天皇と中国副主席の会見問題 補遺 [天皇関係雑感]
前回の続き。
小沢一郎民主党幹事長が宮内庁長官発言に反発を行い、問題が拡大していっている。
気になったやりとりがあったので、ちょっとだけ追記。
小沢幹事長の記者会見発言…天皇会見問題
2009年12月14日21時26分 読売新聞
(一部のみ引用)
――天皇陛下の健康上の問題にかかわらなければ、1か月ルールはよろしいとの認識か。
【小沢氏】1か月ルールというのは、誰が作ったんですか、というんですよ。
――なくてもいいものだと。
【小沢氏】なくてもいいものじゃない。それ、誰が作ったか調べてからもう一度質問しなさい。私は、何でもかんでもいいと言っているんじゃないんだよ。ルールを無視していいと言っているんじゃないよ。宮内庁の役人が作ったから、金科玉条で絶対だなんて、そんなばかな話あるかっていうことなんですよ。天皇陛下ご自身に聞いてみたら、手違いで遅れたかもしれないけれども、会いましょうと、必ずそうおっしゃると思うよ。わかった?
――小沢幹事長が平野官房長官に、習副主席と天皇陛下の会見を要請したと報道されている。事実関係はどうか。また、天皇陛下の政治利用だという議論が起こっているが、どう考えるか。
【小沢氏】君も少し、憲法をもう一度読み直しなさい。今、説明したじゃないですか。天皇陛下の国事行為、行動は、国民の代表である内閣、政府の助言と承認で行うことなんですよ。それじゃ、国事行為は全部、政治利用になっちゃうじゃない。諸君の理解がまったくおかしいんだよ、マスコミの。そうでしょ。何をするにしたって、天皇陛下は内閣の助言と承認でと、それは憲法にちゃんと書いてあるでしょうが。それを政治利用だといわれたら、天皇陛下は何もできないじゃない。じゃあ、内閣に何も助言も承認も求めないで、天皇陛下個人で行うの? そうじゃないでしょう。
(引用終)
これに対する、宮内官僚のコメント
国事行為ではない―宮内庁 中曽根氏にもルール説明
2009/12/16 21:21 【共同通信】
宮内庁の岡弘文官房審議官は16日、自民党本部で開かれた「天皇陛下の政治利用検証緊急特命委員会」の会合で、陛下と習近平中国国家副主席の特例会見について「公的行為なので内閣の助言と承認は必要ない」と述べ、憲法上の「国事行為」に当たらないとの認識を示した。
特例会見に関して民主党の小沢一郎幹事長は「天皇の国事行為は内閣の助言と承認で行われる」と強調。鳩山政権の対応は天皇の政治利用ではないと主張していた。
(以下略)
まず、前提として、前回の私の記事を読んでほしい。
簡単に要約すると、そもそも天皇の国際親善は全て政治的行為であり、時の政府によって「政治利用」されている。
だが、それを政府や宮内庁は「政治的でない」という「タテマエ」で行ってきた。
だから、今回の中国副主席との会合をごり押ししたこと自体は、それほど驚くことでもない。
さて、今回の小沢の発言は、私の書いたブログを追認してくれたようなものだったと思う。
つまり、「タテマエ」の裏にある「本音」を彼は語ったのである。
確かに小沢は天皇が外国要人と会うことを「国事行為」と間違った認識をしている。この点で「憲法を読め」という発言は明らかに小沢が間違っている。
つまり、「公的行為」という憲法に「書いてない」ことが今回問題になっているのだから。
だが、その「国事行為」という部分を「公的行為」という正しい言葉にすれば、小沢の言っていることはおおむね間違っていない。
これに対して、宮内庁の官房審議官が「公的行為なので内閣の助言と承認は必要ない」というのは、それだけを見ると「天皇は勝手に何でもやって良いの!」という反論に見える。
でも、前回のブログを読んでいただければ、これが官僚としての「タテマエ」論で反論しているということがわかっていただけるのではないだろうか。
つまり、「公的行為」というのは、「タテマエ」としては「非政治的行為」なのである。
だから、「タテマエ」としては「内閣の助言と承認」で動いているわけではない。
でも、小沢の言うように、「本音」では天皇の「公的行為」は「政府の助言と承認」でもって動いているのだ。
これまでの自民党政権は「タテマエ」だけを語って、裏で動くことで「政治利用」を行ってきたのである。
それが天皇の「政治利用」の「作法」だったわけである。
だが、民主党政権になって、その「作法」がきちんと引き継がれなかったということなのだろう。
その意味でも政権交代の影響が出ているということなのかもしれない。
でも、せっかくここまで問題になったのだから、天皇の「公的行為とは何か」「政治利用とは何か」という点について、議論が深まってほしいなあと私としては思う。
補足
小沢の「天皇利用」の部分が大きな問題となっているみたいだが、実際に一番問題なのは「天皇陛下ご自身に聞いてみたら、手違いで遅れたかもしれないけれども、会いましょうと、必ずそうおっしゃると思うよ。」という発言だと思う。
天皇は当然内閣の助言で動くんだから、依頼されたら「会う」。そこに拒否権はない。
でもあたかもそういった権限があるかのように話し、かつ天皇の権威を元に相手を論破しようとするのはいただけない。
この点が一番批判されてしかるべきではないのだろうか。
小沢一郎民主党幹事長が宮内庁長官発言に反発を行い、問題が拡大していっている。
気になったやりとりがあったので、ちょっとだけ追記。
小沢幹事長の記者会見発言…天皇会見問題
2009年12月14日21時26分 読売新聞
(一部のみ引用)
――天皇陛下の健康上の問題にかかわらなければ、1か月ルールはよろしいとの認識か。
【小沢氏】1か月ルールというのは、誰が作ったんですか、というんですよ。
――なくてもいいものだと。
【小沢氏】なくてもいいものじゃない。それ、誰が作ったか調べてからもう一度質問しなさい。私は、何でもかんでもいいと言っているんじゃないんだよ。ルールを無視していいと言っているんじゃないよ。宮内庁の役人が作ったから、金科玉条で絶対だなんて、そんなばかな話あるかっていうことなんですよ。天皇陛下ご自身に聞いてみたら、手違いで遅れたかもしれないけれども、会いましょうと、必ずそうおっしゃると思うよ。わかった?
