換えることによって、直接的な奉祝表現が間接的に見えるようになっていると思う。
何というか、「大衆化した奉祝歌」ってこんな感じだろうなという型を見せてくれたように思う。

国歌斉唱 演奏 陸海空自衛隊合同音楽隊

まわりはきちんと歌っていた。これは10年前と大きな違いだなと思う。10年前の状況は以前少し書いた。詳しくは後編で。

天皇陛下のお言葉

最後に「少し冷え込み、皆さんには寒くはなかったでしょうか」という言葉をすっと入れるのはさすがだなと思った。
10年前も雨が降っていた時に「濡れて寒いのではないかと心配しています」と話していたし、こういった国民へのメッセージを発する時の目配りの仕方はまさに「職人芸」だと感じる。
あの発言で、寒くて文句を言っていた会場の人たちのなかには救われた人も多かったのではと思う。

聖寿万歳 森 喜朗奉祝議連会長

10年前は、4人ぐらい出てきて次々と万歳を言っていたので、なんだか間が悪い感じだったが、今回は一人だけだった。

両陛下ご退出
奉送演奏 陸海空自衛隊合同音楽隊「平成の秋」


この時に司会者なのか誰かよくわからないが、ずっと「天皇陛下万歳 天皇皇后両陛下万歳」とマイクから絶叫して参加者に万歳をさせていたのが印象的だった。
Cゾーンになると万歳というよりは旗を振っていた人の方が多かったような印象。万歳という行為は目の前に相手がいるとやる気になるが、画面相手にやるのはどうも違和感があるという感じなのかなと思った。

19:00 閉会宣言

10分以上オーバーして終わった。
一気に帰られると整理上困るからといって、順番に退出させようとしていたが、Cゾーンの人たちは全くそれを聞く気配も無く、速攻で帰途についていた。
正直、寒さで厳しかったんだと思う。

以上がプログラムに沿って見ていた感想です。全体の解説は次回。
後編はこちら
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行官士

  「少し冷え込み、皆さんには寒くはなかったでしょうか。」というお言
葉は、お手元の原稿にはなく、おそらく陛下ご自身がとっさに考えられ
たものでしょう。国民を気遣う素晴らしいお言葉だと思います。

 あと、ご覧になっているかと思いますが、日経新聞朝刊 社会面に「
平成の天皇 即位20年の姿」と題した連載記事が掲載されていまし
た。
by 行官士 (2009-11-14 16:17) 

h-sebata

> 行官士さま

おそらく式典を宮殿で見ていたときに、アナウンサーが寒いという話をしていたので、そこで書き加えてからきたのかなと思います。直前まで文案を推敲しているらしいので。さすがというところでしょうか。
by h-sebata (2009-11-17 02:13) 

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