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首相の伊勢神宮参拝 [天皇関係雑感]

あけましておめでとうございます。
本年も本ブログをよろしくお願いします。

新年一本目のテーマは、「首相の伊勢神宮参拝」について。

毎年1月4日の仕事初めの日に、首相が伊勢神宮に参拝している。最近では民主党の党首も参拝しているようだ(今年は行っていない)。
この4日に行くというのは、どうやら佐藤栄作が首相の時に慣例化したらしいが、それ以前からも首相が正月に伊勢に参拝するのはあたりまえのように行われていた。首相や閣僚が就任の挨拶に伊勢に行っていた時代もあったはずである。

これについては、靖国問題と同様に宗教的な行為だとして違憲だと抗議している人達もいる。
ただその動きは靖国と比べて全くと言っていいほど発言力がない。社民党ですら村山が首相の時に参拝しているので、特に抗議していないようだ。
これに対し、政府側は玉串料は私費で払っているので私的参拝であるという論理で、特に問題にしていない。

さて、この伊勢神宮参拝問題には、面白い世論調査がある。
それは、統計数理研究所の「日本人の国民性」調査である。

統数研は以前は文部省に属していたが、今は「大学共同利用機関法人情報システム研究機構統計数理研究所」という非常に長い名前の組織になっている。
「日本人の国民性」調査とは、1953年から5年ごとに行っているもので、全く同じ設問を毎回繰り返すことで、その経年変化を読み解こうという調査である。このような形式の調査はあまり類が無く、他にはNHK放送文化研究所が1973年から行っている「日本人の意識」調査ぐらいしか存在しない。
この中に首相の伊勢神宮参拝について聞いた調査があるのだ。

問 あたらしく総理大臣になったとき、伊勢の皇大神宮にお参りに行く人がありますが、あなたはこのことをどう思いますか?
1 行かねばならぬ
2 行った方がよい
3 本人の自由だ
4 行かない方がよい
5 行くべきではない
6 その他[記入]


調査結果を下に貼ろうかと思ったのだが、統数研のページにあるのでこちらを参照。以下はその結果を見ながら書きますので、見てもらった方がわかりやすいかもしれません。設問は「あたらしく総理大臣になったとき」という内容だけど、「首相の伊勢参拝」の是非を問うていると思います。

この調査の結果は、経年変化がものすごくクリアに出ている。
まず、「行った方がよい」という人は、1953年では50%いるが徐々に減少し、1978年に20%を切るがその後は10%後半に留まって安定している。また、「行かねばならぬ」という意見も同じ頃に一桁前半に低迷する。
一方、「行かない方がよい」「行くべきではない」という人は、佐藤栄作首相時(1968年)などは足して20%ぐらい行っているときもあるが、おおよそ合わせて10%で安定している。
最も増えているのは、「本人の自由だ」という意見で、1953年には23%だったのが1978年には50%を超え、現在では60%を超えている。

ここからわかることは、「行く」「行かない」を選択する人はいつの時代でも一定数存在すること。そして、「行った方がよい」という意見の人が、徐々に「本人の自由だ」に流れていったということが言えると思う。
つまり、慣例的に「行った方が良くない?」と思っていた人達が、「どっちでもよいのでは」という意見にずれていったということなのだと思う。政治的に争点になる行為だと思われなくなったということなのではないか。

私自身、正直「本人の自由」ではと思っている。
確かに、突き詰めれば宗教的行為ではあると思う。公費を全く使っていないかと言えば、もちろん秘書官などの交通費は公費のはずだ。だがそれを言ってしまえば、麻生がバーに行っている時の警備員の給与は公費なのだから、それもダメなのかという話になってしまう。首相は24時間「公人」であると主張する人もいるだろうが、私はそれは違うと思う。

私は、首相の参拝が、他の人達に参拝しなければならないという圧力を生むことや、その参拝に施設の正当性が関わってくるといった政治的問題が絡むのであれば、私的参拝であろうとも「政治的判断」を働かせるべきだと思う。ある宗教に利益をもたらすような動きは、首相として慎むべきだと思う。
だが、伊勢に首相が参拝したところで、別に伊勢神宮に権威がつくわけでもあるまい。「首相が行っているから」といって参拝しに行く人が増えるとも思えない。それに「私的参拝」という形を取っているのであれば、それは容認されても良いのではないかと思う。例えばクリスチャンが首相就任中は教会に行ってはいけないと言えるのかということと同じ事だと思う。
もちろん、「戦前の記憶」との関係で問題視する人はいるだろうが、靖国と伊勢は成り立ちからも大きく異なっているのだから、やはり別に考えるべきなのではと思う。

ちなみに、この統数研の調査結果、なかなか面白い。
とくに「男女の差異」についての調査は興味深い。是非とも一度見てくだされ。

今年もこんな感じで、天皇関係、公文書関係を中心に更新をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
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