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日本の公文書管理の最大の問題 [情報公開・文書管理]

最近、小川千代子『情報公開の源流―30年原則とICA』(岩田書院、1996年)という本を読んだ。
この本は、ICA(International Council on Archives国際文書館評議会)というユネスコの諮問団体の紹介が主になっている。
ICAは公文書の30年公開原則を世界に広めた団体であるらしい。

この本の中で小川氏は、日本の国立公文書館の欠点を次のように書いている。

「原省庁の現用・半現用記録の取り扱い、保存期間、移管、廃棄等に関して一定の権限を持つのは、文書館、それも国を代表する中央文書館では常識となっている。しかし、日本の国立公文書館には、これがないのである。」(62頁)

つまり、公文書を公文書館に渡す権限は各省庁が所有しており、その選別の権限も省庁側が持っているということなのだ。

これは、1988年という少し古いICAの世界各国の公文書館調査に基づいて書かれている文章である。
当時ICAに加盟していた62カ国のうち、中央文書館にその権限がない国は、バチカンやキューバ、ギニアビサウ、韓国、日本ぐらいしかないのだ(回答していない国も数カ国ある)。

渡す権限が各省庁にあるということは、どういう事を意味しているのだろうか。
まず挙がるのは、都合の悪い史料は移管しない(隠す・捨てる)ことができるということであろう。
そう考えるとこのシステムの方が省庁側にメリットが大きいように見えるだろうが、そうとばかりも言い切れない。

おおよそどの企業でも起こりうることだと思うが、10年前の文書を突然ひっくり返して見ようとした時に、その文書をすぐに見つけることができるだろうか。
中央官庁でもこれは同じはずで、文書で倉庫があふれてきたが、これを捨てるか残すかを選別できる目を持っている職員は多くないはずだ。
しかもそういった職務は「閉職」と思われている可能性は高い。

他の国では、そういった文書を機械的に公文書館に送るシステムができあがっている。
そして、文書の専門家たるアーキビスト達が、必要の有無を判断して残すか捨てるかを決め、目録を整備するのだ。
実はこの方が、各省庁の文書管理は楽なはずなのである。

ただ、もし今の日本で同じ事をやったら、国立公文書館がパンクするであろう。
お金も人もあまりにも少なすぎるのだ。

この国立公文書館の問題には、最近、福田康夫衆院議員がかなり興味を持って色々と発言をしているらしい。
是非とも、アメリカ型の公文書管理方法への移管を目指してほしいものである。

最後に、小川氏は、1992年からユネスコが行った「世界の記憶―貴重、稀少な図書・文書資料の保存計画」の中での調査結果を基に、次のようなことを書いている。

「災害あるいは意思により破壊された資料がどれ程あったのか、なにが破壊されたのかという「情報」を記録し保存しようという考え方は、わが国のこの百年間にはほとんど見られない。この調査の結果は、意図的に記録を作成し保存するよりはたまたま残っているものを大事に保管するという、日本人の「保存」傾向を、はからずも浮き彫りにしたのだった。」(10頁)

重い言葉だと本当に思う。


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