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公文書管理委員会第18回傍聴記(上) [2012年公文書管理問題]

公文書管理委員会第18回(2012年4月25日)の傍聴に行ってきました。

この日議論になったのは2つ。
一つは、ずっと議論がなされてきた原子力災害対策本部等の議事録未作成問題への改善策について。
もう一つは、日常的な記録作成のあり方について。

資料は公式に上がっています。
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20120425haifu.html

長い記事になりそうなので、さしあたりは前者について。
後者は(下)にて。

事務方から、「東日本大震災に対応するために設置された会議等の議事内容の記録の未作成事案についての原因分析及び改善案」の取りまとめ案(以下「取りまとめ」と略す)が提示された。
流れだけ先に述べておくと、改善策で「意思決定型の会議等」と「事務事業型の会議等」に分けて記述した点について、野口委員をはじめとして「緊急事態の改善策として提示しただけ」といった注記を入れるべきという話になり、「なお、以上の(1)意思決定型の会議等、(2)事務事業型の会議等の分類については、歴史的緊急事態に対応するために必要な改善策として便宜行ったものである。」との記述が8ページに加えられた上で承認された。

承認されたものが以下のもの。
「東日本大震災に対応するために設置された会議等の議事内容の記録の未作成事案についての原因分析及び改善策 取りまとめ」
http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2012/20120425/20120425torimatome.pdf

この取りまとめがどのような位置づけになるのかよくわからなかったのだが、委員会の場において御厨委員長から岡田副総理に提出がなされた。
その後の説明を聞いていると、「行政文書の管理に関するガイドライン」の改訂案を公文書管理課が作成して委員会に提示、パブリックコメントを経て、ガイドラインの改正に繋げるということだそうです。
そうするとこの改善案自体はどのように各省庁に共有されることになるのかがよくわからなくなるが・・・。
ガイドラインを変えるまでは各省庁に伝えられないんだろうか。

さて、ではこの「取りまとめ」は何が書かれているのか。
大きく分けると「原因分析」「改善策」の2つである。

「原因分析」は、今回問題となった原子力災害対策本部などへのヒヤリングの結果に基づいてまとめられている。このヒヤリングについては、前にブログで解説を行った。
細かくは書かないが、配付資料1で大まかなまとめがなされているのでこちらを参照のこと。

「改善策」「歴史的緊急事態」の際の記録作成・保存のために限定している。
内容を簡単にまとめると、

「歴史的緊急事態」は公文書管理担当大臣が閣議等で了解をへて決める。
「意思決定型の会議等」(原子力災害対策本部など)と「事務事業型の会議等」(被災者生活支援チームなど)に分けて、前者は議事録・議事概要、後者は「活動記録」を残す。
③事前にマニュアルを整備し、記録をすぐに取れない場合は原則3ヵ月以内に作成する。
内閣府公文書管理課は、各府省の取り組みが不十分(おそれ含む)な場合、調査や作成を求めるなどの対応をする。


今後の検討課題として、歴史的緊急事態だけではなく、日常的な会議などの記録作成について検討を行う。
また、首都直下地震に備えるための電子公文書の管理のあり方(東京以外に複製を置く)も検討。

以上が「取りまとめ」の内容。

まず、この報告書の位置づけであるが、「歴史的緊急事態」に限る形で改善策が提示されることになった。
これは2月以来、委員会でずっと駆け引きがあり、議事録未作成に対する解決策を早急に求める岡田副総理や内閣府公文書管理課と、この問題は日常的な文書作成のあり方から問わないといけないという委員側とがずっと組み合っているという状況の中で作られた。
そのため、「歴史的緊急事態」用のマニュアルとしてこの文書が作られる一方、このマニュアルの論法自体が公文書管理法の解釈を決定するものではないという限定をつけることになり、委員が求めていた平時の文書作成問題も引き続き論じるということになった。

気になるのはやはり「意思決定型の会議等」と「事務事業型の会議等」を分けたという点。
前にヒヤリング結果を見たときの感想として、公文書管理課が「意思決定」をしている会議なのか否かで話を分けたがっていると指摘し、そこは大いに問題があるという話を書いた。
つまり、その会議の場で意思が決定されていれば「意思決定型の会議」であり、情報交換をしているなどの会議を「事務事業型の会議」に分けているのだ。

