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【連載第7回】「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録を読む [【連載】公文書有識者会議]

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「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録の解説の続きです。
ですが、上記しているとおり、すでに「中間報告」の解説をしてしまっているので、第6回から8回は気になったところだけをテーマ別にピックアップして書いていこうと思います。

今回は前回の続きです。
テーマは「実効性のあるためのシステムを構築する」にはどうしたらよいかということです。

情報公開法が制定されたときに、公文書の管理の「器」はできたはずだった。
しかし、「魂」は入らなかった。
そのために、法の施行直前に大量の文書廃棄が行われたり、情報公開を担当する職員もお金もあまり回されなかったために、公開期限の延長が多発したりした。
結局、「器」を機能させるだけの「人」がいなかったし、そういう人材を育てなかった。

だからこそ、今回の有識者会議は、「器」としての文書管理法の制定だけでなく、これがどうすれば「実践」されるのかに、議論の時間を多く割いている。
第7回でその点について、尾崎護座長と菊池光興国立公文書館長の間で「移管基準」をめぐる議論が行われた。

菊池館長は、文書の移管基準を細かく書きすぎるのは良くないと主張する。
そうすると、結局何がその基準に適用されるのかされないのかという些末なことで時間がかかってしまって、制度が機能しなくなる。
そして、次のように主張する。

「文書管理機関のほうの判断を優先させていただくようなスキームを、まずつくるというようなことが必要ではないか。(中略)、私はその権限とかということで、法律でこう決まっているからという形の押し通し方ではなくて、それこそおっしゃるように、ステータスとしてどっちのジャッジメントをより妥当なものとして皆さんが受け入れてくれるかどうか。そこのところが必要だとこう私は思っているんです。」(第7回議事録14頁)

つまり、「こう決まったからこうやれ」ではダメで、官僚達に「こういうことをやるとどれだけ意味があるのか」を納得させる方が重要だということである。
そうすることで、細かい基準をガチガチに決めるよりも、相手が自主的に関係文書を出してくることにつながるという意味なのだろう。

だがこれに対しては尾崎座長は、結局いままでも制度はあったのに動いていないではないかと述べる。
「粘り強く説得するという努力は非常に立派だと思いますけれども、結局最後にだれが決めるんだということが、今は決まっていないわけですね。それでむしろ話がつかなかったら各省庁の意見が通ると、こういう形になっているわけですね。そういう組織・システムというものが、うまく働いていないというのが、現状、皆さんのご認識ではないかとこれまでのところ私は聞いてきているんですが、そうとすれば、それはやっぱり文書管理法なり何なりで、きちんとしなくてはいけないということなんではないかなと思うんですけれども。」(第7回議事録15頁)

これは、どちらが良い悪いと言うことではなく、「どちらも必要」なのである。
つまり、法的には権限を与えないと命令を出せない、だから絶対に必要。
でも同時に、「器」には「魂」を入れなくてはならない。そのために、実際に作業をする人達がいかにこの「器」に同調する方が良いかということをたたき込まなければならない。
そのためには、実際に「便利だ」と思わせるだけのことを、公文書管理機関の方もしなくてはならない。
そして当然、これをこなすには、いまの国立公文書館の規模ではどうしようもならない。

第7回から8回の議論で、「どの規模が理想なのか」という話も、この延長で議論された。
第7回で加藤丈夫氏は、最終的に必要な人数を「具体的な数」で書くべきだと主張した。(34頁)
しかし、内閣府もさすがにそれは反映させず、「ふさわしい規模」でお茶を濁そうとした。
ところが、第8回では加藤丈夫氏がその話を蒸し返し、それに後藤仁氏や尾崎座長、菊池館長まで賛成に加わり、さらに尾崎座長は委員の総意を取るために他の委員に話をわざわざ振って同意を取り付けた。
それに対し、内閣府の山崎日出男公文書管理検討室長は、他の会議ではそういう具体的な数字は出さないんだが・・・とあくまでも消極的な姿勢を見せたが、尾崎座長が「よその有識者会議のまねをすることはない」と一刀両断して、結局理想の人数を具体的に入れることになった。(18-20頁)

なぜ具体的な数が必要なのかというと、現状が42人なので、「ふさわしい規模」と書くと、事情を知らない人は「1.5倍ぐらいか」みたいな考えになってしまう。
最終的には中間報告では「数百人」という書き方になったのだが、要するに10倍近くは必要だということを書くことで、それだけ大規模な増員をしないといけないんだというインパクトを出すことができるということなのだ。

この改革は、おそらく10年単位の時間をかけて体制を整えていくことになるはずである。
その最終的な着地点が500人ぐらいという議論が会議でなされたことには意味がある。
これを担う人材育成という話も会議では出ており、「数百人」規模になるという長期目標が掲げられていれば、アーキビストを養成する大学も増えるだろうし、勉強する人達の目標もできるという意義も述べられていた。

少なくとも福田内閣が続いていれば、「器」は確実にできる。
でも「魂」が一番の問題。福田首相は、その道筋を付けるまでは何とか生き延びて欲しいと切に願っている。

今回はここまで。次回は残りの細かい話を書いて終わりにします。
第8回
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