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【連載第6回】「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録を読む [【連載】公文書有識者会議]

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「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録の解説の続きです。
ですが、上記しているとおり、すでに「中間報告」の解説をしてしまっているので、第6回から8回は気になったところだけをテーマ別にピックアップして書いていこうと思います。

今回は、「外国の制度状況」の話と、「情報公開法を公文書館に適用するか」という話の2つを解説します。

まず、「外国の制度状況」から。
第6回では、委員の野口貴公美氏が米国の公文書館制度について解説をされた。→第6回資料1
また、第7回の資料2では、米国の国立公文書記録管理院(NARA)の組織図や部局毎の役割、人数などが日本と比較されており、また米英仏豪韓との比較も掲載されている。

世界各地のアーカイブズの中で、最も権限が強く、かつ大規模なのは米国であるというのは、おそらく専門家の間でも議論の余地はないのではないかと思う。
野口氏の発言によれば、「アメリカというのは新しい国であると。ヨーロッパの諸国に比べて、新しい国が記録をいかに残していくかという視点から、記録の保存の場を設けて、きちんとそこを確保しておくということが重要であろうというところから、公文書管理の仕組みというのが組み上がっていくことになっております。(中略)アメリカの議論というのは、保存場所がまずあってそこに必要とされる権限は何かと。その権限をどうやって制度の中に散りばめていくのかというところで、制度が組み上がっているようでございます。」(第6回議事録3-4頁)とのことである。
つまり、もとから「残したい」ということが先にあって、そのために必要な権限を公文書管理機関に集めたということになる。

そのため、NARAは保存期限の切れた文書を強制的に回収する権限も持っているし、そもそも文書の作ったところから「レコードスケジュール」というものを付けさせて管理を徹底させている。
また、勝手に文書を捨てた場合は、罰金または禁固刑になるという規程も存在する。

NARAの長官は英語では「Archivist of United States」と言う。
つまり「合衆国のアーキビスト」として、大統領による任命と上院の承認を必要とする、非常に権威のある職となっている。
このようなシステムのために、公文書の残り方が非常に良いのである。

日本では公文書がきちんと管理されていないし、まともに公開されていない。
だから、日本の戦後政治史の研究者は、アメリカの国立公文書館に行かなければ研究にならないような状況になっているのだ。(このあたりは、私の解説の第4回参照。)

少し脱線したが、他国との違いは、上記の第7回の資料2が非常によくまとまっているので、是非参考にしてほしい。
よくこのブログでも紹介しているが、日本の国立公文書館の正規職員は42人。アメリカは2500、韓国でも300人。いかに遅れているかが良くわかると思う。


次は「情報公開法を公文書館に適用するか」の話。
アメリカの国立公文書館には、日本の情報公開法に当たる情報自由法(FOIA)が適用されているので、日本ではどうなのかという議論が第7回から8回にかけて行われた。

その問題の一つとして、各省庁が文書を移管したがらない理由として、「公文書館に移管すると、今まで隠していた以上の情報が公開される」ということが挙げられていたためである。
現在の情報公開法は、6項目にわたって公開に制限を付けることができるようになっている(例えば個人情報とか)。
しかし、公文書館に移管すると、そのうち3項目は適用外になり、さらに「時間の経過によって情報は劣化する」ため、ある一定の年数からは個人情報であっても開示されるものが出てくる。(例えば、学歴などは30年以上経過した場合、保護する必要はなくなっている可能性が高い。)
各省庁はそのこともあって尻込みをするらしい(渡すくらないなら捨てるor保存期間を延長する)。

座長の尾崎護氏は、その適用で各省庁が安心するのであれば良いのではと発言をしているが、菊池光興国立公文書館長がそれには反論をしている。
菊池館長によれば、情報公開法はあくまでも「情報提供」という考え方であり、「請求」されてはじめて「提供」するというものであるのに対し、公文書館は原則無料で「公開する」という考え方である。つまり、原則が全く異なるのだと。(第7回議事録25-26頁)
また、第8回で加藤陽子氏も述べているが、現在の情報公開法には「経年による情報の劣化」という概念が全くない。
だから、非公開部分がものすごく増える可能性が出てくることになる。(第8回議事録12頁)
つまり、もし情報公開法が公文書館に適用されることになったら、「伊藤博文のあらゆる個人情報」すらも墨塗りにしなくてはならなくなる。

結局、情報公開法の適用という話は中間報告には入らなかった。
しかし、公文書管理法を制定するのであれば、情報公開法とのすりあわせも必要となるだろう。
その際に、是非とも管理法の方を合わせるのではなく、管理法に情報公開法を合わせるような制度改正を望みたいと思う。

とりあえず今回はここまで。次回は「実効性のあるためのシステムを構築する」ことを廻る議論を中心に取り上げます。
第7回
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