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公文書館推進議員懇談会も動き出す [情報公開・文書管理]

12月7日、くしくも私が厳しい判決を受けたその日に、公文書館推進議員懇談会のメンバー5名が福田首相と会談し、「この国の歩みを将来への資産とするために―「緊急提言」」を提出した。
詳しくは、国立公文書館のHPに記載があるのでそちらを参考にして欲しい。

この提言は、4項目にわたる「緊急提言」という形を取っている。
要約があったので、下に貼っておき、それから解説をしてみたい。

公文書館推進議員懇談会 緊急提言

今回の緊急提言では、この国の歩みを将来への資産とするために、国家と国民の記録を正しく保存する記憶装置たる公文書館制度を適切に整備すべく、4つのポイントに絞って提言を行った。

1点目は、国の機関における文書管理体制の整備。
 現在の文書管理体制そのものの問題を指摘し、文書管理法(仮称)の制定や、国立公文書館がすべての国の機関の文書管理に主導的に関与できる仕組みの構築などを提言した。

2点目は、国民の知と記憶を集約する公文書管理体制の高度化。
 国の公文書以外にも重要な資料があるとの認識に立ち、国立公文書館が国の機関以外の保有文書等の情報収集や取得を行うこと等を提言した。

3点目は、開かれた公文書館への進展と普及・啓発活動の充実。
 国立公文書館の文書を国民が利用しやすいよう、デジタルアーカイブ化の推進や利用施設の拡充などを提言した。

4点目は、国立公文書館の拡充である。
 国立公文書館の役割の重要性にかんがみ、施設や設備の拡充のほか、現在の独立行政法人としての位置づけを国の機関に改めるべきと提言した。
(引用終)

第1点目は、以前から私が主張している公文書管理法の制定と、公文書管理に国立公文書館が「主導的に」関与できるシステムの構築である。
現在の公文書管理は、各省庁の方に廃棄するか移管するかの権限があり、国立公文書館は交渉の余地は残されているけれども、実質的には介入する権限はない。
これを導入することで、重要な資料を各省庁が隠匿したりすることができないような仕組みができあがることになる。
特に、内閣府に「公文書整備対策室」をおいて文書管理を強力に推進する体制の整備を図るべきとの記載があり、それを置くことによって、この改革が漸次遂行できる制度を作ってしまおうというのは良いアイデアだと思う。

第2点目は、公文書に限らず歴史資料全体の状況を国立公文書館が把握し、またその集積も担うということである。
これについては、これまではほとんど言われてこなかったことである。
国立公文書館には内閣文庫(Wikipedia参照)があり、これを拡充化させるということなのだろうか。
ただ、この点については、国立国会図書館の憲政資料室を拡充する方が現実的であるような気がするがどうなんだろう。
公文書館は公文書に特化して(というかそれだけでも大変)、憲政資料室を拡充して個人文書の集積に努め、個人文書の情報のセンター化を図る方が現在の役割分担からしてもすっきりしているような気がするのだが。
また他に、全都道府県・主要都市に公文書館を設立できるよう支援することも書かれており、これも是非実現してほしい。

第3点目は、国立公文書館拡充を国民に納得させるために、その意義を普及することにある。
昨今の行政改革の流れの中で、どこも予算と人員を削減されてきている。
その中で、この公文書管理にお金を重点的に投資することを正当化する必要がある。
「民主的な行政の推進」ということでも十分意義はある(最近の防衛省や社会保険庁の不祥事を見ていれば)が、それだけでなく、もっと積極的に公文書の利用方法を考えるということである。
これは非常に重要なことであり、またこれこそ歴史研究者が積極的に関係していかなければならない問題だと思う。

第4点目は、国立公文書館の拡充である。提言には、国家機関への復帰(現在は独法)、霞ヶ関地区の再開発の中に国立公文書館の移転拡充を含める(ハードの拡充)、拡充を担える人材の育成(ソフトの拡充)が含まれている。
そもそも、国立公文書館を独立行政法人にするということ自体がナンセンスだったわけだが、やっとその問題が明確にされた(国家の文書を管理する機関が「国立」でないとは何事?)。
また、ソフトの問題については歴史学会が大きく関わっていく必要がある。学習院大学にアーキビストの養成大学院を作るという話があるが、それだけではなく、もっと大規模な人員養成を行う必要がある。
それに、生々しい話だが、歴史学を専攻するいわゆる「高学歴ワーキングプア」の院生の受け入れ先としても、充分に活用可能だと思うのだ。

さて、提言書の解説はここまでだが、この「公文書館推進議員懇談会」のメンバーを見ていて、これはどう考えて良いのかなと思うことがある。
メンバーは次の通り。(無記は自民党、敬称略)

世話人 小渕 優子、河村 建夫、浜四津 敏子(公)、細田 博之
メンバー 江渡 聡徳、小池 百合子、鈴木 恒夫、世耕 弘成、竹本 直一、田端 正広(公)、野田 聖子△、浜田 昌良(公)、平沼 赳夫(無)△、弘友 和夫(公)、冬柴 鐡三(公)、古屋 圭司△、保利 耕輔△、堀内 光雄△、桝屋 敬悟(公)、松 あきら(公)、森山 真弓、保岡 興治△、山口 俊一△

合計23人のうち、公明党が7名いる。
これは衆参議員の自民党と公明党の議席比率から考えても明らかに多い。
それと、△を付けた議員・・・つまり、「郵政造反議員」の多さである。
郵政造反議員で選挙で勝ったのは12人だが、このうち7名が参加者である。

この議員連盟の設立当初(2005年3月30日)のメンバーがわからないので(小渕、浜四津、世耕各氏は記事に名前があったので、そのときからメンバーなのは確か)、どうしてこういう構成になっているのかがよくわからない。
公明党が多いのは、情報公開推進という立場からだろうということは想像がつく。
あとの自民党勢は、「国益論」からの公文書政策推進者かなとも思うが、断言できるだけの根拠はない。
もしどなたかご存じの方があれば、なぜこういうメンツがそろったのかを教えて欲しい。
あと、民主党には声をかけていないんだろうか。かければ興味がある人もいるように思うのだが。

いずれにしろ、福田首相になってから、急速に公文書制度問題は進展があるようである。
この流れのまま進んでほしいと強く願う。


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