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「情報公開制度の改正の方向性について」解説 [2010年公文書管理問題]

前回の続き。
「情報公開制度の改正の方向性について」(資料7-2)の説明です。青字が引用部分。
議事録が出ればもうちょっと正確な解説が書けると思いますが、パブコメの関係があるので早めに。

なお、私の独自の解釈なので間違っている可能性はあります。これは違うんじゃないか?というものがあればコメントを御寄せ下さい。
あと博論中で雑です。誰か補完してくださる方がいると有難いです。

第1 目的の改正(行政機関情報公開法第1条、独立行政法人等情報公開法第1条、公文書管理法第1条関係)
 法律の目的において、「国民の知る権利」の保障の観点を明示するべきではないか。


公文書管理法制定の際に問題になったもの。
国側は「知る権利」は最高裁等で確定した権利ではないとして入れるのを渋ったが、民主党側の修正案によって、「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ」(第1条)といったような文面で、事実上「知る権利」が組み込まれた。
公文書管理法に合わせて情報公開法も変えるべきというのが主旨だと思われる。

第2 開示・不開示の範囲等に関する改正
 開示請求が行われた際に、不開示又は部分開示になる場合について、現行の情報公開制度を以下のとおり改正し、より充実した開示内容になるようにすべきではないか。

1 個人に関する情報(行政機関情報公開法第5条第1号、独立行政法人等情報公開法第5条第1号関係)
 公務員等の職務の遂行に係る情報について、当該公務員等の職及び職務遂行の内容に加えて、当該公務員等の氏名も原則として開示する。


基本的には係長以上(公務員の『職員録』に記載されている人)しか今のところは開示になっていない。それを末端も含めて開示するべきというもの。
現在の規定は「公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」(情報公開法第5条第1項ハ)としか決められていない。
接待費とかが問題になっていたときによく取り上げられていた。

2 法人等に関する情報(行政機関情報公開法第5条第2号、独立行政法人等情報公開法第5条第2号関係)
 法人等が行政機関・独立行政法人等の要請を受けて公にしないとの条件で任意に提供した情報を不開示情報とする旨の規定を削除する。


ここはあまり詳しくないが、何か行政施策を行うときに民間から情報を得ることがある(調査の委託業務とか)。
これは今まですべて「民間の文書だから」という言い訳で不開示にされてきた。例えば道路を造るときの調査とか。
「民間だから」という逃げ道を作らせないためのものか?

3 国の安全、公共の安全等に関する情報(行政機関情報公開法第5条第3号・第4号関係)
 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ等がある情報の不開示要件について、それらの「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」とあるのを、それらの「おそれがある情報」と改める。


今までは「行政機関の長」が判断するという限定が付いているので、各省の大臣が「見せたくない」と言えばどうしようもなかった。
それを外すということは、各省庁の恣意的な運用を無くさせるということになる。
後述の「第3の2(2)」との関係か?

4 審議・検討等に関する情報(行政機関情報公開法第5条第5号、独立行政法人等情報公開法第5条第3号関係)
 国等における審議・検討等に関する情報で、公にすることにより、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある情報を不開示情報とする旨の規定を削除する。


「審議・検討等」を外すということは、審議会などはすべて開示させるということかと思われる。いくつかの審議会が各省庁の判断で不開示にされているためか。

5 部分開示(行政機関情報公開法第6条第1項、独立行政法人等情報公開法第6条第1項関係)
 開示請求に係る文書に不開示情報が記録されているときは、不開示情報が記録されている部分とそれ以外の情報が記録されている部分とを区分することが困難である場合を除き、当該不開示情報が記録されている部分を除いた部分につき開示しなければならないものとする。


今までの条項よりも詳しくなった?
これまでは、「当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りではない」となっている部分が問題なのかな?

情報公開法による開示ではないが、宮内庁書陵部で「袋とじ不開示」というやり方をされることがある。これは原本に袋がけして見えなくさせるやり方で、不開示情報がそのページに少しでも混じっていれば、ページ自体を不開示にできる。そういったことを防ぐため?

