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国立公文書館、宮内公文書館、外交史料館利用規則まとめ [2011年公文書管理問題]

2011年4月1日から公文書管理法が施行されました。
今回は、歴史資料の保存機関である国立公文書館(NA)、外務省外交史料館(外交)、宮内庁書陵部宮内公文書館(宮内)の3館の利用規則を紹介したいと思います。

なお、すでに施行前に大まかな解説は行っています。→こちら
この時の解説の文章を改変して、最新版にしたいと思います。

利用規則は
国立公文書館
http://www.archives.go.jp/guide/regulations.html#regulations01

外交史料館
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/annai.html

宮内公文書館(このページの一番下にリンクあり)
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/shinsei/kobunshokan.html

となっておりますので、そちらを参照して、下記の解説を読んでください。

基本的には3館は同じ規則で動いています。違う場合はその都度明記します。
なお、参考にした条文は繁雑になるので省略します。

・利用までの手続きの仕方

まず、私が作成した図を参照。請求から利用までのフローチャートです。
左上が始点です。

基本は2通りのルートがある。
①全面公開もしくはすでに審査が終わっている文書
②「要審査」「非公開」となっている文書


①の場合「簡易閲覧」という制度がある。
これは館に直接出向いて、その場で請求をして資料を出してもらうという手続きのことである。
②の手続きに則って行うと繁雑なので、問題のない文書は簡単な手続きで見せましょうということ。

NAや外交は今までもそうやってきたので特に変化がないと思うが、宮内がどうなるのか気になるところ。
宮内はこれまで、閲覧室の席数が少ないということで、事前に席を予約しないとそもそも中に入れなかった。
でも、規則上は簡易閲覧制度が作られているので、今後は予約しなくても入れるということなのか。
後日確認したい。

②の場合、利用者が閲覧申請を行う場合には必ず「文書」にて申請を行わなければならない。
各館のウェブサイトに閲覧申請用紙がアップロードされているのでこれを利用し、館に直接行くか、郵送して申し込む。
なお、外交は「情報通信技術」(インターネット)でも申請可能と利用等規則で定めているが、今のところ外交史料館のサイトからは、そのような手段で送る方法は記載されていない。

次に、館側は、申請書を受け取ってから30日以内に開示決定を行わなければならない。
ただし、量が多いなどの理由があった場合、+30日延長が可能。
これでも日程が厳しい場合(例えば開示文書が1万ページ以上あるとか)は、遅れる理由と開示される予定日を利用者に書面で通知する義務がある。

このやり方は、情報公開法と同様の対応となる。
よって、申請してから数ヶ月待たされるような状況は大幅に改善されるだろう(ただ、施行直後は、情報公開法の時と同じように、延長が連発される可能性がありそうだが)。

開示が決定した際には、必ず「文書」にて通知がなされる。
NAは郵送されてくるが、外交と宮内は郵送料がかかる(事前に切手を送る必要)。
当然通知がなされなければ、利用者はいつ開示になったかがわからないので、外交と宮内からはおそらく電話かメールといった手段で開示決定通知がなされるものと思われる。

こういった手間から考えても、なぜ外交と宮内が無料で開示決定通知を郵送しないのか理解に苦しむ。
パブコメも結局無視されたようだし・・・

通知書が届いた後、利用者は30日以内に「利用の方法申出書」を館に送らなければならない。
この「申出書」は、情報公開法に準じたものだとすると、「閲覧するか、閲覧せずに複写するか」「閲覧日はいつか」といったようなことを書くことになると思われる。
送付の仕方は、館に持って行くか郵送。NAはFAXも可、外交はネットで可能になるが詳細は不明。

ただし、決定書を自動的に送ってこない外交や宮内は、この手続きをどのように行わせるつもりなのかはわからない。これはおいおい利用していくうちに明らかになるだろう。

このように、閲覧までの手続きがすべて「書面」でなされるようになる。
手続きが厳密になるので、利用者がいきなり館に行って、審査が必要な資料を「すぐに見せろ!」というような無茶は通用しなくなるだろう。

なお、事前のレファレンスも受けられるので、申請する際には、きちんと各館に相談をした方が良いかと思う。
開示されてみたけど、ほしいものと違ったというようなケースは、お互いにとってもムダな労力になるので。

・不開示規定

各館に移管された文書が、すべて自由に見られるということはない。
個人情報などには、30年経ったからといって見せられないものはたくさん存在する(例えば犯罪情報など)。

各館の基準は以下のとおり。

国立公文書館
http://www.archives.go.jp/information/pdf/riyoushinsa_2011_00.pdf

外交史料館
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/riyo_shinsakijun.html

宮内公文書館
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/shinsei/pdf/kobunshokan-sinsakijun.pdf

この基準は相当に細かいので、いちいち文章で説明するのは繁雑なので解説は省略。
口頭であれば解説はしますが・・・。もし疑問があればtwitterやメールで呼びかけてもらえればお答えします。
NAと外交はほぼ同文なので、片方を読めばわかります。

ただ1点、NAと外交の文末にある別表はきちんと見ておいたほうが良いかと。
個人情報を類型分けしており、どの情報がどの程度経過すると開示されるのかが分かるようになっている。
宮内が結局この別表を採用しなかったのは残念。パブコメは出したんだが・・・

