SSブログ

外務省「密約」問題報告書を見て思う [2010年公文書管理問題]

昨日、外務省より、いわゆる「密約」問題に関する調査報告書が公表された。記事を引用します。

<日米密約>政府見解修正 外交文書公開ルール検討へ…外相
3月9日20時31分配信 毎日新聞

 岡田克也外相は9日、外務省で記者会見し「米国政府から日本政府へ事前協議がないため核搭載艦船の寄港・通過はない」としてきた従来の政府見解を「核の持ち込みがなかったと言い切ることはできない」と修正した。密約について「長期間にわたり国民に明らかにされなかったことは遺憾だ」と表明。「沖縄への核再持ち込み」に関しては「これこそ密約じゃないかという気がしないでもない」と述べ、有識者委と異なる見方を示した。

 岡田氏はまた、自身を本部長とする「外交記録公開・文書管理対策本部」を省内に設置し、外交文書の公開ルールなどを検討することを明らかにした。文書破棄の可能性については「意図的な破棄があったか明確でない。(文書の存在が)特定されないと、調査すると断言するのは難しい」と再調査に慎重な姿勢を示した。
(以下略)

報告書の内容はなるほどという感じだ。憲法9条に抵触する問題については、「話詰めようか」「いやあいまいにしとくか」みたいな流れが日米双方にあって、その揺れ動きの中で密約などが作られていたということなんだろうと。

この報告書が出るまでに時間がかかったということは、おそらくアメリカや国内での意見調整に時間がかかったということだと思われる。
是非とも、30年後にはこの報告書が発表されるまでの「政策決定過程」がきちんと公開されることを望みたい。

なお、私が注目したのは、「密約」に関する報告よりも、有識者委員会の報告書の「補章 外交文書の管理と公開について」(95-104ページ)の部分。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mitsuyaku/pdfs/hokoku_yushiki.pdf

この章は、委員会が密約調査だけでなく、「外交文書の公開のあり方に関する提言という任務」も課されていたため、「利用者の立場」と銘打って作られた提言である。
この提言は、戦前の外相・石井菊次郎(石井・ランシング協定などで知られる)の「書類の整備の完否は、外交の勝敗を決する」という言葉から始まり、外務省の外交史料の保存のあり方の問題性を指摘し、これから施行される公文書管理法にどのように対応すべきかということについて、かなり具体的な提言がなされている。

特に注目したいのは、外務大臣と外交史料館長の権限関係の整理の話である。
公文書管理法では、公文書を公文書館に移管する際に、国際関係の文書については、公文書館側が外務省の意見を「参酌」して公開か非公開を判断することになっている。
この公文書館はもちろん「外務省外交史料館」であるので、今のままだと、外務大臣の意見を、その「部下」である外交史料館長が「参酌」することになる。

有識者委員会は、報告書で、外交史料館長に「適切な判断を下しうる立場が制度的に保障されることが望まれる」(103ページ)と指摘を行った。
私もこの点は以前から問題があることを指摘しているので、この点については大いに同感である。
ただし、もし「制度的に保障」するのであれば、外務省の中にある以上外務大臣の「部下」であることは疑いようが無いので、やはり国立公文書館の分館として外務省から分離するしかないとは思うが。

岡田外相はこの調査の公表について、御自身のブログ「もっと資料がきちんと保存されるようにする。そして、その資料が外務省の30年ルールに則って、30年経てばきちんと公開されるようにする。そのための体制をこれから作っていかなければなりません。」と書いているので、是非ともこの有識者委員会の提言を実現させるようにつとめてほしいと願っている。

あまり詳しくは述べている時間がないので、この程度の紹介にとどめますが、外交関係の文書を扱う近現代史研究者や、情報公開などに興味がある人、公務員関係者はこの有識者委員会の報告書の「補章」はきちんと目を通してほしいと願ってやみません。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。