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ローレンス・レペタ氏 その3 『闇を撃つ』 [情報公開・文書管理]

レペタ氏の話の続き
レペタ氏の著書『闇を撃つ』(日本評論社、2006年)を読んだ。
この本は、レペタ氏がアメリカの情報公開に取り組む人達にインタビューをした記録である。
色々と興味深い事例が載っていたのだが、私個人として興味を持ったのは、「ニクソンとブッシュ:大統領文書をめぐる闘い」という部分であった。

アメリカの大統領文書は、フーバー以降は大統領図書館が作られており、NARA(米国国立公文書管理局)が管轄している。
しかし、30年ほど前までは、大統領の文書は「大統領の私物」として扱われてきた。
つまり、あくまでも大統領図書館に「私物の寄贈を奨励する」という形だったのだ。

この制度に大きな変化が起こるのは、ニクソン大統領時のウォーターゲート事件である。
つまり、ニクソンが事件に関する文書を廃棄するおそれが高いと考えられたのである。
そのために、議会は大統領録音記録および資料保存法を緊急に制定し、事件に関する文書やテープを差し押さえたのである。

そしてこれをきっかけにして、大統領文書の公文書化が図られ、1978年に大統領記録法(Presidential Records Act)が制定されることになる。
これによって、レーガン大統領以降の大統領の文書は公文書と見なされることになった。
なお、大統領文書は、退任後12年間は、アクセス制限をする権限を本人が持つことができるようになっている。(細かく言うと5年間は一般公開せず、7年間は制限をいくつかの部分にかけることができる)
このため、レーガン文書は、2001年には制限なく公開される予定であった。

しかし、ブッシュ大統領(息子の方)は、同年、大統領令によって、この無制限の公開を止めさせ、対象となる大統領によって重要文書のアクセスを永久に制限できる(大統領の死後はその代理人によって制限が可能)ように、ルールを変えたのである。
これは、自分の父親がレーガン政権の副大統領であったため、この時の文書の公開が自分の不利に働くと考えたためと言われている。
ちなみに、この大統領令は11月に発令しているが、レーガン文書の公開を停止させたのは同年1月であるので、9.11が起きたから変わったわけではない。

これに対し、アメリカ歴史家協会が大統領令の無効を求めて訴訟を起こしたとのことである。
その結果はよくわからないが、ブッシュ現大統領が、あまり情報公開に熱心でないのだけは確かであるようだ。

このレペタ氏の本を読んで初めて知ったのだが、大統領の文書が「私文書」として扱われてきたため、ワシントンから始まる歴代大統領の文書は、議会図書館などに寄贈されたものを除くと、散逸したり破棄されたものが多いということである。
ただ、ふり返ってみると、日本の首相の文書も、内閣官房で作られたもの以外は私文書扱いなのである。
三木武夫元首相の文書を明治大学が整理しているなど、幾人かの首相の私文書は公開に向けた準備が進んでいるようだが、その多くは公開されないままである。
このことも、非常に大きな問題だと、今更ながら考えさせられた。

ちなみに、今回の文を書くのに、Wikipediaの「大統領図書館」を利用したが、非常に記事の内容が細かい。
おそらく、公文書館などに勤務している人が書いたのではないだろうか。非常に参考になった。


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