SSブログ

朝日新聞「情報公開、営利7割」報道について [情報公開・文書管理]

本当は別のことを書こうと思っていたのだが、今朝の朝日新聞を見て、これはコメントをしておく必要があると判断をしたので、こちらの方を書いておこうと思う。

今朝(2007年3月29日朝刊)の朝日新聞の記事によれば、国に情報公開請求を行った約7万9千件(2005年度)のうち、明らかに営利目的と見られるものが約5万2千件にのぼるとのことである。記事
この記事によれば、このうち3万8千件が国税庁に長者番付のリストを請求したものであることなどの、いくつかのデータが挙がっている。
朝日新聞が何をもって「営利」か「非営利」かを判断したのか(しかも約8万件もあるデータ)については、疑問を持たざるをえないが、このような結果が出るのは「そうかもな」と思う。

昨年10月28日のブログで、ローレンス・レペタ氏の講演会に行ったときの話を書いた。
この講演会の時に、フロアからの質問で、米国での情報公開請求の中心は、ライバル企業の情報を入手しようとする営利目的のための請求であり、これを処理するのに米国も相当に苦労をしている。この点についてどう思うかという内容のものがあった。
これに対しレペタ氏は、それは事実であるが、だからといって請求目的を明確にしなければ請求できないようにするシステムの導入は間違っていると答え、さらに「これは民主主義のコストだと考えるべきだ」という趣旨の発言をきっぱりと行っていた。
私もこれは同感である。

朝日の記事にコメントしている堀部政男中央大教授は、行政改革委員会行政情報部会の委員であった方であるので、要するに情報公開法の作成に関わった人である。
その堀部氏のコメントは「営利目的の使用が目立つと、『情報公開などやめてしまえ』という声も出かねない。そうすると、本来、表に出るべき情報が出なくなり、民主主義の根幹である行政の透明性がなくなる」というものであるが、これは「言ってもしょうがないこと」なのである。
堀部氏が、民主主義の根幹たる情報公開制度を守ろうという趣旨で発言をしているのはよくわかる。(部会の議事録を見ても、堀部氏が色々と公開法を良くしようとしてくれていたのはわかる)
しかし、営利目的の使用も含めて、それは民主主義なのであり、その目的によって民主主義に差があるわけではないのだ。

ここで考えられなくてはいけないのは、その処理方法の改善である。
例えば、もし同一の請求が大量に行われているのであれば、一度請求のあった文書については、他の人も自由に閲覧可能にするような処置を取ればよく、やり方を工夫すれば作業量は格段に減るはずである(閲覧許可制にすれば、誰が情報を持っていったかはわかるはず)。

また「請求を受けた省庁では、職員が徹夜したりアルバイトを雇ったりしてしのいでいる部署がある」とこの記事では省庁側に同情的な態度を示しているが、これは根本から間違っている。
つまり、このような請求が多発するのであれば、そこに対して十分に対応可能な人員と予算を配分すべきなのである。
高速道路や新幹線を作る金額から考えれば、このようなコストは微々たる額に過ぎないはずだ。
「請求が多いから困っている」ではなく、「請求が多いならそれに対応できる体制を作る」ようにするべきなのである。

請求目的を問わないことが、民主主義を支えるための絶対条件である以上、請求の多さやその目的を嘆くのではなく、それに対する対応の強化を是非とも主張したい。

付記
なお、この記事を見て、自らの個人情報が業者に漏れているのではないかと思われる人がいると思われるが、個人情報保護というのは良くも悪くも徹底しているので、今の制度ではあり得ない。
長者番付については、公表されているので、その名前は業者の手に渡るであろうが、すでに国税庁が公開している以上の情報が出ることはありえない。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。