第3 開示請求から実施までの手続に関する改正
 迅速かつ安価な開示手続が実現できるようにするため、手続面での改正をすべきではないか。また、不開示や部分開示となった場合にも、その理由がより明確になるような改正をすべきではないか。具体的には以下のとおり。

1 不開示決定の通知内容(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)
 行政機関の長・独立行政法人等は、不開示決定をするときは、当該決定の根拠となる条項及び当該条項に該当すると判断した具体的理由を書面により示さなくてはならないものとする。


「具体的理由を書面で」というのが重要。これまでだと「第何号該当」だけで済んでいた。
そのため、例えば「行政文書不存在」との回答の時、「捨てた」のか「行政文書としては無い」のかといった細かいことは伝えなくて良かった。その部分の改正にあたる。

2 内閣総理大臣への報告と内閣総理大臣による措置要求(行政機関情報公開法関係《新設》)
(1)行政機関の長が、開示請求に係る行政文書の全部を開示しない旨の決定をしたときは、内閣総理大臣に対し、その旨を報告するものとする。
(2)内閣総理大臣は、特に必要があると認めるときは、行政機関の長に対して不開示決定の取消その他の必要な措置をとるように求めることができるものとする。


(1)は全面不開示にした際に、報告義務を課したもの。安易な不開示を防ぐためだと思われる。
(2)は「第2の3」との関係で、情報を公開するか否かの全ての決定権を各省庁の大臣が持つのではなく、そこに内閣総理大臣が介入可能とするということ。例えば、最近話題の密約問題などを首相が開示命令を出すということもあり得るということか。

3 開示決定等の期限(行政機関情報公開法第10条第1項、独立行政法人等情報公開法第10条第1項関係)
 開示決定等は、開示請求があった日から14日以内にしなければならないものとする。


これまでは30日。地方自治体だと15日とかが多いように思われる。
情報公開は速度が必要な事例も多いためかと。
情報公開に関わっている人が一番ストレスを溜めるのは、開示までの期日が長くかかることだと思われるので。

4 開示決定等の期限の特例(行政機関情報公開法第11条、独立行政法人等情報公開法第11条関係)
 開示決定等の期限の特例を適用する場合において、行政機関の長・独立行政法人等は、開示請求に係る行政文書のうち相当の部分につき開示決定等をした日から60日以内に残りの行政文書について開示決定等をしなければならないものとする。


3の続き。
これまでは、膨大な量などがある場合、「相当の期間内に開示決定等」でOKだった。つまり2年後であっても、事前に通知しておけば問題なかった。
これは60日以内に全部出せという規定。もしこれをするなら、情報公開に携わる職員の増強は必須かと。

5 みなし規定(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)
 開示請求者は、行政機関の長・独立行政法人等が法定の期間内に開示決定等をしないときは、行政機関の長・独立行政法人等が当該行政文書について不開示決定をしたものとみなすことができるものとする。


裁判などを起こす場合、開示決定がされないと何もできなかった。つまり「2年お待ちいただきます」と言われれば基本的には待つしかなかった。またその期限を相手が守らなくても開示まで待つしかなかった。(業務怠慢(不作為)で訴えることはできなくはないが勝ち目無し。)
この規定は、開示が遅れたら「不開示決定がされた」と見なして、その後の対策ができるというもの。

6 手数料(行政機関情報公開法第16条、独立行政法人等情報公開法第17条関係)
 開示請求に係る手数料を原則として廃止するとともに、開示の実施に係る手数料を引き下げる。


今までは、請求で300円(ネットだと200円)、開示後の閲覧100枚あたり100円、コピー1枚10円。
評判が悪いのは請求時にお金を取ること。元々この規定は、大量請求(1人で100件とか)対策だった気が。
情報公開はそもそもとして国民の権利なわけだから、それが経済状況で制限されるのはどうなんだという点から批判が強かった。

