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元号が先か、西暦が先か [天皇関係雑感]

最近、情報公開関係しか更新をしていなかったので、少し小ネタを。

学部の卒論を書いていたときに、戦前から現在までの新聞を色々と調べることが多かった。
その中で、ふと気づいたことがあった。
途中から、各面の欄外にある西暦と元号の記載の順番が入れ替わっているのだ。
初めはどの新聞も「元号(西暦)」だったのが、途中で「西暦(元号)」になるのだ。
例えば、昭和30年(1955年)という表記が、1980年(昭和55年)のように。
そこで、大手5紙が、いつこの記載を変えたのかということを調べてみると、おもしろい事実がわかった。
まずは、その結果から提示してみよう。

『朝日新聞』 1976年1月1日
『毎日新聞』 1978年1月1日
『読売新聞』 1988年1月1日
『日本経済新聞』 1988年9月23日
『産経新聞』 現在でも元号が先

『朝日』と『毎日』の動きが、当時の元号法制定運動の影響を受けていることは間違いないだろう。(最終的に1979年に元号法成立)
『朝日』には変えた理由が書かれていなかった(学部生の時の調べ方に問題があったかも)。
『毎日』は、前日の1977年12月31日朝刊に「ますます進む国際化に対応」するためであるという記載がある。
この理由が一番無難であるということなのだろう。

さて、『産経』については、色々な意味で「さすが」としか言えないので、解説はしない。
おもしろいのは、『読売』と『日経』の動きである。
1988年が昭和何年であるか気づくと、「あっ」と思われる方がいるだろう。
さらに、この年の9月下旬に何があったのか、記憶にある方がいればなおのことであろう。

1988年とは昭和63年。つまり、昭和天皇が死去する前年である。
そして、その年の9月19日に昭和天皇は倒れ、24日には一時重体となるのである。
この時に、「自粛」騒動(バラエティー番組が放送中止になるなど)が起きたことを覚えておられる方も多いのではないか。

昭和天皇は1987年にガンの手術を行っており、Xデー(天皇の死去)は時間の問題と思われていた。
その中で、『読売』は表記の変更を行った。
『日経』は昭和天皇重体のさなかである。(管見の限り理由は書いていない)
これから見ると、『読売』と『日経』が、元号の何を重視したのかがわかる。
つまり、「昭和」という元号の使いやすさである。

「昭和」は長かった。そして、「西暦下二桁-25=昭和」(例、1945年は45-25=20→昭和20年)という、数えやすい年号であった。
これが新しい元号になったときに、使いづらい・わかりづらいということが問題になったのではないだろうか。
実際に、平成になった当初、周りには「今年は昭和70年」といった数え方をしている人がいたように思う(2000年以後はあまり聞かなくなった)。

『読売』『日経』は基本的な政治姿勢は保守系に属する。
その2社が元号に対して取った政策は、「実利」だったということがここからは読めるのである。

ちなみに、「○○年度予算案」という記事があるが、これに関しては、欄外の表記とは異なり、平成に入ってからもしばらくはどの新聞にも生き残っている。
これはきちんと調べていないのだが、少なくとも『朝日』は、1989年にはまだ「平成元年度予算案」という言葉を使っていた。
現在では、『産経』を除く4社は「2007年度予算案」という言葉を使っている。
『産経』は今でも「平成19年度予算案」という言葉を使っており、ある意味一番潔いとは言えよう。(ちなみに、他の国の予算案の場合は2007年度という言葉を使っている。そこは「国際基準」を使用しているようだ。)

上記の記述は、私の「推測」にすぎないが、おおよそ当たっているのではと思っている。
おそらく社内の上層部で変えることを決めているのだろうけど、一体どういう議論があって変わったのかには興味がある。
しかし、そういう一次史料なんて出てくるんだろうか?探してみたことはないが。


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コメント 2

sen2002611

いつもながらのマニアックなご指摘は、勉強になります。ですが、地方の新聞や地方版は如何なのでしょうか?
by sen2002611 (2007-06-27 18:20) 

瀬畑 源(せばた はじめ)

senさんコメントありがとうございます。いつもマニアックですみませんねえ(笑)
地方新聞については調べたことがないですねえ。
縮刷版があると調べるのは楽なのですが、無いと調べること自体が大変ですから。
時間があれば調べてはみたいですが。
by 瀬畑 源(せばた はじめ) (2007-06-30 14:26) 

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