だが公文書管理法の主旨は、意思決定の過程を「第一条の目的の達成に資するため」(国民への説明責任のため)に残さなければならないと書かれているわけであり、「個別の会議に限定」して意思決定を残せと言っているわけではない。
情報交換している会議も、政策を決断するという大きな流れから見れば「意思決定過程」であり、こういった形で会議の種類を分けるのはあまり納得できるものではない。

もちろん、議事録が取りにくい会議というものもあるだろうが、こういう形で2分して整理をしてしまうと、後者については残さなくても良いという判断をされかねない。
また、そもそもそんなにくっきりとこの二つに分類できるのかということも問題としてあるだろう(どちらの会議にあたるのかを誰が緊急事態に判断するのか?)。

なおこの点については、情報公開クリアリングハウスが意見書を岡田副総理と公文書管理委員会に提出している。
私と問題意識をほぼ共有しているので、そちらもぜひ参照していただきたい。

「意思決定過程・事務事業の実績に係る文書の作成に関する意見」(情報公開クリアリングハウス、2012年4月24日)
http://clearinghouse.main.jp/wp/?p=572

また、委員の多くの方が、この取りまとめを「臨時措置」的なものにしておくべきと主張したのも、この2分法に対する違和感を提示したと言えるだろう。

それ以外の部分について。
①についてはある意味当然なのだが、逆に言えば「制度の重要性がわかっていない人が大臣だったらまずい」ということになるだろう。
そして残念ながら、公文書管理制度の重要性についてわかっている政治家は少数派。
内閣総理大臣が緊急事態のようなものを宣言したときに自動的に発動することにしておいたほうがよいような気もするが、一方でそうやって自動的に発動させた場合、問題意識が共有されず、機能しない可能性が高いようにも思う。
結局は「平時からきちんと文書を作るような体制ができていること」が必要だという話になると思う。

③については、緊急時に文書は作れないのが仕方がないというように取られないことを願いたい。
ただ、これも上記で取り上げた情報公開クリアリングハウスの意見書の中で、「緊急事態ではそれに対応する政府は様々なことに同時並行的に対応し、多くの判断を即断的に行い、それらを遂行する必要がある。そのような状況であればこそ、意思決定過程や事務事業の実績はリアルタイムで客観的・合理的に記録され、共有されている必要がある。」と書かれているように、本来はむしろ「緊急事態だからこそ記録はリアルタイムで作らないとまずい」ということが本筋だと思う。

③だけを見ると、公文書を「作成する」作業はあたりまえに行われる作業ではなく、「意識して行わないとできない」作業であるように見えるのだ。
現実としてそうなのだろうから、緊急提言としては仕方がないところはあるだろうが・・・

④については、今回の議事録未作成問題が起きた際に、公文書管理課が指をくわえてなにもしなかったことへの改善策として出されたものである。
「原因分析」の中で、公文書管理課は次のような指摘を受けている。

会議等の議事内容の記録の作成については、一義的には各府省が行うべき事務であり、歴史的大災害に係る記録の在り方について、「行政文書の管理に関するガイドライン」にも特に触れられていなかったことから、内閣府として、歴史的大災害であることを踏まえた記録の作成状況の調査の実施や各府省に積極的な記録の作成を要請するなどの対応を行うことはなかった。(5ページ)

これは、私が拙著の中で繰り返し指摘した「分担管理原則の壁」の話である。

各府省庁は分担管理されている業務を担当している。
でも往々にして、それは「原則」化して硬直化する。
だからこそ、内閣府という高所から調整して、まずいところは注意するということが必要なのだ。
特に、公文書管理のあり方自体を大きく変えた法律が施行された直後なのだから、公文書管理課がもっと注意をガンガン呼びかけることが必要不可欠だっただろう。

なぜ公文書管理が総務省でなく内閣府の担当であるのか。
そのこと自体に意味があるということをもう少し考えてほしいと思う。

長くなったので一度切ります。(下)に続く。
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