第4 審査会への諮問等に関する改正(行政機関情報公開法第18条、独立行政法人等情報公開法第18条関係)
 開示決定等について不服申立てがあった場合における情報公開・個人情報保護審査会に対する諮問は、当該不服申立てのあった日から14日以内にしなければならないものとしてはどうか。また、審査会を裁決機関とすることについて検討してはどうか。


不服申立ては、申立者が各省庁に申し立てをして、それから審査会に諮問される。
これまでは、各省庁が反論を作成して諮問するまでの期日が決められていなかった。
私のケースでは、申し立ててから諮問までに1年近くかかったケースもある。
情報によっては速度が重視されるものもあるので、もし諮問に1年もかけられたら、それだけで情報の有意性がなくなる可能性がある。
今回はそれを14日以内という設定を付けるというもの。

(追記7/8)「裁決機関」とするという点に付き解説していなかった。
要するに裁判所と同様の扱いとし、審査会の答申に強制力を働かせるということ。

第5 情報公開訴訟に関する改正
 訴訟による事後救済を確実に行うため、いわゆる「ヴォーン・インデックス」の作成・提出に関する手続(下記2)を創設するとともに、いわゆる「インカメラ審理」(下記3)を導入してはどうか。また、原告の訴訟にかかる負担に配慮し、各地の地方裁判所でも訴訟ができるようにしてはどうか。具体的には以下のとおり。

1 訴訟の管轄(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)
 開示決定等又はこれに係る不服申立てに対する裁決・決定に係る抗告訴訟(以下「情報公開訴訟」という。)は、行政事件訴訟法第12条に定める裁判所のほか、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所にも提起することができるものとする。


これまでは高裁のある場所にある地裁でしかできなかったので、地方在住者は交通費だけで膨大な出費を強いられてきた。
それが各地の地裁でできるようになる。

2 不開示決定に係る行政文書の標目等を記載した書面の提出(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)
 情報公開訴訟においては、裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため必要があると認めるときは、行政機関の長・独立行政法人等に対し、当該開示決定等に係る行政文書・法人文書の標目、その開示しない部分についてこれを特定するに足りる事項、その内容の要旨及びこれを開示しない理由その他必要な事項を、その裁判所の定める方式により分類又は整理して記載した書面の作成・提出を求めることができるものとする。


読んだまま。こういうことが今まではできなかった。
こういう情報無しに裁判をやらされるんだから、訴える方も裁判所もたまったものではなかった。

3 審理の特例(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法関係《新設》)
(1)情報公開訴訟においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、審理の状況及び当事者の訴訟遂行の状況その他の事情を考慮して、不開示事由の有無等につき、当該行政文書・法人文書の提出を受けなければ公正な判断をすることができないと認めるときは、申立てにより、決定で、当該行政文書・法人文書を保有する行政機関の長・独立行政法人等に対し、当該行政文書・法人文書の提出を命ずることができるものとすること。この場合においては、何人も、裁判所に対し、提出された行政文書・法人文書の開示を求めることができないものとする。
(2)裁判所は、(1)の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者の意見を聴かなければならないものとする。
(3)裁判所は、(1)の決定をしたときは、同項の行政機関の長・独立行政法人に対し、2の書面の作成・提出を求めなければならない。ただし、当該書面が既に提出されている場合は、この限りではないものとする。
(4)(1)の決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。


これも読んだまま。こういったことが今まで認められていなかった。
裁判の係争対象の文書を見ずに判決が出されていたわけだから、裁判官も行政寄りの判決をせざるを得ない。

第6 適用対象の範囲等に関する改正
 現行の情報公開制度の対象を、国民の知る権利を保障する観点から、以下のとおり拡充すべきではないか。
1 国会関係
 衆参両院の事務局・法制局、国会図書館等の保有する立法行政事務に係る文書の公開の在り方について、行政機関情報公開法と同等の開示制度導入の検討を促す。
2 裁判所関係
 最高裁判所事務総局等の保有する司法行政事務に係る文書の公開の在り方について、行政機関情報公開法と同等の開示制度導入の検討を促す。


