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「不存在」の文書が見つかるということの意味 [2010年公文書管理問題]

今朝の毎日新聞の記事。引用します。

<砂川事件判決>日米密談の文書存在 外務省が一転開示
4月3日2時33分配信 毎日新聞

 東京都立川市にあった米軍立川基地を巡り、米軍駐留を違憲とした59年の「伊達判決」直後に、当時の駐日米大使が日本側の外相や最高裁長官に面会していた問題で、外務省が「関連文書不存在」としていた従来の姿勢を翻し、文書の存在を認めたことが分かった。政権交代を受けて、文書を開示するよう再請求していた元被告側に2日夕開示した。一連の「密約問題」同様に、情報公開の趣旨を逸脱するこれまでの外務省の姿勢が明らかになった。【野口由紀】

 開示を求めていたのは、同基地への立ち入りを問われた「砂川事件」の元被告、坂田茂さん(80)=川崎市中原区=と支援者ら計40人。

 同事件の1審「伊達判決」を巡り、当時のマッカーサー駐日米大使が藤山愛一郎外相と会い、控訴を経ずに上告する「跳躍上告」を勧めていたことや、大使と田中耕太郎最高裁長官が上告審の時期の見通しについて密談していたことが08年4月、米側公文書で判明。元被告らが、09年3月に情報公開請求したが、法務省、外務省、内閣府、最高裁の4機関は同年5月までに、大使との会議記録などに関し「不存在」と通知していた。

 今回、一転して外務省が公開したのは、伊達判決2日後の59年4月の「藤山大臣在京米大使会談録」。「極秘」との印が押された手書き文書で計34ページある。今後、支援組織の弁護士らが読解を進める。

 公開の再請求は、昨年9月の政権交代で、岡田克也外相が一連の日米密約の調査を指示したことを受け、10月に行った。外務省以外の3機関は11月、以前と同じ理由で不開示としたが、外務省は12月25日、「現時点までに、該当文書を特定することができなかった」として、不開示を通知したものの、「最終決定ではなく、引き続き調査を行う」としていた。

 坂田さんは「内容をよく見ないと分からないが、一歩前進だ」と喜び、同じく元被告の静岡市葵区、土屋源太郎さん(75)は「密約問題への世論が高まり、外務省としても真剣に考えざるを得なかったのだと思う」と話している。
(以下略)

この外務省の対応で一番問題なのは、初めに請求に対して「不存在」と回答したことにある。
この文書を機密を理由として開示しないなら、「不開示」(存在するけど見せられません)と回答すればよい。
また、そもそもこの文書が存在するか否かすらも機密情報だというのであれば、「存否拒否」(存在するか否かを回答することすら拒否する)というやり方だってあった。

「不存在」とは「それに関する文書は一切所有していない」という回答である。
情報公開制度は、当たり前だが、請求した人が文書を探せるわけではない。
探すのは請求を受けた官庁の職員である。
つまり、その「探す人」が「嘘をつかない」ということがこの制度の成立の絶対条件となっているのだ。

今回の出来事は、その「探す人」が「嘘をついた」ということである。
こういったことが起きると、それまでの情報公開請求への対応の全てが疑いの対象になってしまう。
つまり、「請求された文書を全てきちんと開示してきたのか」という不信の目で見られることになるのだ。

また、さらに問題なのは、密約問題もそうなのだが、「政権が代わったら出てきた」という事実である。
本来、外交とは政権が代わっても継続性がある。前政権が締結した条約が、政権が交代したから無かったものになるなんてことは無い。

もちろん、政権が代われば外交政策は変わる。それによって、過去の文書の機密性が薄れるということもあるだろう。
でも、過去にあった出来事を開示するか否かは、本来は政治的な思惑で左右されるべきではない。

外交文書であっても、一定の年数がたてば自動的に開示する。
もし機密指定が必要なら、誰が政権を取っているのかに関係なく、誰でも納得しうる論理で機密指定を行う。
本来なら文書の公開・非公開とはそうあるべきものではないのか。


今回の一連の問題で、外務省の情報公開に対する信頼性は、ほぼゼロに近い状態にまで落ちてしまった。
少なくとも、情報公開法施行以前から、外務省は情報公開に努力してきた省庁である。
他国と比べれば不十分ではあるが、国内の他省庁よりは遙かにマシな対応を取ってきた。

だからこそ、こういったことが起きること自体、非常に残念でならない。
信頼回復のために、是非とも公開・非公開の透明性を高めることに努めてほしいと思う。
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