――小沢幹事長が平野官房長官に、習副主席と天皇陛下の会見を要請したと報道されている。事実関係はどうか。また、天皇陛下の政治利用だという議論が起こっているが、どう考えるか。
【小沢氏】君も少し、憲法をもう一度読み直しなさい。今、説明したじゃないですか。天皇陛下の国事行為、行動は、国民の代表である内閣、政府の助言と承認で行うことなんですよ。それじゃ、国事行為は全部、政治利用になっちゃうじゃない。諸君の理解がまったくおかしいんだよ、マスコミの。そうでしょ。何をするにしたって、天皇陛下は内閣の助言と承認でと、それは憲法にちゃんと書いてあるでしょうが。それを政治利用だといわれたら、天皇陛下は何もできないじゃない。じゃあ、内閣に何も助言も承認も求めないで、天皇陛下個人で行うの? そうじゃないでしょう。
(引用終)
これに対する、宮内官僚のコメント
国事行為ではない―宮内庁 中曽根氏にもルール説明
2009/12/16 21:21 【共同通信】
宮内庁の岡弘文官房審議官は16日、自民党本部で開かれた「天皇陛下の政治利用検証緊急特命委員会」の会合で、陛下と習近平中国国家副主席の特例会見について「公的行為なので内閣の助言と承認は必要ない」と述べ、憲法上の「国事行為」に当たらないとの認識を示した。
特例会見に関して民主党の小沢一郎幹事長は「天皇の国事行為は内閣の助言と承認で行われる」と強調。鳩山政権の対応は天皇の政治利用ではないと主張していた。
(以下略)
まず、前提として、前回の私の記事を読んでほしい。
簡単に要約すると、そもそも天皇の国際親善は全て政治的行為であり、時の政府によって「政治利用」されている。
だが、それを政府や宮内庁は「政治的でない」という「タテマエ」で行ってきた。
だから、今回の中国副主席との会合をごり押ししたこと自体は、それほど驚くことでもない。
さて、今回の小沢の発言は、私の書いたブログを追認してくれたようなものだったと思う。
つまり、「タテマエ」の裏にある「本音」を彼は語ったのである。
確かに小沢は天皇が外国要人と会うことを「国事行為」と間違った認識をしている。この点で「憲法を読め」という発言は明らかに小沢が間違っている。
つまり、「公的行為」という憲法に「書いてない」ことが今回問題になっているのだから。
だが、その「国事行為」という部分を「公的行為」という正しい言葉にすれば、小沢の言っていることはおおむね間違っていない。
これに対して、宮内庁の官房審議官が「公的行為なので内閣の助言と承認は必要ない」というのは、それだけを見ると「天皇は勝手に何でもやって良いの!」という反論に見える。
でも、前回のブログを読んでいただければ、これが官僚としての「タテマエ」論で反論しているということがわかっていただけるのではないだろうか。
つまり、「公的行為」というのは、「タテマエ」としては「非政治的行為」なのである。
だから、「タテマエ」としては「内閣の助言と承認」で動いているわけではない。
でも、小沢の言うように、「本音」では天皇の「公的行為」は「政府の助言と承認」でもって動いているのだ。
これまでの自民党政権は「タテマエ」だけを語って、裏で動くことで「政治利用」を行ってきたのである。
それが天皇の「政治利用」の「作法」だったわけである。
だが、民主党政権になって、その「作法」がきちんと引き継がれなかったということなのだろう。
その意味でも政権交代の影響が出ているということなのかもしれない。
でも、せっかくここまで問題になったのだから、天皇の「公的行為とは何か」「政治利用とは何か」という点について、議論が深まってほしいなあと私としては思う。
補足
小沢の「天皇利用」の部分が大きな問題となっているみたいだが、実際に一番問題なのは「天皇陛下ご自身に聞いてみたら、手違いで遅れたかもしれないけれども、会いましょうと、必ずそうおっしゃると思うよ。」という発言だと思う。
天皇は当然内閣の助言で動くんだから、依頼されたら「会う」。そこに拒否権はない。
でもあたかもそういった権限があるかのように話し、かつ天皇の権威を元に相手を論破しようとするのはいただけない。
この点が一番批判されてしかるべきではないのだろうか。
私も「天皇陛下ご自身に聞いてみたら~必ずそうおっしゃると思うよ。」のくだりが一番問題だと思います。
「天皇陛下の意思を代弁する」という形態が天皇の政治利用で一番危ない気がするからです。
by のんき (2009-12-28 15:14)
> のんき さま
私も同感です。
ただ、小沢はここを批判されたことにもどうやらカチンときているようで、再度記者会見で同様の発言をしていますね。なんだか、大人気ない子供達の論争の態をなしてきたなという感じがして残念ですが・・・
by h-sebata (2009-12-28 20:40)