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『公文書をつかう―公文書管理制度と歴史研究』刊行 [2011年公文書管理問題]



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初めての著書である『公文書をつかう―公文書管理制度と歴史研究』が青弓社から刊行されることになりました。
内容、目次は以下の通りです。(版元より

▼紹介

国民共有の知的資源である公文書。知る権利や説明責任を保障し、記憶や記録を未来に伝えていく必要性が求められているいま、2011年に施行された公文書管理法の制定過程をていねいに検証し、公文書利用者・歴史研究者の立場から公文書管理制度の今後を展望する。

▼目次

はじめに

第1章 公文書管理制度の近現代史
 1 大日本帝国憲法下の公文書管理制度
 2 日本国憲法下の公文書管理制度 1――公文書館法制定まで
 3 日本国憲法下の公文書管理制度 2――公文書管理法制定までの道

第2章 公文書管理法の理解と利用――歴史研究者としての視点から
 1 総則(第一条―第三条)
 2 行政文書の管理(第四条―第十条)
 3 法人文書の管理(第十一条―第十三条)
 4 歴史公文書等の保存、利用等(第十四条―第二十七条)
 5 公文書管理委員会(第二十八条―第三十条)
 6 雑則(第三十一条―第三十四条)・附則
 7 補論――国立公文書館等での特定歴史公文書等の利用方法

第3章 公文書管理法施行後に積み残された課題
 1 司法文書・立法文書の文書管理
 2 国立公文書館のあり方
 3 アーキビスト養成
 4 公文書管理条例と地方公文書館

おわりに

あとがき



この本は、まさにこのブログから生まれた本だと言えます。
青弓社の編集の方が、このブログを見て執筆依頼を出してくれました。

ブログから本になるケースというのは、ほとんどがブログをそのまま本にするものでしょうが、「ブログから学術書」というレアなケースをたどったため、内容はほぼ全てが書き下ろしになっています。
ブログで過去に扱った内容もありますが、全ての部分に新たな情報などが加えられています。

内容は、公文書管理制度についての「過去・現在・未来」を描いたものになります。

第1章では公文書管理制度の歴史を書きました。
この本の執筆を依頼されたとき、歴史研究者として公文書管理問題について何が書けるのかを考えました。
そして、歴史研究者である以上「歴史」を書くべきだと思って、公文書管理制度の歴史を追うことにしました。

ただ、思った以上に作業が難航しました。
それは、これまで文書保存運動やアーカイブズの歴史をえがいた研究はあっても、公文書管理制度をえがいた研究は非常に少なかったからです。
また、数少ない研究においても、管理制度自体を研究していたとしても、それが当時の政治や社会との関係の中でどのような位置にあるのかがあまり明確に描かれていないように思いました。

そこで私は、公文書管理制度と政治との関係を重視して書くことにしました。
また、研究者以外の方にも読みやすいように、あまり細部まで描くのではなく、概説的な説明を中心にしました(公文書管理法制定の部分は細部まで描いていますが)。
加えて、今後この分野を研究する方へのガイドになればと思い、注を充実させてあります(注の分量が多いのはそのためです)。

第2章は公文書管理法の解説です。
この解説についても、どのように書くか頭を悩ませました。
私は行政法学者ではないので、逐条解説をしてもしょうがないだろうと思いました。

その時に、自分が法律の本を読んだときの違和感を思い出しました。
法律の解説書というのは、法文の一つ一つの用語の解説はありますが、それを「どのように使うか」という部分についてはほとんど解説がありません。
そのため、「法律をどのように使うか」という点は自分で考えるしかありません。(法律関係者なら判例などを調べるのでしょうが。)
私が公文書管理制度や情報公開制度と関わった中で、一番苦労したのがこの点でした。

よって、私ができる法律の解説は「使い方」を描くことだろうと思いました。
そのため、法文の隅々までを解説するというよりは、この条文ではこういうことができる・おきるというところを書きました。
公文書管理法を理解してもらうには、このような方法もありなのかなと思っています。

第3章では今後の課題について書きました。
取り上げた4項目以外にも問題は山積していますが、とりあえず現状の自分で書けるのはこの4つだろうと思って書きました。
「提言」という形を取っているので、できる限り前向きに言い切る形で書くようにしています。
ですから、違和感を感じる方も多いかなとは思っています。
(むしろそれで議論になれば良いと思っています。)

この本は、これまで自分が取り組んできた公文書管理問題についての集大成となります。
ただ、「集大成」とはいえ、これで終わりというわけではなく、むしろ「始めるための」集大成であります。

本の中でも書きましたが、公文書管理問題は公文書管理法施行で終わったわけではなく、むしろ「始まった」とも言えると思います。
この本が、少しでも改革を進めるための手がかりになってくれればと願っています。

【追記】11/27

一つ質問があったので注記を。
「注」での雑誌名や新聞名が『』ではなく「」で囲ってあるのは出版者側の意向です。
青弓社で出す本は、この表記で統一されているとのことです。

【追記2】12/8
青弓社のウェブサイト「原稿の余白に」にて、「あとがきのあとがき」のようなものを書きました。
瀬畑源「インターネットから生まれた学術書」(2011年12月7日)
http://www.seikyusha.co.jp/wp/rennsai/yohakuni/blank105.html

【追記3】2012/3/9
1ヶ所著書の修正。
125ページ注25 官紀五章は「一八八五年十二月十六日」です。
完全な私のミスです。2刷が決まったので、その際には訂正されます。

ついでにまとめて追加情報を。

自分で詳細目次と図表目次を作ったのをこちらで配布。
「拙著の詳細目次・図表目次配布」
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/2012-03-01

東京財団のウェブサイトで高橋和宏氏が書評を書いてくださいました。
http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=912
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コメント 2

so

soです。ご無沙汰です。
待望の御著書の刊行、心よりお祝い申上げます。
歴史研究者の視点を貫くことで、
斯界にさまざまな問題提起をされたことと思います。
お疲れ様でした。
by so (2011-11-16 18:22) 

瀬畑 源(せばた はじめ)

> soさま

ありがとうございます。
少しでもメッセージが伝わっていればよいなあと思っています。
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2011-11-18 00:48) 

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