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公文書管理委員会第4回資料を読む [公文書管理委員会]

11月30日に公文書管理委員会の第4回会合が開かれた。
私は都合で出席できなかったが、資料がアップロードされているので、それを少し見ながら思いついたことを書いておきたい。

今回の審議は、17の行政機関の「行政文書管理規則」案が議題であった。
これらは、内閣総理大臣の同意と公文書管理委員会への諮問が義務となっている。今回はその第一弾ということになる。

なお、17の機関とは

内閣法制局、内閣府、公正取引委員会、国家公安委員会、警察庁、総務省、消防庁、法務省、公安審査委員会、公安調査庁、外務省、財務省、国税庁、厚生労働省、中央労働委員会、農林水産省、防衛省

である。

人づてに聞いた話だと、審議内容は

・各行政機関からの説明のみが行われた。1週間以内に各委員が問題点を指摘する(おそらく)。
・配付資料が直前になって内閣府に届いたため、傍聴者には印刷したものが配られなかった委員にもどうやら直前の配布だったようで、委員の中からもう少し早くしてほしいとの発言があったが、どうやら次回もぎりぎりになるらしい。


これだけを見ると、何というか「説明責任」という概念はいずこという感じだ。
委員の方があとから内々に指摘しても、それは議事録には残らない。国会の与野党協議みたいなものだ。
これでは、何がどう議論されたのかがわからない。

それに、当日配付資料がないということは、傍聴者にとっては何が何だかという感じだったのではないだろうか。
最低限この用意はするべきだと思うんだが。

また、そもそも内閣府は、各行政機関の締め切りをもう少し前にできなかったんだろうか。
それとも、委員会の開催日を見越して、先方が「本当の締め切り」を推測して、締め切りを破っているのか。

いずれにしろ、大量に審議をしなくてはいけない委員の方達の負担は半端ではないと思う。
説明責任を明確にするはずの公文書管理法の関係することで、こういったことがあってはなあと思わざるをえない。

さて、それでは、各行政機関の管理規則案の内容を読んだ感想について簡単に。

まず、私にとって関心のあった内閣府、外務省、警察庁、防衛省の4つから見てみた。

管理規則案を見ると、どの機関も先に定められた「行政文書の管理に関するガイドライン」との対比表がついている。
また、別表については赤字赤線で訂正が入っており、機関によっては解説もしっかりと入っている。
なので、ガイドラインと何が異なっているのかについてはわかりやすい。

まず規則の本文については、この4機関でごまかしている部分は一切なかった。
つまり、ガイドラインの通りである。

注目する所は、本文よりは、作成する文書(保存年限)を決めている別表第一と、最終的に廃棄するか国立公文書館等へ移管するかを定めている別表第二のほうであろう。
ここがごまかされていると、重要な文書が廃棄されることになる。

そして、ここについても基本的にそれほど問題があるようには思えなかった。
なお、防衛省では、なぜか閣議関係の部分が大量に削除されているが(16頁)、他機関では全て残っているので、何か解釈を勘違いした可能性がある。あまり意図的に消したようには見えなかった。
なので、こういったところは、別の機関と比較して、しっかりと修正する必要があるだろう。

ただ、「付け足された類型」については注意を払う必要があるように感じた。

付け足されたものは、各機関固有の情報群になる。
例えば、外務省では「国家的儀式・行事に関する事項」が文書類型に加えられ、具体的には、即位の礼、大喪の礼、オリンピック、万国博覧会に関する文書がそこに入った。そしてこれらは「移管」される対象となった(36、45頁)。
国家的なものがこの4つだけなのかという点は正直疑問なんだが、それ以外のものは他の部分でカバーできているということなんだろう。
また、他にも文書類型が数点加わっている。

警察庁では「専門的な調査研究に関する事項」「世論調査の実施に関する事項」などが加わっている。
これらは、移管対象が「重要な調査研究(世論調査)に関する報告書」となっている。
ただ、本来、調査したものについては、報告書については重要性を問わず残すべきものだと思う。
調査原票を残せとまでは言わないが、調査のために行った資料調査の結果などは、きちんと残すべきものだよなと、研究者としては個人的には思う。

このように、新たに付け加えられた部分は、各機関が自分たちで移管廃棄基準を決めているので、やや恣意的な判断が入っている可能性がある。
なので、チェックをするときには、別表第一と第二の赤字で付け足された部分を注意深く見た方が良いように思う。

さて、この4機関を見た感想としては、ガイドラインに逆らっているところは一つもないということである。
その後、残りの13機関を斜め読みしたが、似たようなものだったように思う。
ただし、私もきちんと読みこんでないので、各人が、自分の関心のある機関の規則については、しっかりとチェックをすることが必要であろう。
(なお、財務省は付け足された部分が赤字になっていないので注意。法務省は色々と留保が付いている。)

結局、最終的には「運用」とその「監視」次第というところなのかなと思う。
今回の別表第一と第二の修正を見ていても、ほとんど手直しをせずに出してきた厚生労働省や消防庁、中央労働委員会などは、公文書管理法の重要性についての認識にやや不安がある。
「ガイドラインが良くできていて直す必要がなかった」という判断もできるかもしれないが・・・

次回は12月14日。15日も予備日として取ってあるようですが・・・。
また、今回の17機関の規則案の何が修正されたのかは、次回にきちんと報告してほしいと思う。

追記12/5

書き忘れていましたが1点。
ファイル管理簿の「廃棄簿」(どの文書を捨てたのか)は、結局30年保存後に廃棄となってしまった。
これはガイドライン自体が変わらなかったということなので、当然各機関の規則でも同じ対応になっている。

廃棄簿というのは、どのような書類が作られていたのかを後日確認するためにも必要ですし、その組織が「どのように」運営されてきたのかを示すためにも重要な文書なのですが。
加藤聖文氏の「喪われた記録--戦時下の公文書廃棄」のような、廃棄簿を用いた優れた研究なども存在しているのですし・・・
http://ci.nii.ac.jp/naid/40006752548

この点については、もう来年4月の管理法施行の際には変わることがないでしょう。
今後、それを変えていくように働きかけをしていく必要があるように思います。
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