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【緊急連載】「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の「中間報告」を読む(後編) [【連載】公文書有識者会議]

前編はこちら
第1回はこちら

後編です。
7月1日に、「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」は、上川陽子公文書管理担当大臣に「「時を貫く記録としての公文書管理の在り方」~今、国家事業として取り組む~」と題する中間報告を提出した。
今回はこの解説を行っています。詳しくは前編や有識者会議の第1回からの解説を参照してください。

前編に引き続き、「中間報告」の解説です。今回は4以降。

4では「公文書管理のあるべき姿(ゴールド・モデル)に向けて」と題して、理想とされる公文書管理のあり方を書いている。
「主な問題点」「方向性」「具体的方策」とわけて書かれているので、本文を見てもらえれば何が問題なのかは良く判ると思う。
全部を説明するのは煩雑になるので、要点のみを書きます。

ここで問題とされているのは、前編でも書いたが「公文書の作成から公開までを一元的に管理するシステムを構築すること」にある。
現在の各省庁が勝手に作って、勝手に廃棄しているシステムは、問題がありすぎるのである。
だから、そこに強力な公文書管理機関を設立して、作成から廃棄・公開までの判断を全てそこに移すという案である。

ここは制度の肝である。
つまり、各省庁が公文書に対する権限を持っている限り、絶対に今の制度はよくならない。
公文書管理機関に強力な権限を与えるような制度が作られて、そこからやっと官僚文化の変革が起きるのである。
おそらく、制度ができても定着までには時間がかかるであろうが、法制化されれば官僚は従わざるを得なくなる。そこが重要だと思うのだ。

さて、この「中間報告」のこの部分を見ればよくわかるが、はっきり言って「何でこのレベルのことが行われていないんだ」ということばかりである。
ファイルの背表紙表示を統一するとか、何というか「小学生かよ!」ってレベルの話があって、本当に公文書管理がどうでもよいものと思われていたことがすごくよくわかる。

次に5「公文書管理担当機関の在り方」であるが、その冒頭に「機能・役割」があるので、そこを引用しておきます。

公文書管理担当機関は、公文書管理に関するいわば「司令塔」として、
①公文書管理に関する法令等の企画・立案・調整、
②作成・保存・移管等の公文書管理に関する基準の策定・改定、
③文書の延長・移管・廃棄への関与、
④文書管理の実施状況の把握と不適切な実態の是正、
⑤移管を受けた文書の保存・利用、
⑥専門的知見を活用した各府省・地方公共団体等の支援、
⑦国内・国外の関係機関との連携、
等の機能を担うべきである。


これを行うためには、権限が必要となる。

現在、公文書管理に関する職務は、内閣府と総務省に分かれて行われている。
さらに、公文書を公開する機関としての国立公文書館は「独立行政法人」である。→第2回の解説参照
この「中間報告」では、総務省の仕事を内閣府に移して一元化することと、国立公文書館の国家機関に戻す(あるいは「特別な法人」として、強力な権限を与える)ことが、案として示されている。
いずれにしろ、強力な機関を作ることは目的として譲れない一線として表明されている。(公文書管理担当大臣の常設化も述べられている。)
本当にこれは重要!ここが入らなければ制度改革を行う意味がないというぐらい重要。

次に、6「最終報告に向けて引き続き検討すべき事項」であるが、ここで注目すべき点は、「外務省外交史料館」と「宮内庁書陵部」の扱いである。
現在、省庁で国立公文書館以外の所に文書を移管することを許されているのが、外務省と宮内庁である。
この二つの省庁だけが、特例が認められている。
もし、国立公文書館の権限が強まったとしても、この二つが置いて行かれるようなことがあると、公文書管理体制が一元化されないことになる。
宮内庁と情報公開でやりあってきた私にとっては、ここは切実な問題である。
この点については、今後も特に注目していきたいと思う。

最後に7「早急に講ずべき事項」である。
ここでは、制度は当然作るけど、官僚の意識そのものの変革を求めることが特に強調されている。
また、公文書管理体制を担うことのできる専門家(アーキビストやレコードマネージャー)の育成の必要性が重要視されている。

福田内閣がつぶれなければ、今回の通常国会で「制度」は作られるであろう。
しかし、それに魂を入れるのは「人」である。
情報公開法の時のように、制度はできたが、そこに人員も金も全く割かないようにして、きちんと機能させないようなことがまかり通ってはならない。
その教訓は生かさなければならない。

今回の「中間報告」をまとめてみると、「理想論」をきっちりと出したことに意味があると思う。
内閣府が推進の側にまわっているのも大きいが、やはり「福田首相のお墨付き」という印籠は大きい。
福田内閣が来年まで持てば、相当に期待できる結果になりそうだ。

しかし、マスコミはもうちょっとこの「中間報告」をしっかり取り上げてほしいなあと思う。
後期高齢者制度などの話は重要なんだろうけど、この話は明治時代からの官僚制度の大改革なんだ。
福田首相ももっとパフォーマンスをするべきだ。「嫌い」という問題ではなく、自らの政策を国民に訴えることも政治には必要なはず。首相自らがこの改革の意義をもっと語ってほしい。
もっと大きく取り上げてほしいと、切に願うところだ。

以上で解説おしまい。少しでもこの問題に関心を持ってくれれば幸いです。
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