1、2は国会と裁判所にも情報公開制度を作りましょうということ。いまは法的な制度は存在しない。

3 政府周辺法人関係(独立行政法人等情報公開法第2条第1項・第22条関係)
 国からの出資、国から交付される補助金等が年間収入に占める割合、業務内容の公共性等の視点から、「独立行政法人等」に含まれる対象法人を拡大する。また、情報の提供に関する施策をさらに充実させる。


独法にもなっていなくて隠れ蓑になっている公共法人の情報もきちんと公開せよということか?

第7 行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の所管に関する改正(行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法、内閣府設置法、総務省設置法関係)
 行政機関情報公開法及び独立行政法人等情報公開法の所管を総務省から内閣府に移管してはどうか。


公文書管理法が内閣府担当、情報公開法が総務省担当なので、一元化して運用すべきということ。
公文書管理法制定の時にも問題になっていた。

第8 情報公開条例の扱い(行政機関情報公開法《新設》)
 第5の1から3は、情報公開条例(地方公共団体又は地方独立行政法人の保有する情報の公開を請求する住民等の権利について定める当該地方公共団体の条例をいう。)の規定による、開示決定等に相当する処分又はこれに係る不服申立てにおける裁決・決定に対する抗告訴訟に準用する等の措置を講じてはどうか。


国の情報公開訴訟に、これまで地方の情報公開訴訟で積み重ねていた判例を重ねたらどうかということか?

以上です。

この全てが導入されると良いけれども簡単ではないかな?
これ以外にもまだ取り上げるべき問題はあると思われるので、パブリックコメントを送る方はその点を重点的に取り上げるべきかと思います。

追記(4/22)
パブコメの投稿フォームを見てみると、書ける内容や文字数に相当の制限があります。
特に自由記述欄が400字以内しか書けません。
先にフォームを見ることをおすすめします。、書く内容を厳選する必要がありそうです。
https://form.cao.go.jp/hatomimi/opinion-0005.html

追記(5/1)
「自由記述欄が少ないのはなんとかならないのでしょうか」と筋違いだとは思いながら三木さんにメールしてみたところ、内閣府に働きかけてくださったようで、「※ご意見が書ききれない場合や添付資料等をメールにて送付希望の方は『別途メール送付希望』の旨ご記入ください。当室より「4.登録者情報」に記入いただいたメールアドレス宛にご連絡いたしますので、返信にて、ご意見や添付資料をご送信ください」という記載が追加されました。
三木さんが検討チームに入られた効果が早速現れているように思います。感謝です!
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まつき

「当該公務員等の氏名も原則として開示する。」は、現行の制度においては明示されていません。
が、宇賀氏の解説書の新しい版ではそういった記述があり、実際の運用においてもおそらくはそうなっているかと思います。

というか、「係長以上」のころは、決裁のハンコいちいちにマスキングしていたのでしょうかね?
by まつき (2010-04-29 01:07) 

瀬畑 源(せばた はじめ)

> まつき さま

コメントありがとうございます。
現在では名前が全部出ているということでしょうか?
もしそうであるならば、残念ですがおそらくそれは「宇賀先生の解釈」でしかないように思います。

最近開示された文書でも、やはり「係長以上」の名前しか開示されていないように思います。(不開示部分の名前が確実に係長より下かは、見えないので判断しようがありませんが。)
また、警備関係の文書を見ると、警視以上は開示、警部以下は不開示に現在でもなっています。
ただ、「宮内庁」という官庁だから、宇賀先生のような情報公開法の権威の解釈であろうと、従わないという態度が取れるのかもしれませんが。

ちなみに印鑑へのマスキングは良く見ますよ。本当によくそこまで調べてマスキングかけるよなあと感心するぐらいです・・・
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2010-04-29 01:44) 

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