なお、NAの審査基準の掲載場所は問題。「利用案内」からリンクが貼られていない。
サイト内を探しまわった結果、「情報公開」の「利用等規則等」のところにこそっと置いてあった。
私ですら検索しなければ見つからなかった所にあったので、こんな所に置いてあっても意味がない。
利用案内からリンクをきちんと貼ってほしいと思う。

・部分開示

不開示情報が文書に入っているときの対応。
墨塗り(コピーした上で、不開示部分を墨塗りする)公開が基本。ただし、利用者の同意があれば、被覆(袋とじで隠す)も可能。
前者の方が見れる情報は多くなるが時間がかかる。被覆は時間がない人向けの措置となる。

なお、NAは、墨塗りか被覆(袋とじする)かを利用者に選ばせない(外交、宮内は選べる)ことになっているが、公文書管理委員会の審議の際に、被覆は資料が全面不開示の時にしか使わないと説明があった。

なお、外交はこの部分開示のやり方をかなり細かく規定している(細則の第6、7条)。
一部の文書が全面不開示の場合、その文書をファイル(簿冊)から抜いて別置し、抜いたことが分かる用紙を挿入することにした。
これは、おそらくアメリカの国立公文書館が行っている制度を導入したものと思われる。
用紙には、おそらく「審査内容を見直すのはいつから」という期日を記載するのではないかと思われる。
また、その再精査を要求する手続きも細則に記載されている。

NAや宮内はこの制度を整備していないので、再審査を要求する場合、正規の手続きに則って利用請求の②の手続きを踏むことになるだろう。

・複写

複写については、セルフコピーの枠が拡大した。
表は私が作成した3館のセルフコピーの基準。これを参照のこと。
業者に頼んだ場合は、基本的にはどの複写手段も可能だと考えて良いと思われる(原本からの複写は、一度マイクロorデジタル化してから行う)。

ちなみに、NAは複製物(紙)から紙へのコピーを規則に想定していない。
パブコメで指摘したんだが、答えが「うちは複製物として紙媒体は使っていない」みたいな解答で・・・
部分開示の際のコピーした紙に墨塗りした文書をどうコピーするつもりなのか。その規定がないんだけどなあ・・・

なお、セルフコピーの価格は、NAはマイクロ・デジタルから紙へのコピーは30円との記載があるが、外交と宮内はネットに情報を上げていない。
これは是非とも上げてほしい情報。
業者に依頼する料金しか書いていないと、利用者にセルフはできないと誤解を与えるのではないかと思われる。
それにそもそもこの情報は利用者へのサービスとして、当然上げるべき情報だと思うが・・・

なお、3館とも利用者持ち込みのデジタルカメラでの撮影が可。もちろん無料。
NAは「順守事項等」に具体的な撮影の注意点を記載している。。
三脚の利用が禁止されているので、NA側が撮影台を貸してくれるものと推測される(貸してくれなかったら、資料を傷めるような撮影をされかねないと思うが・・・)。

・複写手数料

各館によって大幅に変わる。委託業者の価格設定によって異なるため。
各機関の利用等規則の最後のページに複写料金一覧表があるのでそちらを参照。

・異議申立

開示方法に不服がある場合、公文書管理委員会に異議申立ができる。
現在は、NAであってもNA館長にしかできないわけだから、かなり大きな変化。
これまで不開示になって見れなかったものがあった場合、再チャレンジをしてみて、ダメなら異議申立をするというのもありかと思われる。

・開館時間

NAは9:15-17:00。
外交は10:00-17:30。
宮内は9:15-17:00。昼の出納停止は特に細則に書いていないがどうなるのか・・・。昼休みに閲覧ができるようになることだけでも大きいが。

以上です。
なお、他に注目すべき所として、外交が細則にて「利用者責任」を明記したことを挙げておきたい(第9条)。
これは、外交の資料を使って問題が起きた(名誉毀損など)時は、すべて利用者が責任を取るということである。

これは私は必要な条文だと思う。
個人情報であっても、時が経過すれば公開される。だがこういった情報は、使い方によっては他人を誹謗中傷する際に利用することができる「おそれ」がある。
その「おそれ」があるから出すのを止めるというのではなく、使った方側の責任を問うのが筋だと私は思う。
「おそれ」があるから開示しないという方法を導入してしまうと、自己規制でその幅が拡大していき、数多くの文書が「せっかく保存しているのに見ることができない」ということになりかねない。
だからこそ、利用者責任は明示されるべきだと思う。

公文書管理法の施行によって、資料の開示状況や閲覧方法は大きな変化を迎えている。
これまでは見れなかった資料が見れるようになっていることもあるだろう。
是非とも、各館に足を運び、公文書管理法の力を感じてほしいと思う。
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消印所沢

 初めまして.
 消印所沢と申します.
 資料集めに苦労している一介のマニアにとって,この記事は大変参考になりました.
 良質な情報をどうもありがとうございます.
by 消印所沢 (2011-04-16 20:59) 

瀬畑 源(せばた はじめ)

> 消印所沢 さま

こちらこそお役に立てたようでなによりです。
今後もよろしく御願いします。
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2011-04-17 01:06) 

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