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【連載第4回】「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録を読む [【連載】公文書有識者会議]

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5月初めに集中連載した「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の議事録の解説の続きです。
今回の連載は議事録が公開されている第4回と5回を連続して行おうと思います。

それでは第4回(4月28日)です。
今回は、行政学者からのヒヤリングということで、行政学の大家、村松岐夫氏(京大名誉教授、学習院大教授)の話を中心にして進められた。

村松氏の話であるが、何というか「漫談」的なノリで、やや実証に欠ける感があった。ただ、要点を押さえているところはさすがというかなんというか。

内容はこれまでも議論になったことが多い。主に挙げると

・国家や民族が記録を残すのは本能。いいことも悪いことも含めて歴史を残すことに関心があるはず。また、意思決定過程を残すのも国民の利益に沿う。
→一方、人には情報を隠したい本能がある。だけど公文書は国民の財産だから、その本能は抑えるべき。
公文書担当大臣は常設しておくべき。そうでないと、閣議や国会に直結せず、公文書管理の新たな政策を打ち出すのが難しくなる。公文書館の権限を強くする必要。
・無断廃棄には制裁措置が必要。
・人を増やすことが必要。ヒューマンリソースが不足しているなら、特定作業に特化した(文書の目利きとか)形で対応する組織化もありではないか。

他にも、そもそも「設置法」の様な形で組織が作られていること自体にも問題がということも話されていたが、この話はやや脱線と思われる。

そして最後の一言

「私から言うと、外国の資料で歴史を書くのは不愉快である。日米行政協定とかいろいろあって、なかなか出せないものもあるでしょうけれども、アメリカ側から資料が出てくる、韓国側から資料が出てきて昭和20年代を書くのは嫌であり、日本の資料をもっと利用したいという感じがあります。感情的な表現をしましたが、日本の歴史や政党決定の現状分析は、外国の文書だけを利用に書くのは、バランスを欠く結果になるということを申し上げたいわけです。(議事録P8)

これは、村松氏が言うことに価値があるセリフだと思う。
もちろん、誰もがそういうことは思っているわけで、これを長年戦後政治の分析をしてきた村松氏が言ってくれることは大きい。

この村松氏をめぐる議論は、あまり新味がないので省略。

次に、これまで3回の議論をまとめたもの(資料2資料3)を元にして、さらに議論がなされた。
ちなみに、この資料2と3は、これまで私が紹介してきた議事録をまとめたものなので、見ておくと頭の整理にはなるかもしれない。この後の議論もまとめ直しの議論なので略。

最後に、菊池光興国立公文書館長が、韓国が新たに建設したNARA記録館(国立公文書館)の開館式に出席したことを報告した。(規模拡大のために、ソウル市郊外に新たな施設を作った。)
韓国は金大中政権のころから、ずっと情報公開に積極的に取り組んできた。
これは、自らが主導した民主化運動の仕上げという形でなされている。もちろん、暗部を晒すことによって、民主化運動の正当化を図ろうとしたとも言えると思う。
ただ、この動きによって、韓国はものすごい勢いで、公文書管理体制を強化していった。
また、菊池館長によれば、記録管理手法そのものの強化によって、ビジネス経営にも活用されることも想定されていて、ビジネス界からもお金を出させているんだという。

そこにある理念の一つには、「記録の重要性が、単に証拠的記録を保存する道具としてだけではなくて、韓国をさらに一段高い国家として発展させるための知的社会を構築する、知的資源として認識されるべきこと」とある。
つまり、韓国は「国益」のため、民主化運動の「誇り」のため、そして情報化社会に合わせた知的社会の構築までもアーカイブズに託したのである。
これは、ナショナルアーカイブズを作る時の国家戦略としては、真っ当なやり方である。

この開館式には、李明博大統領を初め、政府高官そろい踏みだったらしい。
すでに、日韓条約文書が韓国側で公開されており、これから先、日本との関係の文書が次々に公開される可能性が高い。
まさに、村松氏が述べたように、日本の歴史は韓国の史料を使って書かなくてはいけない時代がくるかもしれないのだ。
この問題は、もっと深刻に捉えられてよいように思う。特に保守系の歴史を重視される方々には。

以上です。次回の更新は数日内に行います。
第5回(上)へ続く
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