SSブログ

【連載】公文書管理法案を読む(補遺第2回)―国立公文書館のあり方 [【連載】公文書管理法案を読む]

第1回はこちら/第2回はこちら/第3回はこちら/第4回はこちら
第5回はこちら/第6回はこちら/第7回はこちら/第8回(終)はこちら

補遺第1回はこちら

今回は前回の補足。国立公文書館のあり方についてです。

公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)案はこちらなので、法案を参照しながら見ていただければと思います。

補遺第2回 国立公文書館のあり方

すでにこの問題は、連載の第4回「問題点(2) 延長・移管・廃棄の権限」の際にも触れている。
その中で、私は、国立公文書館の権限の問題について次のような文章を書いた。

有識者会議の最終報告では、国立公文書館の権限を強めるために、現在の独立行政法人のままではあるけれども「特別の法人」とすること、公文書管理担当大臣を設けること、そして国立公文書館長をアメリカのNARA(国立公文書記録管理局)長官の地位(大統領による指名)を参考にしつつ、より格の高い存在として位置づけることも考えられる、との記載があった。(P20-22)

しかし今回の公文書管理法案の中には、国立公文書館の機能についての記載は文書の移管・公開・保存以外のことはほとんど書かれていない。
また、公文書管理法案には国立公文書館法の改正案がセットになっているが、これを読んでも、正直言って、「特別の法人」となったようには全く思えないのだ。

(引用終)

しかし、正直に言うと、この「特別の法人」って何?って思っていたのだ。
何をすれば「特別な法人」になるのか、それは普通の独法と何が違うのかよくわからなかった。なので、曖昧に書いて細かい話は省いたのである。

最近、公文書市民ネットの会議での議論で、このあたりがどういうことなのかやっと理解した。今回の補遺はそれについて書いてみたい。

まずこの話をするときに、「そもそも独立行政法人とは何か」ということを説明する必要がある。
独立行政法人を定義している法律は「独立行政法人通則法」というものである。
この第2条の第1項に定義が書かれている。

第二条  この法律において「独立行政法人」とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人をいう。

この文面で注目すべき点は、独法の行っている仕事が、「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもの」として定義されているという点にある。
つまり、独立行政法人国立公文書館の行っている職務は、「国が直接実施する必要のないもの」と考えられているということである。

これは明らかにおかしい。
国の公文書を保存し公開する職務が、「国が直接実施する必要のない」事業でないはずがない。国がやる事業であるのは当たり前だ。

そこで「特別な法人」という概念が出てくる。
つまり、国立公文書館のために新たな法律を作り、そこに「公文書の保存公開は国が直接に行う事業である」との定義づけを明確にして、強力な機関として法的な根拠を与える必要があるのである。

一方、国立公文書館をもう一度国立機関に戻すべきだという意見も有識者会議では挙がっていた。
つまり、そもそもとして国立公文書館を独法化するということ自体が間違っていたということだ。
ただ、この点については、簡単にはそれが良いとも言えない事情がある。

国立公文書館関係の方の話を見聞きした感じだと、どうも独法化は全てが悪かった訳ではないようなのだ。特に、人事面においては明らかに良くなった点があるという。
それまでは、各官庁から全く公文書館に理解のない人が人事で回されてきたりすることもあり、専門の職員の採用にも融通が利かなかった。
また予算運用にもある程度の柔軟性が出たという話もあるようだ。

だが、独法化して国家機関ではなくなったことで、公文書の移管に支障が出たのではと思う。
統計の数字からは、移管数が増えているように見える。
だが、時折大きな資料群を移管したような巨大な数字があるので、日常的な移管はあまり進んでいないように感じるのだ。
独法化以前の状況もあまりわからないので断定はできないが、情報公開法ができたにもかかわらず、移管は進まなかったということだけは確かだろう。

国立公文書館の職員はこの移管協議でものすごく苦労しているという話は色々な所から話が入ってくる。
移管させようと努力しても、移管権限が各省庁にある限り、それは「お願い」にしかならない。
もともと少ない職員数でそのような所に労力をかけさせていることは大きな問題である。

つまり、独法の良さを引継ぎながらも、その権限を強めるというところが必要となる。
そうなると、やはり「特別な法人」として位置づけるということは、それなりの説得力はあると思う。

私としては、今回の法律では「特別な法人」としておき、いつか公文書管理庁が内閣からも独立した機関になるときに、国立公文書館を統合して、アメリカのNARAのようになれればよいのではと考えている。つまりここでも二段階で考えた方がよいのではと思うのだ。
そして、その間に人材の大量養成を行うだけでなく、国立公文書館自体が国民から敬意を持って見られるような機関になるように努力していけばよいと思うのだ。

以上ここまで。次回は「作成・取得義務」の話をします。→補遺第3回
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。