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アリゾナ記念館と戦艦ミズーリ [雑感]

妹の結婚式でハワイへ行ってきた。
ハワイに行ったからには、歴史研究者としてはあそこに行かねばなるまいと思って真珠湾に行ってきた。
説明するまでもないことだが、真珠湾は1941年12月8日(現地は7日)に日本軍がハワイのアメリカ海軍に奇襲攻撃をかけた舞台である。

真珠湾には日本との関係のある施設が主に2つある。
一つめは、戦艦アリゾナ記念館(USS Arizona Memorial)
二つめは、戦艦ミズーリ(USS Missouri)である。

前者は、日本軍の真珠湾攻撃にて沈められた戦艦。この写真は結構有名なのではないか。
USSArizona_PearlHarbor.jpg
現在、沈んだ船の上に記念館が建てられていて、沈んでいる船を見ることができる。

後者は、日本が連合国に降伏した時の調印式が行われた場所。
Shigemitsu-signs-surrender.jpg
トルーマン大統領がミズーリ州の出身だったことから、この艦上が降伏調印式の場所として選ばれた。1992年に退役して、その後アリゾナ記念館の近くに係留されて公開されている。

真珠湾は、オアフ島の主要部であるワイキキから市バスに乗って1時間弱西に行ったところにある。
アリゾナ記念館は無料で入ることができる。
ただ、必ず15分ごとに放映されている映画を見なければならない。そのチケットがビジターセンターの受付で配られている。
地球の歩き方に混むこともあると書いてあったので、朝8時過ぎに現地に到着するように行った。すると8:45の回で入れた。

映画自体は、私の英語ヒアリング能力が微妙なせいでナレーションはあまり理解できなかった。
しかし、映像を見ている感じでは、満州事変→日中戦争→南部仏印進駐と石油禁輸→日米交渉決裂→真珠湾攻撃という流れで説明がされていて、別に日本人である私が見ていてもそれほど違和感を感じなかった。

映画を見終わったら、船に乗って、真珠湾に浮かぶアリゾナ記念館に出発する。
arizona-mem.jpg
↑左がアリゾナ記念館。右は何かはよくわからないが、他にも船の名前が書いたものがいくつか浮いているので、沈んだ船の場所がわかるように作ってあるようだ(上で追悼式をやるため?)。

アリゾナ記念館は、沈んだ戦艦の真ん中あたりを横断するように建てられている。
一番目立つのは砲塔の台座。
syuhou.jpg
このように、いくつか高い部分が海の上に出ている。

こちらは真ん中の右舷あたり。(クリックで拡大写真)
/arizona-mem02.jpg
このように、海の中に沈んでいるのがよくわかる。海の色が濁っているのは、油がまだ染みだしているから。
石油特有の臭いがかなりするぐらい流出している。

建物の奥には、アリゾナで戦死した1177名の名前を刻んだ壁があった。ここが追悼の場であるということを改めて感じさせるものであった。

ざっと見てみると、やはり日本人は少ないという印象。ワイキキだとそこら中に日本人がいるのだが。いる場合でもほとんどが家族連れだった。


さて、そのアリゾナ記念館のビジターセンターに戻り、そこの前からバスに乗って戦艦ミズーリへ向かった。
ミズーリは海軍基地の内部にあるので、自由に立ち入ることができない。そのため、専用のシャトルバスに必ず乗らされる。

戦艦ミズーリは、ガイドツアーを選ぶと内部のコントロールルームなどにも連れて行ってもらえるらしいが、英語しかなかったので辛いなと思って、ガイド無しで行けるところだけをまわることにした。

ミズーリは10数年前まで現役であった戦艦であるので、やはり迫力がある。
missouri01.jpg

ミズーリで日本人として押さえておきたいところは2箇所あった。
一つは、神風特攻隊が突っ込んだ跡。
739px-Kamikaze_zero.jpg
結構この写真も有名なもの。突っ込んだ日本兵の遺体はミズーリで丁重に水葬されている。
この写真や水葬されたときの写真などが置かれている。

突っ込んだところには説明文が付いている。この後ろ側が若干へっこんでる(写真からはわからないかも。クリックすると拡大写真)。
/kamikaze.jpg

もう一つはもちろん降伏調印式をした場所。
甲板から少し階段を上ったデッキがその場所にあたる。
狭さがわかるようなアングルの写真を撮っておけば良かったのだが、とにかく狭い!

