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外交文書の自動公開規則の施行 [2010年公文書管理問題]

昨日の朝日新聞の記事。引用します。

外交文書の自動公開規則を施行 外務省、作成30年後に
2010年5月25日22時23分

 岡田克也外相は25日、「外交記録公開に関する規則」を同日付で施行し、作成後30年を経過した外交文書を原則自動的に公開すると発表した。非公開とする場合には、外部有識者をまじえた「外交記録公開推進委員会」(委員長・福山哲郎外務副大臣)の審査と、外相の了承を得ることを義務づける。

 新たな規則によると、例外的に非公開にできるのは、情報公開法で定められた個人・法人などに関する情報のほか、公開によって、具体的に国の安全が害される▽他国や国際機関との信頼関係が損なわれるか、交渉で不利益となる――と外相が認める情報に限る。非公開とされた文書は5年後に再審査を行う。

 これまで担当課の判断に委ねられていた文書廃棄についても、推進委の審査と外相の了承が必要になる。また、公開作業を迅速に進めるため、これまで複数あった担当部署を「外交記録・情報公開室」に統合。外交史料館と合わせ現在約70人の人員を約100人に増強する。

 外務省は核持ち込み問題などにからむ日米密約の調査を受け、外相を本部長とする「外交記録公開・文書管理対策本部」を設け、公開のあり方を検討してきた。6月中旬に推進委の初会合を開いた上で、1960年の日米安全保障条約改定と72年の沖縄返還に関する外交文書を優先的に公開する方針だ。

 岡田外相は記者会見で「原則公開にし、第三者や政務レベルの判断を挟むことで飛躍的に公開の範囲は高まった」と述べた。(高橋純子)
(引用終)

文中にある規則とはこれ↓
○外務省訓令第七号「外交記録公開に関する規則」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/public/pdfs/kokai_kisoku.pdf

博論提出直前のためあまり詳しく解説している余裕がないのだが、とりあえず思ったことは

訓令として出したことが良い(大臣や政権が代わっても方針が変わらない)。

・その文書を作った主管課の判断が「二次」審査となっており、恣意的に文書を隠すことへの歯止めがかかっているのも良い。また、保存期限の延長を実質させないことにしてあるのも良い(延長して事実上の永久保存にすることを禁じている)。

「原則公開」が素晴らしい。これまでは、何を「出す」かを決めることに理由が必要であったのに対し、以後は何を「出さないか」に理由が必要に変わった。これは非常にでかい。

・担当部局の人数を増やすのももちろん素晴らしい。というかもっと多くたって良い。

・気になるのは、公開か非公開を決める委員会の構成メンバーについて。
岡田外相は会見で「外交記録公開推進委員会には、外部の有識者も加えて意見を得ることにしております。」と言っているが、この規則の第4条を見ても、外部有識者がいなければならないということは一言も書かれていない。これは、外相の判断によっては内部だけで決めることが可能な委員会になりかねない。
岡田の時は心配ないが、その後がちょっと心配か。

・一方、これだけ思い切ったことができたのは、移管先の外交史料館が外務省の内部機関であったことが大きいと思う。これで外交史料館が国立公文書館の管轄下に入る可能性は遠のいたように思う。

・ただ、来年4月の公文書管理法施行を控え、他省庁に先駆けて大胆な公文書公開の規則を作ったことは大きい。官僚は基本的に先例主義であり、「他の省庁がやってないのにうちらがやらなくても」という考え方になりやすい。
その意味で外務省がこういうルールを作ったと言うことは、他省庁にもこの原則を適用させるように圧力をかけることにつながるし、また各省庁もその声を簡単には無視できない状況が生まれるだろう。
宮内庁には・・・。
うーん。こういう場合、長官が官僚である宮内庁は動きが鈍いだろうなあ・・・。

・今回の決定によって、これから5年ぐらいで外交史の分野は、捌ききれないぐらいの大量の資料がバブルのように降ってくることになるだろう。外交史をやっている方は、是非ともこれを使いまくって、日本の公文書を利用した歴史研究を推し進めてほしいと思う。

とりあえず走り書き程度に思ったことをつらつらと。
博論が終わってまだ需要があれば、この規則の細かい解説をきちんとブログに書きたいと思います。
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