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事務分担管理原則の克服は可能なのか? [情報公開・文書管理]

9月30日にオーフスネットで事務分担管理原則の歴史的経緯について話してきました。
折角レジュメと資料を作ったので、PDFでネットで上げておきます(レジュメ資料)。参考になるかはわかりませんが・・・。
別に私のオリジナリティなど全くなく、様々な本を読んでまとめたものです。おおざっぱなのは御容赦のほどを。

さて、「事務分担管理原則」とは、簡単に言うと、各省庁が「○○の事務を行う」ということが決められており、事務のできる範囲が決まっていることである。
そもそも官僚制度というもの自体が分担して事務を行うためのものなので、別にこのこと自体に問題があるわけではない。

問題になるのは、複数の省庁にまたがる事案が発生したときに、その「分担」していることが解決の弊害になるようなことが起きがちだということだ(いわゆる「縦割り行政」の弊害)。
例えば、化学物質の健康被害の問題などを取り上げてみると、関係省庁は環境省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、農林水産省あたりが関係者になってくる。
こうなると、なかなか各省庁の利害調整が難しくて、解決が遅れるのだ。

今回話をしに行った勉強会では、この事務分担管理原則をどうすれば克服できるのかということが問題となっていた。
そこで議論となったのは、「そもそも分担管理自体は悪いことではない。問題は分担管理をつなぐためにどういうことをなす必要があるのか」という所だったと思う。

この分担管理原則を克服するときにまず取られる手段は、そこに「横串し」を刺すことである。
例えば、2001年の中央省庁再編も、内閣府に総合調整機能を集中させることで、縦割り行政の克服を図ろうとした試みであったと言える。
今回の民主党の国家戦略局構想もその一環だと言える。

だが、議論の中で、「横串し」だけではなく「縦串し」をきちんと刺すことも重要なのではないかという話が出て、なるほどなと感じた。
つまり、政治の意志がきちんと官僚制の中に伝わって実行されるということである。

こういうときには、よく「分担を整理すれば良い」(省庁再編など)という話になりがちである。
もちろん、それにも十分な意味があるだろう。
だが、それだけで解決するような話ではない。
結局は、政治家が横と縦からしっかりと官僚を管理すること、そして市民がその政治家にきちんと問題の在りかを伝えたりするなどして、分担同士ををつないでいこうとすることが必要なのだ
(おそらく、他の国でNGOやNPOを政府が重用するようなところが出てきているのは、そういった分担のすき間を埋める役割への期待というのもあるのだろう。)

そしてそれを担保するために、公文書管理や情報公開が必要不可欠なのだ。
公文書管理や情報公開をきちんと行うことで、官僚の仕事を公開し、串の刺さり具合をきちんとチェックすることが可能になるのだ。
また、情報を市民と共有することで、政策提言を行えるようにすることにも重要な意味を持つのだ。


私自身、歴史研究者にありがちではあるが、現代的な問題に対する関心がやや弱い部分がある。
だが、こういった議論に参加していると、自分のやっていた公文書管理の問題が、現在の政治にどうリンクしているのかが明快になってくる。

また、自分の話した内容と現在の話がどうつながるのかよくわからないで話をしていたのだが、議論に参加していく中で、結局これまでの日本の行政改革が「横串し」をどう刺すかという所ばかりに論点が集中し、「縦串し」や刺さった効果を検証するための情報公開などに関心が向かず、結局は官僚達に「横串し」自体を握られて無力化されてきたということも見えてきた。
やはり、歴史研究者はもっと現実の政治に向き合っている人達と議論しなければいかんなということを改めて痛感させられた。その意味でも、話をしに行って良かったと思った。

最後に嬉しかったことを一つ。
以前に本ブログで紹介したことのある、「お役所最適化計画」の管理人のhirajimukannさんが、話を聞きに来てくださったのだ。
ネットでしか知らない方とOFFでお会いするのは初めてで本当にびっくりした。
色々と直接お話しをすることができて、本当にうれしかった。


普段、歴史研究者で研究室に引きこもっていることの多い私が、このブログを通して色々な方と知り合うことができ、インターネットの力の大きさを改めて感じています。
歴史研究をしていただけなら、間違いなく知り合うことのなかった人達とつながっていくことの楽しさ。これがブログの醍醐味なのかなと改めて感じ入った次第。

これからもブログを通して、色々なことを発信していきますので、よろしければおつきあいください
m(_ _)m
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行官士

  いわゆる縦割り行政のもっとも弊害となるのは、「自分の部署さえ
よければ、他の部署はどうなったって知ったこっちゃない。」というとこ
ろです。

 例えば、各部署にまたがる、あるいはどこの部署にも属さない事案
が発生したときに「これはあんたの部署が担当するべき。」、「いや、
あんたの部署がやるべきだ。」とその事案に関する「押し付け合い」
は日常茶飯事です(これを「割り振りもめ」とか、「消極的権限争い」
と呼んでいます。)。

 また、自分の部署に多少でも不利なことをされようものなら、「
なんだ!!!!!てめえ!!!!!その態度は!!!!!!
てめえのところの仕事なんかやらねえぞ!!!!!!」と、まるで
ヤクザまがいの脅迫をしてくる人もいました。

 こういう姿勢が、事案への対応が遅れる等により、結果的に国民の
皆様にとって大きなご迷惑をかけることになります。でも、彼ら、彼女ら
はそのことに気づかないのです。

 縦割り行政の弊害を解消するためには、大臣・副大臣・政務官等の
レベルで、「この事案は〇〇と△△が協力して当たること。」等のイニ
シアチブを取ることが必要になってくるでしょう。
by 行官士 (2009-10-04 12:26) 

h-sebata

> 行官士さん

書き込みありがとうございます。
そうですね。政治家のイニシアティブは必要だと思います。
ただ、末端まで目が行き届くかというとそうではないでしょうから、その時にこそ情報公開や市民団体のような存在は必要不可欠になるのではと思っています。
by h-sebata (2009-10-04 22:09) 

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