確かによくよく考えてみると、船の上でやっているんだからそんなに広いわけない。
そう思って、調印式の写真↓を見てみると、かなり狭いところでやっていたのだなと改めて感じる。
missouri02.jpg

調印式の机があった場所には、プレートがはめ込まれている。
missouri03.jpg
あとは、調印文書のコピーが飾ってあった。

改めてミズーリを見てみると、そもそも調印式をやるような広い場所では無いということがわかる。
それをあえてここでやったということは、その視覚的な効果とかがものすごく計算されているんだなと強く感じた。

さて、この二つ、色々と興味深い施設ではあったのだが、実はこの中で一番感銘を受けたのは、もっと地味な部分だった。

それは、アリゾナ記念館のビジターセンターの展示スペースにあった文章だ。
そこでは、ちょっとしたテレビ画面が置かれていて、真珠湾攻撃への経緯について映像が流されていた。
その説明文がなかなかうならせてくれるのだ。

以下引用文。
PEARL HARBOR
ROAD TO INFAMY
 This 11 minute film depicts in detail the events leading up to the tragic outbreak of the Pacific War. For Japan in 1941, the lethal mixture of politics, religion, national pride and militarism were the ingredients that determined her decision to attack Pearl Harbor.
 War is not a simple term to explain or even understand. This film gives the viewer the backround of how America was plunged into World War II and why Japan chose the road to war.

(訳)
真珠湾
屈辱への道
 この11分の映像は、太平洋戦争の悲劇的な発端を導く出来事について詳細に描写します。1941年の日本において、政治、宗教、国家のプライド、そして軍国主義が致命的なまでに混ざり合った結果、真珠湾を攻撃するという決定が下されたのでした。
 戦争は、簡単な一つの言葉では説明できないし理解さえもできない。 このフィルムはアメリカがどのように第二次世界大戦に突入したか、そして、日本がなぜ戦争への道を選んだかに関する背景を視聴者に与えます。

↓クリックで拡大
/pearl.jpg

Road to Infamyという言葉で「おっ」となるけど、これはルーズベルト大統領の真珠湾攻撃直後の有名な演説の一説の"Day of infamy"(屈辱の日)をもじったものだと思われる。
重要なのは、「戦争は起きた理由は簡単に説明できない」と明言している点。つまり、背景説明はするけど、それだけでは全てを語りきっているわけではないときちんと書いているところだ。
展示というのは、ある一定の歴史観を観衆に強いる側面があるわけだけど、ここではこの説明だけでは十分でないことをはっきりと書いているのだ。

歴史教育というのはこうあるべきだよなあと改めて感じる。
どうしても、歴史を知ろうとする人は「わかりやすい」方向に流される傾向にある。説明を聞いてそれを鵜呑みにすることも多い。
特に、アリゾナ記念館のようなアメリカの愛国心を煽るような施設は、アリゾナの沈んでいる姿を見せて「わかりやすく」日本軍の悪行を理解させたいと思うはずである。
でも、そんな簡単にわかるもんではないと、その展示をしている施設が言い切っているのだ。これはなかなかすごいなと感じざるをえなかった。

やはりこういった施設は行ってみないとわからないことが多い。
行くと日本人は不愉快になるとか言う人もいるようだが、是非とも行ってみてほしいと思う。
そんなに単純な理解では真珠湾攻撃は語れないと、考えざるをえなくなるのではないか。

注記 昔のモノクロ写真などはWikipediaなどから借用した。
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