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映像アーカイブズの世界 [情報公開・文書管理]

この2日間、「第3回アジア・アーカイブスセミナー」(於:NHK千代田放送会館)に出席していた。
アーカイブズの専門家ではないのだが、参加しているニュース映画の研究会の関係で、「耳学問」をしに出席してみることにした。
こんな素人のためのセミナーではなく、専門家のための会議だったので、タダで端の方で耳学問していた者としては、せめて少し内容紹介と感想めいたことぐらいは書き残してみたい。

これまで公文書管理でアーカイブズ問題に興味を持ってきたわけだが、映像アーカイブズの世界は、公文書と同じく、様々な構造的な問題を抱えていることがわかった。
なお、今回のセミナーはテレビ映像の問題についてのものだったので、ここで書いている「映像」とはテレビ映像のことである。ただ、映画などでも同じような状況ではと思う。

まず、映像の保存は、意識的にやらない限り、残ることはありえないということである。
公文書などの紙文書は「捨てる」ということをしなければ残る。
しかし、映像はまず「記録」しないと残らない。
NHKの放送初期である1950~60年代の映像は、「放送」の名の通り「流しっぱなし」のものが多く、「記録」すらされていないものがほとんどである。
また、記録されていても、初期の頃はフィルムが高価なので上書きして使い回しているから、結局残らない。
さらに、保管状態が悪ければすぐに見れなくなる。フィルムの劣化は紙など比べものにならない。
また再生機器がなくなってしまっても見れない(例えば、いまβのビデオを見ることが難しいということ。)。

アジア各地の映像アーカイブズの状況が報告されていたが、多くは高温多湿の環境、保存するという意識のない現場、保存する予算・人員の不足、再生機器の欠如、などが問題になっていた。
司会者やNHKの人など、色々な人が特に「再生機器」などの機械の問題をものすごく強調していたことが印象的であった。
技術の進歩によって、フィルムからビデオテープ、DVDへと記憶媒体は変化していく。そして旧型に対応する再生機器は、メーカーの保守期限が決まっていて、そこを過ぎると修理することすら難しくなるのだ。

映像アーカイブズの世界組織である国際テレビアーカイブ連盟(FIAT)が「危機に瀕するアーカイブズ」プロジェクト(Archives at Risk)をやっているとのことだが、予算や人員などで相当に苦労しているようであった。
公文書保存にもお金はかかるが、映像は半端でないお金がかかる。高価なビデオテープは1本1万円とか軽く行くのだ。

その「お金」の問題が深刻だからかもしれないが、著作権の問題と商業化の問題が、中心テーマの一つとして取り上げられていた。
昔の映像を「文化遺産だから残せ」だけでは、莫大なお金は集まらない。
だから、商業化ベースにどのように載せることができるかに大きな関心があるようであった。
そのために、著作権問題が大きな問題となっていた。
しかし、NHKは自前で作った番組すら、著作権処理の関係で自由に公開できないものが多いという。

なんだか、二重三重にも困難が待ちかまえているようで、関係者の苦労がしのばれる。
NHKですらこんな状況だとするならば、民放はどうなっているんだろう。考えるだけでも末恐ろしい。NHKが何とかアーカイブズを作れているのは受信料があるからだと思うので。

公文書管理問題でもつくづく思うわけだが、なんで日本では「残す」ことにこれだけ無関心なんだろう。
例えば、アメリカのように、文化財団への寄付を税の控除対象としても、企業や個人からの寄付は増えるんだろうか。
日本の歴史や文化は大事だと声高に叫ぶ人は多けれど、その歴史や文化を守る行動は取らない。
歴史や文化はお金をかけないと残らないのだ。口で威勢の良いことをいくら言っても、モノは残らないのだ。
なんでそれが共通認識にならんのだろうか。やはり「偉い人にはわからんのです!」って所なのだろうか。

他にも、映像にfingerprint(「すかし」みたいなもの)を打ち込んで著作権に違反する映像のアップロードを水際で食い止める方法の紹介や、川口のNHKアーカイブズの内部の見学など面白いことはあったのだが、長くなったので今日はここまで。気が向いたら続きを書きます。


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