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【連載】公文書管理法案を読む(補遺第3回)―作成・取得義務について [【連載】公文書管理法案を読む]

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補遺の第3回は、「第3回 問題点(1) 公文書の定義」で書いた内容を、作成義務・取得義務の方向から再度書き直して整理してみようという試みです。
なので、できたら前のものも合わせて読んでもらえると良いかと思います。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

補遺第3回 作成・取得義務について

まず、公文書管理法案の第4条を早速だが引用してみる。

第四条 行政機関の職員は、当該行政機関の意思決定並びに当該行政機関の事務及び事業の実績について、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、政令で定めるところにより、文書を作成しなければならない。

この法文は、文書の作成義務を定めたものである。
実は、情報公開法の施行令第16条には次のような文面がある。

二  当該行政機関の意思決定に当たっては文書(図画及び電磁的記録を含む。以下この号において同じ。)を作成して行うこと並びに当該行政機関の事務及び事業の実績について文書を作成することを原則とし、次に掲げる場合についてはこの限りでないこととするものであること。ただし、イの場合においては、事後に文書を作成することとするものであること。
イ 当該行政機関の意思決定と同時に文書を作成することが困難である場合
ロ 処理に係る事案が軽微なものである場合


これから、公文書管理法案の第4条がこの条文を下敷きにしていることはすぐにわかる。
そして、「原則」から「義務」にしたことは評価できる。
なぜなら、情報公開法上では文書の作成はきちんと行われてこなかった。特に、情報公開の対象になるからといって、あえて文書を作らないということも頻繁に起きていたと言われている。
今回、それを「義務」にすることで、作らないことが違法であるということになったことは大きい。

ただし問題は「作られる文書の内容」である。
管理法第4条法文を見ると、「意思決定」「事務及び事業の実績」と書かれている。
これは「決定」と「実績」だけを作ればよいと読める。
つまり、やはり発想は「決裁文書を作っておけば説明責任は果たせる」という考え方なのである。

日本の国立公文書館所蔵の文書のほとんどは「決裁文書」だけで、使えないという話は以前からなんども書いたことがあるので繰り返さない。→こちら参照
まずは「意思決定過程」を残させること。これを法文に入れておく必要がある(ちなみに「政令で決めるから」というのは甘い。政令は官僚が作るもの。そこにそんな画期的なものは入ることはあり得ない)。

さて、そして今回もう一つ取り上げたいこと、それは「取得義務」についてである。
私はあまりその発想がなかったので、この話を聞いたときに、なるほどと思った。

「取得義務」とは「業務遂行上の根拠や証拠となるもの」を「取得」しなければならないということである。
具体的には、外部委託した調査(例えば高速道路建設の際の環境調査など)の結果の根拠となるデータをきちんと公文書として取得しなさいということである。

どうやら多くの省庁では、外部業者に委託されている調査だと、結果だけを受け取り、その根拠となっているデータをもらわないようなのだ。
そうすると、例えば高速道路の建設が本当にその場所でなければならないのかという根拠となるデータは民間業者が保有しているということになり、それを情報公開で請求することはできない。
つまり、省庁側が示しているデータの正確性を検証することができないのである。

実際に各省庁の業務は、調査から議事録のテープ起こしまで、さまざまなものが民間に委託されているのは間違いない。
しかし、民間業者の所にあるものを「公文書」と認定することは当然できない。
だからこそ、意思決定過程がわかるものについては、各省庁がその文書を作成するだけでなく「取得」することも義務化する必要があるのだ。
そしてその「取得」を義務化するためには、契約をするときに必ず「取得する」ことを明記する必要があるだろう。(そうしないと、民間業者の「私物」を各省庁が「押収する」という立場になりかねない。)

公文書管理法案の第4条はそれ自体はよくぞ入れてくれたという文章ではある。だが、これではまだ抜け道が多すぎる。是非とも、「意思決定過程」の文書化と「取得義務」を加えてほしいと思う。


3回にわたり補遺を書いてきました。もしまた書くことがあれば続きを書きます。
今回の連載はここまで。
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